「じゃじゃーん!どうかな?先生!」
ミカはパッとバスタオルを取り、ロッカーに荷物をしまう先生に新しい水着をお披露目した。
フリルのついた白ビキニの上からは水色のパレオを巻いて、少し恥ずかしそうにパタパタと翼を動かしている。
「めっちゃ似合ってる!良いな〜私良い感じの見つからなくてさ〜」
そう言いながらシャツとスカートを脱ぐ先生。
相槌を打とうとして、ミカは思わず目を丸くした。
「せ、先生?!下着は……?」
「あ、これ?いやあ、ちょっと楽しみ過ぎてさ、服の下に着てきちゃった!」
子供っぽく笑う彼女はシンプルな競泳水着。
その上にカバンから取り出したラッシュガードをふわっと羽織ったその様子はまさにプールの授業の先生。
「先生も似合ってるよ!」とミカが褒め返したところで、既に着替えを済ませてお手洗いから戻って来た三人が合流する。
「おや、戻って来るには間が悪かったかな」
口を開いたのはセイアだった。
柄にもなくキャップなんて被って、ダボダボのTシャツの下にはショートパンツタイプの白ビキニ。
彼女なりに、少しはっちゃけていた。
「にしても生放送……流石の私でも少し緊張」
「はい、このような姿を世の中にお見せするのは少し……」
少し照れくさそうに笑ったリエは髪型も変えずシンプルな黒ビキニ。
胸の前を留める金色のリングが輝いていて、全く日に焼ける気配さえない真っ白で細長い手足と翼がよく映えていた。
そしてナギサは……。
「そういえばナギサ、それって……」
「……うん、ヒフミとお揃い……だよね?」
「実はそうなんです!一昨日の夜、ヒフミさんにクロチャレに出るから水着を買いに行くとお話したら「でしたらこれおすすめです!ナギサ様もぜひ!」と……!」
そう言って、嬉しそうに翼を動かし、ナギサはその場でくるっと回る。
確かに、この前ツルギ達やアズサと海に行っていたヒフミが着ていたものの色違い、白黒の色合いを反転させたものだった。
「……もうすぐ時間かな」
ロッカールームの時計を見上げたセイアが呟くと同時に、スッと自動ドアが開く。
艶のある黒髪をショートカットで纏めた小柄な少女。
音楽フェスのスタッフのようなTシャツに身を包み、その背中には『Cronus Entertainment』と刻まれている。
「えっと、皆さん初めましてです。『クロノスエンタメ部』の興ユナです。そろそろ時間なので、移動お願いします」
そう言ってペコッとお辞儀して、彼女はまた部屋の外へ出て行った。
リエ達は銃や浮き輪、カバンなど各自必要なものを持って彼女の後を追いかけた。
「……!」
「すっごい夏……!」
会場に足を踏み入れるなり、先生は呟いた。
そこは屋内なのに蒸し暑くて、でも不快じゃない、まさしく常夏だった。
スタートを待って、彼女達は砂浜の上に立っていた。
「『今回はいきなりチャレンジャーの紹介から!』」
さっきの少女にもらったインカムから声が響く。
どうやら、彼女が『クロノスエンタメ部』部長、御神楽ランコのようだった。
「……もう、配信は始まってるのかな」
「まだ、マイクはミュートみたいだけどね」
「やっぱり少し緊張しますが……」
「ま、楽しんでいこうよ!」
「そうそう、ミカの言う通り!」
ナギサは水筒の紅茶を一口含んでゴクッと飲み込んだ。
「『今回は久々のトリニティからの参戦だよ!まずは一人目!最近巷を騒がせた天衣無縫のお嬢様……聖園ミカ!!』」
名前を呼ばれたミカは近くのドローンカメラに向かってガッツポーズ。
ちょうどミュートがオフになったマイクが「頑張るよ!」という彼女の意気込みを拾った。
「『そして二人目!謎多きトリニティの頭脳……百合園セイア!!』」
彼女の代わりに、お供のシマエナガくんがカメラの前でバサバサと羽ばたく。
「あまり自信はないけどね」と彼女は苦笑いした。
「『まだまだ行くよ三人目!Ms.紅茶連覇の実力者にして政治に社交に大奮闘の生徒会長……桐藤ナギサ!』」
近づいてきたドローンに驚きながらも、彼女はカメラの前でピースする。
「トリニティの名に恥じない活躍をしてみせます。……あと、ヒフミさんも見ているんでしょうか……」、カッコ良い宣言も、独り言までバッチリ拾われていた。
「『続いて四人目!トリニティ内外から多大な支持を集める『今一番チョコを渡したい先輩』No.1のカリスマ副会長……朝日奈リエ!!」
「まあ、少しでも思い出になれば嬉しいな」と彼女はカメラへ向けて手を振った。
「『そしてラスト五人目は超大物!一騎当千、百戦錬磨、八面六臂の大活躍!今キヴォトスで最も注目されてる……シャーレの『先生』!!」
彼女はいたずらっぽく投げキッスした後に「みんな見ててね!」と大きくピースした。
「『みんなもう分かってるね?!今回の参加者は……トリニティ総合学園生徒会、『ティーパーティーwith先生』!!』」
生放送のチャットが、ものすごいスピードで流れた。
「あ、部長。同接三十万越えました。トレンド一位不可避です」
「マジで?!前回が六万くらいだから……五倍?!」
「肯定ですね、登録者もここ三十分で二万増えてます」
「そんな?!やっぱりシャーレの『先生』パワーマジ感謝だわ」
「今注目集める『ティーパーティー』にまさかの『先生』追加ですからね。モモッターも……あ、やっぱりトレンド不可避でした」
そう言って、マナミはスマホの画面をランコに見せる。
燦然と輝く『トレンド一位』の文字。
彼女は思いっ切りガッツポーズした。
「ったぁ!!まだまだ伸びんぞ〜!!」
「『続いて今回のステージ紹介行っちゃおう!』」
彼女の声と共に、空中にプロジェクションマッピングのような物が映し出される。
「そういえばここって……」
「はい、今年出来たばかりの……」
「『今回協力してもらったのは『トリニティ・トロピカル・タワー』、通称『TTT』さん!みんなも配信終わったら行ったげてね!そんで、ここ三十階建てで各階で色んなアクティビティが楽しめるらしいんだけど……今回は特別仕様!!』」
プロジェクションマッピング上に、犯行現場にあるような黄色と黒のテープが張り巡らされる。
「中身は秘密+難易度超アップ!チャレンジャーはお願いだから無事でいてね!!」
「え、無事を祈るほどの……?」
「ナギちゃんクロチャレ見てないの?難易度めちゃめちゃなのに頑張って挑戦するやつだよこれ?」
「いつも通りルールは無用!制限時間は午後の六時!!んじゃ……スタート!!」
彼女がアナウンス越しに叫んだ瞬間、目の前に大きな波が迫った。
クロノスエンタメ部なんてものは原作に無いです