あと「あまねく奇跡の始発点」編完結です
D.U.郊外、シャーレへ向かう高速道路。
時刻は5時手前。
『アトラ・ハシースの箱舟』を脱出したハナコを迎えに行く途中、リエはサイドミラーに何かが煌めくのを見た。
「なんだろ」と少し気になって窓の外を見ると、そこにはゆっくりと落ちる一つの流れ星。
何度か流れ星というものを見たことはあったが、見たこともない程に強く、そして美しい虹色に彼女は「綺麗……」と呟いた。
日は、そろそろ昇りそうだ。
「……あれ?生きてる?」
朝日の昇る下、広い空き地で目を覚ました先生。
戸惑うようにパチパチと瞬きした後に、彼女は辺りを見回した。
空は朝焼け。
ああ、帰ってきたんだ。
彼女は元気よく飛び上がった。
「あっはは!やったやった!」
少し離れたところに落ちていたタブレットを拾い上げ、彼女は辺りを駆け回る。
そして少し走ったところで、向こうの方に幾つもの人の姿を見つけた。
見慣れた人影だ。
みんなだ。
「……あははっ!!」
先生は彼女達の方へ駆け出した。
いち早くそれに気がついたモモカが、パッと左手を掲げた。
ユウカも、ヒマリも、アヤネも、リンも、アユムも、モモカも、カヨコも、アコも、ハナコも、みんな無事だ。
「おーい!!」
目から込み上げるものを抑えて、彼女は走り出す。
そしてその勢いのまま、先生は思いっ切り彼女達の下へ飛び込んだ。
「ただいまっ!!みんな!!!」
その言葉と共に、彼女は真ん中にいたリンを強く、強く抱きしめる。
それを少し羨ましそうに見る生徒もいれば、それを微笑ましく眺める生徒もいる。
そしてリンは、少し照れ臭そうに言った。
「……風邪を引きますよ、先生」
彼女は、自らの白いロングコートを先生に捧げた。
勇者はひどく赤面した。
「……お疲れさま、ハナコ」
助手席で眠るハナコに持ってきていたブランケットを掛け、彼女は優しく言う。
開いた窓から吹き抜ける潮風が、ハンドルを握るリエの髪を揺らした。
「……本当に会えるの?」
トリニティ総合学園、本館を歩きながら彼女は首を傾げた。
その目には少し眩いような、でもやっぱり馴染みの薄暗さがあるような、少し不思議な感覚を覚えていた。
「どうだろうね。でもここまでは通してもらえたよ?」
「で、ですがやっぱり難しいんじゃ……でも、みんなはアリウスよりずっと楽しそうで……」
やっぱり駄目なんじゃないか、そう考えながらも、やはり心の何処かで期待してしてしまう。
そして目当ての部屋に辿り着いた彼女はフードを外し、その小さい手でコンコンとその扉を叩いた。
「どうぞ」
聞き覚えのある声が聞こえた。
「ほ、本当に良いんでしょうか……?」
「うん、入ろう」
彼女はゆっくりとその扉を開けた。
「ふふっ、そっちから来てくれるんだ」
クルッと椅子を回転させて、その目が彼女達を向く。
「今日は何で来たの?」、優しい声色で彼女は聞いた。
「今回のことで少し思ったんだ。「サッちゃんが帰れる場所が欲しい」って。「そこに行けば必ず会える」……そんな場所が」
ルビーとロードクロサイトが互いを見つめ合う。
「ふふっ」という柔らかな笑い声の後に、彼女は答えた。
「おかえり、『アリウス』」