ミカとナギサの幼馴染   作:あるふぁせんとーり

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リエのスタイルはサクラコよりちょっと良いくらいだと思います
ティーパーティーはみんな見た目だけは文句のつけようもないくらい良いですからね


記録3:彼女の本音

 トリニティ総合学園は春を迎えた。先輩方は退陣し、リエ達が正真正銘の最高学年。

本格的に彼女らがこれからトリニティを動かしていくことになる。

 

 進級式も終えて、春風が少し暖かい新学期一日目。リエも正式にオブザーバーに任命され、更新した学生証に記された所属も正義実現委員会からティーパーティーへと切り替わっていた。改めてナギサ達にティーパーティーを案内された後、彼女は執務室に椅子やらパソコンやらのデスクワーク用の私物を運び込む。

 

「……こんなものかな」

「わーお、判例集に法律に……なにこれ、電卓?」

「これは……関数電卓というやつか。わざわざ買ってきたのかい?」

「ううん、正実でティーパーティー宛の請求書とか書くことあったからその時に」

「あの細かい請求書……やっぱりリエさんでしたか……」

 

 その荷解きを手伝っているミカとナギサ、そしてそれを相棒のシマエナガくんと見守るセイアが色々と彼女の荷物について口を開く。関数電卓やら不自然にスペックの高いノートパソコンやら……彼女達にはあまり見慣れないものが揃っていた。

 

「……こんなものかな。お疲れ様」

「では、ティータイムといたしましょうか」

 

 しばらくして諸々の荷物を運び終えたところでナギサがお茶を淹れ、リエは一息ついた。ミカとセイアも隣で茶菓子を頬張っている。

 

「リエさんがあまり政治が好きではないのは分かっていたのですが……改めてティーパーティーに来てくださってありがとうございます」

「ううん、大したことじゃないよ。でも私に頼まざるを得ないなんて、二人共もう少し頼れる友達増やした方がいいんじゃない?セイアもだけど」

「はぁ……逆に聞くけど君以上の適任がいると思うかい?能力はあって無派閥で権力に無頓着で正義実現委員会所属、それがホストの幼馴染ときた。あまりにも都合が良いだろう?」

「あっはは、確かにそう。適任だったね。……うん、仕事は果たすよ」

 

 リエの軽口に対してセイアが冷静に返した。返された彼女は笑って紅茶を啜る。その味にまた満足気に笑い、小さなフォークでチーズケーキを口に運んだ。

 

「……でさ、今日は私何すれば良い?……っていうかやることある?」

「いえ、今日は特に議題はないのでひとまず慣れてもらえれば。引き継ぎなどもありませんし……これといったトラブルも「春休みからたまに露出狂が出没する」くらいしかありませんので」

「……あ、そうだ!リエちゃんも制服とか弄る?ティーパーティー特権だよ!」

「それティーパーティー特権だったんだ?……いいね、そうする」

 

 ミカが口にした『ティーパーティー特権』。少し制服を弄れたり、寮の部屋をグレードアップしてもらえたり、外食とかの会計をティーパーティー名義で支払ったり出来るようになる文字通りの特権である。ホストの三人が持っているということは当然オブザーバーである彼女もその資格を保有するということ。

 リエは年頃の少女らしく、ミカの提案に目を輝かせた。ちなみに今は支給されたティーパーティーの制服に身を包み、その上から私物のカーディガンを羽織っている。

 

「……カーディガンは付けてほしいんだけど……」

「んー……じゃあいっそのことセーラー服じゃなくてワイシャツにしちゃえば?」

「悪くないかな。涼しそうだし」

 

 開いたノートにサラサラとリエからの注文を書き込んでいくミカ。ナギサも少し引き止めつつも、少し興味有りげにノートを覗き込んでいる。

 

「お二人共、盛り上がるはいいのですがあまり変え過ぎない方が……」

「それにしても驚いたな。意外とファッションに気を使うタイプだったのかい?リエ」

「……まあ、昔から二人と買い物行ってたしね」

 

 机の上のティーセットを片付けて、代わりに机に乗っかっているのはミカの集めていたファッションカタログ。その中の学生コーナーを見ながら、リエ達は話に花を咲かせていた。

 


 

「……こんな感じでオッケー?」

「そんな感じかな。……意外とミカお絵描き上手?」

 

 三十分ほど話して、リエの制服案はそれなりに固まった。ティーパーティーの制服のワイシャツバージョン、同じような色合いの膝上10cmのスカート、胸元には黒ネクタイ。そしてその上に少し大き目の黒いカーディガン。

 全体的には彼女の満足の行く感じになったが、ティーパーティーオブザーバーとしての威厳があまりないことだけが唯一の問題点だろうか。ナギサもそれに関しては何回か忠告したが、リエとミカはそんなもの無視して話を進め、その場でティーパーティー御用達の業者に話をつけた。

 

「……今日中には納品出来るって!」

「ティーパーティーお抱え業者すごいね?」

「もう数十年じゃ収まらないほどの付き合いだそうですので……」

 

 その後、ミカのカタログを片付け終えた頃に下校時間を知らせるチャイムが鳴る。リエはテーブルを囲む椅子から立ち上がり、ふわぁとあくびした。

 


 

 そして、その日の夜のこと。日付が変わった頃、リエは目を覚ました。別にとんでもない早起きな訳でも、実は生活リズムがブッ壊れてるとかでもなく、たまたまよく眠れなかっただけ。「少し熱いからかな、それともまだ新しい部屋に慣れてないからかな」とか考えながら目を擦る彼女。

 とはいっても生活に支障がない程度には昔からよくあることで、こういうときは決まってリエは散歩に出向く。

 

「……一時……半くらいかな」

 

 現在時刻をぼんやりと言い当てながら寝間着のタンクトップからもう納品されたオーダーメイドの制服に着替え直す。寝ている間に少し乱れた髪を整えて、彼女は外へ繰り出した。

 


 

「カーディガンは……置いてきても良かったかぁ」

 

 外はちょっとだけ暑かった。少しだけ早い夏でも来たのだろうか。幸いにもよく晴れていて、空の星が綺麗に見える。

 トリニティの敷地内には誰もいなくて、ただ街灯だけがポツンポツンと灯っている。たまに夜中もドンパチやっている連中もいるのだが、進級数日でそんなことをやらかす馬鹿は流石にいない。「まあ、当たり前か」と納得してリエは本館の方へ歩いていった。

 


 

「……独り占めも……あははっ、悪くない」

 

 トリニティの中央広場の真ん中の大噴水を見て、リエは呟いた。普段は人で賑わってるのに、今彼女の視界に映る人間は誰もいない。眠くなるまで星でも眺めよう、最悪ここで眠っちゃおうと考えて、噴水を囲むベンチに彼女は腰掛けた。

 

「……誰か、いる?」

 

 しばらく眺めていると、リエはふと人の気配を感じた。「こんな時間に?」とも思ったが、誰かと話したいような気もして辺りを見回す。見慣れた人影が彼女の目に入った。

 

「……ハナコ」

「あら?奇遇ですね、リエさん♡」

 

 浦和ハナコだった。何故か着ている水着によって身体のラインが強調され、抜群のプロポーションが顕になっている。前見たときよりもずっと楽しそうだな、とリエは思った。

 

「今日はいい夜ですね♡リエさんもお散歩ですか?」

「まあ、まだ新居に慣れなくてあんまりよく眠れないから。……あと、水着はまだ早いんじゃない?プール開きもまだ遠いよ」

「ふふっ、外で着るべきものを着ずに外で着るべきではないものを着る……とっても楽しいことだと思いませんか?」

「……ああ、背徳感って奴?」

 

 首を傾げると、ハナコはこくりと頷いた。「そういえばナギサが「露出狂が出る」みたいなこと言ってたな」とリエは思い出した。

 

「よろしければリエさんも一緒にいかがですか?とっても気持ちいいですよ♡」

「……そうしよっかな。お言葉に甘えるよ」

「そうですか、少しざんね……え?リエさん……?」

 

 彼女の提案に笑顔で乗っかったリエは羽織っていたカーディガンをベンチに置くと、おもむろにシャツのボタンを外し始める。提案したのは自分であるはずなのに、ハナコはその様子を困惑しながら見ていた。

 ボタンを外し終え、シャツを脱ぎ捨てると、下着を外しても全く崩れなさそうなハリのある胸、コルセットという物の存在を嘲笑うかのような細いくびれ、そして月にすら見劣りしないほどの真っ白な肌が星光に晒される。提案したのはハナコ自身であるにも関わらず、彼女は思わず目を逸らした。そしてそんな彼女の思いはつゆ知らず、温い風の心地良さに目を覚まされてリエはそのままぐぐっと背を伸ばす。

 

「あっはは、気持ちいい!やっぱやっちゃいけないことって楽しいね!」

「……よろしいのですか?トリニティのオブザーバーがこんなことしてしまって……」

 

 不安げに尋ねるハナコに対し、リエは微笑んで答えた。

 

「急に真面目だね。……うん、別にいいと思う。誰にも迷惑かけてないし」

「でも私と違ってリエさんには立場が……」

 

 ハナコはうつむいて、少し言い淀んだ。リエはそんな彼女に黒いカーディガンを掛け、顔を上げさせる。宝石のような瞳が彼女を覗き込んだ。

 

「……もしかしてさ。トリニティ、退学になりたいの?」

「……いえ、そんなことは……」

 

 僅かに目を潤ませながら否定するハナコ。それでもリエは淡々と、けれど優しく言葉を続ける。

 

「嘘つかなくても良いよ。才色兼備の優等生が露出狂になっちゃうなんてそれくらいしか思いつかない」

「……」

「過度な期待も、権力争いも、気持ち悪い隠し事も全部嫌。そんなあなたにとってはこのトリニティ総合学園は息苦しくて堪らない……違う?」

「……じゃあなんであなたは……!」

 

 涙目になってハナコは口を開く。振り払おうとした腕を、リエはすかさず掴んでいた。

 

「……私を……ここから逃してくれないんですか……?」

「だって、そんなのつまらないでしょ?別に好きな訳でも、楽しい訳でもないことなんてやってほしくない」

「……でも私には……!」

 

 そう言うと同時に零れる大粒の涙。それは彼女をぎゅっと抱き締めた、リエの髪を濡らした。

 

「だから本当に好きなものが見つかるまで、ここにいたい理由が見つかるまでもう少しだけ待ってみて。ひとまずはこれでもいいから」

「……分かり……ました……」

「……ほら、送ってく。またバレたらホントに退学になるよ?」

 

 リエはハナコの浮かべた涙を、脱ぎ捨てたシャツでちょいちょいっと拭いて、彼女の手を引いて歩き出した。

 


 

「昨夜また露出狂が出没したそうです」

「え、また?!」

「はい、それも二人」

 

 翌朝、ティーパーティー。朝食を取りながらナギサは切り出した。「へえ」とリエはクロワッサンをトースターから取り出しながら相槌を打った。

 

「一人はスクール水着での徘徊、これはおそらく浦和ハナコさんで間違いありません」

「あの子スゴい優等生じゃなかった?人って変わっちゃうんだね……」

 

 「いやあ、人って怖いなぁ」、そんなことをつぶやきながらパンケーキにいちごソースを塗りたくるミカ。その横では、シマエナガくんがセイアから貰ったパンくずをついばんでいる。

 

「問題はもう一人の方です。ハナコさんと共に中央広場で上半身の下着を露出していたと……。犯人は不明とのことです」

 

 紅茶を啜りながらナギサは報告書を読み上げている。御手洗いから戻ってきたセイアはそれを聞いて一言呟いた。

 

「それ、リエだろう?」

「そうなのです……え?……今なんと……?」

「……待ってリエちゃん、ホント?」

「ハナコから聞いたから間違いないだろうね」

「あははっ、バレた?」

 

 表情の固まっているナギサ、驚愕するミカ、何食わぬ顔でカットされたりんごを食べるセイア、いたずらっぽく笑うリエ。ナギサの手から落ちたパンがベチャッと地面にジャムを塗りたくった。

 

「待って下さいリエさん、オブザーバーが公然わいせつを?!」

「リエちゃん辞任タイムアタックでもしたいの?!」

「『ティーパーティー会則53条、オブザーバーは本学に明確な損害を与えたことが認められたときのみ解任されるものとする』……私が服脱いでなにか損害出した?」

「……私達には損害の証明はしようがない......なるほど、小賢しい理論武装だね」

「そういうこと」

 

 そう言って焼き立てのクロワッサンを頬張るリエ。「知能犯のいたずらは手がつけられないな」とセイアは大きなため息を吐き、ミカにちらっと目線をやる。

 

「待ってセイアちゃん、それだと私が知能犯じゃないみたいじゃん?!ちゃんと考えてるんだけど?!」

「考えてあれなら君はいたずらの才能がないね」

「確かにミカさんは単純ですが……」

「ナギちゃんも敵?!ってそうじゃなくて……」

「そうでした、今はリエさんの……」

 

 ふと本題を思い出したナギサ。慌ててミカも「そうだった」と話題を戻す。

 

「……というわけでリエさん!もっとオブザーバーたる自覚を、このトリニティ総合学園の代表たるティーパーティーとしての自覚を……!」

「いいじゃん、オンオフ切り替えないと損損」

「昔からリエちゃんは極端すぎるんだよ!」

 

 朝から少女たちの笑い声がバルコニーに響いていた。




ナギヒフ
ミカコハ
セイアズ
リエハナ
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