「……長いね」
「ね、次そんなに凄いのかな?」
「確かにクロノスの方も『本気を出す』と……」
余程手の掛かったギミックか、或いは心の準備の為の時間をくれているのか、しばらくの間が空いた後に、エレベーターの扉は開いた。
「『夏は海、海は釣り!てなわけで26階!!狙えチャレンジャー共!!『大物釣り大会』!!』」
「……は?」
「ここで……ですか?」
ナギサは困惑して首を傾げた。
それも当然、彼女達の目の前に広がるのはだだっ広い砂の海。
もうこれは仮想空間みたいなやつかな、とリエはため息をついた。
「えここ砂漠だよ?砂漠に魚がいるわけなくない?釣りとか無理でしょ」
「『砂漠で釣りが出来ないとか『モンハン*1』やったことないの?!あの『モンハン』を?!』」
「『バケモンハンター』……先生はご存知ですか?」
「そりゃもちろん!私の青春だよ!懐かしいな〜昔PSP*2で遊びまくって成績落としたな〜」
懐かしそうに語る先生を尻目に、リエは周辺を捜索する。
よく見ると建物や生活の跡が砂に埋まっていて、砂漠と言うよりもまるで街が砂に飲み込まれたような、そんな感覚を彼女は覚えた。
しばらく探すと、一本の大きな釣り竿、そして装甲車が瓦礫の影に隠されるように置いてあった。
「これ……先生、何かあったよ」
「ホント?!すぐ行く!……っていうかこの景色どこかで……」
「「いっせーのーせ!!」」
釣り竿を二人で持ち上げ、「せーの」の合図で針を投げ入れたリエとミカ。
投擲地点はセイアが適当に「ここがいいんじゃないか」とほざいたところだった。
「それで、モンハンならなんか釣れるっていうのは分かったんだけど……ほんとに釣れるの?現実で?」
「分かんないけど……でも実況の子が「釣れる」って言ってたから、取り敢えずやってみよう!!」
「……にわかに信じがたいけど……」
「……!!お二人共!後ろ、後ろです!!」
竿をセットするだけしてよそ見していた二人の肩をナギサがベシベシと叩く。
二人の後ろでは、早速釣り竿に何かが引っ掛かってぐおんぐおんと竿が大きくしなっていた。
「え……え?!えっとリエちゃん?!こういう時どうすれば良いんだっけ?!」
「笑えばいいと思うよ……じゃなくて!!えっと釣りは未経験なんだけどな……取り敢えず引っ張るよ、ミカ!!」
そして二人は、その身長ほどある釣り竿を思いっ切り引っ張った……が、根本からべキッと折れて砂の海に引き込まれていった。
「あ……」
「……やっちゃった☆」
「……っ?!逃げ……いや、さっきの装甲車に乗り込むぞ、先生!ナギサ!」
何かを察したらしいセイア達が装甲車のエンジンを入れる中、リエとミカは落ちた釣り竿を取り戻そうと砂の中に手を突っ込んでまさぐっていた。
「うーん……リエちゃんそっちありそう?」
「いや、無理そうかな……うん?」
「あれ、どうかした?」
「……いや、地面揺れてない?」
「そうかな?……でも、言われてみれば……」
「ギュアアアアアアン!!!!」
「「……え?」」
「今だ先生!」
振り返った二人の目に映った、巨大な蛇、或いは鯨のような怪物。
その状況を飲み込む前に、二人は先生の手によって装甲車に引き込まれた。
「……はぁ……二人共、ひとまず無事みたいだね!」
「大丈夫?先生?」
「うん、なんとかね!二人共軽かったから!」
そう軽口を叩いても、少し無理をしていたのか、彼女は背もたれに寄りかかり息を整えた。
「……あー……マジかぁ……」
「……もしかしてさ、先生なんか知ってる?あのデカブツのこと」
「少しね。アビドスで縁があって」
「アビドス……だからこんな砂漠と廃墟が混ざったみたいな?」
リエがそう聞くと先生は「多分」と頷いた。
「ナギちゃん、追いかけてきてる!逃げて逃げて!」
「分かってます見えてます頑張ってます!!」
ミカが覚悟を決めたような眼でハンドルを握るナギサを揺さぶる。
「で、アレそこそこ強いよね?」
「……うーん……まあ、結構強かったような……」
「あははっ☆でも冷静に考えたら、大きいだけのヘビでしょ?ビームとか撃ってくる訳でもあるまいし……」
「……」
「……え、撃つの?」
「……リエとミカは外に出て!私が援護するから、あれを……『ビナー』をさっさと狩っちゃおう!」
「え、ほんとに撃つの?」
かくして、ティーパーティーvsビナーが幕を開けた。
「あれこそ
「アビドス辺りに出るとか言う怪物の再現、あまりのクオリティに感嘆不可避です。結構情報集めるのは大変でしたけど……」
「……まだ26階ですよね?あんなの使ってしまっていいんですか……?」
「お、いい反応だねサクラコちゃん!!しかも撮れ高まで気にしてくれてる!!……でも全然余裕なんだなこれ!!」
「余裕……ですか?」
「そうそう!まあこの先見とけって!!」
「ほんとにバンバンビーム撃つじゃん?ミサイルもめっちゃ来るし!」
「避けれない速度じゃないから十分でしょ」
少し速度を落とした装甲車の傍らを並走しながら、リエとミカはひたすらビナーに弾を浴びせ続けた。
手応えはあるが、それでもあまりに異次元な耐久に少し頭がクラクラする。
「『リエ、ミカ、来るよ!』」
「「了解!」」
そして車内から支援してくれる先生の掛け声に合わせ、口から放たれた極太ビームを躱す。
装甲車の方も、ナギサの抜群のドライブテクニックによってなんとか交わし続けていた。
「……っ、マズいです、セイアさん!もうすぐ行き止まりです!」
「行き止まり……どういうことだい?」
「ですから、この先が無いんです!エレベーターしか反応がありません!」
「……なるほど、そういうことか。先生、ミカ達に伝えてくれ。「全速力で逃げろ」と」
「……了解、信じるよセイア!」
そう言って、先生はリエ達に撤退を命じた。
彼女達は銃撃を止めるとすぐさま全力で走り出す。
そしてナギサも遠慮なしに一気にアクセルを踏み込んだ。
「セイアちゃん、撤退ってどういうこと?!」
「今は暇がない、早くエレベーターに乗り込め!」
先に装甲車を降りてエレベーターに乗り込んでいたセイア達が、少し後からやってきた彼女達の手を思いっ切り引っ張った。
彼女達が乗り込むなり、エレベーターはすごい速度で上昇していく。
「……それで、どういう絡繰?セイア」
「簡単な話だ。アレは──」
「『正真正銘、ラストミッション!!』」
オフになっていたインカムの電源が再び入る。
彼女の最高に楽しそうな声が響いた。
「総力懸けて30階までにアイツをぶっ飛ばせ!!『リアルバケモンハンティング』!!」
あのビナーくんは体力がTormentよりも多いです
がんばれティーパーティー!