ミカとナギサの幼馴染   作:あるふぁせんとーり

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3章完結です!


記録32:閉幕

「ふう……やはり、ここが一番落ち着きますね」

「あはは、そうだね。お疲れ様」

 

 時刻は12時過ぎ。ナギサとリエは昼食がてら、執務室でお茶をしていた。事態が収まったことを確認し、まだ意識の戻らないセイアを連れてトリニティへ戻って来たミネの手によって、二人の身体にはところどころ包帯が巻かれている。ナギサに至っては支障がない程度に左手がグルグル巻きにされていて、「なんかイタい娘みたいだね」とリエは笑った。

 

「そういえば、アリウスどこ行ったか知ってる?」

「いえ……私達の撤退とともに、忽然と姿を消したと……」

「そっか。……無事だと良いなぁ……」

 

 リエは窓の外を見て呟いた。空は遥か遠くの地平線まで雲一つ無い快晴。まだ早いが、それでも台風が過ぎ去ったあとのような、まさしく『秋晴れ』という言葉がよく似合っている。「しばらく雨が続くでしょう」という予報が大きく覆ったネットニュースは少し焦っていた。「奇跡でも起こらない限り有り得ない」と。

 

「にしても驚いたよ。ナギサとサクラコが開口一番に「先生を助けたい」って言い出すなんてさ」

「そう言うリエさんこそ、また一人で行く気だったのでしょう?あれだけの無茶をした後に……」

「あっはは!じゃあお互い様だね」

「……失礼致します」

 

 二人が談笑する中に、行政官の後輩が一人足を踏み入れた。

 

「お身体の具合はいかがですか、ナギサ様、リエ様」

「一時は駄目かと思いましたが……また、リエさんに救われてしまいました」

「……まあ、そのための私だから」

 

 紅茶を一杯飲むと、リエはそう言って微笑んだ。二人の無事を確認した彼女も安心したようにほっと一息ついた。

 

「……それで、安全確認以外にも何か用があって来たのではないですか?」

「あ、はい。その……ミカ様からお手紙が……「お二人に渡して欲しい」と……」

「……私読むよ」

 

 リエは後輩から封筒を受け取ると、辛うじて剥がれなかった左手のネイルでピッと封を閉じていたシールを剥がした。

 

「『やっほー!二人共、調子はどうかな?ミサイル落ちてから大変だったんだってね!でもナギちゃんがリエちゃんに助けられたって聞いた時はホント安心したよ。ナギちゃん昔っからリエちゃんに助けられっぱだね!いやあ、オブザーバーの権力がホストを超えちゃう日も近そうだね?ま、二人共エデン条約に関してはずっと頑張ってたもんね!今日は久々にぐっすり寝られるんじゃない?』……結構長いけど続ける?」

「はい、お願いします。全く……まあ、元気そうで何よりですが……あとリエさんいつの間にミカさんの声真似を……?」

「『それで、そんな二人に頼み事があるんだけどさ。ホスト権限でもオブザーバー権限でもいいからパパパッとやってくれると嬉しいな!まずテレビが面白くない……訳じゃないんだけど、やっぱりカイザープライムは外せないよね!ポチるのも楽になるし!あと化粧水切れちゃったからそれもお願い!リエちゃんのやつが良いな!あとはシャンプーもナギちゃんが使ってるやつにしてね!……そうだ!せっかくなら三人でおそろいにしようよ!あとさあとさ──』……全然懲りてないね。どうする、ナギサ?」

「……分かりました。今後ミカさんの食事は朝昼晩全てロールケーキ、ということに致しましょう。そのように手配して下さい」

「は、はい!かしこまりました!」

 

 そう答えて部屋を飛び出していく彼女と入れ替わりに、別の後輩が執務室に飛び込んでくる。

 

「な、ナギサ様!リエ様!」

「……急ぎ?どうかした?」

「せ、セイア様が目を覚まされました!!」

 


 

「……あのさ、ヒフミ達は……前の補習授業部は全員合格したんだよね?」

「は、はい……」

 

 少ししかめっ面をして、教壇に立った先生は話す。申し訳無さそうに答えるヒフミ、同じような様子のコハル、キョトンとしたアズサ、ニコニコと笑っているハナコ。それを見て、先生はため息を吐いた。

 

「なんで全員戻ってきてるのさ?!」

「あうぅ……実はまたペロロ様のコンサートと試験が……」

「二度は許さないよ私でも?!」

「習ってない試験範囲は流石に解けない」

「いや範囲死ぬほど広がったんだからやってるはずだけど?!」

「その……飛び級狙って3年生の試験に……」

「懲りてよ頼むから!」

「ふふっ、一人だけほっとかれちゃうなんて寂しいじゃないですか♡」

「ならしょうがない……とはならないよ?!」

 

 全員に一通りツッコミを入れた後に、先生は痛む頭を抑えた。「そういえば私も落単スレスレだったっけ……」と数年前の辛い思い出が蘇ってくる。

 

「あー……マジかー……」

「だ、大丈夫です先生!今回は試験範囲も合格ラインも普通ですし!退学とかも──」

「無理……」

 

 先生はドサッと床に倒れ込んだ。ヒフミ達は急いで彼女に駆け寄ると、揺するなり水を飲ませるなりしてなんとか意識を取り戻そうと奮闘する。まだ、彼女達の補習授業は終わらないみたいだった。

 


 

 夜遅く、人のいないトリニティ郊外。秤アツコは、星空を見上げた。アリウスで見るのとはどこか違う、綺麗な、綺麗な星空。その星明りに照らされながら、彼女は呟いた。

 

「……アズサ。あなたはきっとこれからも沢山のことを学んで、沢山の楽しいことを知るんだろうね。新しい友達と一緒に。きっと、アリウスじゃ出来なかった経験をまだまだ積み重ねるんでしょう。例えどれだけ虚しく、無意味な世界だとしても足掻き続けた、強いあなただからこそ、それを勝ち取った。……まるで、コンクリートを割って咲き誇る花のように。……もう、二度と会えないかもしれないけど、あなたの幸福を祈ってるよ」

 

 そんな祈りの言葉にも近いようなそれを言い終えると、彼女は振り向かず、仲間達と共に暗い道へ歩いて行った。




ひとまずはこれで区切り
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