ミカとナギサの幼馴染   作:あるふぁせんとーり

88 / 109
リエを深掘りする回です


記録84:彼女達のインテルメッツォ

「……あっはは、あれ凄かったね」

 

ブリーフィングを終え、8時間後に集合ということで一時解散。

「補習授業部に何も話してないでしょ?」と帰り路の装甲車のハンドルを握り、リエは笑った。

 

「……リエさんの所感は?」

「ああ、あれ『量子コンピュータ』でしょ?じゃないと演算装置の割合に説明付かない。何さ『約80%』って、本当に空飛ぶだけのデカい量子コンピュータじゃん」

 

「まあ、それでも十分『オーパーツ』なんだけどさ」と付け足して彼女は笑った。

けれど、渡りに船であるのは事実。

これでシャーレは空中要塞『アトラ・ハシースの箱舟』を攻略することが理論上では可能になったと言える。

僅か3%という確率だが。

 

「それで、ハナコは乗るんでしょ?頑張ってね」

「リエさんは──」

「私はパス。まだまだこっちでやること残ってるし」

 

それもそうか、とハナコは思った。

彼女がミカやナギサを置いていけるはずないのだから。

 

「まあ……私がいる限りトリニティはどうにでもなるから」

「ふふっ、大丈夫です。そちらの心配はしていませんので」

「なら良かった」

 

リエはそう答えて、思いっ切りアクセルを踏み込んだ。

 


 

「……『運命』って、信じますか?」

「『運命』?」

 

至極唐突に、リエにハナコは問いかけた。

窓の外は、ようやくアビドスを抜けて高速道路に乗ったところ。

料金所の手前で投げかけられた問に、彼女は料金所を通過する前に答えを出した。

 

「私は信じないかなぁ」

「……理由を伺っても?」

「だって腹立つから。自分の選んできた、歩んできた、積み上げてきた全てが『運命』って言葉で一蹴されるの。ほら、あの時ヒフミちゃんも言ってたでしょ?「私達の描くお話は私達が決めるんです」って。なら、そこに『運命』なんてものはないんじゃない?」

 

その答えを聞いてハナコは思った。

ああ、やっぱりこの人は『天才』なんだ。

もはや神の存在、正義すら信じているか、信じる必要があるのか疑わしいほどに。

それだけ、彼女が自らに置く信頼は絶対のものだった。

 

「ミカさんとナギサさんと出会ったことが『運命』だとしても?」

「あっはは、それだけは私の『運命』かもね」

 

そう言って、彼女は無邪気に笑う。

彼女は己を隠さない。

それ故に、その行動原理の全てが『幼馴染』というものに繋がることは簡単に理解出来た。

エデン条約の時でさえ、彼女は全て彼女達の為に動いていたのだから。

それはまるで、『ミカとナギサの幼馴染』であることが彼女の存在意義であるとすら思えるほどに。

 

ハナコは彼女と話す度に少し考えてしまう。

なんで、それだけの感情を抱いているんだろうか、と。

しかし、その思考回路の弾き出す答えは毎回変わることはない。

 

「……確かに、あの二人と会ってなかったら……ふふっ、私どうなってたんだろう?」

「……『恋』……」

 

そして、それだけの思いを向けられる彼女達を、少し羨ましく思ってしまうのだ。

 

「……ところで、話したの?」

「何をですか?」

「あの、予言を受けて、それを避けるために頑張って、その結果国を滅ぼした王様の話。何ていうんだっけ……ああ、『皮肉(アイロニー)』のやつだ」

「……」

 

少し黙った彼女の顔を見て、リエは「やっぱりね」と肯定の意思を汲み上げた。

そして、彼女はつらつらと続ける。

 

「大切なのは『結果』じゃなくて『起点』。きっと、何処かに正しい『滅びの始まり』があって、それを見落としちゃったんだろうね」

「……そうかもしれませんね」

 

ハナコの脳裏にふと『ラプラスの悪魔』という言葉がよぎった。

「物事の全てには因果があり、全ては『起点』から定められた『結果』である。そのため未来の全ては予測できる」という説。

現在は不確定性原理の存在によって否定されたはずだったが、どうも彼女は『ラプラスの悪魔』を証明してるんじゃないかと思うことがある。

しかし、彼女は明確に一点だけ違うところがあった。

 

「まあ、あとはインスピレーションなんだけどさ」

 

ああ、本当にこの人は分からない。

開いた窓から吹き抜ける風が髪を撫でた。




リエの思考回路は『因果』と『直感』が気持ち悪い感じに絡み合ってます
気持ち悪いですね
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。