「要はあと5……違うな、4階でアレを削り切れば良いってこと?」
「おそらくそういうことだろうね」
「『そうそう今のうちに作戦会議しときなね!!次はそんな暇なさそうだし!!』」
丁度彼女が言い終えたと同時にエレベーターが開いて、彼女達は次の階へ足を踏み入れた。
目の前は砂浜と広い海、そして浮かぶ海上都市。
リエ達の傍らにはバナナボートと一台のウォーターバイクが置いてある。
「……まだ姿は現さない……か」
「それで……この階はどうすれば良いんでしょうか?」
「……ミカ、私をバナナボートに縛り付けてくれ」
「……え?」
ミカが首を傾げて聞き返すが、セイアは何も言わず何処からか取り出したロープをミカに渡す。
しょうがなく、彼女はセイアをバナナボートに頑丈に括り付けた。
「えっと……これで大丈夫?」
「ああ。……それと先生、シマエナガくんを頼んだよ」
「任せて!」
先生が胸をドンと叩くと、シマエナガくんはスッとラッシュガードのポケットに入り込んだ。
居心地良さそうに、彼は麦わら帽子を被り直した。
「……では運転は……」
「分かった、私がやるよ」
リエは軽く答えると、バナナボートと繋がれたウォーターバイクにまたがった。
そしてナギサ達も次々とバナナボートにまたがり、その持ち手を握る。
「『お、間に合ったね!それじゃあ行くぞ27階『逃げるは恥だがなんとやら』!!』」
「……逃げる?」
先生が首を傾げた瞬間、背後で轟くような咆哮が響く。
それと同時に、リエは一気にウォーターバイクのエンジンを吹かした。
「っ、来た!!」
ギュンッと一気に加速して、ティーパーティーは一気に沖に出た。
そしてその後をウミヘビのようにビナーは追いかける。
「リエちゃん免許あるの?!大丈夫?!」
「ここ私有地だから大丈夫……だと思う。……初めてだけど」
こうしてティーパーティーvsビナー二回戦、水上鬼ごっこが幕を開けた。
「リエ、右だ」
「了解」
運転する内に順応してきたリエは、バナナボートを引っ張りながら海上都市の水路を逃げまくる。
しかしビナーも負けじと建物を破壊しながら距離を詰めてくる。
バナナボートの面々が必死にしがみつく中、「ああ、縛り付けてもらって正解だった」とセイアは青い人工の空を眺めて思った。
「でも逃げ回るだけじゃキリなくない?この状況じゃ反撃しようもないけどさ!」
「……うぷ……確かに、ミカさんの言う通りです。……ふぅ、クリア条件も明かされていませんし……」
「……そうだ、どこかに出口あるんじゃない?!さっきみたいにさ!」
「了解、探してみ……いや、待って」
リエは少しだけ考えた。
壊せるように作られた海上都市、少なすぎる手がかり、そして彼女の言葉。
「逃げるは恥だが……。っ!分かった!!」
そう叫んで、リエは思いっ切りハンドルを切った。
バイクが向いた方向は、スタート地点の砂浜。
「そういうことか」とセイアは手を叩こうとした。
「どういうことですか?リエさん」
ウォーターバイクを降り、セイアの拘束を解くリエに、ナギサは問いかけた。
「あの人言ってたでしょ?「逃げるは恥だがなんとやら」って。最初はビナーから逃げろってことだと思ってたけど……そうすると『恥』っていうのが引っかかる。で、戦場で『恥』といえば敵前逃亡。そしてあの状況で敵前逃亡出来る場所は……」
「……このエレベーターだけ、というわけだね」
そう答えたセイアに対し、リエはコクリと頷いてエレベーターのボタンを押す。
その瞬間、彼女の大きな声が響いた。
「『コングラッチュレーション!!よく気づいたねリエちゃん!!ティーパーティー、27階クリアー!!』」
そして開いたエレベーターに彼女達は乗り込んだ。
さっきよりもかなり短い時間で止まり、扉は開いた。
「……ここは……?」
「『ここが正真正銘最後の休憩ポイント!!装備も調子も整えて最終決戦に挑んでね!!28階、『勇者のオアシス』!!』」
広がっていたのは、大型ホームセンターの景色だった。