トリニティ、サンクトゥス第1空港。
「……ねえ、あれ……」
「ティーパーティー……だよね?」
一般の生徒、或いは利用客が息を呑み、思わず道を開けるほどに張り詰めた空気。
その中を、彼女達は淡々と進んでいく。
「ここから連邦生徒会までどれくらいだい?」
「D.U.セントラルまで1時間20分。この瞬間から到着までだったら2時間は見て。……にしても、中々急かすね?」
「集合時刻は知らせず……ただ連絡には「集まり次第」……連邦生徒会は一刻も早く私達を集めたいようです」
「ねえ、本当に荷物いらないの?」
「積み下ろししてる時間が勿体無い。全部機内持ち込みだよ」
「……じゃあさ」
ミカは少し躊躇いながら、リエの左手に握られているものを指さした。
「……なんでナギちゃんの椅子持ってきてるの?」
「えっと……それは……」
「多分これ無いとナギサは平常心保てないだろうから。私が持ってくから安心して。……取り敢えず急ごう」
彼女達は少し歩みを速め、ティーパーティーのプライベートジェットへ向かった。
「救護騎士団、蒼森ミネ団長が到着されました」
「……これで全員だね。時刻通りに飛ばすように伝えて」
「承知しました」
ティーパーティーの保有するプライベートジェットは定員およそ100人の小型機で、内装は一般的なビジネスクラスに近い。
今回連邦生徒会へ向かうのは、収集されたティーパーティー四人とその部下数十人、シスターフッドからリーダーのサクラコと付き人数人、そして救護騎士団からはミネ一人。
かなり機内は余裕がある。
「……駄目、悪い予感は拭えなそう」
そして飛行機のエンジンが入る中、リエは窓の外を眺めてため息を吐いた。
D.U.セントラル空港。
「お待ちしておりました。あちらの駐車場にバスを用意してますので、そちらをご利用下さい」
到着したリエ達を一人の連邦生徒会の行政官が出迎える。
相当忙しそうだな、とリエは少し考えた後に駐車場に止まっていた大型バスに乗り込んだ。
その後に続いてティーパーティー、シスターフッドも次々と席に着く。
そして最後にミネがシートベルトを締めたと同時にバスは空港を出発した。
「……ふっ、誰かと思えばティーパーティーか」
「ご機嫌麗しゅう、万魔殿」
サンクトゥムタワーのエレベーター前で、彼女達は鉢合わせた。
椅子を引き摺るリエと、余裕綽々のマコトの目が合う。
「キキキッ、あの後も随分ゴタゴタがあったようだが……自学園の治安すら維持できないトリニティがこの場に来る意味はあるのか?」
「そちらこそ、まだ賠償金の振込も済んでないようですけど?まさか『自由と混沌』がウリの御校の生徒会が自由に使える予算すら無いなんて笑い話ではありませんよね?」
互いに軽いアイスブレイクのようなノリで言葉を交わす彼女達。
その後ろではやはり思うところがありそうなミカと、ため息を吐くセイア、そして水筒に入れたアイスティーを飲んで心を落ち着けるナギサの姿。
そして空気が張り詰める中で、丁度2つのエレベーターが同時に降りてくる。
片方にトリニティ、片方にゲヘナと綺麗に分かれ、彼女達を乗せたエレベーターは連邦生徒会長代理にして首席行政官、『七神リン』の下へ向かった。
彼女の待つ会議室に足を踏み入れ、座席に着いたトリニティとゲヘナ。
リエの席は中央を挟んでナギサの隣。
手元に置かれていたネームプレートに『ティーパーティー』としか書かれていないのを見て、リエは「余程か」と小さく呟いた。
そしてこれ以上待つ必要はないと言わんばかりに席に着いた七神リン。
彼女の補佐を務める行政官が、リエ達に手早く資料を回す。
「……これより、非常対策委員会を始めます」
「……以上が、キヴォトス全域に出現した、超高濃度エネルギー体現象の全貌です。アビドス砂漠、D.U.近郊の元遊園地である廃墟、ミレニアム郊外の閉鎖地域、トリニティ・ゲヘナ間境界、ミレニアムの新興都市……そしてD.U.のサンクトゥムタワー。この現象の解明には、各自治区の協力が必要です。何卒ご協力の方をよろしくお願いいたします」
少し長く、面倒な説明を終え、リエはパタンと資料を閉じた。
他の面々に至っては、資料を開いてさえいない者もいたが。
「その前に一つ、先生はどちらの方へいらっしゃるのでしょうか?」
サクラコは少し不安そうに口を開いた。
「『シャーレ』もこの非常対策委員会に参加すると伺ったのですが」
「それは……」
「シスターフッドとしても、非常に急を要する案件で『シャーレ』との話し合いが必要です」
「……初めて耳にしました。サクラコさん、それはどのような?」
「それは……ここでは少し……」
「まだシスターフッドは私達に隠し事を残していると?」
「ミネ。控えて」
「
「ねーねー、あの子寝てない?セイアちゃんが話してるのに。やっぱお里が知れちゃうなー」
「……」
次々と口を開くトリニティ陣営。
そしてそれ以上に不相応な態度で会議に望んでいたゲヘナ陣営は答える。
「マコト先輩……今全員マコト先輩見てます……起きて下さい……」
「キキキッ、この程度で寝るわけ無いだろう。この騒ぎじゃ子守唄にもならん」
「ねえ〜早く帰りたい〜いつまでやるの〜?イブキまだご飯食べてないし……」
「子守唄にもならない?じゃあスッキリ眠らせて──」
「ミカ、私が相手することになるよ?」
「それで、先生は現在どちらの方に?」
「答えが返ってくるわけ無いだろう。連邦生徒会が匿ってるんだからな。……要は、こんなものに何の意味も無いということだ!」
場が一層にやかましくなる中で、リンは言い切った。
「『先生』は、現在行方不明です」
会場が一気にざわめき始める。
「行方不明……連絡も取れないと?」
「帰るぞ、イロハ。連邦生徒会と話すことなど無い!」
「……疑問点は決して少なくない……少し思考を整理したいかな」
「では、一旦トリニティに持ち帰るということで……」
「……」
沈黙するリン、そして連邦生徒会の生徒達を尻目に、リエ達は連邦生徒会を、D.U.を後にした。
「ミカとナギサのアソビ大全」の方も読んでもらえるとめちゃめちゃ嬉しいです
多分ここまで読んでる皆さんなら好きな感じのナギミカを書いたと思うのでそっちもよろしくお願いします
あとリエは個人的にマコトが嫌いそう