誰が為に私は魔女になる   作:オオル

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どうも!初手安定の謝罪になります。ミサキ視点は次回に回します。それと今回はちょっと残酷な描写が多いです。まあアリウス自治区で生きている以上、戦闘となれば壮絶ですからね…。

今回は現スクワッドのオリキャラが登場します!

新たに評価してくださったアービリーさん!ありがとうございます!

それではどうぞ!

※急いで執筆したので誤字脱字はご了承ください


多勢に無勢という言葉を知っていますか?

「それで?チーム(ワン)の副隊長、お前は私に不満があるのか?」

「アルファ様!めめめめ、滅相もございません…!あ、あれはいっときの感情での誤りと言いますか、その…!」

 

 これはアリウス生がクシナとミサキに襲撃を行う数時間前の出来事だ。

 

 場所はアリウス分校本部、アリウス最強部隊と評されるアリウススクワッドに与えられた部隊室。

 アルファに副隊長と呼ばれた生徒はその場に両膝を着き、頭を垂れながら言い訳の言葉を並べていた。

 

「誘拐任務の時、発した言葉は心の底から思っての発言ではない。と言うのか?」

 

 誘拐任務、とはアリウスの生徒会長が降した任務ではない。アルファがチームIに対して個人的に指示を出した任務だ。

 その任務の最中、アルファの目の前で土下座をしているチームIの副隊長がアルファに対して不満を口にしており、現在その件についてアルファが言及している。

 

「アルファちゃーん、そんなに眉間に皺を寄せて部下を睨んでたらお顔に皺ができちゃうよ〜」

 

 椅子に座り、足を組みながら副隊長を見下ろすアルファに対して、後ろから抱きつき声をかけた生徒が一人。

 

「……ベータ、くっ付くな。鬱陶しいぞ」

「えー、可愛い可愛いアルファちゃんの肌に触れたくて抱きついただけなのにな〜」

 

 声からしてご機嫌な様子だとわかるが表情が一切読み取れない。何故ならベータと呼ばれた彼女はガスマスクを装着しているため表情が見れないのだ。

 

「なんだ嫉妬か?……あーそうだったそうだった。お前の顔は人には見せれないほど不細工だったもんなぁ」

 

 アルファは不気味な笑みを浮かべながら挑発するようにベータへ言葉を送った。

 

「もーう酷いなアルファちゃーん。……ちょっと可愛いからって調子に乗んないでよね。いつかその顔面を弾痕だらけの不細工な顔に整えてあげるから覚悟しててね♪」

「寝言は寝て言え三下が。私に勝ってるのは無駄に生きただけの年数だけだろうが」

「なんだってー?」

「あわわわ!」

 

 その場で膝を着く副隊長が今にも取っ組み合いを行おうとしているアルファとベータに恐れ、口を押えて震えているだけだった。

 

「ねえ2人とも、読書に集中できないから喧嘩するなら訓練場でしてくれないか?」

『はぁ〜?』

 

 部隊室のソファーに座り読書をしていた女子生徒が胸倉を掴み合うアルファとベータへ要は喧嘩は他所でやれと発言した。

 

「あっ!ガンマちゃんも一緒に殺りたいの?いいねいいね!目障りなアルファちゃんを一緒にぶち殺しちゃおうよ♪」

「ベータ、僕はあなた達の喧嘩に混ざりたいと一言も言ってないんだが」

「でもーガンマちゃんも少なからずアルファちゃんに恨み辛みの一つや二つあるでしょ?」

「アルファが暴君なのは首席になった時から変わらないだろ。いちいちアルファの発言に腹を立ててたらスクワッドでは生きていけないよ」

「なにそれー。あーあ、興が冷めちゃった。訓練場にいる可愛い後輩ちゃん達に慰めてもらおーっと」

 

 アルファの胸倉から手を離したベータはそう発言後、スクワッドの部隊室から退室した。

 

「止めんなよガンマ、目障りな不細工を排除できる絶好の機会だったのに」

「うちは少数精鋭だからね。スクワッドの戦力を削りたくなかったんだよ。まあアルファがいればどの部隊にも負けることはないと思うけど」

「高等部首席の俺と、中等部首席のお前が入れば負けるはずないっての」

「それは僕の実力を認めた上での発言?それとも中等部首席だから優秀だろうって思っての発言?」

「無論、前者に決まってんだろ」

 

 高等部一年生でありながら高等部首席へと上り詰めたアルファ、その次席のベータ。そして中等部首席のガンマ。以上3名がアリウス最強と評される特殊部隊、アリウススクワッドのメンバーだ。

 先程までの会話からして仲は宜しくないが、部隊としてトップまで上り詰めた以上、他の部隊より優れた連携が取れることはトップであることが裏付ける。

 

「!はは、そうか」

 

 アルファの返答に満足したのかガンマは微笑み先程まで読んでいた本へと再び視線を戻すのであった。

 

「さーてと、お前への処罰がまだだったな。どうだ?入れ替えの決闘をやるか?」

「ひっ!」

 

 入れ替えの決闘、それはアリウス最強と評される部隊に贈呈される『スクワッド』の称号を掛けた決闘だ。

 部隊の順列が切り替わる決闘の為、入れ替わりの決闘といつしかアリウス生の中で統一された呼称となった。

 

 力あるものが権力を持ち、チカラあるものが優遇される。アリウスの生徒会長がそんな制度を設けたことで、生徒達は任務を通し、自分達の戦闘力を高めるために日々奮闘する…。

 そういった1つの大きな目標を設けることで軍事力を底上げする…。それが汚い大人が仕組んだ『スクワッド』の称号を持つものに対して優遇する制度。

 

「あ、アルファ様!ど、どうか慈悲を!今後、アルファ様を侮辱するような発言は一切致しません!ですので、どうか慈悲を…挽回の余地を…!」

 

 入れ替えの決闘では自身の今後の行方を左右する決闘となるため、とても甘い戦いではない。死者が出ることはないが体に支障をきたす大怪我を追うものも近年現れ、好き好んで決闘を行う部隊は減っていた。

 

 だがアルファは違った。自身の力を見せびらかすよう格下の部隊に決闘を行うよう吹っかけ、部隊を鎮圧し、周りの生徒へ戒めのように見せびらかす…。

 

「…………………………………………………………」

「(返事がない。お、終わった…!)」

 

 アルファが決闘好きの戦闘狂であることを熟知している副隊長は決闘をせざるを得ないと腹を括った。

 

「良かろう。では代わりにお前達チームIに再度、指示する」

「……へ?あっ!は、はい!喜んで!」

 

 まさかの返答に副隊長は一瞬戸惑うもすぐさま喜んでと返事をした。

 

「こいつを見つけ出して連れて来い」

 

 アルファはコルクボードに飾ってあったクシナの写真を手に取り副隊長へと渡す。

 

「エリアDに居ないとしたら住居を何処かへ移したに違いない。アリウス自治区、全エリアを組まなく調べこいつを俺の元へ連れて来い」

「……つ、つかぬ事を伺いますが、何故このような女子を…?」

「お前は知らなくていい。万が一拉致することが困難な場合はお前達の生死は問わない。が、必ず今の容姿を写真に収めろ。なに、カメラは他の部隊に回収させるから心配するな」

 

 渡した写真に移る姿はターゲットがまだ幼い頃の容姿であるため、アルファは今の容姿を確認するためにも写真を撮れと追加の命令を降す。

 

「分かったら早く失せろ、俺は今あの不細工(ベータ)のせいで機嫌が悪いんだ。俺の気が変わらないうちに早く消えろ」

「は、はい!!」

 

 その場からすぐに立ち上がり副隊長は部隊室から退室する。

 

 アルファからいただいた新たな任務…。これを失敗した暁には自身の居場所がアリウスから無くなるだろうと恐れた副隊長は必ず任務を遂行するため気合を入れるのであった。

 

◆◆◆◆

 

「チームI、エリアAに現着した。これより周囲の探索に移る」

「チームⅡ、了解。今回も本部より支援をさせていただく。念の為に言うがスクワッドへの侮辱は控えるように」

「……了解」

 

 そう答えた副隊長へチームIのメンバー全員が睨むような視線を送った。

 

「(なんでこんな面倒な任務をしなきゃならないんだよ)」

「(副隊長がヘマしたからだよな…本当に最悪)」

「(なんであんな無能が副隊長になってんだか。今回の任務で戦死してくれないかなー)」

 

 写真に移る少女の誘拐任務、そこそこの領土を誇るアリウス自治区内からたった1人の少女を見つけ出すなど骨が折れる任務なのだから長期任務になることを覚悟したため、このような任務を引き受けることとなった原因である副隊長へ、総員20名のうち半数以上が不満を抱いていた。

 だがその不満を発言したところで任務が取り下げられることはない。それどころかスクワッドに対しての侮辱だと思われ今度は自分達が処罰の対象となることを控え口を開くことは無かった。

 

「ではこれより部隊を分けて周囲の探索に当たる。チームに関しては事前に決めていた通り分けるように。以上」

『了解』

 

 各々不満を抱いたまま周囲の捜索へと当たる。そんな初日で見つけれれるわけがない、誰もそう思いながら捜索を続けること数時間。

 

「……!……!!」

「?」

 

 とある部隊の一人が周囲から聞こえる声を拾った。その声は自分達の部隊の誰でもない聞き慣れない声、少なくとも2人…何か言い合っている様子だった。

 

「部隊長、あちらから声が聞こえる。誰かいるようだ」

「……了解、ではそちらへ向かうとしよう。全員、前進せよ」

 

 方向を変え部隊は声が聞こえる川辺へと向かう。

 

「!嘘だろ…!」

 

 川辺に座る少女は写真に移る少女と特徴が酷使していた。深い藍色の頭髪、頭上に浮かぶヘイローは二重線を束ねた六芒星型…。間違いなくターゲットであるクシナであった。

 

「?待てよ…?」

 

 ターゲットの隣に座る黒髪の少女には見覚えがある。確かロイヤルブラッドを擁護する集団に属していた輩…のような気がする。

 

「部隊長、いかがいたしましょうか。とりあえずアルファ様のご要望通り写真を撮りましょうか」

「……そうだな。写真を撮り次第、他部隊と合流。その後、隊長と副隊長へ報告だ」

「了解」

 

 カメラのシャッターを切り、指示を受けたアリウス生はクシナをアップした写真を撮り抑える。その後、部隊長が発言した通り他部隊と合流、仮拠点で控える隊長、及び副隊長へと報告する。

 

「……マジか」

 

 それは写真を手に取った副隊長の第一声だった。正直、長期任務になると思っていたが初日で遭遇するとは…。驚きが隠せない様子だったのは合流した部隊メンバー全員だった。

 

「それと隊長、こちらもどうぞ」

 

 渡された写真にはターゲットであるクシナの隣に座るミサキの姿が写っている。

 

「!これはロイヤルブラッドを擁護する集団の一人…以前マダム(・・・)が名前を仰っていた。確か…戒野(いましの)ミサキだ」

「ロイヤルブラッド!?それってあのマダムが探している奴だろ?それを擁護する集団メンバーとターゲットが一緒にいるだって?」

「隊長、副隊長、これは好機です。我々で此度のターゲット、及び戒野ミサキを確保すればスクワッドから失った名誉を挽回できるかと」

「(別にチーム全体の名誉は失ってねーけどな)」

 

 副隊長である私の名誉だろと副隊長は内心で呟くのであった。

 

「それに相手はたったの2人です。対してこちらは総員20名。戦力差は歴然…周囲には戒野ミサキの仲間も居ない様子です」

「そうだな……こちらチームI、チームⅡ応答せよ」

「こちらチームⅡ、何かあったか」

「アルファ様へ報告していただきたい。ターゲットの人物、及び戒野ミサキの姿を確認した。これより拉致を行うが多少の怪我は考慮していただきたい、と」

「……チームⅡ、了解。至急アルファ様へその旨を報告させていただく。返答を暫し待たれよ」

 

 通信を切ったところで隊長は部隊全体へクシナ達がいた川辺へ進行するよう指示を出した。

 

「チームI、アルファ様より返答をいただいた。死ななければ何をしても構わない。だそうです」

「……チームI、了解」

 

 その通信を聞き取り部隊全員が構える機関銃のセーフティを解除する。

そして先程とは違って立ち上がりその場で何かを話していたクシナ達の足元目掛けて隊長が手榴弾を投擲する。

 

「ッ!?」

 

 ターゲットであるクシナは気付いた様子であったが、一瞬の判断の誤りによりクシナとミサキの足元で手榴弾が爆ぜたのであった。

 

◆◆◆◆

 

 足元に手榴弾が投擲された瞬間、何故私は即座にその場から離脱する、もしくは手榴弾を蹴り飛ばさなかったのか。余計なことを考えずにすぐに前者のような行動を取ればよかったものを…。

 

「…………ミサキ、大丈夫?」

「……う、うん、クシナが庇ってくれたから…でも、な」

「はぁぁ、良かったぁ」

 

 ミサキには負傷がないことが確認できて私は安堵のため息を着く。

 

「!?クシナは…?私のこと庇ったんでしょ…?怪我は…?」

 

 声を絞り出してミサキは恐る恐る私に問うた。

 

「全然大丈夫だよ!爆ぜる前に蹴り飛ばした(・・・・・・)からさ」

「そ、そう。ならいい…。だけど、なんで…!」

「早くここから距離を取らないとな。土煙が舞ってる今がチャンスか…ミサキ、ちょっと失礼」

「!?」

 

 ミサキの太ももと背中に手を当てて抱え込む。そして両足に力を込めて土煙の中から飛び出す…が、土煙の中で方角がわからず運任せてで飛び出した結果、アリウス生達の目の前に姿を現すこととなった。

 

「……うわー、女の子2人に対してそんな大人数とか…多勢に無勢だね。恥ずかしくねーの?」

 

 パッと見だけでも10名、いや15名以上のアリウス生達が武器を構えていた。

 

「慈悲など不要だ。総員、目の前の目標物にありったけの弾丸を打ち込め!」

「ちっ!」

 

 隊長らしき人物が上げていた右腕を下げた途端、構えていた機関銃が火を噴いた。

 

「ミサキ!飛ばすよ!しっかり捕まってて!」

 

 私はミサキを抱えた状態でその場からアリウス生の射線から外れるよう右手側に聳える巨大な岩を目指して全速力で走る。

 

「……!」

「ッ!」

 

 岩場付近で聞き慣れない銃声音を耳が拾った。次の瞬間、左足の太ももに着弾した。なお着弾した弾丸は太ももを貫通し通り過ぎた。

 

「痛っ!って!危ねぇぇぇええ!!」

 

 叫びながら走り、無事に岩場へと辿り着く。

 

「今の音、ライフルの銃声音…であってる?」

「……なんで、なんで、なんで…!」

「ミサキ…?」

 

 私の質問にミサキは答えてくれなかった。それどころか下を向きずっとなんでと呟いていた。

 

「なんで助けたの!?」

「は?」

「……私は助けてなんて言ってない!さっきからずっと話し聞かないし!やっと、やっとこの世界から解放されると思ったのに…!」

「ッ!お前、まだそんなことを言って…!」

 

 ミサキの発言に対して反論をしたい。だけど今の状況でそんな余裕はない。

岩陰から外の様子を見るが、アリウス生達が刻一刻とこちらへ接近している。

 

「(こちらの武器は私のアサルトライフルとサバイバルナイフのみ…)」

 

 ミサキの様子を確認するが手元に機関銃がない、先程の手榴弾の爆風で吹き飛んだか、もしくは装備してなかったのかのどっちかだな。

 

「……はっ!」

 

 岩に背を預けている状態で手榴弾が私達の目の前に投擲された。先程と同じ失敗をしないために私は着地した瞬間に前方へと蹴り飛ばす。

 

「(ここまで騒げばサオリ姉達が助けに来てくれる……だろうか)」

 

 手榴弾が爆ぜ、爆風が私達を襲う。口の中に砂が入って気持ち悪い。

 

「(早く場所を変えないといつかもろに手榴弾を被弾してしまう)」

 

 作戦を頭の中で考えている間、ミサキがおもむろにその場から立ち上がった。

 

「……クシナ、私が囮になるから逃げて」

 

 虚ろな目でミサキはそう提案した。

 

「…………それはダメだ。だってミサキ、死ぬつもりだろ?」

「だったらなに?私の命なんだからどう使おうが勝手でしょ?それにこの状況、私が囮にならないとクシナがフリーにならない」

「どの状況を見て言ってるんだ?囮になるだ?この戦力差であればミサキの命を犠牲にしても5秒もフリーにならない!ただの無駄死になってしまう!」

 

 無謀すぎる考えだ。この状況でミサキが1人で姿を現したところで一斉射撃され即戦闘不能となり、文字通り無駄死になってしまう。

 

「いいや、無駄死にじゃない。私はようやくこの世界から解放されてクシナは助かる。お互いにとって利益でしょ」

「なに馬鹿なこと言ってんだ。言っておくけどここで囮になっても簡単に死ねないぞ」

「……なんでそんなことがわかるの?」

「敵はアツコを欲してるんだぞ。アツコの擁護者として知られている私達は殺されず連行された後、居場所を吐かせるために拷問されるに違いない」

「ッ!?」

 

 これは私の予想だが、アリウス生がアツコを欲している以上、アツコの場所を探るためにミサキは殺されず拷問されるだろう。

 それは私も例外じゃない。アリウス側から私がどのような存在と思われているかは不明だが、ミサキと一緒にいる以上、アツコを擁護する集団の1人と捉えられてもおかしくない。

 

「……そ、そんな…!痛いのは嫌だ…!死ぬなら楽に死にたい…!」

「ならこの作戦は無しだね」

 

 ミサキはその場に座り込み頭を抱えながらブツブツと言葉を呟く、どうやら戦意が失せたようだ。いい形ではないがとりあえずミサキが無駄死にすることを防ぐことができた。

 

「(さてと、どうしたもんか…)」

 

 先程も確認したがこちらの武器は私のアサルトライフルとサバイバルナイフのみだ。とりあえずアサルトライフルはミサキに持たせよう。

 

「(となると私に残されるのはサバイバルナイフ1本か…)」

 

 これに関してはいつも通りだ。アリウス生との戦闘は何度か経験済だが、だけどこれ程の人数との戦闘経験はない。それにわたしは主に奇襲を行っていたため、敵側が殆ど無防備な状態での戦闘だったんだ。

 だが今の状態は最悪だ。相手は絶賛戦闘状態、戦うとなれば想像を絶する戦闘となるだろう。

 

「(戦うんだ…。抗うんだ…。抗うことを諦めたらそこで人は終わってしまうんだろ)」

 

 先程、ミサキに送った言葉が尾を引く。そのためこの戦闘から逃げるという選択は私にはない。

 

「…………………………………………………………」

 

 その場に座り込むミサキの様子を伺う。先程と様子に変化はない、戦意は失せた状態のままだ。

 

「痛ッ!」

 

 ミサキを心配させない為に強がっていたが…初手の手榴弾で背中はズタズタ、さっきの狙撃では太ももを撃ち抜かれている。この状態で最高のパフォーマンスを発揮出来るかわからないけど…。

 

「ミサキ、私は戦うよ」

「……なに、言ってんの…?私達2人で勝てるわけないでしょ!もうお終いなんだよ。私達は連行されて、拷問されて…。今よりも苦しい生活が待ってるんだ…」

 

 ミサキを死なせないために拷問される云々を言ってしまったがそれは間違いだったようだ。今後は一時の感情に任せて発言することは控えないとな。

 

「……ううん、そんなことないよ。私はミサキをそんな目に合わせないために戦うんだ」

「……それって…じゃあ1人で戦うっていうの…?」

「うん、そうだよ」

 

 私は肩にかけていたアサルトライフルを手に取りミサキに渡す。

 

「???」

「ミサキ、万が一、いや億が一、アリウス生がミサキのところに来たらこれで抵抗して。私はこれで戦うから」

 

 レッグホルスターに収めていたサバイバルナイフを取り出し構えてそう伝えた後、その場で軽く準備運動を行う。そして…。

 

「よし…!」

 

 準備が出来た所で改めて確認する。

 

 私達の勝利条件は敵兵の全滅、及び撤退。それか私達の危険を察知したサオリ姉達、つまり援軍が来るまで耐え凌ぐこと。どっちにしろ至難の業であることには変わりないか…。

 

 だけど私は誰かのために何かをしようと思えば士気が異常なほど上がるんだ…。これぐらいの困難乗り越えてみせる…!

 

「ミサキ!」

「!」

「大丈夫、私が絶対守るから!それと!もし良ければなんだけどさ。私の戦いを見てて!さっき私がミサキに送った言葉達が嘘じゃないって証明してみせるから!」

「…………………………………………………………」

 

 ミサキからの返事はなかった。

 

 だけどきっとミサキは見てくれるはず…そうだと信じて私は岩を上り敵陣に1人で姿を顕にした。

 

「…………ようやく姿を現したな」

 

 私を見あげる部隊の先頭に立つ生徒が口を開けた。見たところやつが隊長だろうか。

 

「(隊長を倒したら撤退してくれるだろうか)」

 

 如何せん隊長となればそれ相応の戦闘技術が備わっているはず。それに敵の数が多すぎる…無闇に隊長の首を狙いに行くのは難しそうだ。

 

「(自分の最高の動きをイメージするんだ)」

 

「もう1人の仲間はどうした?」

「!……死んだよ。あんた達の手榴弾でな」

「嘘はよせ。死なない程度で火力調整をしている」

「ミサキは体が弱いんだよ。見誤ったな」

「……そうか。まあいい、お前も戒野ミサキと行動を共にしているのであれば、ロイヤルブラッドの居場所を知っているはずだ」

 

 戒野って…ああ、ミサキの苗字か。まさかここで知ることになるとはね。できれば本人の口から聞きたかったかな。

 

「知ってたら?」

「拉致後、拷問して情報を吐き出させる」

「拷問かー私って多分口硬いから割らないと思うけどな」

「安心しろ。拷問の訓練を受けている私でも泣いて悲鳴を上げる苦痛だ。10歳にも満たないお前が耐えられるわけがない」

「ッ!あっはは!」

『???』

 

 いきなり大声で笑いだしたクシナに対してアリウス生達は困惑する。

 

「よかった。その程度の強さなら私1人でも勝てそうだ…!」

「ッ!総員、打ち方よーい!」

 

 クシナの煽りで頭に来たのかアリウス生一同がクシナに殺意と銃口を向ける。

 

「撃てぇ!」

「にっ!」

 

 クシナは口角を上げた状態でミサキが隠れる岩の後方へと背を向けて倒れた。空中でバク宙を決め見事に地面に着地したところで足に力を込めて岩陰から姿を現す。

 

「くっ!」

 

 クシナの煽りによってアリウス生達は全員がありったけの弾薬をクシナに味合わせようと岩の上辺に標準を合わせていたため、クシナは一弾も被弾することなく敵陣の前衛付近まで一気に距離を詰める。

 

「隊長!お守りします!」

 

 隊長の首を狙っていると察したアリウス生がクシナの前に立ち塞がる。

だがどうやらクシナはそれを狙っていたようだ。

 

「調子に乗るなよクソガキがぁぁぁあ!!」

 

 立ち塞がるアリウス生が手に持つサブマシンガンをクシナの額目掛けて銃口を向けるも時すでに遅し。

 

 クシナはアリウス生の手首を掴み、敵の腕を捻らせ、握力が弱り手を離したサブマシンガンを強奪する。

 強奪したサブマシンガンを左手に持ち替え、予め握っていたサバイバルナイフをアリウス生の喉に刺す。

 

「ごホッ…?」

 

 一瞬の出来事で何が起きたのかわからなかったアリウス生の頭上に?マークが浮ぶ。

 

「武器のご提供誠にありがとうございまーす…!」

 

 首に刺していたナイフの矛を横向きに変える。そして切り裂くように右腕を横に振った。

 大量の返り血を浴びたクシナはアリウス生の腰に装着している手榴弾のピンを引き抜き、倒したアリウス生を敵陣のど真ん中へと蹴り飛ばす。

 

「その子から離れた方がいいんじゃない?」

 

 敵陣の真ん中へと蹴り飛ばされた仲間の安否を確認するように何人か近寄るからにクシナの助言は耳に入ってないようだった。

 次の瞬間、アリウス生の腰に装着されていた手榴弾が爆ぜた。なお腰に複数個、手榴弾を装着していたことから轟音を立てながら連動するかのように手榴弾が爆ぜる。

 

「(凄い…頭の中で思った動きが正確にできている)」

 

 ある程度作戦を考えていたがこうも上手くいくとは意外や意外。この調子でアリウス生を一人残らず全滅させてやる…!

 

 クシナは尽かさず先程敵兵から予め強奪していた手榴弾のピンを抜き取り自身の数メートル先に目掛けて投擲した。

 

「ッ!総員後退!爆撃に備えろ!」

 

 隊長の指示に従い全員が後退後、クシナの投擲した手榴弾が爆ぜた。土煙が漂う中、アリウス生全員が次の攻撃に備え機関銃を構えた。

 

「!」

 

 土煙の中から黒い影が煙を切り裂き現れた。

 

「芸のない奴だ…猪突猛進するしか脳にないのか」

 

 先頭に立つ隊長はショットガンを構え引き金を引く。周囲に銃声が響き、弾丸が雨の如く黒い影に浴びせられた。

 

「……!なに!?」

 

 だがその影はクシナではなかった。クシナの頭ほどの大きさのそこら辺に転がる大きな石だったのだ。

 

「リロードだっけ?大丈夫…?」

 

 その声が聞こえた頃にはクシナが強奪したサブマシンガンを構えトリガーに手をかけていた。

 

「近距離なら的を外さないもんねぇ!」

 

 トリガーを引き、弾丸を隊長へ浴びせようとするも弾丸は綺麗に隊長の横を通り過ぎる。

 後ろに控えていたアリウス生に流れ弾が着弾し多少のダメージを与えることが叶ったのが幸いだろう。

 

「……あれ!?」

 

 ここって当たる流れのやつやーん!とクシナは心中で叫びながら照れ隠しのつもりでサブマシンガンを隊長へと投げつける。

 

「ちっ!」

 

 隊長はショットガンの銃身を使ってサブマシンガンを叩き落とし瞬時にリロードを終え、今度こそクシナに弾丸を浴びさせるために構える。

 

「今度こそお終いだ。幼い女子よ、良く1人でここまで戦ったな」

 

 クシナの額、近距離でショットガンを構えた隊長がクシナを評する言葉を送った。

 隊長は指をトリガーにかけ、引き金を引き再び周囲に銃声が鳴り響く。

 

「な、なんだと…!?」

 

 引き金を引くのとほぼ同時にクシナはその場で地に伏せ、ショットガンの射線から外れる。

 

「(有り得ない…!この距離、この速度での射撃を交わすものなどアリウス自治区ではアルファ様以外いないというのに…!)」

 

 その動揺が命取りとなることを隊長は未だに知らない。クシナは立ち上がるよりも先に隊長の手に握るショットガンを蹴り飛ばす。

 

「ッ!この幼女がぁぁぁあ!!!」

 

 隊長はナイフホルスターよりナイフを取り出し伏せているクシナの頭上目掛けて一直線にナイフを振り下ろす。

 

 人間は前方向の情報しか読み取ることができない。真上から振り下ろされるナイフの軌道を上を見ずに的確に把握することなどできるはずがない。

 だがクシナは影の動きでナイフが振り下ろされることを察した。では狙うとなれば何処か。答えは明白、人の弱点、頭、即ち頭上だろうと導き出した。

 

 しかしショットガンを蹴り飛ばし、伏せていた体制が崩れているこの状況での回避は困難。多少の深手を負うのは活かし方なし。だが致命傷を負ってはこの先戦闘を継続することが困難となる。

 

「ッ!あぁぁぁぁぁああああ!!!!」

 

 クシナは致命傷を避けるため頭を右手側に傾けた。その結果、隊長の振り下ろしたナイフは左肩付近の首元へと突き刺さった。

 

「ふっ!勝った…!」

 

 勝ちを確信した隊長の気が緩む。

 

「ッ!諦めて…たまるかぁぁああ!!!!」

 

 左手をぶら下げた状態で勢いよく立ち上がったクシナの頭が顔を下げていた隊長の顔面と衝突する。

 

「ッ!」

 

 顔を押え後ろによろめく隊長にクシナは抱きつき後方へと倒す。そして…。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!」

 

 力を振り絞り右手に握るナイフを隊長の首へと刺した。

 

「がはッ!く、クソ…こ、こんな、こんな幼子に、ま、負けるなど…一生の、恥…だ…。」

「…………………………………………………………」

 

 先程と同様に矛の向きを変えて喉を切り裂くように腕を振る。

 

『…………………………………………………………』

 

 隊長がやられる様をアリウス生は黙って眺めていた。自分達の中で1番の実力を誇る隊長がやられた。そのやられ方が恐ろしくクシナに対して恐怖を抱く者もいた。

 

「あ、あーあ…」

 

 感覚がない左腕をぶら下げながら立ち上がったクシナは一言言葉を漏らす。

 

「……死ぬかと思った」

 

 顔色を変え、今にも倒れそうなクシナはそう呟き、数秒後に目の前に倒れる隊長に覆い被さるよう倒れるのであった。




キヴォトスの生徒はこの程度で死なないのはご存知だと思いますが念の為言います。誰も亡くなってませんのでご安心を!

まずい。以前からスクワッドのオリキャラを登場させたことを後悔しております。僕とはしては早くエデン条約編を書きたいのに…多分どっかで話を巻いて書くことになると思います。

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