ミカとナギサの幼馴染   作:あるふぁせんとーり

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まだハロウィンってことにしてください


幕間
閑話:ハッピーハロウィーン!!①


「ほらアオバもアキも!早く早く!!」

 

メイド服を着たオトカが、待ちきれないと言った様子で彼女達に振り返る。

貯めていたお小遣いで買った忍装束を身に纏ったシオンも「そうだそうだ」と目を輝かせて頷く。

 

「ちょ、ちょっと待って……」

「っていうかシオンもオトカもそんな焦らなくても……」

 

ようやく準備を終えて出てきた二人はお揃いのゴシックロリィタ。

ようやく揃ったと言わんばかりにオトカとシオンは彼女達の手を引いて、寮の部屋を飛び出した。

 

「しょうがないじゃん!」

「うん、だって今日は……」

 

吹き抜けになった階段をドタドタと音を上げながら急いで降りる彼女達。

目の前のお祭り騒ぎを前に、オトカとシオンは声を揃えた。

 

「「『ハロウィンパーティー』!!!」」

 


 

「三人共、準備できた?」

「まあ、その……少し恥ずかしいですが……」

「えー?この期に及んでまだ及び腰なのナギちゃん?どーんと胸張りなって!私もメイク頑張ってあげたんだしさ!」

「ああ、折角の機会だ。私も存分に楽しむとしよう」

 


 

今年のトリニティのハロウィンは一味違う。

何せティーパーティー主催に加え、シスターフッドも救護騎士団も正義実現委員会も全面協力。

今宵はトリニティ校内全てが無礼講。

誰もが仮装に身を包み、お菓子を用意して外へ繰り出すお祭り騒ぎ。

今日に限ってはちょっとしたいたずらなら正義実現委員会も見逃してくれるだろう。

 

そして今回の目玉は『スタンプラリー』。

『シスターフッド』、『救護騎士団』、『正義実現委員会』の三箇所、そして仮装して学園を回っているティーパーティー四人。

合わせて7つのスタンプを集めるとカフェテリアで限定スイーツのプレゼント。

限定スイーツ狙いの甘党も、思い出作りの青春も、トリニティのお偉方にちょっかいかけたいやんちゃっ子……。

時間は今日の24時いっぱい、ちょっとくらい夜更かししたって明日は特例でお休みだ。

それぞれがそれぞれの思惑を抱いたハロウィンが幕を開けた。

 


 

「……あ、もしかして……」

「ナギサ様じゃない?」

 

少し離れたところにいた少し血にまみれた白い制服の彼女を見つけた四人組。

近づいてみると、首元にティーパーティーのエンブレムを模したタトゥー。

「当日、ティーパーティー四人の身体の何処かにはタトゥーが入ってるから参考までに」、メールの内容とも一致してるし間違いない。

髪は首元がよく見えるようにロングのポニーテールで纏められ、胸元の弓矢のようなペンダントが揺れていた。

 

「ナギサ様、ハッピーハロウィーン!!」

「……あなた達は……元アリウスの方達ですね。ハッピーハロウィーンです」

 

四人に気がついたのか、おそらくカラーコンタクトであろう真っ赤な瞳が彼女達に向けられる。

口元から滴る血、僅かに見える鋭い犬歯……おそらくナギサのコスプレはドラキュラだった。

長袖やタイツを引き裂くように刻まれた極めてクオリティの高い傷メイクがティーパーティーの本気度を現している。

 

「「「「トリック・オア・トリート!!」」」」

「……では、こちらをお持ち下さい」

 

彼女達がナギサにお決まりの台詞を言うと、彼女は通学カバンから真っ赤な液体の入った試験管を取り出し、一人一人に手渡した。

 

「……血?」

「いえ、ラズベリージュースです。生搾りのものを取り寄せましたので、お早い内に」

 

キュポンとコルクの栓を外し、彼女達はぐいっと呷った。

「おいしい!」と四人が思わず口にすると、ナギサは満足気に微笑んだ。

 

「ありがとうございました、ナギサ様!」

「いえまだまだ始まったばかりですから。それでは皆様、良い一日を〜☆」

 

ドラキュラのスタンプを貰い、彼女達は次へ向かった。

 


 

「聖園……いえ、ミカ様、ですよね!ハッピーハロウィーン!」

 

肩に入ったティーパーティーのタトゥー、そしてクラウンブレイドに纏められた綺麗なピンクの髪を見て、四人は彼女の下へ駆け寄った。

手の甲、太もも、足首、鎖骨……あらゆる場所に施された縫い目、打ち込まれた杭、関節を止めているようにも見えるボルト。

剣のようなペンダントがキラキラと輝いている。

フランケンシュタインを装い、真っ赤な制服を纏ったミカは、少し驚いたような顔をした。

 

「あなた達は……アリウスの子、だよね?……そっか、元気そうで何よりだよ」

「あ、あの……私達、今幸せです」

 

彼女の目を見て、アオバは言った。

他の三人もうんうんと首を縦に振る。

また、ミカは少し驚いたような顔をして、その後スッキリしたように呟いた。

 

「……そっか、そうだよね。改めて、ハッピーハロウィーン!……それで、私に用事があるんでしょ?」

 

ミカが問いかけると、彼女達は「はい!」と元気よく言って声を揃えた。

 

「「「「トリック・オア・トリート!!」」」

「オッケー☆……じゃあ、これ!」

 

ミカはナットのようなものが入った4つの袋をポケットから取り出し、彼女達に手渡した。

 

「私からはリアル路線の『ナット型チョコ』!食べられるから安心してね!」

「はい!美味しいです!」

「わーお、もう食べちゃった?……まあ、美味しいなら何よりだよ!」

 

そう言いながら、ミカは四人分のスタンプを押す。

スタンプカードに新たにフランケンシュタインが増えた彼女達はミカにお礼を言って次のティーパーティーを探し始めた。

 


 

「……あ!あれ!」

「リエ先輩だ!」

 

ところどころ赤黒くも見えるような、黒い制服に身を包んだ彼女をアキが指差した。

首からは天秤を模したペンダント、頬にはティーパーティーのタトゥーが入っている。

彼女達は意気揚々と彼女に話しかけた。

 

「……お、ハッピーハロウィーン」

「はい!ハッピーハロウィーンです、リエ先輩!」

 

適度に包帯の巻かれた手を振って、その長い髪をウェーブ巻きにしたリエは笑った。

四肢、お腹、首元、顔の半分、翼……ところどころの隙間から白い肌を見せながらも、図抜けたスタイルを包帯が程よく覆っている彼女。

特に翼なんかは巻き加減が調節されていて、さながらもう一対の腕にも見えて意外と不気味。

そしてその上から入った切り傷や刺し傷、顔に奔ったヒビ割れ、制服にも付いた半液状の血なんかも妙にクオリティが高い。

間近で見ると、その出来の良さにかなり驚かされる。

 

「先輩、もしかしてミイラですか?」

「わー、すごっ!写真とっても良いですか先輩?!」

「そうそう、当たり。傷とかは特殊メイクでね」

 

彼女は笑いながら手をだらんと垂らしていい感じのポーズを決める。

そして顔だけは良いと評判のティーパーティーのシャッターチャンス、オトカだけではなく通りすがりの生徒達もリエの仮装にパシャパシャとスマートフォンのカメラを向ける。

 

「うわー……あんな着こなせんだ……」

「次はもうちょっとダイエットしようかな……」

「いやリエ様と同じレベルは無理でしょ……」

「……それで、四人とも何か言う事あるんじゃない?」

「……!そうでした……」

 

彼女の言葉に、本来の目的を思い出した四人組。

彼女達は声を揃えて言う。

 

「せーの……」

「「「「トリック・オア・トリート!!」」」」

「というわけで、これ持ってって」

 

そう言うと、リエは袋に包まれたリボンのようなものを取り出した。

 

「これ、もしかして……」

「ホワイトチョコ。割と力作だから、お腹空かせてから食べてね」

「……!ありがとうございます!」

 

それと同時に、彼女は手際よくポンポンとスタンプを押していく。

そしてミイラのスタンプを手にして進んでいく彼女達に「頑張ってね」とリエは手を振った。

 


 

「えっと、最後は……セイア様!」

「えっと……目撃情報は……あ、あれじゃない?」

 

お腹にティーパーティーのタトゥーが入ったセイアを見つけ、シオンが声を出した。

髪も耳もガッツリ染めていて、かなり白に近い灰色。

小さな手に不釣り合いな鉤爪がハロウィンらしさを象徴する。

 

「セイア様、ハッピーハロウィーン!」

「ああ、ハッピーハロウィーン。オオカミ少女……いや、それだと意味が……いや、いい。オオカミ少女の百合園セイアだとも」

 

青白い制服に、鎌みたいな形のペンダント。

獣の爪痕のような傷メイクは相変わらずのハイクオリティ。

そしてセイアは手際よくお菓子を取り出した。

 

「これが目当てなんじゃないのかい?」

「そうです!」

「なら、言うことがあるだろう?」

 

「もちろん」と彼女達は頷き、また声を合わせた。

 

「「「「トリック・オア・トリート!!」」」」

「もちろん、トリートだとも」

 

セイアは小分けの袋を一人一人に差し出した。

獣の爪を模した琥珀糖。

それを渡すとともに、セイアはスタンプも一緒に押していく。

 

「あと3つ……かなりいいペースだ。この先も頑張ると良い」

「はい、それでは失礼します。……あ、美味しい……」

 

狼男も仲間入りし、半分以上が埋まった彼女達。

ハロウィンは、まだまだ続く。




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