誰が為に私は魔女になる   作:オオル

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どうもお久しぶりです。そして投稿が途絶えたことについて謝罪を…。私生活が忙しくなり執筆をする余裕がありませんでした。あとは話の構想を練ってました。オリキャラ出したことを猛烈に後悔してます…。

そして今回!等々奴が登場!

では前書きはこの辺で。本編をどうぞ!


嘘はバレなければ真実になることを知っていますか?

 ライフルの銃声音が聞こえたと思えば視界に入るアリウス生が後方へと吹き飛ぶ。吹き飛んだアリウス生の額に目を向ければ弾痕の跡が残っていた。

 

「(多分ヒヨリの狙撃だよな…。凄い、アリウス生の頭目掛けてよく当てるもんだ…。)」

 

 私はライフルを使ったことがなければ触ったこともないものだから狙撃することの難しさを知らない。

 だけど近距離で短機関銃の弾を全弾外した私なのだからライフルの弾を着弾させるなど至難の業なんだろう。

 

「ヒヨリの凄さはわかった?」

「……ああ、嫌でも十分わかったよ」

 

 先程まで対峙していた狙撃手と比べたら明らかにヒヨリに軍杯が上がる程のレベル差だ。

何故ならアリウス側の狙撃手は逃げる私とミサキに弾を当てることが…いや、私の太ももを射抜いた人はいたけど…あれはきっとまぐれだろう。

 

「くっ!狙撃手だけじゃないぞ!歩兵もいるぞ!」

『!』

 

 狙撃から身を守るため、物陰に潜んでいたアリウス生の1人が歩兵に気付き声を上げた。

 

「(歩兵…ってことは)」

 

 恐らくサオリ姉のはず。

 

 遠くからこちらに向かって前進するアリウス生の言う歩兵に目を向ける。

 予想通りサオリ姉がこちらへ向かっている…のだが。顔が物凄い形相となっている。端的に言うならば激おこってやつだ。

 

「!」

 

 サオリ姉とアリウス生達の戦闘が本格的に始まった。アリウス生はサオリ姉に向けて機関銃を構え、射撃するもサオリ姉は冷静に遮蔽物へと身を隠し、相手側の弾倉が底をつくのを待つ。

 

「ふっ!」

 

 弾倉の底がついたことを確認したサオリ姉は遮蔽物より身を乗り出し自信が持つアサルトライフルのトリガーに指をかける。そしてアリウス生の額目目掛けて的確に数発弾丸を着弾させる。

 

 実に丁寧な戦いだ。弾の消費を最小限に抑えつつ、相手の気を失わせるために弱点の頭部を狙い撃つ。

 

「……おい、お前達…。」

『!?』

 

 アリウス生を数人倒し、少しだけ余裕ができたサオリ姉がゆっくりと口を開く。

 

「私の妹達に手を出して安安と帰れると思うなよ」

 

 次の瞬間、サオリ姉のアサルトライフルが文字通り火を噴いた。

 刹那、サオリ姉の前にいたアリウス生が次々へと倒れていく。

 

「……私も支援しないと!」

 

 左腕は動かない。が、体は動く。いくら強者のサオリ姉とて私が支援に入れば今よりも楽にアリウス生を屠れる。そうに違いない。

 

「……?クシナ?」

 

 ミサキから離れ私はサオリ姉の元へ向かう。

 

「!」

 

 私に気付いたサオリ姉がこちらを向く。そして口を開いた。

 

「クシナ!お前はそこでじっとしていろ」

「!だけど私はまだ動ける!」

「ダメだ。黙ってミサキと2人で待機。これはお姉ちゃん命令だ」

「……?お、お姉ちゃん命令…?」

 

 聞きなれない言葉で戸惑ってしまう。だけど物凄い形相で待機と言うのだから従うしかあるまい。

 

「お姉ちゃん命令だってさ。従わないと」

「んんー私だって支援するぐらいはできるんだけどなぁ」

 

 と不貞腐れるもサオリ姉は私の支援なくとも1人で次から次へとアリウス生を薙ぎ払う。サオリ姉の戦闘は超近接型戦闘の銃撃戦と肉弾戦を混じえた戦い方だ。多分、私が真似るべき最善の戦闘形態のはず…。というのも今日の戦闘でそれがわかった気がするんだ。

 

「(ただ待機しておくのは勿体ない…。サオリ姉の戦いを見て学ぶんだ)」

 

 私はサオリ姉の戦う様をアリウス生の最後の一人が倒れるまで黙って見つめ研究するのであった。

 

◆◆◆◆

 

「ぐあっ!」

 

 一人残ったアリウス生はサオリ姉の渾身の拳が鳩尾に入ったことで苦痛の声を上げ、此度の戦闘は幕を閉じた。

 

「…………………………………………………………」

 

 サオリ姉は最後の一人が倒れたことを確認後、アサルトライフルにセイフティを掛け私達の元へとゆっくり近付く。

 

「2人とも無事…。いや、クシナは大事だな」

「……ごめん」

 

 サオリ姉は晴れない表情をしながら述べた。そんな表情を見ていると何だか申し訳なくなりごめんと謝罪の言葉が口走っていた。

 

「何故クシナが謝るんだ。この様な事態を招いたのは紛れもない私だ。私が…お前達2人だけで行かせなければ…。」

 

 サオリ姉は目線を下に逸らし私が大事になったことに対して自分のせいだと語った。でも違う。サオリ姉のせいなんかじゃない。ただ単純に私が弱かったからにすぎないんだ。

 

 私がもっと強ければ、力があれば、戦闘技術があれば…怪我なんてせず、誰も心配することなく戦闘を終えることができたはず。

 

『…………………………………………………………』

 

 サオリ姉、ミサキ、そして私はその場で黙る。誰も口を開かず無音なまま時間が過ぎる。そんな状態を打破するかのように彼女が私達の空間に入った。

 

「はぁ、はぁ、ッ!ミサキ!クシナ!」

「!ひ、姫?」

「……アツコ?」

 

 アツコは駆けつけ、息を切らしながら私とミサキの前に姿を現した。そして少し遅れてライフルを担いだヒヨリも私達に元へと駆けつけた。ヒヨリは私の深手を負った様を見た途端、口を押え驚きを顕にする。

 

 きっとアツコは後方でヒヨリの支援をしていたのだろう。だからこうして2人で私達の目の前に姿を現したのだろう。

 

「……ごめん。ごめんなさい…!私のせいだよね。私が変なこと考えたから、私が…私がミサキとクシナを2人っきりにしたから…!」

 

 大粒の涙を流しながらアツコは語った。自分が私とミサキが2人っきりになれる機会を設けてしまったがためにこの様な結果を招いてしまったと…。自分を責めるように泣きながら、許しをこうように両膝を地に着け、頭を垂れてそう…語った。

 

「クシナ…。その傷、痛いよね…?私のせいだよね…。私が、くっ!私が…!」

「……アツコ…。」

「思えばそうだよね…。私がいるから、皆が私を守るから、だから皆がアリウス生から狙われて、私なんか、私がいなくなれば…!」

「!アツコ!」

「!?」

 

 よからぬ思考へと進むアツコを止めるかのように私はアツコの肩に手をかけ揺らす。数回揺らしたところでアツコは正気を取り戻したのか下げていた頭を上げて私の方へと顔を上げる。

 

「……みんな気にしすぎだよ。私もミサキも元気なんだから自分を責めないでよ」

「…………元気?そんな深手を負ってるのに…?」

 

 アツコの涙袋に溜まっている涙は今にも溢れ出しそうだった。……私はこれ以上、アツコが悲しんでいる様なんて見たくない。

 何故ならアツコは自分を責めたが一切悪くないからだ。寧ろ私は感謝している。確かに窮地に陥ったかもしれない。だけどアツコがミサキと2人っきりになれる機会を設けてくれたから私はミサキと仲良くなれた。

 だからアツコは悪くない。サオリ姉も悪くない。悪いのは弱かった私…。だけど、そのことをこの場で言えば口論になりかねない。自慢じゃないが口喧嘩でもサオリ姉に勝てる気はしないからな。

 

「もう元気元気!ほら!腕立て伏せだって余裕余裕!」

 

 私はみんなに心配させまいとその場で両手を地に着け腕立て伏せを何度も行う様をこれでもかと見せつける。こんな深手を負ったやつが余裕と言いながらこんなことをすれば否が応でも元気だって伝わるはずだ。

 

『…………………………………………………………』

 

 ミサキとサオリ姉は目を見開き驚いたような顔をしながら私を見る。

 

「え、えぇえ?」

 

 ヒヨリは深手を負った私が軽々しく腕立て伏せを行うものだからか、頬をひくつかせ若干引いたような表情をしながら私を見つめていた。

 

「本当に大丈夫なの…?」

 

 アツコは涙目になりながら疑いの言葉を述べた。

 

 本当はかなり痛い。軽く意識が飛びそうになるもアツコを悲しませまいという思いが勝り、意識を失うことは無かった。

 

「本当本当、だから心配しなくて大丈夫…でも…」

「?でも…?」

「アツコが少しでも罪悪感を感じるって思うならさ、埋め合わせてしてくれるとクシナさん嬉しいかな」

「……埋め合わせ…?うん、何でもする。言って」

 

 アツコは涙を拭い、身を乗り出し私に顔を近付け埋め合わせの内容を聞き出そうとする。泣き目だと言うのにその姿は真のお姫様と言って過言ではないほどの整った容姿に私はドキリしてしまう。

 

「今度またデートしてほしいな。できれば2人っきりって言いたいけど何があるかわからないからね。遠くでサオリ姉達に見守ってもらった状態になるけど…それでもいいかな?」

 

 何だか恥ずかしくなった私は頬を掻き、アツコから視線を外して私は埋め合わせの内容を伝えた。こうして私がアツコに埋め合わせを求めることでアツコの罪悪感は緩和するはず…なのだが。

 

「…………そんなの全然埋め合わせじゃないよぉ…。今朝毎日デートするって言ったよぉ…」

「!あ、アツコさん!?」

 

 アツコはまたも号泣しながら予想外の返答をした。と言うか今朝言っていたあれって本当に毎日デートするつもりで発言していたのか。

 

「そんなの埋め合わせにならない…。もっと別のことにして…」

「え、えぇーとー?」

 

 私としてはアツコのような容姿が整った人とデートができるだけで嬉し、十分に埋め合わせになっていると思ってるだけど…。本人が埋め合わせではないというのなら別の内容にしなければ。

 

「……んーじゃあ私達が倒したアリウス生から物資を回収して欲しいんだけど…頼めるかな?」

「……!それが埋め合わせになるなら…。うん、わかった」

 

 先程の埋め合わせ内容とはかけ離れた内容だけどアツコはそれを受け入れてくれたようだ。

 

 アツコはまたも涙を拭い私から離れる。そして倒れるアリウス生の元へ向かい手榴弾やマガジンなどを回収し始めた。

 

「……はあ、じゃあ私も行く。姫ひとりだと危ないしね」

「ミサキ…助かるよ」

「……別に気にしないで。それと嘘つくのは勝手だけど今後のことも考えて嘘はつくべきだよ」

「???」

「クシナって馬鹿?……まあ時期にわかるよ。自分で蒔いた種なんだから助け舟出しても助けないから」

「なっ!馬鹿とはなんだ馬鹿とは!馬鹿って言う方が馬鹿なんだぞ!?姉さんが言ってた!」

「はいはい、じゃあ私は馬鹿ですよー」

「おい!適当に流すな!」

 

 私はその場で地団駄を踏むもミサキに華麗に流されてしまった。何だか1人だけテンションが高くて恥ずかしいんだが。

 

「ヒヨリも立ってないで行くよ。物資の回収には人手が多い方が捗るから」

「あ、はい…その、く、クシナちゃんは本当に大丈夫なんですかね…」

「……私の口からはなんとも言えないね」

「そ、そうですよね。あんな深手を負って元気なはずなんてありませんよね…。さ、さっきの腕立て伏せはきっと私の見間違いだったんですね…。うう、クシナちゃん、辛いですよねぇ、苦しいですよねぇ、世界はこんな幼い子にも厳しいだと痛感させらます…あれ、何だか私も涙が…」

「ほら、泣いてないで姫のところに行くよ」

「うぅ……あ、み、ミサキさんとクシナちゃんは結局仲良くなれたんですかねぇ……ど、どうなんですか?」

「……それって姫がさっき言ってたことと関係あるの?」

 

 ミサキとヒヨリは何やら会話しながらアツコの元へと向かった。何だかヒヨリが泣き目になりながら私を憐れむように見てた気がするんだけど…まさかさっきの腕立て伏せの効果が効いてないのだろうか。

 

「……クシナ、何故、嘘をついたんだ?」

 

 サオリ姉は私に近付き、見下ろしながら問うた。

 

「…………なんのことかな」

 

 私は立ち上がりサオリ姉と顔を合わせてそう答える。

 

「とぼけるな。クシナとミサキの会話が聞こえないほど耳は劣ってない」

「……やっぱりサオリ姉には敵わないなぁ。うん、嘘だよ嘘。超痛い、今にも意識が飛びそうなぐらいね」

 

 左腕は殆ど動かないよと付け加え私は続けて語った。

 

「アツコに…みんなに心配をかけさせたくなかったんだよ。サオリ姉も聞いただろ?アツコは自分のせいだって言ってたからさ、これ以上自分を責めないように元気な姿を振舞ったんだ」

「……だとしてもこの先どうすんだ。多く見積もってもその怪我が完治するまで1週間はかかるぞ。お前のついた嘘はその場しのぎに過ぎない、遅かれ早かれお前の嘘にアツコは気付く」

 

 なるほど。ミサキが言ってた今後のことも考えて嘘をつくべきってこれのことだったのか…。言われてみれば正論だな。

 

 でも心の底からみんなに心配をかけさせたくないんだ。ただでさえ普通の生活を送ることが困難だと言うのに私の怪我如きで余計な心配をさせたくない。そもそも怪我を負った原因は私にあるのだから心配されると精神的に辛い。

 

「傷は3日で癒す。安静にしていれば大丈夫だよ」

「……強がりはよせ。それに安静にしていればだと?確かに私達なら全神経を治癒することに回せば数日で治るかもしれない。だがこの現状で安静して暮らせると思うか?」

「……思わない」

「そうだ。数日もすれば私達の住処が連中に特定される。その前に私達は住処を変えなくてはならないんだぞ」

 

 ここで殺りやったのが運の尽き。アリウス側に私達がここの川辺付近に住んでいることが公になってしまった。サオリ姉の言う通り、1日も経たずに周囲を捜索され私達の今の住処が特定されるに違いない。

 

「そうだったとしても嘘を撤回するつもりはないよ」

「じゃあお前はこの先、姫を騙して過ごすのか?」

「言うて数日だけだよ…。それに嘘はバレなきゃ真実になる。例えサオリ姉からお姉ちゃん命令が出ても私はアツコに心配をかけないために全力で元気よく振舞うつもりだよ」

「……だが姫が嘘に気付いた時、さっきの様に姫が取り乱したら…」

「あーもう!じゃあ末っ子命令!末っ子の我儘に付き合ってよ!」

「なっ!?」

 

 このまま口論を続けてもサオリ姉には勝てないだろう。ならばここはお姉ちゃん命令ならぬ末っ子命令として私の我儘に付き合っていただこうか。

 なに、末っ子なのだからクソガキのように振舞って言ってもいいとサオリ姉は昨夜語ってたからな!我儘ぐらい言ってもいいだろ。

 

「〜!」

 

 サオリ姉は腕を組み声にならない声を上げながら私を凄く睨む。だけどそれは敵に対して憎悪を向けるような目付きではなかった。なんと言えばいいだろうか、言い返そうにも言い返せず葛藤しているような表情だった。

 

「はぁ……このクソガキが…。嘘がバレても助け舟を出さないからな」

「!」

 

 サオリ姉は葛藤の末、私の我儘を許してくれたようだ。そして許した後に続けて語ったかと思えば…。

 

「?なんだ?」

「……いや?ミサキと似たようなこと言ってるなと思って。やっぱり妹は姉に似るんだな」

 

 ミサキにも助け舟は出さないって言われてたことを思い出し口に出した。お姉ちゃん2人から助け舟を出さないと言われちゃ自分で何とかしないとな。

 

「ッ!勝手に言ってろ。さて、私達はこいつらから物資を回収するか」

 

 サオリ姉は一度大きく反応した後、反応したことを紛らわすように私の近くに転がる敵部隊の隊長と副隊長へと近付いた。

 

「こいつらは隊長と副隊長か?」

「そう、指揮官の2人を倒せば部隊の指揮が疎かになるだろ?そうなったら戦いやすいかなって」

「なるほど。クシナの考えは正しい。通りで先程戦闘した生徒達はあれほど手応えがなかったわけか」

 

 単純にサオリ姉が強すぎるのでは?とは何だか言える雰囲気ではなかっため、私はそっとお口チャックを決め込んだ。

 

「ちなみに口に手榴弾が入ってるのが隊長で、ガスマスクが潰れてるやつが副隊長だ」

「……見るも無惨な状態だな。副隊長に至っては顔面にガスマスクの破片が幾つも刺さってるじゃないか。それに至る所に打撲が見受けられる…。お前、何度拳を振るったんだ?」

「…………そいつが気を失うまで、かな」

「なるほど。ちなみに隊長は何故、口に手榴弾が詰まってるんだ?」

「うるさかったから私が詰め込んだ。そして盾としてミサキに使ってもらったんだ」

「……そうか」

 

 隊長と副隊長から物資を回収しながら私と話していたサオリ姉はゆっくりと立ち上がり私の前へと近付いた。そして…

 

「え?」

 

 サオリ姉は手を伸ばし私の頭を撫で始めた。

 

「よく隊長と副隊長を倒した。凄いぞクシナ」

「え、え?あ、うん…」

 

 てっきりやりすぎだと怒られるのかなと思ってたんだけど…まさか褒められたよ。

 

 こうやって誰かに褒められるのって何時ぶりだろうか。なんだろう、サオリ姉に褒められると姉さんに褒められた時のことを思い出す。

 

「でも私一人で倒した訳じゃないんだ!ミサキが手伝ってくれたんだ!」

「お前一人の手柄だと思ってないから安心しろ。ミサキはそいつを盾として使って戦ったんだろ?」

「そうそう、器用に使って敵からの攻撃を凌いでたよ」

「つまり共闘したってことだよな?仲良くなれたのか?」

「おうとも!もう正真正銘家族だよ!」

「……そうか」

 

 サオリ姉はその言葉を聞き止め微笑みながらみんなの元へと足を動かし始めた。私はそれについて行くようサオリ姉の後ろを歩く。

 

「なあサオリ姉」

「ん?なんだ?」

 

 私はサオリ姉を後ろを歩きながら話しかける。

 

「急な話だけどさ…私はもっと強くなりたい」

「……クシナは今でも十分強いだろ。隊長と副隊長を倒したんだ。誇ってもいいぐらいだ」

「……それでもダメなんだ。こんなヤツらごときで深手を負ってちゃこの先やっていけない」

 

 今回倒した隊長と副隊長がアリウス内でどれ程の強者かどうかはわからない。だけどこいつらよりも強いやつはいるだろうし、外の世界に至っては未知なものだから強敵が多く存在するはず。

 

 私は誓った。家族全員を幸せにしてみせると。幸せになるために立ち塞がる敵を邪魔な芽を、そして諸悪の根源を排除する力が必要だ。他の誰でもない。私がみんなの善人になるんだ。そうして復讐を終えて外の世界でみんなで幸せに暮らすんだ。

 

「サオリ姉、傷が治ったら稽古を頼む。近接戦闘も射撃練習も全部お願いしたい」

「もとよりそのつもりだ。昨夜言っただろ、みんなより厳しい訓練を課すと。クシナは確かに強いが射撃はド下手だからな…鍛えがいがあるもんだ」

「……おう、頼むよサオリ姉」

 

 サオリ姉と会話を終えるのと同時にみんなの元へと到着した。私は先程まで抑えていた左肩から手をどかして普段通りに振舞う。

 

「あっ!クシナ!見てこれ!傷を治す軟膏があったの!早速使おうよ!」

 

 私の姿が視界に入ったアツコが元気よく先のセリフを言いながら駆け寄った。貴重な塗り薬を見つけて早く私に渡したかったんだろうか。とにかくアツコの嬉しそうな表情が拝めてそれだけで私は傷が癒えたような気がするよ。

 

「待て姫、ちゃんと成分を読んでから使おうな?」

「!う、うん。そうだね。サッちゃんの言う通りだね。ちょっと確認するから待っててクシナ」

「……うん!」

 

 アツコは塗り薬のチューブの裏側に書かれている成分表に目を通す。が、読めない文字があったようでヒヨリに質問していた。ヒヨリは自分が役に立てたのが嬉しかったのか笑みを浮かべながらアツコに文字を教えていた。

 

「サオリ姉さん、これ」

 

 私がアツコとヒヨリの様子を眺めている隣でミサキがサオリ姉へ何かを渡していた。

 

「これは……クシナの写真か?」

「そう」

「え?私の写真?」

 

 サオリ姉が手に持つ写真にはドアップで私が川辺で釣りをしている様が写っていた。

 

「なんで私の写真があるんだ?」

「……多分、姫を擁護する私達の新しい仲間って認識されたんだと思う。私もサオリ姉さんもアリウスに顔バレしてるし…写真を使ってアリウス内でクシナの容姿を広める手筈だったんじゃない?」

「……だってさ。クシナ、有名人になってしまったな?」

「別に顔が知られようがどうでもいいよ。敵は全員倒す!それだけだ!」

「……脳筋のテンプレートみたいな返答だね」

「ああ、だな」

「ちょっ!?」

 

 ミサキの発言に対してサオリ姉は同感しながら頷く。うちの姉達は私のことをなんだと思ってるのだろうか。

 

「クシナ、ちゃんと成分確認したよ。使っても問題ないみたいだよ」

「わ、私がちゃんと声に出して成分を、よ、読んだので大丈夫なはずですよ。えへへっ」

「!2人ともありがとう!」

 

 私はサオリ姉とミサキの元から離れてアツコ達の元へと向かう。

 

「サオリ姉さん、今後の動きなんだけど」

「わかってる。戻ったらすぐに荷物を纏めて行方を晦ます。みんなにはあとで私から話しておこう」

「わかってるならいい。それだけだから」

 

 ミサキはそう言い残しサオリから離れクシナ達の元へと向かう。だがサオリがその場に留まるよう声をかける。

 

「待て、ミサキ」

「……なに?」

「……クシナとはこの先、上手くやっていけそうか?」

「………………………………………………………………」

 

 ミサキは振り返らず少しだけ考えるような素振りを見せその場に留まった。

 

「さあ、なんとも。ただ今までいなかったタイプの妹だから手を焼きそうかな」

「!ははっ!そうか、まさに同感だ。手を焼く末っ子になりそうだよな」

「……ふっ、本当…そうだね」

 

 今後もクシナに振り回されそうだと感じた姉の2人は仲良く並びながらクシナ達の元へ向かうよう足を動かしたのであった。

 

 一方クシナ達はというと。

 

「クシナ、私が薬を塗ってあげるから左肩を出して」

「……いや、薬は自分で塗るよ?」

「なんで?」

 

 いや、なんでってそりゃ傷に染みるからって言えないよな。さっき強がったのに薬塗られて痛がってたら嘘がバレるし。それと昨晩見たような雑な目元で問われるものだから何だか詰められてるような気がしてならないんだが。

 

「塗ってもらいなよクシナ」

「えっ!?」

 

 後ろからミサキが変に微笑みながらそう言った。

 

「痛くないんだろ?」

「ひっ!」

 

 サオリ姉もミサキに負けず劣らず変な笑みを浮かべながら言う。

 

「じゃあ塗るね」

「アツコさん!?心の準備がぁぁあ!!」

「はい、ぬーりぬりー」

「ッ〜〜!!!!」

 

 塗り薬が傷に染みるも元気な素振りを行うと決めた以上悲鳴をあげることなんてできない。

 クシナは下唇を噛み締め、悲鳴はあげなかったもののサオリとミサキを恨むかのように視線を送るのであった。

 

◆◆◆◆

 

 アリウス部隊、チームIとのクシナ達の戦闘が終えた数時間後、アリウス内にチームIが崩壊した旨の悲報が知れ渡る。勿論、その悲報はアリウスの生徒会長である彼女の耳にも入る。

 

 ことの悲報を聞いた彼女は、否、ベアトリーチェは命令を降したアリウススクワッドを謁見の間へと呼び出した。

 

「さて、このような事態を真似ていた理由を伺いましょうか。答えてくださいますよね…アルファ」

「……はい、マダム」

 

 名を呼ばれたアルファを含むスクワッドのメンバーがマダムに対して片膝を付き目線を下へと向けていた。

 

 一方マダムと呼ばれたベアトリーチェは乱雑された岩が積み上げられる高台の上へ、配置されている高級な椅子に腰を掛けスクワッドを見下ろしていた。

 

「……以前、報告したかの少女の名をご記憶でらっしゃいますでしょうか」

「ええ、覚えてますとも。数少ない神秘(・・)を自覚している生徒でしたから…ですがアルファ、貴方が殺害したことも私は覚えてますよ」

「……その節は大変申し訳ございません」

「その件については既に罰を与えたはずです。大人は過ぎたことに粘着するようなことはありませんので。……もう前置きはよろしいでしょう。そろそろ本題に入って結構です」

 

 前置きが少し長くなりベアトリーチェの機嫌は悪くなったようだ。その様子をアルファ含むスクワッドのメンバーは察して先程よりも深く頭を下げる。

 

「今回このような事態を招いた理由。それはかの少女の妹を捉えるためです」

「……それは何故でしょうか。まさか貴方の個人的な目的で作戦を決行した…なんてことはないでしょうね」

「…………………………………………………………」

 

 痛いところを突かれたアルファはすぐに返事をしなかった。ベータはアルファが詰められてる様が面白いのかガスマスクの内側で笑みを浮かべ、ガンマはそっと目を瞑り下を向いたまま微動だにせずじっとしていた。

 

 アルファは完全に利己目的でチームIを使用した。本来ならベアトリーチェへ許可をいただかなければならないところを無断で部隊を使い、挙句の果てには壊滅状態へとさせてしまった。

 

「……マダム、その少女は神秘を秘めております」

「……それは何故わかるのですか?」

黒服(・・)からこのように伺っております。姉妹は神秘の性質が似ると…。かの少女が秘めていた神秘は私が宿す神秘(・・・・・・)と引けを取らない同格のもの。妹も似たような神秘を秘めているかと存じます」

「黒服の説は信憑性が欠けるのですが…アルファ、貴方がその事例ですからね…。良いでしょう、その旨を信じてあげましょう」

「……御礼申し上げます」

 

 神秘。それはキヴォトスの生徒が宿す内なる力。神秘の保有量が多ければ多いほど高い恩恵を受け、一部の生徒は人知を超えた能力を使用できる。

 中でも神秘を自覚して使える生徒は数しれず。アリウス自治区に至ってはアルファ以外に神秘を使用できる生徒は在籍していない。

 だがアルファやベアトリーチェの言う、かの少女と呼ばれるクシナの姉はアルファと同様、自身の神秘を自覚した上で能力を使用していた。

 

 とあることがきっかけでそのことがバレたクシナの姉はスクワッドに目をつけられ、悲惨な末路を辿ることとなった…。しかし先程アルファが述べた通り神秘は姉妹で類似する。それも姉が神秘を自覚しているとなれば妹のクシナも同様だと期待されるのも無理は無い。

 

「ですが自分達ならともかく無断で部隊を使用した挙句、壊滅状態になるとはこれは如何に。どのようにおとしまいを付けるのでしょうか」

「マダムが望む罰を受け入れます。ただ私からひとつだけ提案させていただきたく存じますがよろしいでしょうか」

「……このような事態を招き要望を?図々しいにも程がありますねぇ……たかが生徒の1人、いくら自身の神秘が優れているからといって私が融通するとお思いで?」

「ですので汚名返上を行いたく提案をさせていただきたいのです」

「……ふむ、してその内容は?」

「我々スクワッドへ奴を捉える任務を降していただけないでしょうか。またその任務と合わせてマダムが求むロイヤルブラッドも連れてくると約束しましょう」

「……ほう」

 

 ベアトリーチェは目の色を変え、開いていた扇子を閉じて口角を少し上げながら閉じた扇子をアルファを指すように向ける。

 

「良いでしょう。ゆめゆめ、その言葉お忘れなきよう…。では目的の少女の名を伺いましょう」

「……名は紅耶クシナ。かの少女の妹君であります」

 

 意識が回復したチームIのメンバーより聞き出したクシナの名をアルファは告げる。

 

「承知しました。ではスクワッド」

『はっ!』

 

 ベアトリーチェがスクワッドの名を口にした途端、先程まで黙っていたベータ、ガンマは口を開きアルファと声を合わせて返事をする。

 

「ロイヤルブラッド、及び紅耶クシナの強奪任務を与えます。猶予は特に設けません。貴方達が望む日、望む状態、望む環境での決行を認めます。スクワッド…アリウス最強の特殊部隊であることを自覚の上、任務を遂行するよう務めなさい」

『了解!』

 

 任務を与えられたスクワッドはベアトリーチェ、もといマダムの期待に応えるべき大きな声量で返事をする。

 

「アルファ、後日で結構です。私に作戦書を提出なさい。以上です」

「……承知しました」

 

 任務を下されたアルファ達は謁見の間から退室する。スクワッド含む各部隊の部隊室が連なる棟へと続く長い廊下を歩く中、ベータが先行して口を開いた。

 

「アルファちゃん大分詰められてたねー。チビった?」

「……黙れ。俺は今機嫌が悪いんだ」

「悪いんだって自分がまいた種なのにね。よく言うよ。はあーアルファちゃんのせいで面倒臭い任務与えられたんだよ。もう面倒くさいったらあらしない」

「ベータ、アルファのお陰で任務程度で済んだのがわからないのか?最悪スクワッドの称号を剥奪されてもおかしくなかったんだぞ」

「……相変わずガンマちゃんはアルファちゃん信者だなーで?面倒臭いし明日辺りにでも襲撃しちゃう?」

「……暫くは様子を見る」

「はぁぁぁぁああ?」

 

 まさかの返答にベータは大声で内容を聞き返すかのように声を上げた。

 

「マダムは猶予を設けないと言っていた。なら…限界まで精神を追い込んだ方が面白いだろ?」

「アルファ、具体的な作戦は?」

「部隊室で説明する。だから黙って着いてこい」

「了解、隊長殿」

「本当つまんないなーはいはい了解りょうかーい」

「…………………………………………………………」

 

 アルファは懐からチームIが持ち帰った例の写真を拝見する。そこには幼少期の頃より成長したクシナの姿が写っていた。

 

「ふっ、紅耶クシナ、か…。お前の神秘と俺の神秘、どっちが優れてるんだろうなぁ?」

 

 写真を再び懐へ戻しアルファは自身の部隊室目指して歩を進めるのであった。




お姉ちゃん命令…いいと思いませんか?それと肩にナイフが刺さったというのに腕立てを伏せを難なくしてみせる主人公。これはドン引きですね。ヒヨリが正しいよ。

はい、ベアおば登場でーす。これから本格的に奴が絡んできます。お楽しみに(?)

さて、久しぶりの投稿ですが感想をいただけると凄く嬉しいです。
僕のモチベが爆上がりします。

ではまた次回の話しでお会いしましょう!
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