ミカとナギサの幼馴染   作:あるふぁせんとーり

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朝日奈リエ←原作にいてもあんまり違和感がない


記録72:集う少女達

「……お待たせしました、皆さん」

「……これで全員……ですね」

 

緊迫した空気の中、ハナコはティーパーティーの執務室に足を踏み入れる。

 

ティーパーティーホスト、桐藤ナギサ、百合園セイア、聖園ミカ。

ティーパーティーオブザーバー、朝日奈リエ。

シスターフッドリーダー、歌住サクラコ。

救護騎士団団長、蒼森ミネ。

正義実現委員会副委員長、羽川ハスミ。

 

文字通り、トリニティを担う人間の殆どがそこに集っていた。

 

「……結論から言う。全員、ヘイローが尽きても役目を果たして。……キヴォトス(私達)の未来の為に」

 


 

真っ黒なサンクトゥムタワーは、本物を押し潰した。

空は赤く、シャーレの屋上の彼女まで地上で戸惑う人々の声が聞こえてくる。

 

「これが、セイアの見てた景色かぁ……」

 

「確かに、こんなの耐えられないよね」と言って小さく笑った彼女の前に、それは姿を現した。

 

「……黒服?」

「クックックッ……このような見苦しい姿で失礼します、先生」

「……そっちも、結構大変みたいだね?」

 

そこにいたのは『ゲマトリア』の『黒服』。

だけど、彼女の目に映る彼もまたボロボロだった。

シンプルだが上質なスーツはあちこち破け、その真っ黒な身体に迸るヒビは一層大きくなり、顔は酷く歪んでいる。

 

「ええ。……ゲマトリアは壊滅しました。『色彩』の進出によって」

「『色彩』?」

「……もう少し良い表現がありました。『色彩』が侵略を開始したのです」

「詳しく聞かせて」

 

先生は『ゲマトリア』が嫌いだ。

生徒を利用することを目論見、その尊厳を踏み躙ろうと謀り、彼女達を道具として見る彼らのことが嫌いだ。

それは目の前の『黒服』も例外ではない。

けれど、それと同時に彼が『フェア』であることも知っている。

彼は大人同士であればある程度話せる存在であるのは、彼女は何となく理解していた。

そして、この状況であれば彼は有益かもしれない。

そんな大人らしい『損得勘定』で彼女は口を開いた。

 

「『色彩』は既に、狼の神との接触を果たしました。神秘は恐怖に反転し、本質は表に顕れる。そして彼女は生きとし生けるもの全てを導く……『死の神(アヌビス)』に至りました。それは己の本質に導かれ……この世界を冥府へと変えるでしょう。……即ち、『色彩』は既に彼女の『崇高』を握ったのです」

「……狼……?」

「……しかし、このような事態になるとは。「『色彩』はあらゆる全てを保たぬ、不可解な『概念』」……そう、解釈していたのですが。しかし、これには明確な『意志』がある。おそらく、キヴォトスの『神秘』『恐怖』『崇高』、その全てを喰らい尽くすつもりです」

「……じゃあさ」

 

先生は、連邦生徒会があったはずの『そこ』を指さした。

 

「あれ、何?」

「……おそらく、サンクトゥムタワーの一種です。それも反転を遂げた。……太古、この世界に『何か』が残されるよりも前、至って原始に近い神秘……『名もなき神』の遺産です。『色彩』の光を世界に伝える……言わば、この赤い空を照らす街灯のようなものです」

「……」

「……『色彩』はゲマトリアの全てを奪い去りました。『神名十文字(デカグラマトン)』『複製(ミメシス)』『聖徒の交わり(Communio sanctorum)』『止め何処無い奇談の図書館(The Library of Lore)』……文字通り、私達の成果である全てを。そしてそれを手にした『色彩の嚮導者』は──」

「待って、『色彩の嚮導者』って誰?」

「……『色彩』の意志を代弁し、計画を遂行し、『色彩』そのものの代理たる者……その名、『プレナパテス』。これから、貴方は必ずヤツと対面するでしょう」

 

先生は少し目を瞑って考えた後に、パシッと手を叩いた。

 

「……まあ、要はさ」

「……」

「あれ、全部ブッ壊せばどうにかなるってことでしょ?」

 

そう言って、彼女は懐から『大人のカード』を取り出す。

 

「……これは忠告です。それを乱用すれば、貴方は必ずや私達と同じ結末へ辿り着く」

「良いよ別に。……ここで動くのが『先生()』の仕事だからね!」

「クックックッ……その蛮勇が実ることを祈りますよ、先生」

 


 

シャーレ屋上。

ティーパーティーの輸送ヘリから降りたハナコに、リエは操縦席から声を掛ける。

 

「んじゃ、『シャーレ』は……先生は任せたよ」

「はい。……リエさんこそ、トリニティをどうかよろしくお願いします」

「あっはは、あんなに辞めたがってたハナコからそんな言葉が聞けるなんてね。……うん、絶対にハナコの帰る場所は守ってみせるよ」

 

そう言ってハナコを送り出し、リエは再び操縦桿を握る。

 

「……頼んだよ、先生」

 


 

「……今戻った!」

「リエさん……!ハナコさんから送られてきた資料は──」

「全部見たよ、大体こっちの想定通り!」

「ああ、当然だ。……私が一度、この眼で見ているのだから」

 

ハナコ達がシャーレで作戦会議を行っていると同時に、学園間を超越した、リアルタイムで情報を共有しながらの作戦会議が行われていた。

そしてそれはトリニティも例外ではない。

 

「古書の解読は?」

「現在図書委員会とシスターフッドが合同で取り掛かっています。少なくとも『色彩』に関してはシスターフッドの古書に記載がありました。現在分析を急がせています」

「あれは『狂気』の光だ。人を壊し、心を壊し、神秘を壊す──」

「ミレニアムの『ヴェリタス』から追加資料の要請です!」

「バンバン回して!どうせウチだけじゃどうにもならない!」

「解析出ました!タイムリミットおよそ300時間!」

 

そして追加の連絡を受けて、リエが一同に告げる。

 

「作戦名『虚妄のサンクトゥム攻略戦』!!」

 


 

「……久しぶり」

「『本当ですね。ですがそちらで才を腐らせているなんてことはなさそうで安心しました』」

 

一人抜け出した大聖堂のサーバールームで、ノートパソコンとしては不相応なスペックなそれのキーボードを叩きながら、リエは電話越しの彼女と言葉を交わす。

 

「『それで、何のご用ですか?』」

「……私の計算だと明らかに総エネルギー量と想定される被害規模が合わない。約25%」

「『……もうそこまで辿り着きましたか、私以外で』」

 

そして彼女はタンッと軽やかにエンターキーを押す。

 

「その頭貸して。……明星ヒマリ」




リエは数学の才能でミレニアムのスカウトを受けたことがあるぞ!(設定集参照)
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