ミカとナギサの幼馴染   作:あるふぁせんとーり

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シリアスかぐや様みたいなタイトル


記録86:天才達の死闘

「今無理!!」

 

彼女達が空へ飛び立ってから数時間。

ティーパーティー執務室でリエは壁に掛けられた数多のディスプレイに示されたデータの全てを余すこと無く把握しながらひたすらキーボードの上で指を滑らせる。

地上から何とか確認できる範囲でさえ、一切の余裕が無く、一切の猶予が許されないほど『ウトナピシュティムの本船』のリソースは常時限界状態。

そして見上げた空は……。

 

「……っ、赤過ぎだって……!!」

 

先生達が乗り込んだ『ウトナピシュティムの本船』は僅か数分で上空75,000mの『アトラ・ハシースの箱舟』に到達。

そしてこちらも『多次元解釈』を用いることでそのバリアを相対的に実体化、ミレニアムサイエンススクールの天童アリスが『本船』のリソースを借りて顕現させた新兵器『光の剣:アトラ・ハシースのスーパーノヴァ』を以てバリアを破壊、『箱舟』との接触に成功、そしてアビドスの『対策委員会』、ミレニアムの『ゲーム開発部』、ゲヘナの『美食研究会』が速やかに各ブロックを制圧しリソースを掌握、『アトラ・ハシースの箱舟』は無力化された……はずだった。

 

そこからは彼女達の戦いも幕を開けた。

ミレニアムのハッカー集団『ヴェリタス』と手を組んでの対『アトラ・ハシースの箱舟』の電子戦が開幕したのだ。

赤い空の下、ナギサ達がトリニティ防衛作戦を再び思案する中、リエは移り変わる数値から『ウトナピシュティムの本船』の現在状況の全てを叩き出す。

一時間以上キーボードに打ち付けられっぱなしのその指はそれでも尚敗北の瞬間まで軽やかに踊り続ける。

一杯紅茶を啜り、リエは通信越しの彼女らに問いかけた。

 

「『本船』現在リソース25%以下、このままだとあと30分もすれば墜ちる!防衛システムはあっちも『量子コンピュータ』っていう都合上私は無理だからプロのそっちに任せたい、あとハッキング位置の特定は?!」

「『位置は……確認出来た、『アトラ・ハシースの箱舟』第4エリア中央部、多次元解釈エンジン管制室『ナラム・シンの玉座』!』」

 

お互いにけたたましいタイピング音を響かせながら、『ヴェリタス』の副部長にして地上班の主力、各務チヒロが答える。

「ってことは本丸か……」とリエは小さく呟きながら時計を見た。

7時半を過ぎようとしていた。

 

「『リエ、『本船』の状態は確認できますか?』」

「取り敢えず『箱舟』と強制接続して今は演算装置として乗っ取られかけてる!今リアルタイムで侵入経路とログ復元してるけど……あり得ない!アマチュアの私は愚か多分『全知(ヒマリ)』でも無理!こんなんオーパーツ並の演算能力持ちのAIかなんかじゃないと絶対不可能なやり方だって!」

「『……待って、マズい!自爆プログラムが打ち込まれてる!』」

 

地上から『アトラ・ハシース』と直接電子戦を繰り広げていたチヒロが思わず声を上げる。

書き込まれていた自爆シーケンス実行命令、タイムリミットは800秒。

それに加えて『本船』というもう一台の『量子コンピュータ』を手にした『アトラ・ハシースの箱舟』から再び『虚妄のサンクトゥム』にエネルギーが送られていて、このままだと想定していた『振り出しに戻る(最悪のシナリオ)』になりかねない。

ヒマリの通信越しに「自爆シーケンスを起動します」という無慈悲な機械音声が流れていた。

 

「『リエ!』」

「ああ分かってる!!何とかこっちで維持は全部やるから接続解除は任せた!」

「『始めますよ、チーちゃん!』」

 

モニターがさらに細かく分割される。

映し出される画面にセーフティなど何処にもない。

 

「……っ、脳味噌割れるんだけど……!」

 

『アトラ・ハシース』がリアルタイムでアルゴリズムを書き換えるのを妨害しながら、何とか残り僅かなリソースを演算能力に回し続ける。

そして『箱舟』の隙間を縫って、ヒマリとチヒロは叫んだ。

 

「「『接続、解除』!!」」

 

一瞬システムが止まった後に、リエのモニターの片隅に「連結解除要請拒否」という無慈悲な文字列が現れ、多次元解釈が加速する。

リエは柄にもなく舌打ちした。

 

「……物理的にはこっちが制圧してるはずなんだけど?!」

「『はい、ほぼ全ての演算装置は一度制圧しているはずです。……ですが、そこから私達をハッキング、その上で次元エンジンも多次元解釈も回復となると……』」

「『……『ナラム・シンの玉座』にはとんでもない管制システムがある……そう考えるしかないかな』」

 

ミレニアム最高たる『全知』、そしてそれに次ぐ天才ハッカー、トリニティに君臨する万能の『魔女狩り』……。

その全ての才能を持ってしても太刀打ちできない相手に、彼女達の指は止まった。

止まってしまった。

 

「……まだ、まだ何か……」

「『しかし、これ以上は私でも……』」

 

画面を片っ端から調べ上げる彼女を止めるかのように、ヒマリは弱々しい声で呟いた。

自爆シーケンスのカウントダウンは残り10秒を切っている。

 

「っ、何で……!!」

 

感情のままに叩きつけた腕が、執務室の分厚い机を叩き割る。

……その時だった。

 

「『諦めるにはまだ早いわ』」

 

昔、聞いたことのある声だった。

確か、初めてヒマリと会った時と同じ日。

そうだ、彼女は……。

 

「調月リオ……!」

「『何故あなたが……?!』」

「随分貴女らしくない弱音を吐くのね、ヒマリ」

 

彼女は調月リオ。

ミレニアムの生徒会『セミナー』の会長にして絶対的な独裁者『ビッグシスター』。

彼女もヒマリと形は違えど、ミレニアムの誇る天才の一人に違いなかった。

 

「『9秒後、自爆シーケンスを──9秒後、自爆シーケンスを──』」

「……止まった……」

「『多次元解釈』を利用して『ウトナピシュティムの本船』そのものを止めたわ。……けれど、これは足止めにしかならない』」

「『……いえ、十分です。ありがとうございます、リオ』」

「……私からもお礼を。……感謝する、『ビッグシスター』」

「『貴女は……そう、トリニティだったのね』」

 

手に付いたホコリを払い、リエは再びキーボードの上に指を踊らせる。

 

「『……所詮はプログラムであって、『魔術』なんてものじゃない。何処かに必ず穴はあるわ。……けれど、私一人では不可能。だから、貴女達の力を貸してもらえるかしら』」

「『……あなたらしくない台詞ですが……はい、ここはひとまず共同戦線ということで』」

「こうなったら私が意地でもリソースは稼ぐ。……そっちは任せた!」

 

接続解除の条件、それは『箱舟』と『本船』を中継する端末を物理的に破壊すること。

それを『多次元解釈』が有効な残り数分で達成しなければキヴォトスの敗北は確定。

位置情報の解析は現在エンジニア部とヴェリタスが総力を上げて挑んでいる。

そして、彼女も文字通りに死力を尽くした。

 

「譲……れる……か……!」

 

対『箱舟』の最終防衛ライン。

残り5%にも満たないリソースを譲るまいと『超古代兵器』相手に彼女は必死に食い下がる。

そして画面上のパラメータが『2』を示した時、画面上を一つのデータが通過した。

 

「……!」

 

ギリギリエンジニア部が間に合わせた『アトラ・ハシースの箱舟』の内部端末の位置情報。

リエは直感でそれを読み取った。

そして、今『本船』には彼女が理解していて、彼女を理解している一人の少女が乗り込んでいる。

時間はギリギリ。

やるしかない、とリエは力一杯に叫んだ。

 

「最下層ぶっ潰してハナコ!!!」




リエは幼馴染と会わなかった世界線ではミレニアムです
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