ミカとナギサの幼馴染   作:あるふぁせんとーり

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本気モードのハナコ良いよね


記録26:奮闘

「……!ハナコさん!無事だったんですね!」

「マリーちゃんも、ご無事で何よりです」

 

 大聖堂を訪れたハナコを迎えたのは伊落マリーだった。先程の古聖堂襲撃からトリニティは混乱の渦に陥っていて、大聖堂も騒がしい声がいくつも響いている。そんな中で、彼女はハナコへ向けて頭を下げた。

 

「……お願いします、ハナコさん!シスターフッドの指揮を執っていただけませんか?今シスターを、トリニティをまとめられるのはハナコさんしか……!」

「元よりそのつもりです。……はい、約束していますので」

「あ、ありがとうございます!」

「お礼は後で。現在指揮を執っているのは?」

「こ、こちらです!」

 

 急ぎ足でハナコを会議室へ案内するマリー。扉を開くと、そこではシスター達が着地点の見えぬままに解決策を模索していた。

 

「結局爆発の原因は?!」

「サクラコ様の消息は?!ティーパーティーとの連絡はまだ取れないんですか?!」

「ツルギ委員長、ハスミ副委員長は消息不明!正義実現委員会は機能しません!」

「皆さん、お静かに!」

 

 ハナコはその中に割って入った。一瞬、シスター達は水を打ったように静まり返る。

 

「……う、浦和ハナコさん……?何故……?」

「サクラコさんから、そしてリエさんからの頼みです。ただいまより、シスターフッドの指揮を執らせていただきます」

「ま、待って下さい!リエ様は現在行方不明と……!」

「先程一度だけ連絡が付きました。「オブザーバーの名の下にティーパーティーの全権を一時的にシスターフッドに預ける」と」

「それと、サクラコさんは「万が一の場合はハナコさんを自分の代行に」と……!わ、私が保証します!」

「しかしここにはシスターフッド以外の派閥も……」

「それがなんですか!ティーパーティーがシスターフッドに託すと言っているんです!私達がトリニティを守らなければ本当に全て終わってしまうんですよ?!」

「……!」

「一日です!古聖堂の方は一日はリエさんが保たせると!それまでにトリニティを私達の手で立て直すんです!」

 

 大聖堂に響くハナコの言葉に生徒達は表情を変えた。一切の出し惜しみなく、ハナコは持てる頭脳と能力をフル稼働させて指揮を執り始めた。

 

「まずは臨時の指揮系統を確立します!派閥などは関係なく、各自の持てる役割で指揮系統を成立させて下さい!その後役割ごとに救助や捜索などを行います!得られた情報は随時共有を!」

 


 

「……!救護騎士団と連絡付きました!臨時の診療所の用意出来たそうです!」

「掲示板復旧しました!アクセス集中してますが増強込みで一晩はどうにかなります!」

「市民の受け入れ準備整いました!第5校舎まで避難所として利用可能です!掲示板で告知を!」

 

 それぞれがそれぞれの役割に全力を尽くす中、酷く慌てた様子のシスターが部屋に駆け込む。

 

「第14校舎で動きが!パテルが戒厳令の宣布を要求してこちらに向かっています!」

「っ?!正義実現委員会は……いえ、現在治安維持に割ける人員は?!」

「小隊程度なら今すぐ動けます!」

「ではそちらの鎮圧を任せます!」

 

 情報の洪水の中、山積みの問題を手探り状態になりながらも解決策を模索する。リエさんが戻ってきてれば、ナギサさんが無事なら、セイアちゃんがいたら、ハナコはそんなことも考えてしまうが、彼女は「ハナコなら出来る」と託したのだからそんな弱音は吐いていられない。

 

(……私は、私の役割を、私の責務を果たします。ですからどうか……ヒフミちゃん、コハルちゃん、アズサちゃん、先生……どうかご無事で!)

 


 

「……あの日以来か」

 

 メモを見て隠し扉に暗証番号を入力しながら、アズサは呟いた。トリニティ総合学園は混沌に包まれているが、それでも人気が無いような場所に巧妙にそれは隠されている。

 

「……開いた」

 

 中は綺麗に整えられていて、寮の一部屋くらいのスペースにはトリニティでもメジャーな弾丸からオーダーメイドするような装備までずらりと揃えられている。アズサはその中から持てるだけの爆薬を取り出すと、再び倉庫を出た。

 

「『アズサちゃん、今どこですか?』」

「『巻き込まれてませんか?』」

「『大丈夫ですか?』」

 

 スマートフォンを見ると、ヒフミから心配そうなモモトークがいくつも送られてきている。少し考えた後に、アズサは返事もしないままスマートフォンをカバンにしまい直した。

 

「これは私の戦いだから。……ごめん、ヒフミ」

 


 

「救護騎士団からです!先生が撃たれたと!」

「なっ……容体は?!」

「出血多量ですが適切な応急処置もあって命に別状なし!現在は救護騎士団の部室に運び込まれたそうです!」

「生きてはいらっしゃるんですね?!」

「はい!ですが意識はまだ……!」

「そう、ですか……」

 

 ハナコは少し目を瞑った。現在時刻は17時、事件発生からは既に5時間ほど経過していたが、未だに光は見えてこない。ペットボトルの紅茶を飲み干し、彼女は意識を引き戻した。

 

「……分析結果出ました!いえ、出せません!ミサイル攻撃までは割り出しましたが、肝心のミサイルは一切未知の技術です!」

「……?そんなものをゲヘナはどうやって……」

「いえ、ゲヘナでもありません!詳しく特定できませんが、発射地点はトリニティ内部、古跡群の方角です!」

「発生後30分の現場の映像復元できました!」

 

 慌ただしく動く分析官の一人がタブレットをモニターに接続する。辺り一面が爆炎に包まれる中、いくつかの人型がその中を動いている。無数のヒビの入ったヘイロー、被ったヴェール、ガスマスク……ハナコには見覚えのあるものだった。

 

「……あれは……」

「……おそらく……いえ、間違いなく……『ユスティナ聖徒会』……!……まさか、アリウスが……?ならばこれは……」

 

 十分なパーツが揃った。あらゆる条件、あらゆる情報、あらゆる現実が歯車のように噛み合ってただ一つの答えを形作る。そしてそれがようやく見えたとき、ハナコは少し、少しだけ、絶望した。

 

「……そういう、ことですか……」

「は、ハナコさん?」

「……崩れやすい仮定の上です。脆い推測の果てです。ですが、これが正しいのであれば……」

 

 静寂の中に、その声は響いた。

 

「……これは最初から、どうしようもない話だった……?」

 

 頭の中で、必死にそれを否定する材料を探すも、考えれば考えるだけそれは現実味を帯びてくる。自分が迷路だと思っていたものは、実際は出口などない檻だったのでは、そう悲嘆に暮れようとした時だった。

 

「……あ、あの!」

 

 大聖堂に満たされる諦めに近いような静寂を切り裂いて、ハナコの耳に息を切らした誰かの声が届いた。ティーパーティーに入ったばかりの1年生だった。

 

「これ、何かの役に立つと思って持ってきたんですけど……!」

 

ハナコの下へ駆け寄った彼女は、そう言って一冊のファイルを渡す。

 

「……これは……?」

「リエ様の書いた、再開発の図面です!古聖堂周辺の情報は全部載ってるから、もしかしたら……」

 

 僅かに失意に陥りながら、そのファイルを開く。すぐに、ハナコはそれが持つ意味を理解した。

 

「……っ、ナギサさんとサクラコさんは無事……!」

「?!ほ、本当ですか?!」

「……こちらをご覧ください!」

 

 ファイルに挟まれた地図を、ハナコは大きく広げた。仕込まれた火薬量、補給の位置、経由時間、連鎖の手順、もはや実験、あるいは論文にも似たような、事細かに記された古聖堂周辺の情報が目の前に現れる。

 

「これは……」

「……要……塞……?」

「おそらく、その通りです。調印式に何かあった場合、リエさんは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。建物に仕込まれた爆破解体にも匹敵する火薬量がそれを示しています。現在もアリウス相手にゲリラ戦を繰り広げていることでしょう」

「……しかし、何故サクラコ様が生きていると……」

「こちらです」

 

 そう言って、ハナコは古聖堂の側に記されたセーフハウスを指し示した。

 

「リエさんは決して目の前の生徒を見捨てる方ではありません。……ですが、その場で『選択』を出来る方ではあります。古聖堂最寄りのセーフハウスは二人分の備蓄が用意されています。……おそらく、ナギサさんとサクラコさんはここに。……それが最優先であると彼女は踏んだのでしょう」

「……!古聖堂内のカメラ確認できました!確かにリエ様が瓦礫からお二人を救出してます!」

「なら本当に……!」

 

 辺りが安堵にも似たどよめきに包まれる中、ハナコは口を開き、彼女達を鼓舞する。

 

「絶望するのは私達の勝手です。……しかし、今この瞬間も彼女はトリニティの為に死力を尽くしてアリウスを食い止めている。あれだけの惨劇を引き起こしたような相手に粘り続けているんです。ですから、ひとまず安全圏の私達も諦めるのは後にしましょう。シスターフッドリーダー、歌住サクラコ。ティーパーティーホスト、桐藤ナギサ。ティーパーティーオブザーバー、朝日奈リエ。……トリニティの総力を懸けて、お三方を救出します!!」

 

 再び、トリニティに火が灯った。




仲間割れが無いトリニティは強い
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