「……覚えてる限り、一番昔の記憶は、『マダム』が内戦を終わらせたこと」
少し黙った後に、ミサキは語り出した。
「私達はまだ小さくて、何も知らなかったから、「ああ、そうなんだ」って、素直に……いや、何も分からないままに、それを受け止めるだけだった」
「は、はい……それで彼女は……『マダム』は「自分がアリウスの生徒会長で、主人で、支配者だ」……そう言って、残された生徒や幼かった私達を教育し始めました……『
「この世は苦痛に溢れてて、それは『トリニティ』のせいで、そもそも『ゲヘナ』なんていうのは絶対に相容れない不倶戴天の敵……そんなことを口酸っぱく言われ続けた。だから、そいつらを滅ぼすためにって、沢山の戦闘訓練も受けた」
「……」
先生は彼女達の話を静かに聞きながら、ギュッと怒りを込めるように握り拳を作った。二人はそんなことには気付かずに、過去の自分達を俯瞰して話を続ける。
「それで……私達は誰かを殺したいほど憎んでるから、『殺害の意志』を持っているから……『人殺し』と変わりない……外の世界に、『人殺し』の居場所なんてない……だから、自分は『人殺し』の生徒達に真実を教える唯一の存在であり、
「……」
「せ、先生?!すごい顔になってますよ?!……わ、私……何かまずいこと言っちゃったんでしょうか……?」
「だから言ったじゃん。面白い話でもないって」
「ううん、違う。二人に怒ってるわけじゃないよ。……あ、それと、聞いてなかったような気がするんだけど……アツコは何で『姫』って呼ばれてるの?」
「?!姫ちゃんが何で姫ちゃんか……ですか……?……えっと……えっと……その……お、お姫様、だから……?」
先生の素朴な疑問に対し、ヒヨリは頭を抱えながら、自信なさげに答えた。それをフォローするようにミサキが口を開く。
「……まあ、有り体に言えばそうなるよ。姫は、私達が小さい頃からずっとお姫様だった。かつて最初にアリウスを治めていた初代生徒会長、その血を引いてるんだって。だから『ロイヤルブラッド』とも呼ばれてた。それで、アリウスの生徒会長は代々世襲制だったらしいから……本来の、生徒会長なのかな」
「リーダーと、ミサキさんと、それと私は、ずっと……小さい頃から、ずっとスラム街で……そんな中で、私達と違って、姫ちゃんはずっと綺麗なお洋服を着てて……可愛かったなあ……えへへ……ミサキさんはそうでもなかったけど……私やリーダーは、ずっと姫ちゃんが羨ましくて……」
「ううん、私もそうだったよ。表には出さなかったけど」
「そ、そうだったんですね……」
「……姫はすごく優しかった。私みたいな人間にも手を差し伸べてくれて……マスクを付けてなかった頃は、笑顔がよく見えて……とにかく、アツコは私にとっても大切な人なの」
「はい、ミサキさんの言う通りです。……だけど……」
「……内戦が終わってすぐ、或る噂が流れ始めた。「姫は『彼女』に生贄にされるんじゃないか」って。私達はよく分かってなかったけど……みんなに敬われている偉い子だから、選ばれたんだろうって思ってた」
「だけどリーダーは納得しなかったみたいで……姫ちゃんを私達のところへ連れてきたんです。『彼女』と何があったのかは知りませんが……」
そういえば、サオリもあの時『彼女』との約束の話をしてたっけ。そんなことを思いながら、先生はその話に耳を傾けていた。
「……それから、姫は顔も声も隠して私達と一緒に訓練を受け始めた。リーダーは私とヒヨリ、姫、それと後から加わったアズサを自ら育てた。……辛くて苦しい思い出でしかないけど」
「は、はい……あの時のリーダーは本当に怖くて……大人とかよりもずっと……」
「その後、私達は『スクワッド』と呼ばれるようになって、多くの任務をこなすようになった。……まあ、その結果は先生が一番良く知ってるでしょ?結局私達は失敗して、姫は『生贄』に捧げられようとしてる」
「……」
「それに、私達も裏切って本来殺すべき相手の『先生』と一緒にこうしてアリウスに戻ってきてる。……ほんと、どう転ぶか分かったもんじゃない」
「……」
「ああ、全くその通りだな」
話すミサキの背後から、目を覚ましたサオリはすっと姿を現した。何故か一番驚いたヒヨリは、酷く素っ頓狂な声を上げた。
「早いお目覚めだね。体調はどう?」
「ああ、もう動けないほどじゃない。礼を言おう。ありがとう、ヒヨリ、ミサキ、そして先生」
「えへへ……良かったです……。……こ、これで大ピンチは脱したんですかね……?」
「……まあ、とても万全とは言えないけど。……それで、どうする、リーダー?」
「決まってるだろう。バシリカへ向かい、姫を救出する。……それだけだ」
顔色もかなり良くなったサオリは、ミサキの問いかけに力強く答えた。
「もうルートも幾つか考えてある。ひとまず、旧校舎へ向かうぞ」
「きゅ、旧校舎ですか?!あ、あんなのただの廃墟じゃ……」
「そこに何があるの?」
「姫から聞いた話だ。かつて『聖徒会』がアリウスを作る際、バシリカと本館を繋ぐ地下回廊を作ったらしい」
「……待って、なんで『ユスティナ聖徒会』がアリウスを……?」
「……かつて、アリウスは『ユスティナ聖徒会』によって苛烈に迫害された。けれど、その
「それで、回廊はかなり古いものだ。『彼女』に見つかる可能性は最も低い。これなら、安全にバシリカまで辿り着けるはずだ」
「回廊は、どこにあるか知ってるの?」
「いや、まずは見つけるところからだ」
「……そう、分かった」
「ほ、他に方法は……?強行突破とか……い、いえ絶対に不可能ですけど……」
「……普段ならそんな無計画な作戦絶対同意しないけど……先生もいるし、今ならどうにかなるかな」
「旧校舎はここからならすぐ行ける。だが、目立たないようにな」
「了解」
「了解です!」
「じゃあ出発だね!」
「……急に私達を逃してくれるとか言い出すなんて、少し怖いね?」
「頼まれただけです。気にしないで下さい」
「……そっか。あなたも大変だね」
「今更じゃ言い訳にしかならないかもしれませんが……私達も、ここまでするつもりはなかったんです」
トリニティの地下に広がるカタコンベを進みながら、アリウスの生徒会長とユスティナのリーダーは話していた。
「それで、何処まで行くの?まさか、騙して悪いが死んでもらう、とか?あはは、やっぱり怖いなぁ」
「いえ。最近の研究で、「カタコンベには出口が存在する」ことが分かったんです。その奥は、まだ何も分かっていませんが」
「……あ。もしかして、そこで暮らせば良いってこと?まあ、死ぬよりは良いけど」
「いえ、「隠れて、待っていてほしい」と」
ユスティナ聖徒会のリーダーがそう答えると、彼女は少し目を丸くした。
「……誰が?」
「私達の、『オブザーバー』からの伝言です。「数年、数十年、数百年……どれだけ掛かるか分からないけど、それでもあなた達を必ず迎えに行きます。だから、どうか待っていて下さい」と」
「そっか、あの子が……。……分かった。早く行こう」
「今度は疑わないんですね」
「うん、疑わないよ。私はアリウスの生徒会長、秤アヤノ。アリウスを守れるなら、それを選ぶよ。それに……」
「それに?」
「あの子は……アイカは、私の幼馴染だもん」
そう言って、彼女は満開の花のような笑顔を浮かべた。
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……ぶっちゃけどれもめちゃくちゃ嬉しいんだけど承認欲求を隠せなくなってきたな……