ミカとナギサの幼馴染   作:あるふぁせんとーり

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恥ずかしながら帰ってまいりました


閑話:トリニティにて①

「……朝、か」

 

 目を覚ますと、見知らぬ天井だった。いや、昨日一度見たものではあるが、それでも長らく荒んだ景色を映すばかりだったその瞳にとって、それは俄に慣れないものである。壁に掛かった時計を見て、七時を回ったことに気がつく。ベッドに入ったのが二十二時過ぎだったはずだったから、実に九時間睡眠になる。何年ぶり、いや人生で初めてかもしれない。まだ二人がすやすやと寝息を立てている中で戒野ミサキはベッドから上体を起こすと、ググッと背を伸ばした。

 


 

「……あの女……」

 

 僅かにまだ寝ぼけた頭を押さえながら、ミサキはフラフラと洗面所に向かう。そんな思考はお見通しだと言わんばかりに並べられた何巻きかの包帯。「何処で聞いたのさ……」なんて愚痴をこぼしながら手首の傷を隠すようにくるくるとそれを巻き付けていく。アリウスで配給されていた粗悪品とは全く比にならない肌触りにミサキは僅かに目を見張る。いや、肌触りの良さに目を見張ったのではない。そんなことを気にする余裕ができた自分に目を見張ったのだ。

 手首に、そして首に包帯を巻き終え、改めて顔を上げる。少し薄れた目元の隈に彼女はまたため息を吐いた。それと同時に寝室の方から聞こえる二人の起きる音。ミサキはピアスを付け直し、寝室へ戻った。

 


 

「おはようございます、ミサキさん」

「早起きだね、ミサキ」

「……寝られなかっただけ」

「ふふっ、嘘つき。こんなにぐっすり寝れたの、久しぶりだもんね?」

 

 そう言ってアツコが問いかけると、ミサキは否定するでもなく顔を反らす。それを見て、彼女は微笑ましそうに笑った。そして「これから毎日こんなところで寝れるんですねぇ……!」といつものような卑屈っぽさの薄れた、年相応の喜びをヒヨリが見せていると、ぐうっと彼女のお腹の虫が特大で鳴り響く。

 

「……朝ごはん行こっか」

「……そうだね」

 


 

「うわあ……!これ全部食べ放題なんですか……!」

「みたいだね、ビュッフェって書いてあるよ。すごいね」

「……はあ。どんだけ金かけてるのさ……」

 

 メニュー表を見て、ヒヨリはわあっと口を開けた。その横で二人は目を見開く。八時半手前のカフェテリアはそれなりに賑わっていたが、それらを難なく捌く余りに広大な店内。キョロキョロと辺りを見回しながらも、好奇心旺盛なヒヨリが先陣を切る。その後を追って、二人も店内に足を踏み入れた。

 

「……いや、随分取ったね、ヒヨリ」

「そ、そうでしょうか……?」

「良いんじゃない?こんな豪華なご飯、久々だもんね」

 

 テーブルに着いた三人が取ってきた料理を並べる。腹に溜まりそうもない果物ばっかりのミサキに、ベーコンやらハムやらハッシュドポテトやらのお腹に溜まるものばっかを取りまくっていたヒヨリ、バランスが良いと思いきや意外と甘いものに偏っているアツコ。

 三人が手を合わせ、「いただきます」を言おうとした直前でミサキが口を開いた。

 

「……そういえば、今何してるのかな、リーダー」

「き、きっと一人ぼっち、ですよねぇ……」

「だから、私達はここでサッちゃんが帰ってくるのを待つんだよ」

 

 僅かに神妙な空気の流れたテーブルだったが、アツコの言葉に二人は頷き、そして三人は手を合わせた。

 

「「「いただきます」」」

 


 

「ごちそうさまでした」

 

 一時間、いや、もう少し短かい食事を終え、彼女等は手を合わせた。九時十五分ほどの店内は、休日故に二度目と洒落込んだのか、少し遅い朝食を食べに来た生徒達で僅かに混み合っている。

 

「えへへ……やっぱりトリニティのご飯は美味しいです……」

「うん。私もついつい食べ過ぎちゃった」

「姫ので食べ過ぎならヒヨリとかどうなるのさ」

 

 食べ終わって空になった皿を乗せたトレーを返却口まで運ぶ三人。そして少し寄り道して帰り際に持って帰ってもOKな紅茶をカップに入れるアツコと、トイレを済ませたミサキ。そしてこれまたお持ち帰りが許されているドーナツを回収してきたヒヨリ。それぞれの用を済ませ、カフェテリアの入口でミサキは時計を見た。

 

「そろそろバス出るよ」

「もうそんな時間?」

「うん。といっても後15分くらいだけど」

「ええっと、何番のバス停でしたっけ……?」

「自然公園行きは……12番かな」

「分かった。じゃあ行こっか」

 

 意気揚々と歩き出したアツコに二人は頷き、その後を追って歩き出した。仮面も相まって、アリウスでは中々見ることのなかった姫の笑顔。先生がベアトリーチェを打ち倒し、ティーパーティーがアリウスを解放したあの日からは、幼い頃と同じようによく笑うようになった。決して口には出さないものの、ミサキはそれが嬉しかった。それと同時に、「リーダーが見たらどんな顔するんだろ」とも思った。

 そんなことを考えながらも、彼女は珍しく嫌悪感を覚えない日の下へと歩いていった




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