ミカとナギサの幼馴染   作:あるふぁせんとーり

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リエが一番強い回です
前置きすると私は戦闘描写がとても苦手です


記録25:灰燼

 リエの手によって連鎖的に爆発していく道路からアリウスは散り散りに逃げ、彼女らも近くの路地裏に駆け込んだ。辺りには粉塵が酷く舞っていて、リエもアリウススクワッドも互いに互いを見失っているようだった。

 

「……どうする?リーダー。あれ、相当やると思うけど」

「……ここで叩き潰す。朝日奈リエを落とせばトリニティは完全に瓦解する。……複製(ミメシス)がある以上、戦力差はそう簡単に覆らない」

「きっと辛いですよね……苦しいですよね……でもやるしかないんですよね……」

「全軍に伝えろ。「速攻でけりをつける」とな」

「へえ、どうやって?」

 

 打って出ようとしたスクワッドの頭上、ビル裏の非常階段で彼女は笑っていた。反射的にその額に目掛けてサオリは引き金を引くが、弾丸は彼女の携えた手帳に軽く弾かれる。

 

「……!」

「……まさか、「互いに見失ってる」とでも思ってた?ここ、私の庭(トリニティ)なんだけど?」

 

 そう言ってリエは彼女らの足元に何発か榴弾を打ち込み、非常階段から飛び降りた。タンッ、とステップのような着地と同時に地面を鋭く蹴り飛ばして大通りの方へ向かうリエを追いかけようとした彼女達だったが、アリウスを遮るかのように歪な地鳴りが起こり始める。彼女は通りに出て、くるりと振り返ってから口を開いた。

 

「そうそう、聞き忘れてたんだけど……」

「な、なんですか……?これ……?」

「っ!通りに出ろ!」

「……頑丈?」

 

 打ち込まれた榴弾が再び連鎖を引き起こし、大量に仕込まれた火薬がビルを崩落させる。先程の路地裏は一瞬で瓦礫に埋もれ、硝煙の香りが辺りを満たす。その奥に消えていくティーパーティーでありながら、トリニティへの一切の被害を無視したその戦法にミサキは唖然とした。

 

「……何あれ。イカれてる。……いや、あれだけやるから『魔女狩り』ってこと?」

「追うぞ!また妙なことをさせる前に決着をつける!」

「……アリウス(あなた達)トリニティ()を焼き尽くすのとトリニティ()アリウス(あなた達)を焼き尽くすの、どっちが早いんだろうね?」

 

 かくして、トリニティの存亡を懸けた古聖堂防衛戦が幕を開けた。

 


 

「『っ!東部第二道路の封鎖を確認!瓦礫で塞がれてます!』」

「そのまま南下してチームⅧと合流しろ!」

「そんなことしてる余裕、あるのかな?」

 

 指示を出すサオリの足元が大きく爆ぜる。緩急自在の榴弾の軌道は全くと言っていいほど狙いを悟らせず、傍から見ればランダムに地面が爆発しているようにしか見えない。狙撃手のヒヨリが対物ライフルを放っても瓦礫、あるいは味方が壁となってのらりくらりと避けられ、ミサキがロケットランチャーを放とうとも全て見切られているのか全く当たる気配がない。その体捌きは舞踏の如く華麗で、その膂力は重機の如く圧巻。アリウスの誇る精鋭四人を手球に取って、リエは粛々と引き金を引いていた。

 

「『チームⅪ、アリウス、複製ともに壊滅!』」

「『チームⅣ、Ⅷ、崩落とともに全滅!』」

「『チームⅢ、壊滅状態!』」

「……この速度で3分の1持ってかれた?訳わかんないんだけど」

「もう少し頑張ると思ったんだけどなぁ」

 

 ここまでくるとどちらが襲撃者なのか分からないほどに街を焼き尽くして、リエは笑う。分断も、合流も、崩壊も全て彼女の手のひらの上。千を超える相手に朝日奈リエはただ一人、その戦場の全てを支配していた。

 

「……無理。トリニティの温室育ちの戦闘力じゃなくない?」

「ミ、複製はどうなってるんですか……?」

「駄目、いくら不死身でも瓦礫に埋められたら使い物にならない。ほんと、意味わかんない……」

「まだだ!奴さえ、朝日奈リエさえ消えればトリニティは……!」

「そっか、じゃあ……」

 

 サオリはその目に映る怨敵に向けて、思いっきりアサルトライフルの引き金を引いた。その感情の籠もった弾丸は手応えなく、僅かにその首を傾けたリエのサイドテールを突き抜ける。

 

「トリニティは、滅ぼせないね」

 

 そう言って彼女が笑った瞬間、形を保ったままのビルがアリウススクワッドの頭上に落下した。

 


 

 誘導して、仕掛けて、誘導して、仕掛けて。そんなことを繰り返している内にとっくのとうに日は暮れて、時刻は22時を過ぎていた。街中に隠された補給基地、その内の一つに転がり込み、リエは装備を整え直す。

 

「流石に堪えるなぁ……」

 

 ドリンクゼリーを握りしめて血の味がする口の中を一気に洗い流し、リエは手帳を取り出した。

 

「こことここを爆破して……ここが埋まってて……ここは越えてくるから……」

 

 誘導と誘導の隙間の猶予は数分足らず。その僅かな時間で思考を最大速度で回し、戦闘の中で掴んだ人物像、そしてアリウスの情報から「錠前サオリ(彼女)ならどうするか」を無理矢理導き出す。

 

「……了解」

 

 彼女は納得したように手帳を閉じるとグレネードランチャーをリロードし、自らの後ろの壁にC4を貼り付ける。

 

「そこにいるよね、錠前サオリ」

 

 リエは小さく笑って、カチッとC4を起爆した。

 


 

「……っ?!避けろ!」

 

 逃げ込んだ路地裏の壁が唐突に爆ぜる。外れたマスクが、爆風で宙を舞った。

 

「なんだ、意外と可愛い顔してるね?」

 

 爆煙の向こうから現れたリエは、そう言って笑った。

 

「もう容赦はしない。トリニティがアリウスに犯した罪を償う時だ」

「あっは、悪くない冗談かも。……私が犯してない罪をどうやって償うのさ?」

 

 軽口を叩きながら、彼女はそのグレネードランチャーの銃口をサオリに向ける。「Seraph's punishment(熾天使の断罪)」と名付けられたそれは、文字通りに一切の容赦なくアリウスを街ごと焼き尽くしていた。

 

「……安心してよ。もう逃げないからさ」

 

 空気が張り詰める中、彼女がその引き金を引くと同時にその姿が消える。アリウススクワッドの足元に爆炎が広がる中、地面には彼女のブーツが残した足跡が一つ、クレーターのように凹んでいた。

 

「上だ!」

 

 サオリの声とともに、スクワッドの銃口が天を向く。「分かってるじゃん」と言わんばかりの表情をして、彼女は空中で身体を翻した。手足をフックのように引っ掛けて、リエは三角跳びのようにビルの壁から壁へ飛び移りながら榴弾の雨を降らす。さらにその隙間を埋めるように降り注ぐハンドガンの弾幕。だが、スクワッドも負けじと彼女を蜂の巣にしようと地上から応戦する。

 

「っ!右来る!」

「反応速度は上々、だけど……!」

 

 ミサキがロケットランチャーの照準にリエを捉えた瞬間、彼女は思いっきり壁を蹴り飛ばして自身の軌道を捻じ曲げた。明後日の方向へ弾頭が飛んでいく中、リエは容赦なく建物にも榴弾をぶち込み、ビルの瓦礫で追撃する。降り注ぐ捌き切れないほどの榴弾と銃弾、瓦礫が粉塵を撒き散らし、鳴り響く爆発音も相まって視覚、聴覚ともに潰される中、アサルトライフルを構えていたサオリの腕が突然掴まれた。

 

「姫?!」

 

 顔をマスクで覆った少女、秤アツコだった。彼女はその華奢な腕に精一杯の力を込めて、サオリを路地裏から街の外へ繋がる通りに引っ張り出した。それに気がついたヒヨリ、ミサキもその後に続いて走り出す。

 

「……」

「……悔しいけど、同意するしかない。これ以上は無理だよ、リーダー」

「そ、そうだと思います。私は姫ちゃんが正しいかなと……」

 

 「これ以上戦っても勝てない。一旦アジトに戻って立て直そう」とサオリを掴んでいない方の腕を動かして手話で伝えるアツコ。それにミサキとヒヨリも同意する中、サオリは苦々しい顔をした後に言い放った。

 

「……一時撤退……だ……」

 


 

「……逃がしたかぁ」

 

 酷く曇った夜空の下、屋上でリエは呟いた。流石に無茶をしたのか、身体のあちこちが結構痛む。いや、痛む程度だ。その気になればまだ半日以上保たせられる。そんなことを考えながらも、既に時刻は24時過ぎ、戦闘時間およそ11時間。アリウスは確認できるだけで全兵力の4分の3、そして多くの『ユスティナ聖徒会』の複製を失った挙げ句に古聖堂からの一時撤退を余儀なくされた。結果だけ見れば、リエの目標は大体達成だった。

 

「ハナコなら、多分これで立て直せる。……あとは……先生、か」

 

 そう言って、崩れ落ちた街並みに目を落とす。ざっと見積もっても被害総額は1000億を下らないだろう。まあ、そんなのは最悪実家から補填すればいいやとリエは考えるのを止めて目を瞑った。

 

「……ナギサのとこ、戻らなきゃ」

 

 リエはビルから飛び降りて、セーフハウスへ向かった。




これアンチ・ヘイト付けなくて大丈夫かな……
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