「……あっはは、あれ凄かったね」
ブリーフィングを終え、8時間後に集合ということで一時解散。
「補習授業部に何も話してないでしょ?」と帰り路の装甲車のハンドルを握り、リエは笑った。
「……リエさんの所感は?」
「ああ、あれ『量子コンピュータ』でしょ?じゃないと演算装置の割合に説明付かない。何さ『約80%』って、本当に空飛ぶだけのデカい量子コンピュータじゃん」
「まあ、それでも十分『オーパーツ』なんだけどさ」と付け足して彼女は笑った。
けれど、渡りに船であるのは事実。
これでシャーレは空中要塞『アトラ・ハシースの箱舟』を攻略することが理論上では可能になったと言える。
僅か3%という確率だが。
「それで、ハナコは乗るんでしょ?頑張ってね」
「リエさんは──」
「私はパス。まだまだこっちでやること残ってるし」
それもそうか、とハナコは思った。
彼女がミカやナギサを置いていけるはずないのだから。
「まあ……私がいる限りトリニティはどうにでもなるから」
「ふふっ、大丈夫です。そちらの心配はしていませんので」
「なら良かった」
リエはそう答えて、思いっ切りアクセルを踏み込んだ。
「……『運命』って、信じますか?」
「『運命』?」
至極唐突に、リエにハナコは問いかけた。
窓の外は、ようやくアビドスを抜けて高速道路に乗ったところ。
料金所の手前で投げかけられた問に、彼女は料金所を通過する前に答えを出した。
「私は信じないかなぁ」
「……理由を伺っても?」
「だって腹立つから。自分の選んできた、歩んできた、積み上げてきた全てが『運命』って言葉で一蹴されるの。ほら、あの時ヒフミちゃんも言ってたでしょ?「私達の描くお話は私達が決めるんです」って。なら、そこに『運命』なんてものはないんじゃない?」
その答えを聞いてハナコは思った。
ああ、やっぱりこの人は『天才』なんだ。
もはや神の存在、正義すら信じているか、信じる必要があるのか疑わしいほどに。
それだけ、彼女が自らに置く信頼は絶対のものだった。
「ミカさんとナギサさんと出会ったことが『運命』だとしても?」
「あっはは、それだけは私の『運命』かもね」
そう言って、彼女は無邪気に笑う。
彼女は己を隠さない。
それ故に、その行動原理の全てが『幼馴染』というものに繋がることは簡単に理解出来た。
エデン条約の時でさえ、彼女は全て彼女達の為に動いていたのだから。
それはまるで、『ミカとナギサの幼馴染』であることが彼女の存在意義であるとすら思えるほどに。
ハナコは彼女と話す度に少し考えてしまう。
なんで、それだけの感情を抱いているんだろうか、と。
しかし、その思考回路の弾き出す答えは毎回変わることはない。
「……確かに、あの二人と会ってなかったら……ふふっ、私どうなってたんだろう?」
「……『恋』……」
そして、それだけの思いを向けられる彼女達を、少し羨ましく思ってしまうのだ。
「……ところで、話したの?」
「何をですか?」
「あの、予言を受けて、それを避けるために頑張って、その結果国を滅ぼした王様の話。何ていうんだっけ……ああ、『
「……」
少し黙った彼女の顔を見て、リエは「やっぱりね」と肯定の意思を汲み上げた。
そして、彼女はつらつらと続ける。
「大切なのは『結果』じゃなくて『起点』。きっと、何処かに正しい『滅びの始まり』があって、それを見落としちゃったんだろうね」
「……そうかもしれませんね」
ハナコの脳裏にふと『ラプラスの悪魔』という言葉がよぎった。
「物事の全てには因果があり、全ては『起点』から定められた『結果』である。そのため未来の全ては予測できる」という説。
現在は不確定性原理の存在によって否定されたはずだったが、どうも彼女は『ラプラスの悪魔』を証明してるんじゃないかと思うことがある。
しかし、彼女は明確に一点だけ違うところがあった。
「まあ、あとはインスピレーションなんだけどさ」
ああ、本当にこの人は分からない。
開いた窓から吹き抜ける風が髪を撫でた。
リエの思考回路は『因果』と『直感』が気持ち悪い感じに絡み合ってます
気持ち悪いですね