「っ、だいぶ削ってると思うけど……!ミカ、そっちは?!」
「どうしよう先生?!あんだけ用意したのにミサイル切れちゃいそうなんだけど?!」
「ああもう時間あと10分しかないけど?!……ミカ、直接ブチのめすよ!」
「確かにデカいボスの身体がステージになるやつあるけど!」
戦闘開始から既に1時間弱経過していて、状況は消耗戦に突入していた。
手元の対戦車ミサイルもHEATもほぼほぼ使い果たして、甲板で撃ち合っていたリエとミカに至っては得物片手にビナ……『サマエルくん3号』の下へ乗り込もうとしている。
何故かリエの肩に乗ったシマエナガくんも「やってやるぞ」と言わんばかりに翼を広げている。
しかし、艦内のナギサが二人と一匹を止めた。
「いえ、その必要はありません」
「……あるの?切り札」
「はい、一つだけ。……リエさんにも内緒にしていたものですが」
そう言って、彼女は手元の端末を操作する。
ゴゴゴという音とともに甲板が開いた。
「?!ナギちゃんこれって……?!」
「……あははっ、良いセンスじゃん!やるねナギサ」
「これで……閉幕です!!」
そして放たれた1発のミサイルが『サマエルくん3号』に炸裂し、その巨体を海に沈めた。
トリニティで開発されたばかりの新兵器『貫通ミサイル』……今日が実践初投入だったのは内緒にしておこう、ナギサは固く誓った。
「『現在時刻……『17時56分』!!……本っっっっ当に最高だよティーパーティー!!!29階『常夏大海戦!!vs『サマエルくん3号』、完全クリアー!!!』」
その日一番の彼女の声が響き、ティーパーティーはホッと一息ついた。
「あははっ!!お初だねティーパーティー!!ウチは『クロノスエンタメ部』部長、御神楽ランコ!!……っていう話は後回しでさ、とりまこれ押してくんない?」
エレベーターが開いて真っ先に目に入ったのは彼女の姿。
ラメやらでデコレーションされたクロノスの制服に身を包み、ウェーブの掛かった金髪には幾つものカラフルなメッシュが入っている。
全く声の印象と違わないその姿形にリエは感動さえ覚えていた。
「これ……これは……?」
「ま、損は絶対させないから!結構良いもん見れるかもよ?」
「そうおっしゃるのなら……」
押しに弱いナギサがポチッとそのボタンを押すと、さっきナギサがやったように、30階……いや、屋上の広場が大きく開く。
リエ達だけじゃなく、少し離れた解説席にいたサクラコやハスミ達も戸惑いを隠せないようだった。
先生が好奇心に身を任せ近づこうとすると、ランコは優しく遮った。
「……お、そろそろかな?」
「もしかして……」
何かに感づいたリエが、ゆっくりと空を見上げる。
そしてそれに釣られるように、ミカも、ナギサも、セイアも、先生もまだ明るい空を見た。
「……じゃあ、改めて」
広場の穴の前に立ったランコが、ティーパーティーの方へ振り返る。
「おめでとう、ティーパーティー」
少し落ち着いた様子で、けれど満面の笑みで彼女は笑った。
そして穴から打ち上げられた花火が夕焼けの空に咲く。
「Congratulations!!」、描かれた文字は、鮮やかだった。
「……うん」
小さく頷き、彼女はティーパーティーの下へ駆け寄ってくる。
「おめでとう!!ティーパーティー!!」
そう言ってランコはティーパーティーと先生、全員纏めて抱きしめた。
それどころか、彼女達を労いに来た解説のサクラコとハスミまで。
グイグイ距離を詰めてくる彼女に困惑しながらも、不思議と誰も悪い気はしていなかった。
「んじゃ行くよ!!「はい、チーズ」!!」
その自撮りが『サマースペシャル』のハイライトとなったのは言うまでもないことだろう。
「この前の『クロチャレ』見た?」
「見た見た!ティーパーティーってあんなに笑うんだって思った……っていうかめっちゃポンコツじゃん?!」
「ほんとにそれ!虫取りとかヤバくなかった?!」
「そうそう、配信見てたけど聖園さんとか音割れしてたもん!」
「リエ先輩相変わらずイケメンだよねぇ……」
「そうそう、おばけ苦手なのもギャップって感じ!」
「ナギサ様のかたぬき……」
「ダイナマイト漁とか久々に聞いたわ」
「シスターフッド参戦ほんとなのかな?」
「あの浴衣私も頼んじゃった!」
「結局ハスミ先輩ずっとスイーツ食べてたけど……」
「先生のあの塩焼き食べてみたくない?」
「やっぱミカ様ってゴリラ……?」
総視聴回数2567万回。
最大同時接続者数468万人。
高評価670万回。
ポイチャ総額8億3670万円。
いずれもモモチューブ史上最高記録。
特にトリニティに関してはしばらくその話題で持ち切りだった。
そしてそれは彼女達の知り合いも例外ではなく……。
「ねえコハルちゃん、この前のクロノスの配信見ましたか?」
「クロノスの……?まだ見てないけど……」
「ふふっ、ぜひ一度見てみて下さい。特にリエさんの水着姿に私は胸いっぱいに……」
「り、リエ先輩の胸がいっぱい?!エッチなのは駄目!死刑!」
そして彼女に関しては……。
「ナギサ様!この前の『クロチャレ』見ました!!」
「ヒフミさんも見ていたのですね。……私は、どう映っていましたか?」
「その……ありがとうございます!私なんかがおすすめした水着を選んで下さって……」
「いえ、せっかくおすすめして下さったんですし……」
「ですので!!」
彼女は愛用のペロロ様カバンから大量の資料を取り出した。
「この中から、今度はナギサ様が私におすすめしてくれませんか?!」
「えっと……これは……」
「モモフレライブ記念のスペシャルグッズです!!私じゃ決められなかったので……ナギサ様に選んでほしいんです!」
「で、でしたら……これと……これと……あとこれを……」
「おお!!ペロロ様かき氷マシンとビッグブラザー鍋つかみとペロロ様ピアノ線セットですね!!流石お目が高いです、ナギサ様!!」
「そ、そうですか……それは何よりで──」
「じゃあ、今度アズサちゃんと買ってきますね!!」
「……え……」
ナギサが無意識に手を伸ばした頃には、彼女は何処かに消えていた。
「ナギサ、おはぎ持ってきた」
「……!……リエさん……」
頬張ったおはぎは、少し塩味が強いような気がした。
夏休み楽しかったですね