誰が為に私は魔女になる   作:オオル

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新年明けましておめでとうございます。
今年初投稿が2月になるとは思いもしませんでした。
本当に申し訳ないです。

休止してた理由は長くは語りません。
モチベが下がってたので執筆活動を休止してました…。

今回は前半ほのぼの系です。後半少しシリアス系です。

それではどうぞ!


家族写真を撮ったことはありますか?

 私とミサキが襲撃されたあの日から半年が経過した。あの日は住処に戻り荷物を纏めて夜逃げを決行した。幸い食料に関してはサオリ姉達の備蓄と私が持参していたものを合わせてかなりの量を確保していたため、暫くは食糧不足に陥ることはなかった。

 

 そしてあの日を境にアリウス生から襲撃される機会が増加した。住処を移してもまるで悟られているかのようにピンポイントで住処を特定され、私達は日々、アリウスの襲撃に備えながら生活する日々が続いていた。

 

「クシナ、何してるの?」

「んー?工作だよ工作。爆弾のね」

「爆弾の?」

「そそ、今日こそ完成すると思うんだよねー」

 

 昨日から住み始めた新たな住処には寝室とは別に自由に使える部屋が存在する。その部屋の隅で私はアリウス生から奪った爆弾を使ってとあるものを作成していた。

 

「ごめんねアツコ、今日のデートもお家デートになりそう」

「ううん、気にしないで。私はクシナと2人で一緒にいられるだけで嬉しい」

「本当は外に出たいけど最近…ね。冬も真っ只中、雪も積もってるから私達の姿が目立つから…」

 

 あれから毎朝アツコとのデートは続いていた。本来なら以前みたいに外に出て少し遠くまで散歩したいがこの季節になるとどうも難しいようだ。

 

 なんせ外は雪が積もり一面白銀の世界。そんな中、白以外の服装を装った私達はよく目立ってしまう。だから外出は殆どできないんだ。

 

「不便な季節になっちゃったね」

「本当だよ…。なんてったって寒いからね。ミサキ、大丈夫かな」

 

 ミサキは寒がりだから眠りにつくまでは暖を取るため常に私に抱きついているんだ。

おまけで深夜や早朝に抜け出すのが大変だこと…そして次の日に何故いなくなったのかと怒られる始末。寒い時は温めると約束した身だがずっと拘束されてちゃやりたいことができない。許せミサキ。

 

「さっき見てきたけどミサキならヒヨリに抱きついてたよ」

「え、なにそれ…ミサキ、私以外の女を抱いたのか…。」

「ふふっ、嫉妬?」

「わーんヒヨリが羨ましいよー。アツコ、抱きしめてくれないか?」

「はーい♪」

 

 アツコは私の悪ふさげの発言だというのに真に受け優しく包み込むように背後から抱きついてくれる。

ここ半年間、色んなことがあったものだから私達家族は私含め、今までよりも親密な関係を築き上げた。

 

「?クシナ、寒い?」

「……寒かったけどアツコのお陰で暖かいよ。ありがとう」

「そう……でも今日のクシナ、何時もより冷えてたから気になっちゃって…。ちゃんとご飯食べてる?」

「食べてる食べてる。実は昨日なんてみんなに内緒で肉の煮物の缶詰めを食べたんだ」

「お肉!?むぅーずるい」

「なんなら火を炊いてぐつぐつに煮込んだやつを食べだよ。いやぁー思い出すだけでヨダレが出るよ」

 

 私はヨダレを拭うような仕草を取りながら語った。だがそんな大層なものなど私は決して食べてない。というよりもご飯はここ最近まともに食していないんだ。

 

 当時は備蓄のおかけで食料は潤沢であった。しかし半年が経過したとなれば話が変わってくる。なんせ生きていく上で食事は必須。それも大家族となると消費する量は計り知れない。

 

 私は少しでもみんなに空腹で苦しんで欲しくないがために絶食をしている。私が我慢すれば他のみんなは少しだけ多くご飯が食べられるからな。

 

 なに、私は数ヶ月ぐらい食べなくてもやっていけるよ。ただ…軽い栄養失調に陥ってるみたいで今までより体温が低くなっているようだ。アツコは勘がいいから先程気付かれたようだけど…上手く誤魔化せたかな。

 

「寝ずの番している人達の特権だよ。サオリ姉なんてこないだコーヒー飲んでたよ」

「コーヒーは苦いから嫌い」

「まだアツコには早いか…。えっと、これをこうして…と」

 

 奪った爆弾にとある部品を装着して、これまた奪ったはんだごてを使って電線を接続させる。

 

「焦げ臭いね」

「鉄を溶かしてるからね…。よし、一旦完成。作業しながら話してごめんね。もう終わったから」

「ううん。私の方こそ邪魔してごめんなさい」

「じゃあお互い謝ったしごめんなさいは相殺ってことで」

「ふふ、クシナは相変わらず変なこと言うね。じゃあ皆が起きるまでなにして過ごそうか」

 

 こうしてみんなが目を覚ますまで妹ズは日課のデートに勤しむのであった。

 

◆◆◆◆

 

 時は深夜。今夜の寝ずの番はサオリ姉だ。毎度おなじみミサキが私を抱き枕として利用しているため抜け出すのに苦労はしたが…私の布団をいい感じにまとめてダミーを作ったからしばらくは騙せれるはず。

 

 てことでミサキが起きるまで私はフリーに動ける。だけどサオリ姉が寝ずの番として見張っている限り、私は深夜に1人で抜け出していたことがサオリ姉にバレるに違いない。

 

 バレて殺されるとわかっててもやってしまう…。人の好奇心というのは罰があっても抑えられるものではないってことか。

 

「うぅー寒いなー」

 

 瓦礫に積もった雪を素手で退ける。冷えた指に息を吹きかけ温めたところで後続の作業に取り掛かる。そして今朝、制作した爆弾を瓦礫の隙間に入れ、先程どかした瓦礫を積み直す。

 

「……よし」

 

 一通りの準備を終えた私がボソリと声を漏らした。

 

 すると。

 

「何がよしなの?」

「!?」

 

 真後ろから低い声音で誰かが私に問うた。

 

 鼓膜が声を拾った瞬間、私は体を動かし背後にいるであろうその人物から距離を置く。

 

「……って!ミサキじゃんか!」

 

 距離を置き、遠くから話しかけた人物の容姿を確認すればなんと見慣れた人物。私達姉妹の次女ことミサキの姿があった。

 

「さすがの瞬発力…と、褒めたいところだけど…何してたの?」

「あーえっと。じ、実は遠隔式爆弾の制作を行ってまして…それの稼働実験をと…。いや言いたいことは分かるよ?でもここ最近不発ばっかりだし今回も成功しないと思うんだ!」

 

 夜中に爆弾を起爆なんてすれば周囲に爆音が鳴り響く。そんなことをすれば辺りを徘徊している可能性が高いアリウス生に自分達の居場所を晒しているようなものだ。

 

 だが先ほどミサキに伝えた通り、ここ最近夜な夜な実験を行っても上手く起爆しないから今日も問題ないはず…成功してなければだがな。

 

「まあ別にいいけど。それと、クシナが勝手に出て行ったことサオリ姉にバレてるから」

「……それはなんとなく察してた」

 

 大方私が外出したことに気付いたサオリ姉は持ち場を離れる訳にも行かず、ミサキへそのことを伝え迎えに行くよう指示を出したのだろう。

 

「ねえ、約束。クシナを抱かないと寒くて眠れないんだけど?」

「……いや、少しだけなら…ね?」

「寒い時は私を温めてくれるんじゃなかったの?」

「ご、ごめんって」

 

 謝罪の言葉を告げるもミサキの表情は晴れない。って不機嫌そうな顔をしているのはいつものことか…なんて本人に言えるわけない。

 

「でもお願い!1回だけ!1回だけ実験させて!どうせ失敗するから!」

「……失敗するってわかってるのになんでやりたがるの?無意味でしょ」

「も、もしたから成功するかもしれないじゃん?」

「話が矛盾してるんだけど…。それに成功されると困る。爆弾の実験でしょ?成功したら辺りに轟音が響くってわからない?」

「い、いや…それは好奇心ってやつだよ」

「クシナの好奇心に付き合って痛い目に見るのは嫌」

「ぐぬぬ…」

 

 長女のサオリ姉に続き次女のミサキにも口で勝てないとは…。

 

 言葉ってのは難しいな。まあ私にとって言葉は人を欺き、煽るためにあるものだと思ってるんだけどね。

 

 ならば…!

 

「わかった。わかりましたよ…。ミサキの指示に従うよ。帰ろう」

 

 反省してますよ感を出しながら適当に言葉を並べる。

 

「わかったなら早く戻るよ。ここは寒い」

「うん」

 

 私が観念したと思ったか?なわけないだろ!怒られるとわかっていても人間の好奇心は抑えられねーんだよ!!

 

「……と見せかけてせーい!!」

 

 私が作成したの遠隔式爆弾だ。握っていた起爆スイッチを何食わぬ顔でしれっと押し込み起爆した。

 

『!!!???』

 

 実験は奇しくも成功してしまったようだ。ミサキが述べた通り周囲に爆発音の轟音が鳴り響く。

 

「あ、あはは!せ、成功しちゃった!」

 

 数ヶ月間の試行錯誤の上、完全独学で通常の爆弾をC4のように遠隔式爆弾へと改造することに成功した。

 

 あまりの喜びに私はその場で飛び跳ね喜ぶ…が、なんとなく心の内では今回の実験で成功するだろうと感じていたんだ。

 

「…………………………………………………………」

 

 ミサキはそんな私に対してゴミでも見るかのように冷たい眼差しを送っていた。

 

「ごめんって。でもほら、これでC4爆弾の節約になるでしょ?これから私がじゃんじゃん爆弾を作るからそれでいいってことで」

「全然良くない。アリウス生が来たらどうするの?」

「でも深夜だよ?日を跨いだばっかりだからそう彷徨いてないって」

 

 笑いながら私はミサキに言う。

 

「いたぞ!戒野ミサキと紅耶クシナだ!」

「え?」

 

 だがこんな世界はそんなに甘くは無いみたいだ。

 先程の爆弾を聞き受けたアリウス生達が私達の元へやって来たようだ。

 

「……ほら来た。どうする?」

「てめえら!何勝手に爆発音を頼りにやって来てんだ!?引っ込んでろこのクソカス共がぁ!」

 

 クシナは暴言を吐きながらナイフをレッグホルスターから抜き出す。

 そして八つ当たりかのようにアリウス生達を一人残らず蹴散らせてみせた。

 

「て、撤退!総員一時撤退だ!」

 

 半壊した部隊は部隊長の指示に従い気を失った仲間達を背に担ぎ撤退していく。

 

「二度と来んなアホ共!」

 

 私は威嚇するよう両手を上げ大声で告げた。

 

「アホはお前だ馬鹿者」

「痛いっ!」

 

 背後から何者かに後頭部を殴られた。振り向き、殴った人物を確認した。するとサオリ姉が笑みを浮かべながら拳を上げて背後に立っている。

 

「げっ!サオリ姉!」

 

 自慢じゃないが私は打たれ強さには自信がある。だがサオリ姉の拳は何故か痛い。なんでもサオリ姉曰く愛ある拳は頑丈だとか、打たれ強いだとか関係ないらしい。

 

「夜な夜な抜け出して何をしているかと思えば…。危険な行為だとは思わなかったのか?」

「……ごめん。でも少しでもみんなの力になれるならって、思って…。爆弾の実験を…。」ウルウル

「!……クシナ…。」

 

 私は涙目になりながらサオリ姉に自身の思いを語った。サオリは私の涙に驚きボソリと私の名を呼ぶ…。

 

 サオリ姉に口では勝てない。ならば別の手段…そう、嘘泣きだ。サオリ姉は私達妹の涙には弱いからな。これでお仕置から逃れられるはず!

 

「サオリ姉さん、騙されないで。クシナは襲撃より好奇心が勝って実験しただけだよ」

「ちょ!ミサキ!何を言ってるんだ!?」

「サオリ姉さんは情に脆いから。特に私達の涙にはね。クシナはそれをわかっててサオリ姉さんを嵌めようとした。違う?」

「…………ふっ、クシナ?」

「あ、はい」

 

 恐ろしいほど屈託のない笑顔でサオリ姉が拳を私に見せつける。

 

 ああ、これはもう一発愛ある拳を食らうな…。

 

「ふんっ!」

「んぎゃぁぁあ!痛ってえ!なんでこんなに痛いの!?」

「言っただろ、愛ある拳は最強だと」

「だから意味わかんねーよそれ!」

「うるさい。黙って部屋から自分の武器を持ってこい。そして武器を所持した状態での2時間走り込みの罰を与える」

「ひぇぇぇ〜」

「わかったら返事をしろ!」

「わかったって!行ってくるから!走るから!」

 

 嘘泣きをすることでサオリからの罰を帳消しにできるかと思ったクシナであったが、ミサキの告げ口によりそうはならなかったようだ。

 

「……1人で走らせていいの?」

 

 武器を取りに行くクシナの背を眺めながらミサキがサオリに問う。

 

「さっき襲撃を受けたばかりだよ。周囲にアリウス生が控えているかもしれない」

「……なあミサキ、1つ確認したい」

「……私の質問には答えないの?……まあ別にいいけど、それで確認したいことって?」

 

 サオリはクシナとアリウス生が戦闘を行っていたであろう悲惨な現場に向かって歩を進める。

 それに着いていくようミサキは後を追う。

 

「さっきの襲撃、あれはクシナ1人で戦ったのか?」

「……ご想像通り。私は一切手を出してないよ」

「!…………まさかここまで成長するとはな」

 

 現場には深い傷を負ったであろうアリウス生の血痕が幾つも見受けられる。それに対して先程顔を合わせたクシナにかすり傷などひとつも見受けられなかった。

 

「…………………………………………………………」

 

 遠くを眺めると先程まで1人で戦闘を行っていたというのに、何事も無かったかのようにサオリの指示に従い、新調したサブマシンガンを片手に周囲を走るクシナの姿が目に入る。

 

「サオリ姉さんの指導の賜物でしょ」

「……いや、それ以前にあいつは…」

「謙遜しなくていいよ。サオリ姉さんは教えるの上手だから」

「……………………………………………………」

 

 あれ以来、サオリは余裕があればクシナの戦闘訓練に時間を使っていた。

 多い日で1日10時間もぶっ続けで訓練を行う日だってあった。だがクシナは根を上げることなく、サオリの厳しい訓練に食らいつき確かな力を手に入れた。

 

「どうしたの?」

「……なんでもない。それよりここは冷える、早く家に戻った方がいい。クシナは私が見守るから安心しろ」

「……わかった。じゃあお言葉に甘えて先に戻らせてもらう。クシナのこと頼んだから」

「ああ」

 

 ミサキは寒がるように口元をパーカーの襟で覆い隠し住処へと向けて歩き出す。サオリはその様子を横目で見つめ、ミサキが通り過ぎたところで視線を再びクシナへと向ける。

 

「……なんだこの気持ちは…。」

 

 サオリはクシナから視線を逸らし自身の胸を抑える。

 

 姉とは妹の手本となる存在。

 

 妹は姉を見ながら、そして姉の経験したことを活かして要領良く成長していくものだ。

 

 だから妹が姉より勝るのは必然だ。

 

 クシナが一人前に成長して心底嬉しい。

 

 でも、どうも心が晴れない。

 

 この気持ちは何なのだろうか。

 

「クシナの姉ならわかるのだろうか…。」

 

 サオリは自身が抱いた感情に違和感を抱いたまま、外を走るクシナへと三度、視線を向けるのであった。

 

◆◆◆◆

 

「……最近おかしいと思わないか?」

「……何が?」

「えへへ、何がですか?」

「サッちゃん?どうしたの?」

 

 監視役として周囲を見張っていたサオリ姉が、上から降りてくるや否や口を開いた。

 

 それに対してミサキ、ヒヨリ、アツコ、の3人が順番に話しかけてきた。

 

 3人は拾ってきたボロボロのトランプでババ抜きをしていた。ヒヨリが笑ってたってことはババを誰かが引いてくれたんだろう。返事に間があったミサキが引いたのだろうか。

 

 一方私はと言うとみんなから少し離れたところでとある物の修理に勤しんでいた。ちなみに言っておくが爆弾ではない。

 

「ここ1週間襲撃されていないんだぞ」

「……さあ?連中がサオリ姉さんとクシナに恐れて襲撃することを諦めたんじゃない?はい、姫」

「!…………最近の襲撃は失敗続きだからね。はい、ヒヨリ」

「はうっ!ど、どうしてババ抜きでも不幸なのでしょうか……理不尽です……うぅ」

 

 どうやらババがまたヒヨリの元へ戻ったようだ。手元からいなくなったかと思えばすぐに帰ってきたからな。まあ傷付くのも無理はないか。

 

 と、まあサオリ姉の言う通り1週間も襲撃にあっていないため、ババ抜きをするぐらい平穏である。

 

「姫とヒヨリは兎も角、ミサキ、お前は適当な返事をするな」

「手厳しい…。言われてみれば違和感しかないね。何か企んでそう」

「クシナはどう思うんだ?」

「……んー?ミサキと同意かな。1週間も期間を空けてるんだ。何か大掛かりな作戦でも計画してるんだと思ってる」

「…………お前はまた何をしているんだ」

 

 作業をしながら答えるとサオリ姉に突っ込まれてしまった。

 

「クシナ、また爆弾を作ってるの?」

「爆弾はもう腐るほど作ったよ。ここ数日間落ち着いていたし…さっき話したことを考えてたから準備してた」

「……クシナちゃん、ちゃんと寝てますか?こ、こないだも夜遅くまで似たような作業してましたよね……?」

「うん、寝てるよ」

 

 即答するも嘘だ。

 

 ここ5日間は寝てないし勿論何も食べてない。

 

 アリウスからの襲撃が無くなった日から2日経過した辺りで私は奴らがよからぬ事を計画していると感じ取った。だから全ての時間を使って爆弾の作成に勤しんだ訳だ。

 

「そ、それならいいんですけど……。な、なんだか最近のクシナちゃんは元気がなさそうに見えるので……」

「そんなことはないと思うけどなぁ……よし!できた!」

 

 完成の言葉と同時に顔を皆に見せる。

 

 もちろん笑顔でだ。

 

「?カメラか?」

「カメラって写真を撮る機械のこと…だよね?」

「そうだよ。ほら!アツコ笑って笑って!」

「!う、うん!」

 

 アツコは急に笑えと言われても見入ってしまう可憐な笑顔を咄嗟に作る。

 流石お姫様、笑顔が眩しすぎますよ。

 

「ちょっと待ってね。今、転写中だからさ」

『???』

 

 私の言葉が理解できなかったのか、サオリ姉を含め全員が頭に?を浮かべ首を傾げていた。

 

 サオリ姉やミサキは写真の存在は知ってるはずだ。だが転写という単語は聞き慣れてないんだろう。大方、仕組みとか知らないが写真という存在は把握してるっところか。

 

「詳しいんだな」

「その昔、私の素顔を撮ろうとしたアリウス生がいてね…。そいつを追っかけて色々と聞き出したんだー」

「顔一面アリウス生の返り血で真っ赤な状態。しかも笑顔で追い回してたあれでしょ。敵ながら気の毒だなと同情したよ。あれはもう魔女だよ」

 

 ミサキはため息混じりそう発言した。

 

 このままでは私が血塗れた状態で笑顔を浮かべながら敵を追い回す狂気じみた魔女になってしまいかねないため否定させていただくが、笑っていた理由は家族の写真が撮れる喜びから笑みを浮かべていただけにすぎない。

 

 その後、無事にカメラを強奪した私であったが、故障していたため使用できない状態だった。多分だけど血が基盤に付着しすぎて汚れたから上手く使えなかったんだと思う…。

 

「あ、あれは流石にやりすぎですよ……」

「でもクシナ楽しそうだったよ?」

「……姫の教育に悪いから今度からは控えるんだぞ」

「もう追い回す必要ないからしないって。ほら、写真ができたよ!」

 

 カメラから取り出したフィルムにはアツコの素顔が綺麗に転写されていた。

 奪い取った時に使い方の説明は聞き出したが修理の仕方までは聞いてなかったからな。修理できるか不安だったがどのように作業すれば治るか感覚を頼りにやってみたところ成功した。

 

 遠隔式爆弾の製作や戦闘中に感じた勘に従うと、どうも因果関係のように私を正解に導くところがある。わかりやすく言うと「この勘に従えば答えに辿り着ける」と言ったところだ。

 

「(最近は精度が増して来てるんだよな…)」

 

 当初は勘に従っても上手くいかずに失敗することが多々あった。でも今は違う。寧ろ少しだけだが勘が当たりすぎて怖いぐらいだ。

 

「はい、転写完了。見て見てー」

 

 近くにいたヒヨリに写真を渡す。

 

「わっ!姫ちゃんの顔が紙に写ってます!」

「ふはは、凄いだろ凄いだろ。もっと私を褒めてくれても構わんぞ。ふはは」

「いや、凄いのはカメラであってクシナでは無いから。あと2回も笑う必要あった?」

「修理したのは私だ。私がいなければアツコの写真は撮れなかったからな。あ、言っとくがアツコの写真は私が貰うからねー」

 

 私はヒヨリに渡したアツコの写真を回収する。再び手元に戻ってきたところでみんなに自慢するかのようにアツコの写真を見せびらかし先のセリフを述べた。

 

「ずるい。私も欲しい」

「少し待て。どう考えても姉である私が保有…もとい、管理すべきだ。クシナが管理するとなれば雑に扱うに違いない」

「で、でも最初に渡されたのは私ですし……えへへ、真っ先に触れた人に所有権があると思いますよ……?」

「何を言いますかお姉さん方。私が奪って修理したカメラで転写した写真だぞ?所有権は私にあるに決まってるでしょうが!」

 

 やはりみんなアツコのことを好いているようだ。

 

 そりゃこんな容姿端麗、且つ満面の笑みを浮かべた女神のようなアツコの写真だと、お金を掛けるとなれば数百万、いや数千万で落札されるような写真なのだから欲しがるのは無理もない。

 

 だからこそそんな写真は例え家族であっても渡すわけがないでしょうが!

 

「みんな欲しいなら人数分撮ればいいんじゃないの?」

「フィルムには限りがあるんだよ。撮れてあと数回ってところでさ、できれば家族全員が写っている写真が欲しいからー」

「つまり姫ちゃんの写真を撮るためにフィルムを無駄遣いしたくないってこと……ですか?」

「ヒヨリ、なんてことを言い出すんだ!私はそんなこと1ミリも思ってないぞ!?」

 

 そう思われても仕方がない言い方だったかも知れないけどさ!ド直球すぎませんかヒヨリさんよ!?

 

「限りがあるなら仕方がないね。私より家族と一緒に撮ることを優先すべきだよ」

「……じゃあ写真を撮った後、フィルムが残ってたら姫の写真を人数分撮るってのはどう?」

「ミサキ、名案だ。だが最悪、人数分撮れない場合は……」

「私抜きでじゃんけんですね。で、ではクシナちゃん、姫ちゃんの写真を渡してください……えへへ」

『(図々しい奴だな)』

 

 微笑みながら私に写真を渡すよう急かすヒヨリに対して私は図々しい奴だなと思う。サオリ姉やミサキも目を細めてヒヨリを見つめているから私と同じことを考えているはずだ。

 

「……まあフィルムが余れば手に入るからいいか。ヒヨリ、大切にしてね」

 

 私は再びアツコの写真をヒヨリに渡す。

 

 後で何か言われても困るからな。潔く渡しておくことで厄介事を避けるならそれに越したことはないからね。

 

「ありがとうございます!姫ちゃん!大切にします!」

「ふふ、少し恥ずかしいけどヒヨリが喜んでくれるなら嬉しいよ。じゃあ問題も解決したみたいだしみんなで写真を撮ろっか」

「わかった。じゃあ私がカメラマンになるからみんなで並んで!」

 

 私はみんなの輪から離れてシャッターポイントへと向かう。これぐらいの距離であれば一面に家族全員を収めることができるはずだ。

 

「おい、クシナはどうなる?お前がカメラマンになるなら写らないだろ」

「……んーでも誰かがシャッターボタンを押さないとだからー仕方がないよ」

「……クシナがいなと家族写真とは言えなくない?」

「ミサキさんの言う通りですよ。クシナちゃんも家族ですから、一緒に映らないと意味があ、ありません!」

「……………………んー」

 

 フィルムに余裕があるなら石を投げてとか挑戦はできるけど…なんかこう爆弾のように遠隔でシャッターボタンが押せればいいんだけどなー

 

「じゃあ今から撮る写真の隣にクシナ1人だけの写真を並べて飾ろうよ。そうすればみんな一緒だよ」

 

 だとしたら私が1人だけ浮いてるように見えるんだが…って言ってる場合か。

 

「(この後やりたいこともあるしな)」

 

 アツコの提案を受け入れて早く家族写真を撮ろう。

 

「それで行こう。じゃあ写真を撮るから並んで並んで!」

「クシナがいいと言うならいいが…フィルムが余るようなら次は私がカメラマンになるからな」

「?いいけどアツコの写真が人数分撮れるかわからないよ?」

「姫の顔なら写真でなくても何時でも拝めれる。それにクシナは家族の一員だ。単体ではなく家族と並んで写っている写真があった方がいい」

「(拝めれる…?)」

 

 サオリ姉がたまに言葉を間違えるのはあれか、わざとなのだろうか。

 

「その時はサッちゃん単体の写真を撮らないとね」

「……そうだな。その時は是非撮らせてもらうとしよう」

「と、とりあえずこれでなんとなりそうですね……。」

 

 ヒヨリの言葉を最後に口論は終了となった。

 

 再度みんなへ並ぶように指示を出す。左からミサキ、アツコ、サオリ姉、ヒヨリの順番で並ぶ。サオリ姉は左右の手でアツコとヒヨリは引き寄せる。

 

「いざ写真を撮るとなると…なんか恥ずかしい」

「ほら、ミサキも近寄れ」

「う、うん……」

 

 他の2人と同様にサオリ姉はミサキの手を取り引き寄せた。

 

「(うん、完璧な構図だな)」

 

「ほら!みんな笑って!」

 

 私の言葉に従うようアツコとサオリ姉は笑う。ヒヨリは任意で笑顔を作ることに慣れてないようで笑顔がぎこちなかった。

 ミサキは…笑ってくれる様子がなかったから他の3人の表情を優先にしてベストタイミングでシャッターボタンを押す。

 

「…………………………………………………………」

「……?クシナ?」

「ごめん!少しブレたみたいだからもう1枚撮らせて!」

「……また撮るの?」

「そう言うなミサキ、フィルムが無駄になったのは残念だが…写るなら綺麗に写りたいだろ?」

「本当にごめん!もう1枚だけ!お願い!」

「……2人がそう言うなら従うよ」

 

 いやーブレたなんて嘘なんですけどね。

 

 アツコがさっき言ったことになるのなら撮った写真は飾ることになってしまう。それじゃ私は満足できない。何時でも家族の顔を見れるように手元で写真を管理したい。だから…許せみんな、私のわがままに付き合ってくれ。

 

 私は転写した写真をポッケトに収め再びシャッターボタンを押す。

 

 転写された写真を確認して言葉を発する。

 

「うん!今度はバッチリ!」

 

 みんなに写真を見せる。全員が集まり家族写真の出来を確認していた。

 

「ぐっ、姫…!なんて笑顔が似合うんだ…!」

「もーうサッちゃん大袈裟すぎるよ。そう言うサッちゃんも素敵な笑顔だよ」

「……私の顔ってこんな感じなんだ…。あんまり見ないから実感が湧かないかな」

「ミサキさんはいつもこんな感じの表情されてますよ。変なところなんてないかと……。」

「え?あ、うん?」

 

 褒められてるのか貶されてるのか。わからないがヒヨリは貶すようなことは言うはずがないから消去法で褒められてるんだろうと思うことにしたミサキであった。

 

「ほら、次はクシナの番だよ」

「……あー本当にごめん。さっきのでフィルムを使い切ったみたい」

「え?そうなの?」

「うん」

 

 フィルムパックを取り出し中を開けてフィルムが入っていないことを見せる。

 

「そんな…クシナの写真楽しみにしてたのに」

「落ち込まないでよアツコ、フィルムはまた奪えばいい。今度襲撃された時はアリウス生の全員にフィルムを持ってないか追いかけ回すからさ!」

「はは、もう追い回す必要はなかったんじゃないか?」

「たった今できたんだよ」

「いいけど表情には気を付けてね」

「い、言われなくても気を付けるっての」

「そ、それと顔に血が付着してたらちゃんと洗ってからにしてくださいね……。」

「…………あ、はい」

 

 まあ前回の行いが悪かったから釘を刺されるのは仕方がないか。

 

 でもまさかこのタイミングでフィルムが切れるとは…なんか私が1枚嘘ついたせいで足りなくなったけど…まあ私の写真ぐらいなくても支障はないだろ。それこそフィルムが再び手に入った時に写真を撮ればいい話だしな。

 

 それより。

 

「さてと、写真撮影も終わったことだし次の作業に移ろうか」

「次の作業だと?」

「うん、悪いけどアツコとヒヨリは席を外してくれないか?3人だけで話したいんだ」

「……わかった。行くよヒヨリ」

「?は、はい」

 

 なんとなく察してくれたアツコがヒヨリを連れて別の部屋へと移動する。

 

「それで?アツコとヒヨリを外してでも話したい次の作業ってとはなんだ?」

「さっきサオリ姉が言ってたことについてだよ」

「……ああ、アリウスの襲撃についてか」

「何か企んでるってやつでしょ。もしかして…何か対策があったりするの?」

「ご名答。こうなることを見越して私は準備をしてたんだ」

 

 私は押し入れに移動して襖を勢いよく開く。

 

「私が独学で製作した遠隔式爆弾だよ。動作確認は以前実施済、こいつを周囲にトラップとして設置してアリウス生を迎え撃つ」

「!こ、この数…お前、いつの間にこれだけの爆弾を!?」

「……一度完成すれば複製は他愛ないよ。ひとつ作るのに数分程度で終わるからね」

 

 寝る間を惜しんで製作したなど言えたもんじゃない。絶対私の身を心配してサオリ姉に説教されかねないからな。

 

「設置場所の目安は既に付けている」

 

 地図を床に広げて2人に見せる。余談だがこの地図も自分で周囲を探索して作成した物だ。

 

「優先場所はここだ。ここの崖に爆弾を設置したい。いざとなれば起爆することでアリウス生を一網打尽にできる」

 

 2人が地図に対して何か問う前に設置ポイントを指差し話をかける。

 

「……今は積雪の影響で設置した爆弾を雪でカモフラージュしやすい。敵に悟られる心配は低いと見ていいだろう」

「万が一、アリウスが全部隊で襲撃してきたとしても上手くハマれば大打撃を与えることができるかもね」

「!でしょ?設置は私とサオリ姉で行うつもりだけどいい?」

「……じゃあ私はここに残って姫とヒヨリの警護をすればいい?」

「もとよりそう頼むつもりだった。いいかな?」

「……前に言ったはず。私が見限るまではクシナの言うことに従うって」

「勿論。そう答えてくれるって信じてたさ」

「…………あっそ」

 

 ミサキはぷいっとそっぽを向きボソリとそう答えた。何か間違った返答をしたのだろうか。

 

「善は急げだ。サオリ姉、早速仕掛けに行こう」

「そう急かすな。まずは準備が先だろ?」

「わかってるって。私の方で爆弾はまとめておくから他は頼んだー」

「……全く世話の焼ける末っ子だな」

「末っ子は我儘言っていいんだろ?」

「相変わらずのクソガキムーブ…。ああ、他の準備はこっちでする。そっちは頼んだぞ」

「あいあいさー」

「ミサキも姫とヒヨリを頼んだぞ」

「うん、2人とも気を付けてね」

 

 私とミサキは返事をして各々行動を始める。私は押し入れから爆弾をゆっくりと取りだしリュックに丁寧に詰める。

ここで誤って起爆でもしてみろ。うちが吹き飛んでしまうからな。

 

 ミサキは私とサオリ姉の元から離れ、別の部屋へと移動したアツコとヒヨリの元へ向かう。

話し声が聞こえるため、今から私とサオリ姉が外へ行く旨を伝えているんだろう。

 

 こうして準備を終えたクシナとサオリ、2人はクシナが地図に記した設置場所へ向い爆弾を設置するのであった。

 

◆◆◆◆

 

 場所はアリウス分校本部。アリウス最強と評される特殊部隊アリウススクワッドのリーダーであるアルファはベアトリーチェが居る謁見の間へと向かっていた。

 

「…………………………………………………………」

 

 謁見の間の入口についたアルファが扉を数回ノックする。

 

「……入りなさい」

 

 扉の向こうでベアトリーチェが入室する許可を下す。

 

「失礼いたします」

「これはこれはアルファ。任務から戻ってたのですね」

「はい、先程本部に戻りました。本件のご報告、及び次任務についてお話したくお時間を頂戴します」

「任務の報告でしたら報告書を提出なさい。聞いている時間が勿体ないですから」

「……ではそのようにいたします。続いて次任務についてですが…」

「そうですね。そちらは伺うとしましょうか。ですがスクワッドに課してた任務など……。」

 

 アルファの言う次任務に心当たりがなさそうなベアトリーチェ。だが、ふと以前下した任務を思い出し扇子で覆われていた口元の口角が上がる。

 

「ロイヤルブラッド、及び紅耶クシナの強奪任務、でしたか。ようやく動く気になったのですね」

「ええ、マダムより任務を受け半年が経過いたしました。当時、提出いたしました作戦書通り、必要以上に彼女達をアリウス全部隊で追い詰めております」

 

 クシナ達が半年間、必要以上に襲撃を受けていたのはスクワッドの考えた作戦が原因であったのだ。

 

「彼女達を追い詰め、衰えたところでスクワッドがトドメを刺す…。良い作戦ですが果たしてどうでしょうかね」

「例え衰えてなかったとしても我々スクワッドがあのような子供達に負けるはずなど有り得ません。ご安心ください」

「……ではここまでの仕打ちを考えたのはただ単に彼女達への嫌がらせと言った所でしょうか。相変わらず趣味が悪いですねぇ」

「はい、重々承知しております」

 

 ニヤリと性格が悪いいじめっ子がするような笑みを浮かべながらベアトリーチェに答えるアルファであった。

 

「本当、純粋で無垢であったあの日の……いえ、その名は捨てたと仰ってましたね。アビドス(・・・・)から来て3年ですか。随分と容姿も性格も変わりましたね、アルファ」

「ご冗談を。私に純粋で無垢であった時などありません。それに変わったと言っても心の内に秘めた信念は何年経とうと変わっておりません」

「ふふ、それで良いのです。その信念を貫き通したあなただから神秘は応えてくれたのですよ」

 

 そうは言うもののベアトリーチェはアルファに自身の意見が悟られないよう言葉を飾ったに過ぎない。

 

 実際、内心では。

 

「(まあ黒服の実験のおかげでもありますが…野暮なことを大人は言いませんからね)」

 

 と考えているからにアルファの努力などは配慮してないことが伺える。

 

「ではその神秘を…。アリウス最高の神秘の力を私に見せてください。良い報告を待ってますよ」

「はっ、マダムのご期待に応えれるようこのアルファ、必ずや任務を遂行いたします」

 

 任務を遂行すると宣言したアルファは一礼後、謁見の間から退室する。

 

「…………………………………………………………」

 

 アルファが退室する様を最後まで静かに見届けるベアトリーチェ。だが、アルファが退室した途端口を開く。

 

「アルファ達が敗れた場合は…。ふ、ふふ、そうなった場合は面白いことになるかもしれませんね」

 

 誰もいない謁見の間。ベアトリーチェはいつものように扇子で口元を隠す…のではなく、人とは思えないほどに口角を上げ、人目を気にせず気味の悪い笑みを浮かべていた。

 

「私も現地で観戦するとしましょうか」

 

 玉座から立ち上がりアルファに続くよう謁見の間を退室したベアトリーチェであった。




次回よりアリウス自治区編最終章開幕です。
なのであと数話で自治区編は終わりようやくエデン条約編へと移ります。

次回の投稿は…そうですね。モチベがあればすぐに投稿できると思います。
なので評価と感想をいただけるとモチベが上がってすぐに続きの話が投稿されたり…するかもですね|´-`)チラッ

ではまた次回のお話しでお会いしましょう。またね。
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