ミカとナギサの幼馴染   作:あるふぁせんとーり

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ちなみに、ちなみになんですけどティーパーティーの水着イベ捏造したら読んでくれますか?


記録52:夜明け

「……!あなた達が、トリニティの……?!」

「っ?!アリウス……?!」

 

 セイアの指揮の下、『ユスティナ聖徒会』が護るカタコンベを突破し、アリウスに足を踏み入れたトリニティの前に、彼女達は姿を現した。彼女達はガスマスクも防弾プレートも付けず、そして武器の一つも構えずに、懸命に自治区から武器やら資材やらを運び出している最中のようだった。

 

「待ち伏せですか?!総員構──」

「いや、様子が変だ。……話を聞いてもいいかい?」

 

 臨戦態勢に移ろうとしたハスミを遮って、セイアは『隊長』と呼ばれていた生徒に話しかけた。彼女の表情が、崩れそうになった。

 

「……朝日奈リエという方に、言われたんです。「あなた達を救ってみせる」って」

「リエに?」

「トリニティなら、私達も……幸せになれるんですよね?」

 

 彼女は泣きそうな顔で言う。

 

「言われたんです、言ってくれたんです。「もう人を殺さなくてもいい」って、彼女は……」

「人を……?」

「本当……ですよね?」

「……ああ、もちろんだとも」

 

 縋るような目の彼女に少し歩み寄って、セイアは答える。彼女は、ふっと声を漏らした。

 

「……ああ……もう、恨まなくても良いんだ……」

「ああ、恨むのはもう止めだ。……お互いにね」

 

 彼女の潤んだ瞳を覗いて、セイアは言った。

 


 

「眩しいね、リエちゃん」

「あはっ、夜明けなんてそんなものだよ」

 

 二人は幼い少女のように手を繋ぎ、ゆっくり、ゆっくりと、死闘を越えたボロボロの身体を動かして、そも明るく、温かい朝日の下を歩いていく。マントも失くして、その制服の上に無数の血痕を滲ませ、白い肌に数え切れないくらいの傷を作ったミカと、翼に焼けた痕を残し、所々が燃え落ちた制服と灰を纏い、オーダーメイドの下着が露出する中で、乱れた髪を長いリボンで何度も結び直したリエ。先生も、「アラサー女が無理をしたなぁ」とネクタイを緩めて、苦笑いしながら二人の後をついていった。

 

「あ、あの!友達が怪我してて……」

「すぐに手当をしますので、こっちに連れてきてもらえますか?」

「こっち不発弾の処理終わりました!」

「手際が良い……!負けていられません!」

 

 夜明けの街は、騒がしかった。トリニティとアリウスの生徒達が共に街や遺跡の修復に当たっている。そんな中で、彼女達の下へ一人の正義実現委員が駆け寄った。

 

「……あ、イチカ?」

「おまたせっす。先生も、リエ先輩も、ミカ様も……無事そうっすね。ひとまず何よりっす」

「来てくれてありがとね、イチカ!美食研究会に続いてお世話になりっぱなしかも!」

「えへへ……身に余るお言葉っす、先生。……あー、はい、ハスミ先輩?あ、そうっす。全員確保したっす」

「『分かりました。それでは、こちらまで連れてきてもらえますか?』」

「了解っす」

「そういえばツルギは?こういう時先陣切るのはいつもツルギだけど」

「『ツルギはもう戻りました。「ここは自分の出番じゃない」、と。……まさか、先にアリウスを説得しているとは思いませんでした』」

「はい、既にほとんどのアリウス生が、トリニティに対して友好的な姿勢を見せてるっす。一部抵抗を続けようとした生徒もいたっぽいんですが……それも、説得に応じて投降してくれたっす。流石っすね、先輩」

「え、リエちゃんそんなことしてたの?!」

「……ううん、私は何人かに頼んだだけ。でも、彼女達が、私達の後輩がそれで救われるなら……悪くない話、でしょう?」

「『幼馴染に甘いのは重々承知していましたが、後輩にも甘かったとは……いえ、それが人を惹き付けるのでしょう。イチカ、そろそろ案内を』」

「はいはーい。じゃ、行くっすよ!皆さんにお客様がいるっす!」

 

 そう言って、彼女はリエ達の前をペースを合わせて歩き出す。彼女達はその後をついていった。

 


 

「先生……!!ミカさん……!!リエさんも……!!」

「な、ナギちゃん?!なんで……」

 

 比較的原型を保っている遺跡群の真ん中に作られた広場。そこで、彼女は待っていた。

 

「ここがアリウスの修復、そして保護、合併を目指す『ニカイア作戦』の本部です。リエさんの言葉を借りるなら……アリウスを救うための、第一歩、と言ったところでしょうか」

「ど、どうやってここまで……?リエちゃんについてきたってこと……?」

「ううん、私も()()()()()()()()()

「ああ、私が連れてきたのだよ」

 

 聞き慣れた声が響いて、彼女は姿を現した。ミカは目を丸くして、彼女の顔を見つめた。

 

「せ……せ、セイア……ちゃん……?だよね……?」

「本当に、君は愚かだね。ミカ。常に心の向くままに身体を突き動かし、それに気がついた時は、常に後悔の念で胸を満たす。……全く、悪癖としか言いようがない」

「……ど、どうやって、ここまで……来たのさ……?」

「なるほど。その疑問は珍しく的を得た、当然のものではあるが……些か、時間が足りないな。……まあ、ほんの小さな契約、取引を交わしたんだよ」

 

 セイアは、少し話しだした。ミカはその何も変わらない長い話を、嬉しそうに聞いていた。

 

「そして目が覚めたそのとき、幸運にも、全ての準備を整えたリエが訪れた。正直間に合うかは五分五分ではあったが……私は彼女に持てる情報を全て託し、その背を押した。そして入れ替わりになったナギサとともにトリニティへ戻り、その出来る限りの戦力を率いてここまでやってきた。……まあ、そういう訳だ。少なくとも、リエもナギサも、ミカを救うためだけにあらゆる権力、コネクションを使ってトリニティを総動員した……それだけは、確実な事実と言っていいだろう」

 

 そう言い終えて、セイアはもう一度彼女の顔を見た。

 

「……いや、もっと分かりやすく言おう。……君を救いに来たんだ。ミカ」

「……あっはは……ほんと、セイアちゃんはさ……何言ってるか分かんないよ。偉そうだし、恩着せがましいし、心から、ムカついちゃうなぁ」

「……」

「何度も懲らしめたい、ギャフンと言わせたいとも思ったし、いなくなればいいとも思ったよ?……でも、それでも……」

 

 考えるように目を瞑って彼女は言葉を選ぶ。それでも『それ以上』の言葉は見つからなくて、彼女は目を開けて言った。

 

「……それでも大好き、セイアちゃん」

「……え?」

「ナギちゃんも、感情一つでここまでやっちゃうとか、ヒステリーはまだ治ってないみたいだね?しかもずーっと紅茶飲んだままだし、カフェイン中毒も纏めて治したらどう?」

「えっと、ミカさん……?」

「……でも、そんなナギちゃんが大好き」

「いえ、でも私は……その……紅茶がないと、って……えっ?」

「あとあとリエちゃんも!アリウスのことなんて、リエちゃんぜーんぜん分かってなかったんでしょ?それなのに一人で乗り込んでくるなんて、本当見境なさすぎだよ!また一人で背負い込もうとしてたの?」

「はいはい……」

「……うん、そういうリエちゃんが、私は大好き」

「……はぁ」

 

 そう言って、彼女は三人に思いっ切り抱きついた。

 

「……うん。三人とも、大好きだよ」

 

 そしてリエの、ナギサの、セイアの体温に触れて、ミカはそのこみ上げる感情を抑えられなくなる。

 

「……本当に、ありがとう……それと、ごめんね……リエちゃん、ナギちゃん、セイアちゃん……」

「ミカ……」

「ミカさん……」

「……いや、こちらのセリフだ。……本当に、すまなかった。ミカ。ずっと、いつか謝ろうと思っていたんだ。だが、つまらないプライドが、子供のような意地が邪魔して、それを果たせなかった……。君が「アリウスと和解したい」、そう言った時、私は──」

「ううん、もう良いよ。大丈夫。悪いのは、私だったから……」

「えっと……タイミング悪い中失礼するっす」

 

 リエがミカの涙を爛れた袖で拭っていると、そこに何かを持ったイチカが現れた。

 

「これ、うちの子からミカ様に渡してほしいって……」

「……これ、私のアクセサリー?昔買ったお揃いのも……全部、燃えちゃったんじゃ……?」

「あー……えっと……そうっすね、その子が、燃えなくて無事だったアクセサリーをこっそり回収して、保管してたみたいで……押収品管理室の担当が……」

「……コハルちゃんが?」

「はい、コハルが……って、なんで知ってるんすか?!」

「うん、知ってる。とっても可愛くて、カッコ良かったもん。そっか……コハルちゃんが……私、あんなに酷いことしたのに……ありがとう、コハルちゃん……」

 

 取り出したアクセサリーをギュッと抱きしめて、彼女はポタポタと涙を流す。それを見て、先生は笑った。

 

「……まだまだ、話し足りないね」

「ああ、その通りだよ。先生」

「ですが、もう時間もあまりありません。ミカさんの聴聞会に間に合わなくなってしまいます」

「えー……私、こんな格好じゃないと駄目かな?シャワーも浴びたいし、もう一度メイクもしたいんだけど……。先生もリエちゃんも着替えたいよね?」

「あ、確かに……今の私、外行きの感じじゃないや……」

「私も、もう少しだけ時間がほしいかな」

「……はあ、好きにしたまえ」

「そう、ですね。私も徹夜続きでしたし……あまり他所様に見せれる姿では……」

「……よし、みんなでトリニティに戻ろう!約束を果たさないとね!」

 

 意気揚々と行く先生の後を、彼女達はついていく。日常を取り戻すための、最後の舞台へ。

 


 

 午前、九時手前。会場の中心に設けられた一席、事実上の被告人席にミカは腰掛けていた。そしてその隣には先生やナギサ、セイア、アズサなどが証人として席に着いている。そしてそれを半円状に、同心円状に囲む傍聴席。詰めかけたシスターフッド、正義実現委員会、ティーパーティーがざわめきながら様子を見守っている。

 

「『オブザーバー』、入廷です」

 

 この舞台において、彼女の補佐を務める行政官がそう告げると、会場が水を打ったように静まり返る。彼女が足を踏み入れた瞬間、会場に異様な緊張が走った。椅子から立つことさえ許されないほどの別次元のプレッシャーが誰もに伸し掛かる。苛烈なまでに鋭い瞳が、会場を一望した。

 

「……」

 

 そして彼女はこの聴聞会の象徴たる『主の天秤』の前で手を組んで祈り、誓いを捧げる。あまりの神威に満ちた数秒が過ぎた後に、彼女は席に着き、高らかに告げた。

 

「これより、聖園ミカの聴聞会を始めます」

 

 時計の針が、九時を指した。




アリウスモブも救います
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