誰が為に私は魔女になる   作:オオル

1 / 17
はじめまして。タグで察してくださると思いますがアリスクの話です。


アリウス自治区編
この世界を知っていますか?


 生まれた時から私達は不幸だった。

 

 物心が着いた頃から私達は明日を迎えるために必死だった。自分達で食料を調達しなければ生きていけない、そんな世界に私は生まれ落ちたのだから。

 

「……お腹空いたなぁ」

 

 ここ最近まともな食事ができていない。

 私が生まれ落ちたこの世界はまさに弱肉強食な世界だ。弱いものは強いものに全てを奪われる…食料だって、住処だって、全部奪われる。

 

「でも姉さんさえいれば、家族さえいれば私は頑張れる」

 

 私の姉さんはこの世界で強者だった。

 最近は無理しすぎて寝込んでて会話ができない。だけど昔は私のためにこの世界に住む人達と戦って守ってくれた。食料だって恵んでくれた。

 

「姉さんの体調が回復するまで私が食料を調達しないと…少しでも多く残すためにも我慢しなくちゃ」

 

 姉さんが目を覚ました時に大量の食料を渡すんだ。そして、私はもう守られる存在じゃないと、私も姉さんと一緒に世界に抗ってみせると言うんだ。

 

 そう思うと不思議とやる気が溢れる。

 自分で言うのもあれだが私は自分のためではなく誰かのために何かをしようと思うと士気が尋常じゃないほど上がる気がする。

 

「見えた。スクラップの山」

 

 この世界にあるスクラップの山には食料が埋もれていることがある。こんなところから入手できる食料なんて缶詰めしかない。そもそもこの世界では川で釣れる魚以外でまともな食料は缶詰め、もしくは辺りを徘徊している武装集団から奪い取ったレーションぐらいだ。

 

 今では自分で倒して食料をかっさらってるけどさ。武装集団に関しては姉さんが元気な頃よく襲撃しては食料を強奪して私に与えてくれてたっけ。

 

「食料、食料〜」

 

 近くに転がっていた木の棒を拾い上げ、振り回しながら私はスクラップの山へと登り食料を探す。

 

「!」

 

 スクラップの山の中であるものを見つけた。

 それは冷蔵庫だ。うちにはそんなに大それたものはない。いやあったところで通電してないから使えないんだけど…食料を保存するために用いる家具だと姉さんから聞いている。見た目も白い箱みたいだと聞いていたから間違いないだろう。

 

 冷蔵庫の元へと向かう。

 きっと沢山の食料が入ってるんだろう。もしかすると缶詰めよりも美味しいものが…期待に胸を膨らませていた。そう、奴が現れるまで。

 

『!?』

 

 向こうのスクラップの梺から上がってきた人だろうか?私が先に目をつけていた冷蔵庫に手を置いていた。

 

「おい!それは私が先に目をつけていた冷蔵庫だぞ!」

「……?レイゾウコ?」

 

 私は先程拾った木の棒で少女を指す。

 少女の容姿は黒い長髪にインナーカラーが藍色という私と色の配色が真逆の頭髪をしていた。それと私の言葉に対してカタコト雰囲気で聞き返したからに察するにこの子は冷蔵庫の存在を知らないようだ。

 

「お前が何を言ってるのかわからないが…この白い箱がお目当てなのか?」

「そうだ。その…!おっと」

 

 食料が入ってるはずなんだと言いかけたところで口を抑える。こんな世界で食料がその場にあるかもしれないと知られたのなら奪い合いが始まる。

 

「この中になにかあるのか?」

「いや?特に何もないと思うよ。だけど私はその箱に用があるんだ。その箱は改造すれば川の水を貯めるのに最適な箱のような気がしてならないんだ」

 

 決まった。食料が入っている可能性がないことをやんわりと伝えあくまでその冷蔵庫に用があることをアピールできた。

 冷蔵庫の存在をも知らないのであればこの中に食料が入っているなんて思いもしないだろう。

 

「まあいい。確認した方が早いな」

「ッ!待てっ!」

 

 冷蔵庫の取っ手に手をかけ長髪の少女は冷蔵庫を開ける。

 

「!缶詰めが1つ?でも食料に変わりは無い、これで今日のノルマは…「はぁぁぁぁああ!!」ちっ!」

 

 私はスクラップの山頂にいる長髪の少女を目掛けて駆け上がる。こうなったら仕方がない、武力を行使して奪い取るしかない。

 

「これでもくらいな!」

 

 手に持っていた木の棒を長髪の少女の顔へと投げる。が、少女はいとも簡単にその木の棒を既に手に取っていたハンドガンのバレルを用いて弾き飛ばす。

 

「悪いがお前にはここで伸びててもらおうか!」

 

 すぐさま銃口をこちらへと向け少女は引き金を引く。この距離であれば外すことなく私の額へと着弾できると思ったんだろう。

 

「ッ!?弾丸を避けただと!?」

 

 女が躊躇せず引き金を引く輩で助かったよ。銃口がこちらを向いているのであれば急所を狙うのは必然。中でも無防備な頭が視界に入れば否が応でも狙うだろう。

 頭を狙っているとなれば首を傾げる程度で弾丸など簡単に躱せれる。

 

「(まあ避けれたのは奇跡なんですけどね!)」

 

「こいつ!」

 

 長髪の少女がまたも私に銃口を向ける。今度は額ではなく足を狙っている。どうやら足を潰すことにしたようだ。

 

「させるかぁ!」

 

 少女が発砲する前に山頂へ着いた私は少女へ抱きつき、腰に手を回し一緒に梺まで転がり落ちて行く。

 

『ッ!』

 

 梺に着いたところで私はハンドガンを握っていない左手を踏みつけ、懐に隠していたナイフを長髪の少女の首元へ立てる。それと同時に少女は先程のハンドガンの銃口を私の額へと押し当てる。

 両者共にお互いの生殺与奪の権利を持ち合わせたこの状況、片方が手を下ろすだけで、片方が引き金を引くだけで勝負が決まる。

 

「知ってる?近接戦闘なら拳銃よりもナイフが有利なんだぜ」

「それは構えてない時の話だ。今の私はお前の額に銃口を指している。引き金を引くだけならこちらの方に分がある」

「……じゃあ試すかぁ!」

「やってみろよクソガキがぁ!」

 

 お互いのボルテージ高まったところで目の前の少女を殺せと脳へ腕を動かすよう指示を出した…が、その指示はとある鳴き声でかき消された。

 

「にゃーん」

『???』

 

 スクラップの山頂付近で聞こえた猫の鳴き声は私達の鼓膜を揺らした。お互い武器は構えたまま猫へと視線を向ける。

 

「にゃん、にゃんにゃーん」

 

 猫は何度か鳴いた後、周囲に転がっていた何かを口にくわえた。

 

「あれは缶詰め!はっ!」

 

 拘束していた少女の左手を確認するも缶詰めが握られていない。であれば今猫が咥えている缶詰めこそがあの冷蔵庫の中に入っていた品物…。

 

「にゃーん」

「あっ!おい逃げんな!」

「……油断したな」

「はっ!」

 

 食料が猫に奪われたことで動揺していた私は無意識で拘束していた少女の左腕へと込めていた力を緩めていたようだ。

 それを見逃さなかった少女は近くに転がる石を拾って私の頭へと叩きつけた。

 

「て、てめぇ…!」

「油断したお前が悪い。なに、殺しはしない。ただ着いてこなければな」

 

 痛みがある箇所に手を当てると血が付着していた。あの近距離で容赦なく石をぶち当てるなんて…いや、これは油断した私が悪い。

 

「待ってろ野良猫、その食料は私のものだ!」

 

 少女は猫を追うために再びスクラップの山を登る。訂正させてもらうがお前の食料ではない、私の食料だ。お前になんて渡すわけないだろうが。

 

 この世界で生きるためには先程少女が使用していた銃火器が必需品となる。だけど私はそんな物を持ち合わせていない。弱者は銃火器すら手にすることができないほどこの世界は腐っているからだ。今まで先程使用したナイフ1本で生き延びたは私を誰か褒めて欲しいものだ。

 

「行かせねえっての!」

 

 スクラップに転がる鉄製のゴミを山頂へ向かう少女の後頭部目掛けて投擲した。

 

「あ痛っ!って!うわっ!」

 

 私が投げたゴミは狙い通り少女の後頭部へと直撃した。そして痛みからか動きが一瞬膠着したところで少女の足元に散らばるスクラップが崩れ始めスクラップと少女は私がいる梺まで雪崩落ちた。

 

「おっさきー♪」

 

 スクラップの山に埋もれる少女を尻目に私は猫を追うために行動へと移した。

 

「この!待て!」

 

 長髪の少女は自信に覆い被さる数多のスクラップをかき分けて立ち上がろうとする。そこへ私は追い打ちをかけるように山頂から幾つもスクラップを蹴り落として立ち上がることを阻止する。

 

「くっ!この卑怯者が!」

「はぁ!?何言うか!お互い様だろうが!お前だって不意打ちで私の頭に石ころぶち当てただろうが!」

「油断していたお前が悪いと言ったよな!?」

「じゃあこれも油断したお前が悪いな!てかお前さっき私にクソガキとか言ってくれたな!私から言わせてもらえばこんなこと言うあんたの方がクソガキだな!」

「なっ!」

「じゃあなクソガキ!二度と私の前に現れるな!」

 

 私は捨て台詞を述べて真逆の梺へと下る。

 梺に到着したところで辺りを確認すると遠くに先程の猫らしき生物が見えた。

 

「見つけた!待ちやがれクソ猫!!!」

「にゃ!?」

 

 私の声が聞こえた猫はその場で飛び跳ね一目散に逃げ始めた。誰が逃がすものか、貴重な食料を必ず奪い返してみせる。

 

「にゃ!にゃ!」

 

 猫は器用に缶詰めを咥えたまま私から逃げる。

 辺りにゴミが散らばっている。且つ道など舗装されてないものだから走りにくい。だが猫にとってはそんなこと関係がないようだ。華麗にゴミの瓦礫を足場にしながらまるで兎のように飛び跳ねながら逃走を続ける。

 

 だけれど所詮は猫。人様に楯突いて簡単に逃げれると思うなよ。

 

「さあ、追い詰めたぞクソ猫!さっさと諦めてその缶詰めを渡しな!」

 

 猫に対して大人気ないと思うかもしれない。でもこの世界で生きていくには食料が必要なんだよ。猫にでも強気で当たらなければ明日の保証はないんだ。

 

「にゃ!」

「ッ!はっ!?」

 

 猫は人が通れそうにない穴を見つけその場へと飛び込んだ。すぐさま穴に手を伸ばして捕まえようとするも私の手は空を切った。

 穴の向こう側を除くと光が通っている。恐らくこの瓦礫の山の向こう側へと繋がってるんだろう。ならばこの山を登れば…。

 

「肩借りるぞ」

「!?」

 

 登ることを決意したところで背後から声が聞こえたと思えば左肩に誰かが足を乗せていた。

 

「踏み台として丁度いい高さだった。それじゃあ先に行く」

 

 先程までスクラップの瓦礫の山に埋もれていた長髪の少女が追い付いてたようだ。

 

「……この野郎…!」

 

 甘かった。スクラップの山に埋もれている時点でナイフを喉にでもぶっ刺して行動不能にしておくべきだったか。

 

「あの食料は私の物だ。お前には渡さない」

「違うね!あれは私の食料だ!いや…姉さんにあげる食料なんだよ!」

「?……姉さん?」

 

 猫を追いかけながら私達はお互いが猫の咥える食料が自分達のものだと主張した。

 その際に私が発言した姉さんというセリフが長髪の少女は気になったようだ。

 

「それはお前の家族か?」

「?そうだよ、姉さんなんだから家族だろうが!変なこと聞くんだなお前」

「そうか、お前には家族がいるんだな…なら私と同じだ」

「?お前にも私のように姉妹がいるのか?」

 

 これは驚いた。この世界で私達以外に姉妹がいるなんて。この辺りにいる輩に私達のような血の繋がった姉妹はいなかったはずだ。

 

「妹が3人な。その妹達のためにも食料を調達しないといけないんだ。……妹達にはあまり負担をかけたくないんだ」

「ッ!」

 

 こいつ…考え方が姉さんに似ている。

 

「(いや、まさか私に同情を求めた罠か?)」

 

 今の私は長髪の少女の背中を追うように猫を追っている。

 そんな少女の背中姿が実の姉とかなり酷使していた。嘘ではないと思う。クソ、同情はしたくないがお互い家族のために必死に生きてるってことはわかった。

 

「だからって食料を渡すわけにはいかない!私だって姉さんの役に立てるって証明するためにも食料を確保しなければならないんだ!」

 

 少女の背中へとナイフを突き立てながら突進する。もう容赦なんてしない。こいつに家族がいようが知ったことでは無い、ここで始末しなければずっとしつこく邪魔をするに違いない。

 

「ッ!止まれ!」

「!?」

 

 先程までとは違った鋭い声音で止まれと少女は発した。私はその言葉に従うようにその場で止まってしまった。

 

「あれを見ろ」

「?あれ?……あっ!」

 

 先程まで追いかけていた猫が眼に映る。しかし映るのは先程の猫だけではない。その猫の子供だろうか?子猫が猫の帰りを出迎え、猫は器用に歯と爪を使って缶詰めをこじ開け、子猫達に食べさせていた。

 

「どうやらあいつも家族のために必死だったようだな」

「……そう、みたいだな」

 

 子猫達が美味しそうに缶詰めの魚を食べている様子を眺める野良猫は…いや母猫の表情はまさに自分の姉さんと同じような幸せそうな顔をしていた。

 

「!しゃぁー!!」

 

 母猫は私達に気付いたのか先程までとは違って威嚇するかのように鳴き始めた。

 

「……ここは引くぞ」

「?おい、まだ全部食べきってないだろ!ここで奪えば!」

「家族のためにあれほど頑張ったあいつから食料を奪おうとは思わん。ほら行くぞ」

「ちょい!引っ張んなっての!服が伸びるだろうが!」

 

 少女は私のヨレヨレの服の襟を掴みその場から立ち去る。せっかくの食料が…。

 

「お前には姉さんがいると言ったな。歳は近いのか?」

「!な、なんだよ急に…」

「別にいいだろ、同じ家族がいる同士なんだ。積もる話も少しはあるだろ?」

「……………………………………………………」

「……姉さんの役に立てると証明する。と言ってたな?あれはどういう意味だ?」

「そんなセリフを覚えていたのかよ…」

 

 長髪の少女を殺すつもりだったから吐いたセリフだというのに…変なことが起きたものだから殺し損ねた上に意味を問われるとはな。

 まあこいつにも家族がいるみたいだし答えてやっても別にいいか。

 

「姉さんとは1歳差だよ。姉さんは私のためにこの世界で生き抜くために頑張ってくれたんだ」

 

 1人で2人分の食料を調達していた。

 辺りを徘徊する武装集団とは1人で戦い、怪我を負っても平気な顔をしながら私に優しく接してくれた。

 思えばあれはただの痩せ我慢だったのかもしれない。妹の私を心配させない為に無理をしていたに過ぎないんだ。

 

「……姉さんは私のために無茶しちゃって今は寝たきりなんだ。だから私は姉さんが回復できるように食料を集めなくちゃならない。そして目を覚ました時に言うんだ。私は守られるだけじゃない、姉さんと一緒に戦えるんだって」

「目を覚ました時に?お前の姉さんはどれぐらい意思がないんだ?」

「……半年ぐらい?」

「!」

 

 半年も意思がないと聞いた時、長髪の少女は大きく反応した。何かおかしな発言でもしただろうか。

 

「お前、それって…」

「?なんだよ、体調崩せば半年ぐらい寝込むだろ?この世界には薬なんてないんだよ、治るまで寝込むのは当たり前じゃないか」

「いや、それはそうなんだが…」

「じゃあ次はお前な」

「?」

「私は姉さんの話をしたんだ。次はお前の妹について話せよな」

「あ、ああ、そうだな」

 

 なんだ?先程からこいつの様子が少しおかしいぞ。なんだかオドオドしいというか、なんと言うか。

 

「私の妹達についてか…なあ、お前の姉さんとお前は血が繋がった家族なのか?」

「ああ、血の繋がった実の姉だけど?」

「……私達は違うんだ。血が繋がってない」

「はぁ?血が繋がってないのに家族なのか?それって家族って言えるの?」

「言えるさ。血は繋がってなくとも家族は家族、元来家族というのは他人と他人が結ばれてできるものだろ?それにそこに愛があれば他人であろうと家族になれる」

 

 他人同士が結ばれて家族になる。それはわかる。だけど…こんな敵だらけの世界で他人と手を組む、ましては家族と呼べれる関係にまでなれるとはとてもじゃないが想像できない。

 それに愛だなんて…姉さんもよく私のことを愛してるって言ってくれてたっけ。

 

「お前ってさ…お人好しだな」

「……そうか?」

「ああ、だって血が繋がってない家族のためにあんなに必死になるなんて…それにあの時すぐに引き金を引かなかっただろ?」

 

 あの時というのはこの子が私の額にハンドガンの銃口を突きつけた時の話だ。

 私がナイフを自身の喉元に立てていたのなら自分の命欲しさにすぐに引き金を引いていたはずだ。

 

「それを言うならお前もだろ。お前だってその気になれば私の喉元にナイフを刺せたはずだ」

「私がお人好し?何言ってんだ最後私はお前を殺そうとしたんだぞ?」

「だったら尚更お人好しだ。私が止まれと発した時なんで指示に従った?殺す気があるならそのまま止まらずに私の背中を刺せば良かったものを」

「……さあ、なんでだろうね」

 

 姉さんの背中姿に似ていたなんて言えたもんじゃない。それに同じ家族を持つもの同士だ。同情していたとも恥ずかしくて言えないな。

 

「あーもう!なんか調子狂うな…てかお前も私を殺そうと思えば殺せたじゃないか」

 

 例えば私に一撃を与えたあの時だ。

 あの時拾った石で頭蓋骨が割れるまで叩きつければよかったのに…。それと私の肩を踏み台にした時とか、それこそ私は油断していたのだから頭を狙って射撃すればよかったものを。

 

「はは、そうだな…それはお前の言う通り私がお人好しだからなのかもな」

「なんだそれ、さっき否定してたじゃんか」

「私は否定してない。答える前にお前の話を持ち出しただけだ」

「言われてみればそうかも?」

 

 思えば否定も肯定もしてなかったな。

 こればっかりは私の勘違いだ。彼女は悪くない。

 

「私達は同じ世界で苦しむもの同士、殺しあっても意味がないと思った。だから殺しはしないが痛みつけてる程度で許そうと思っただけだ」

 

 殺しあっても意味がない?ったくこいつはどこまでお人好しなんだか…こんな世界で生きていく上で敵しかいないのに、その敵にすら同じ世界で苦しむもの同士として情けをかけるなんて…。

 

「お前って本当に超が幾つもつくほどのお人好しだな。この世界に姉さん以外で優しい人がいるとは思ってなかった」

 

 と思ったが。

 

「いや?お前さ、私に対してクソガキとか言ってたよな?あれはなんだ?」

「あ、あれはその、なんだ?気が昂って言ったというか…それにお前がクソガキだってことに変わりはないだろ?」

「は?……ははっ!何となくわかった。お前って元はお人好しなんかじゃない。大方家族ができたから今の性格になったってところか?」

「……否定はしない」

「そこは肯定しなよ」

 

 どうやらこいつは私に似ているようだ。

 私は姉さんのためなら、ううん家族のためならどんなことだってできる気がする。きっとこいつも家族のために身を捨ててでも守るためにどんな事でもするようなやつだ。

 

「ところでお前名前は?お互い家族構成まで語った仲なんだから名前ぐらい聞いてもいいだろ?」

「いいだろう。私の名は錠前(じょうまえ)サオリだ。お前は?」

「私は紅耶(あかや)クシナだ。よろしくな、サオリ」

「……クシナ、一応聞くが歳は?」

「8歳だけど?」

「……そうか。ちなみに私は9歳だ。つまりお前の姉さんと同い歳ってわけだ」

「え、えー歳上なの?サオリ、さん?」

「別に接し方なんて強制するつもりは無い。でも、そうか…お前の姉と同い歳ならば是非、お前の姉と仲良くしたいな…」

「!そうだな!姉さんと同い歳なら色々と気が合うかも……あ、でも今寝たきりだからな」

 

 サオリのようにお人好しなやつなら姉さんを紹介してもいいだろう。だけど姉さんは今体調を崩して寝たきりだからな…紹介しようにもできない。

 

「よければお前の住処に私を連れて行ってくれないか。こう見えて妹達が体調を崩した時は看病してたんだ。姉の様子を見れば私から少しは助言ができるかもしれない」

「……サオリー!お前ってやつは本当に良い奴だな!」

 

 って待て。こいつ本当にお人好し過ぎないか?もしかして何か罠に嵌めようとしてる…?

 考えすぎか…。いや、少しは疑っておこう、いつでも殺れるように準備はしておこう。

 

 サオリは嬉しそうに喜ぶクシナを見つめながらあることを考えていた。

 

「(半年も寝たきりとクシナは言っていたな…私の見立てが正しければ…既に、もう…)」

 

「私の住処はここからそう遠くないよ。今からでも行くか?」

「ああ、是非とも」

 

 こうして私はサオリを自分の住処へと招くこととなった。

 でも…この時、私は忘れていた。この世界で生きることの難しさ、そして救いなんて何も無い腐りきった世界で生きているということを。




大分原作を改変しております。苦手な方はブラウザバックを推奨します。アリウス自治区編はなるはやで終わらせたい。そして早くエデン条約編の話が書きたいと思うオオルなのでした!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。