誰が為に私は魔女になる   作:オオル

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皆さん!お久しぶりです!
ブルアカ3.5周年おめでとうございます!
アニバーサリーガチャで新規限定生徒を2人ともお迎えできました!
(数万課金したけど実質ノーダメージだよねっ!)

タイトルの伏字は本編を読めば判明します。
残酷な描写がありますので苦手な方はブラウザーバックを推奨します。

それではどうぞ!


人を■■■ことはありますか?

『!』

 

 サオリとアツコは後方へと回避。それを追うようにベータが距離を詰める。

 

「まずは君からだよロイヤルブラッド!」

 

 ターゲットをアツコへと絞りベータはアツコを鎮圧すべく攻撃を仕掛ける。

 ベータは再度榴弾を砲弾。アツコは回避すべく行動を取るも積雪の影響により足を取られ先程のように上手く回避することが叶わなかった。

 

「つっかまーえたぁー!」

「…………………………………………………………」

 

 アツコは再びベータに捕まってしまった。それも1回目の時同様首を絞められるようにだ。

 だが今回は戦闘中での出来事、前回の不意打ちとは違い戦闘態勢の状態である今なら…。

 

「……甘いよ」

 

 アツコはベータの胸倉を掴む。そのまま後方へ仰向けになるよう勢いよく倒れ、釣られるようにベータはアツコに被るよう前方へ倒れ込む。

 だが倒れ込むよりも早くアツコは体制を整え、ベータの手を自身の首から外しそのまま腕を自分の太腿で挟んで絞める。畳み掛けるように自分の両手で相手の腕全体を反らせるように伸ばし俗に言う腕挫十字固を決め込む。

 

「くっ!このガキがぁ!調子に乗るなあぁぁあ!」

 

 格下に関節技を決め込まれたベータは今度こそ怒りを露わにする。

 ドスの効いた低い声でそう告げながらアツコの関節技から抜けるべく動き出す。

 

「逃がさない…!」

 

 アツコは腕に力を込める。だが歳の差もあり力で劣っているアツコではベータを止めれるのはせめて数秒程度…その隙にサオリが攻撃を仕掛ける。

 

「ふっ!」

 

 サオリはナイフを構え、アツコが固定したことで伸びきったベータの腕の付け根、脇の筋にナイフの刃を立てる。

 

「ッ!」

 

 あと少しで筋に刃が接触する寸前にベータの馬鹿力に負けてアツコの関節技が解かれてしまう。

 

「少し舐めてたよ。守られてるだけのお姫様かと思ってたけどそうでもないみたいだねぇー!」

「……もう私にはあなたの攻撃は効かないよ」

「はっ!一度関節技決めただけで調子に乗らないでよねぇー!」

 

 一瞬にしてアツコと距離を詰めるベータ。今度は手を伸ばすのではなく蹴りを決め込む、アツコは難なくその攻撃を防ぐ。

 しかし今回はなんの意味もなくアツコに接近したベータではない。

 

「……榴弾?」

 

 ベータはアツコに蹴りを決め込むと同時に地に向かって榴弾を砲弾していた。

 

「姫!」

 

 サオリが駆け寄りアツコの足元に転がる榴弾を蹴り飛ばす。

 それと同時にベータへと攻撃を仕掛け白兵戦へと持ち込む。

 

「君のお粗末な近接戦闘は効かないっての!」

「ああ、私一人ではな」

 

 サオリと入れ替わるよう後方へ下がったアツコがサブマシンガンのトリガーを引く。

 

「ちっ!」

 

 サオリとベータが肉薄する中、サオリを支援するかのようにアツコが的確な銃撃をベータへと行う。

 ベータには銃弾が効かない。そんなことはベータ本人が理解しているため、気にせずサオリへと攻撃を仕掛ける。

 

「あーもう!そんな攻撃効かないってのに!うざいなぁー!」

 

 ベータは意味もない攻撃に苛立ちを覚え声を上げる。だがその無意味な攻撃は止むことなく、的確にベータだけを射撃する。

 

「(ロイヤルブラッドの射撃性能がやけに良い…。違う、こいつが合わせてるのか…!)」

 

 サオリはアツコが射撃しやすいよう戦闘を行いながらベータを誘導していた。

 そのためアツコの攻撃はサオリには当たらず的確にベータだけを狙う。

 相当な信頼関係がなければできない芸当、併せて嫌いな近接戦闘が長丁場となりベータは更に苛立つ。

 

「大分イラついてる様子だな?」

「ッ!うるさいなぁー!」

 

 思い通りにいかずにストレスが溜まったベータの動きが大雑把となったことで、サオリはベータの攻撃を見切ることに成功した。

 

 サオリはその一瞬の隙を着き勝負に出る。

 

「!?」

 

 両手でベータの頭部を掴む。軽く飛翔した後、膝蹴りを顔面に決め込む。

続いて頭部から手を離し空中で体制を制御しつつ回し蹴りを頭部にくらわす。

 

 ベータは防御できずその場に生える木に叩き込まれるように倒れ込む。

 

「畳み掛ける!姫!」

「うん!」

 

 2人して銃火器のトリガーを引き銃弾の雨をこれでもかとベータに打ち込む。

 倒れ込む木に銃弾が着弾することで木片が周囲に散らばる。

 さらに細かくなった木片は粉のような粒子となり煙のように周囲に漂う。

 サオリとアツコはお互いの弾倉が尽きたところで攻撃を止め煙が晴れベータが姿を現す。

 

「…………………………………………………………」

 

 ベータは静かにガスマスクを抑えていた。

 

 ガスマスクから手を離した途端、装着していたガスマスクに亀裂が入り真っ二つに割れ、ベータの真の姿が顕になる。

 

「───見たな」

『…………………………………………………………』

 

 顕になったベータの顔はお世辞でも整っているとは言い難い顔であった。

 顔一面に火傷のような跡、至る所には銃痕が見受けられ痛々しい顔となっている。

 

「最悪。よりによってロイヤルブラッドに見られるなんて…!殺せないから私の顔が知られたままじゃんか…!」

 

 当初の余裕に満ちたベータは何処にもいない。

 髪を掻きむしり自分の顔を見られたことに苛立ちを隠せてない様子だ。

 

「…………………………………………………………」

 

 アツコは酷く痛々しい顔に哀れみの視線をベータへ送る。

 

「姫、同情するな」

「!……わかってる。相手はサッちゃんを傷付けた敵、だからね…」

 

 サオリとアツコの会話を聞いたベータが酷く取り乱す。

 

「同情だって…?てめえのような上品な顔をしてる奴が一番ムカつくんだよ…!私だってこんな怪我さえなければ顔を隠す必要なんてないって言うのに…!」

 

 アツコを酷く睨みつけベータは独白する。

 

「てめえのようなやつを見てるとイライラすんだよ…!どうせ可愛いからってチヤホヤされてるんだろ?妬ましい…!」

「当たり前だろ。お前とは違って姫は可愛いからな。私達家族全員が姫を溺愛してるぐらいだ」

「ちっ!あっそ。じゃあそのお姫様の顔面も私のようにしてあげる…!」

 

 言葉を吐くのと同時にベータが榴弾を発砲する。

 ベータの感情の起伏が激しく油断していたサオリとアツコは回避が少し遅れ榴弾の破片を微量ながら被弾する。

 

「ロイヤルブラッドを殺しちゃいけないからさぁー!殺さない程度にぶっ壊して私の顔を忘れさせてあげる…!」

 

 そうは言うもベータがまっさきに攻撃を仕掛けたのはサオリであった。

 

「なっ!?」

 

 アツコを標的にしていると思っていたものだから油断していたサオリは驚くも時すでに遅し。

 

 サオリはグレネードランチャーの銃口を押し付けられゼロ距離で榴弾を被弾。

 苦痛の声を上げるもベータは止まらずサオリから先刻奪ったハンドガンを手に取りこれまたゼロ距離で左肩に銃弾を打ち込む。

 畳み掛けるように顔面を掴み、ベータが先程までもたれていた木へ叩きつけるよう投げ飛ばす。

 投げ飛ばすのと同時にサオリの元へ駆け付け、サオリが握るナイフを奪い、右肩へ刃を突き刺す。

 その刃は背後の木にまで突き刺さりサオリは身動きが取れない状態に陥る。

 

「君さえ潰せばロイヤルブラッドは手薄になるからねぇー!そこで黙って今から私がすること見てなぁー!」

 

 ベータサオリを見下ろしノールックの状態で正確にアツコの元へ榴弾を発砲する。

 

「くっ…!姫!逃げろ!」

 

 サオリはナイフを抜こうにも肩に深手をおっているため上手く腕を動かすことができない。

 今は動かせる口を使いアツコへ逃げるよう伝えることしか叶わない。

 

「黙って見てなって言ったよねぇー?」

 

 ベータはサオリに口内へハンドガンのバレルを挿入する。

 

「がはっ!?」

 

 トリガーに指をかけ引き金を引こうとした直前、背後から攻撃を受ける。

 

「へぇー耐えるんだぁー?」

 

 ベータの背後に姿を現すアツコ。

 その姿は先程の榴弾を直撃し身体中至る所に榴弾の破片が突き刺さっている。

 

「顔は大事だからちゃんと守ったよ」

 

 あえてベータを煽ることでサオリへの攻撃を防いだアツコ。

 だがそれは攻撃の矛先がアツコへと変わっただけに過ぎない。

 

「大丈夫、今からぐちゃぐちゃにするから…!」

 

 ベータはおぞましい発言と共に榴弾を幾つも砲弾。

 確実にここでアツコを仕留める気だと嫌でも伝わる。

 

「……!!!」

 

 アツコは今までのように後方へ回避してベータと距離をとる。

 

「あはっ!回避の方法がワンパターンになってるよぉー!」

 

 ベータは狂人のように不細工な笑を浮かべ、ハンドガンのトリガーに指をかけてアツコの額目掛けて何度も銃撃する。

 アツコは先刻の発言から顔を狙っていることを読み取れるため、サブマシンガンを盾に守る。

 

 だがそれが仇となる。

 

「痛っ!」

 

 トリガーにかけていた人差し指の爪目掛けて銃撃され、人差し指の爪は抉られ肌が顕になる。

 再び全く同じ箇所に銃撃されたアツコは悲鳴をあげトリガーから指を離す。

 

「もうその指は使い物にならないねぇー!」

 

 またも不細工な笑みを浮かべベータはアツコへ肉薄する。

 反撃しようも指先に走る激痛によりトリガーが思ったように引けない。

 ならばと機関銃を持ち替えるもそんな隙は許されるはずがない。

 

 ベータが回し蹴りを決めアツコの手元から機関銃が吹き飛んだ。

 

「くっ!……やあぁぁぁああ!!!」

 

 アツコは機関銃が吹き飛ぶのと同時に拳を握る。

 今自分が打ち込める最大のストレートをベータの顔面に繰り出し、アツコの拳はクリーンヒット。

 一瞬、衝撃波かと錯覚するような音が周囲に響く、だが。

 

「まさかそれが全力とか言わないよねぇー?」

 

 ベータは微動だにせず直立したまま口を動かした。

 

「嘘…!」

 

 クシナ程の威力は秘めてない。だが自分が今できる最大限の力を振り絞って繰り出した拳だったのに…ここまで効かないとは。

 

「機関銃もない。体術も絞め技が効く程度。非力なお姫様じゃこれ以上抵抗しても無駄だってわかったかなぁー!」

「きゃっ!」

 

 ベータは思いっきりの力でアツコに平手打ちを繰り出す。

 

「アツコ!クソ!貴様ぁぁああっっっ!!!」

 

 姫と呼ぶことを忘れされるほど、アツコに手を挙げられたことに怒りを覚えたサオリは叫ぶ。

 だがその声は距離が離れているためかベータの耳には届かない。

 

「…………………………………………………………」

 

 されどアツコは立ち上がる寸前、サオリへ平然だと訴えるように視線を送る。

 それは心配させない為なのか、それとも別の意味があるのか…。

 

「……!あ、あそこは…!」

 

 瞬間サオリの脳裏に刻み込まれた例の地図が思い浮かぶ。

 住処から出たあとアツコとヒヨリへ覚えるようにと渡した爆弾を仕掛けた箇所を示す地図。

 

「(ダメだ姫!それは私の役目だ!)」

 

 サオリはアツコが何をやろうとしてるのかを察す。

 それを防ぐために差し込まれたナイフのグリップを掴み、抜き取るべく力を込める。

 

「ぐあぁぁぁっ!!」

 

 肩を銃撃されたことで上手く力が入らない。それどころか無理に動かすと激痛が走る。

 合わせてナイフを抜くとなると刺さっている箇所も同様に激痛が襲い上手く動かせない。

 

「ならば…こうするまでだっ…!」

 

 全体重を前方へ集中させる。手を使って肩を貫通し後方の木まで突き刺さったナイフを引き抜くのではなく、木に突き刺さっている部位を抜くことに全力を注ぐことにしたのであった。

 

「随分後方まで逃げたねー、もう断崖絶壁じゃーん?」

 

 ここいらでは大分高度のある断崖、アツコはベータの攻撃を回避しながらそこまで後退していた。

 

「ここから落としたいけどーそれじゃあ自慢の整った顔をぐちゃぐちゃにできないからねぇー!」

 

 ベータが1人で語る中、アツコは静かに立ち上がろうとする。

 

「ダメだってぇー!これからがお楽しみなんだからさぁ!」

 

 ベータはアツコに跨り両足で左右の腕を踏みつけマウントをとる。

 

「どうしようかどうしようか!その顔どうやってぐちゃぐちゃにしようか!切り刻むー?それとも榴弾を……いや?私と全く同じ顔にしようかぁ!火傷させた状態で意識が吹き飛ぶまで銃撃してあげるねぇ!あは!あはははっ!」

 

 ベータは目を充血させながらアツコに顔を近づけおぞましい発言をする。

 だがアツコはそんな様子に臆することなく何時ものように冷静な表情でその様を見上げていた。

 

「───可哀想な人」

 

 アツコがポツリと呟く。

 

「……なんだってぇー?」

 

 その発言が気に入らなかったのかベータはアツコの顔をアイアンクローのように掴む。

 

「人を不幸にすることでしか笑えないなんて可哀想な人」

「……あぁ?」

「きっと他のことで幸せを噛み締めたことがないんでしょ?本当に可哀想な人。なんの為に生きてるのかな?」

「………………………………………………………………」

 

 ベータは黙ったまま握る力を強める。

 ベアトリーチェから殺害するなと言われているものの、アツコという存在が不快でたまらず殺したいと本能が抑えきれない。

 このまま顔面どころか頭蓋骨含めて頭を握り潰してやろうかと力を込める。

 

「───はい、あなたの負けだよ」

 

 アツコが告げるのと同時にベータの背後から何者が刃物を突き刺す。

 

「てめぇ!なんでここにぃ…!」

 

 先程、木と固定させたサオリが高速で音を立てずにやってきた。

 否、音は立ててた。だがアツコに煽られたこと、アツコを殺すという本能に従い、ベータは音と気配を感じ取れなかっただけに過ぎない。

 

「私の妹に手を出したんだ。どうなるかわかってるよな…!」

「はっ!不意打ち決めた程度じゃんか!悪いけど君達に何一つ劣ってない私が負けることなんて───」

 

 ベータのセリフの途中でサオリが行動に出る。

 サオリはベータを抱え断崖に向かって身を投げ出す。

 

「(道連れ…?はっ、この程度の断崖で痛手を負うわけないってわっかんないかなぁー!?着した瞬間にぶち殺してあげる…!)」

 

 落ちる瞬間、僅か数秒で次の行動まで決めるベータであった。

 しかしそれは到底叶わない行動であった。

 

「サッちゃん!」

 

 アツコは身を乗り出しサオリの服を掴む。そしてサオリは抱えていたベータを離す。

 サオリは空中に留まりベータだけが崖の麓へ向かって一直線で落下していく。

 

「ちっ!落ちたとてすぐに戻ってやるからなぁー!地獄の果までお前達を追い詰めて絶対───」

 

 またベータの発言を遮るようにサオリは次の行動に出た。

 

「!?」

 

 瞬間、崖に設置していた爆弾が爆ぜる。続くように幾つも爆ぜる。

 それはクシナとサオリが2人で事前に設置していた爆弾だ。

 

「───嘘だっ…!」

 

 爆弾が起爆したことで崖から流星のごとく巨大な岩が幾つもベータの頭上に広がる。

 着地したところで回避できるか危うい量の岩の数。

 一瞬、回避は不可能と悟るもベータは諦めなかった。

 

「(着した瞬間すぐにここから離脱する。かわせない岩は榴弾で何とかすればいい…!)」

 

 ベータは着地してすぐに行動に出た。

 

 だが。

 

「ッ!」

 

 ベータの目の前で爆弾が爆ぜる。

 これもクシナとサオリが2人で仕掛けた爆弾だ。

 

 目の前で爆弾が爆ぜたことでその場に数秒留まる。されど数秒、その数秒がベータの生死を分けた。

 

「なにこれ…!私が、あんなガキ共に負け───!」

 

 最後のセリフを遮るよう幾つもの岩がベータの頭上へと落下する。

 

『…………………………………………………………』

 

 サオリとアツコはベータの最期を崖の上から見下ろしていた。

 戦いを終え安堵の溜息を着くも地鳴りが響き自分達が立っている箇所も崩れると判断して安全地帯まで後退する。

 

「……姫、自分を囮にあそこまで誘導したのか…?」

 

 後退してお互い落ち着いたところでサオリが口を開く。

 

「うん、爆弾を仕掛けた場所付近だったから…一か八かで後方に回避する振りをしながら誘導したの」

「…………一応聞くが相打ちするつもりだったのか?」

 

 サオリはあの時、確かにアツコが相打ちを決めると思った。

 だからこそ激痛に耐えながら拘束から抜け出し、アツコとベータの元へと向かえた。

 

「ううん、そんなつもりはなかったよ」

「……じゃああの時、私に送った視線はなんだったんだ?」

「サッちゃんなら拘束をといて駆け付けてくれるって……信じてたから、そのことを伝えたくて」

「!そ、そうか…。すまない、私はてっきりあいつと相打ちを狙ってのかと思ってだな…」

 

 だがそう捉えたことが幸を期したのは確かだ。恐ろしい予想であったが結果良ければ全て良し、という言葉があるのだから今回は良しとしよう。

 

 そう決めたサオリは降ろしていた腰をあげる。

 

「やつの生死を確認してくる。姫はここで待機…は危険だな。立てるか?」

「うん、思ったより深い傷は負ってないから大丈夫。それよりサッちゃんは?」

「私も平気だ。戦いを終えてアドレナリンが出てるからな。今なら耐えられる」

「ふふ、じゃあ私もそうなのかな?」

「後で激痛が襲うから覚悟しておくんだな」

「はーい♪」

 

 とても生死を分ける戦いをしていた幼子達の様子ではない。

 普段のように振舞っていないとこの後に突き付けられる現実に耐えられない…だから今は現実から目を逸らし、少しでも大切な人と楽しく過ごすべく普段通りの振る舞いをしているのかもしれない。

 

 少し遠回りをしながら崖の麓へと向かう。

 

『…………………………………………………………』

 

 そこにベータの姿は確かにあった。

 

 だが首から上が巨大な岩の下敷きとなっていた。

 

 雪にはベータの血痕が広がり見るに堪えない惨状となっている。

 

「───私が殺したんだな」

 

 サオリは声を震わせながら犯した罪を口にした。

 

 人を殺めたのは初めてだった。

 

 この世界で生きていく以上、戦闘は避けて通れないが人を殺めるほどの深手を負わせた覚えはない。

 

 わかっていたはずだ。

 

 あの時、ベータを崖の麓に突き落とし爆弾を起爆させた時点でわかってたはずだ。

 

 自分は人殺しになるのだと。

 

 いくらキヴォトスの生徒と言えど頭部を完全に潰れた場合は即死だ。

 潰れたかは確認できないが、体の何十倍の大きな岩の下敷きになっている。

 合わせて大量の血痕があることから十中八九、頭部が潰れていることはわかる。

 

 即ちベータは死んだのだ。

 

 それもサオリ自身の手でその命に終わりを齎した。

 

「サッちゃん、違うよ」

 

 ベータを見下ろし立ち尽くしていたサオリの手を取りアツコは否定した。

 

私達(・・)が殺したんだよ」

「ッー!」

 

 その言葉を聞いた途端、サオリは溢れんばかりの涙を零す。

 

「すまない。こんなことに姫を巻き込むつもりはなかったんだ…!私のせいで姫の手が汚れてしま───」

 

 サオリが泣きじゃくりながら発言している最中、遮るようにアツコがサオリに抱き着く。

 

「この人は私達に酷いことをした。殺すつもりはなかったかもだけど、私達は殺されるかと思った。だから私達が行った行為は正当防衛……。私達は悪くない。サッちゃんは悪くない」

「でも───」

「悪くない。この人は可哀想な人だったからいいの。それでもサッちゃんが罪を認めるというのなら…この罪は私とサッちゃん2人の罪。……だから私達は共犯者、だよ?」

 

 サオリは次第に立つ力が弱まりアツコにもたれかかる。

 そんなサオリをアツコは強く抱き締め続きの言葉を送る。

 

「罪も2人で分ければ重さも半分こ。サッちゃんだけの罪には絶対させない。私も一緒だから…。だからこれ以上自分を責めないで」

「…………姫…!ありがとう…!」

 

 サオリはアツコを強く抱き締め涙を流す。

 

 殺害、という罪を幼い子供が1人で抱え込むのは不可能だ。

 

 アツコは共犯者だと言ってくれた。

 

 気を使ってくれていることは百も承知。

 

 だがそれでも少なからず罪の重さというのはほんの少しだけ軽くなった気がする。

 

 人を殺める。

 

 それは決して許されざる行為ではない。

 

 けれども戦わなければ生きれない。

 

 そんな世界だから仕方がない…。

 

 仕方がない。

 

 サオリはアツコに感謝の言葉を述べ、改めてこの世界が残酷であることを痛感するのであった。

 

◆◆◆◆

 

 時を同じくして交戦していたミサキとガンマ。その戦闘は佳境を迎えていた。

 

「負ける気はないんじゃなかったけ?」

「はぁ、はぁ……ぐっ!」

 

 見下ろすガンマに対して、膝を着き息を荒らげながら見上げるようにミサキは鋭い眼光を向ける。

 

「口の割には呆気なかったね。君あまりにも弱すぎるよ、よく今まで生き残れたものだ」

「ぐあっ!!」

 

 ガンマは吐き台詞と合わせてるミサキのアキレス腱に向かって銃撃をする。

 

「……さあ、最後だ。何か言い残すことはあるかい?」

「はぁ、はぁ……言い残すことはない。だけど……聞きたいことがある……!」

 

 うつ伏せになり苦痛に耐えながらミサキは口を動かした。

 

「いいよ、聞いてあげる」

「はぁ、どうして……クシナを欲しがるの?」

「そのことか。そのクシナって子がアルファのお気に入りだからだよ」

「お気に、入り…?」

 

 ガンマはミサキの最期だからか包み隠さず神秘のことを含めて全てを語った。

 

「詳しくは知らないけど僕達には『神秘』と呼ばれる何かを生まれた時から所持してるんだ」

「……そういえば…アルファってやつが『神秘』がどうとか、言ってた……。」

「その『神秘』の保有量が多ければ多いほど力の恩恵が大きい。それは体に現れ特異体質、もしくは特殊能力などを宿す生徒が現れる」

 

 特異体質、までなら生まれつきそんな人もいるんだと理解できる。

 だが特殊能力とは?エスパーや何かだろうかとミサキは疑問を抱く。

 

「アルファはその『神秘』の保有量が多く特殊能力を得ている。そして君達の妹、紅耶クシナも特殊能力を宿している……とアルファは語ってたよ」

「クシナが、特殊能力持ち…?」

「その様子からして紅耶クシナは君達に何も言ってなかったのか」

 

 言われてみればクシナは不思議な子であった。

 

 やけに物覚えは早いし、初見のことだって見切ることもあった。

 何より直近で制作していた爆弾…あんなの独学で完成できるような品物ではない。

 

「(クシナは特殊能力を所持している…)」

 

 確かな確信ではない。だが所持していることは間違いないと今までのクシナの行動から察することができる。

 

「紅耶クシナが君達に『神秘』のことを打ち明けなかった理由を知ってるか?」

「……?さあ、なん、だろうね…。」

 

 ミサキは寝返りを打ち、うつ伏せから仰向けへとなる。

 

「紅耶クシナは君達のことを信用してなかったんだよ」

「…………………………………………………………」

「本当に信用しているのなら、信じて貰えなくとも打ち明けるはず。だけどそれをしなかったのは君達を信頼してないからだろ?」

 

 家族と言いながら所詮はおままごと。口先ばかりの関係でなんの意味もない薄っぺらい関係だったなとガンマは笑う。

 

「まだクシナが特殊能力持ちだって決まってないのに良く言うね…。単純にそんな力を持ってないから話してないだけでしょ」

「どうかな。アルファが所持してるって言ってんだ、だから本当だと思うけど」

「……随分とそのアルファって人をかってるんだね」

 

 会話が弾みクシナの話からアルファの話へと変わっていく。

 

「アルファはこの世の頂点となる存在だ。彼女がキヴォトスを支配して新世界を創造する…。それが実現できる『神秘』を宿した神だ」

「ふっ!そう、神ねぇー」

 

 ミサキは冷笑を送る。

 それが気に食わなかったのかガンマはミサキの腹部目掛けて銃撃する。

 

「君ごときの雑魚がアルファを馬鹿にする権利はない」

「……ッ!」

 

 ガンマの銃火器から放たれた銃弾がミサキの腹部を貫く。

 

「は、ははっ。でもクシナもその『神秘』ってやつの特殊能力持ちなんでしょ。……キヴォトスの頂点に立つ前に負けるんじゃない?」

「それは絶対に有り得ない。僕達アリウスは一般的な教育を捨てて戦闘訓練に励んでいる。そして───ヘイローの破壊方法や人を殺すための殺人術を日頃から学んでいるんだ」

「!」

 

 ガンマは先刻の攻撃で穴が空いたミサキの腹部目掛けて踏みつける。

 

「独学の戦闘技術しか身につけてない幼子に到底負ける気なんてしないなっっ!」

「ぐっ…!」

 

 最後のセリフを吐き終えるのと同時に踏みつける力を強める。

 

「さっきから饒舌だよね……な、に?負けない理由を並べないと不安なの……?」

「相変わらず口だけは達者だな…!」

「うぐっっ!!」

 

 生まれつき身体が弱いミサキにとって先程の攻撃程度で深手を負ってしまう。

 更に損傷箇所を必要以上に刺激されミサキの意識は今にも飛んでしまうほど危うい状態であった。

 

「はぁ、はぁ、くっ…!」

 

 だがそんな状態であるからこそ、ミサキは独り言を述べて自分を鼓舞させた。

 

「世界の、頂点に…立つとかは別として…。世界を創造するとか……そういうのは間に合ってるから」

「?……はぁ?」

 

 ガンマは言ってる意味がわからず疑問を抱く。

 

「うちの莫迦(クシナ)も似た……ようなこと、言っててね。正直、そんな戯言に付き合う必要なんてないんだけど───」

「(無意識状態での独り言か…?)」

「あの莫迦(クシナ)は自分の言葉を……貫いた。その様を見て私は一度だけ付き合うって決めたんだ───」

 

 数ヶ月前の出来事を思い出しながらミサキは口を動かす。

 あの時、クシナは絶望的な状況でも決して諦めることなく、深手を負っても立ち上がりミサキに述べた内容を貫き通した。

 

「だから───!」

 

 徐々に光を失っていた虚ろなミサキの瞳に光が宿り出した。

 

「!?」

 

 ミサキは隠していた煙幕弾のピンを勢いよく抜く。

 

「(ただの煙幕弾?……ではないようだな)」

 

 ミサキが放った煙幕弾はただの煙幕弾ではない。漂う煙は全て催涙ガスであったため、ガンマは目と鼻をジャケットで覆いミサキから距離を取る。

 

 その隙にミサキは立ち上がりガンマの元から離れる。

 気配でミサキがその場から離れたことを察したガンマは銃火器を振り回し煙を切る。

 

 ガンマの行動で催涙ガスの煙が晴れミサキの姿が顕となる…が。

 

「……やはりな」

 

 ミサキは何とかその場から逃げようと努力した。

 

 だがアキレス腱を切られ、腹部に穴が空いている状態では思うように身体が動かず、途中で力尽きその場に伏せていた。

 

「火事場の馬鹿力ってやつか。あの状態でよく動けたものだ」

 

 ジャケットを羽織り直しながらガンマはミサキの元へゆっくりと向かう。

 

「…………………………………………………」ガタガタ

「?」

 

 倒れていたミサキは震えていた。

 万策付き、これから死を迎えることに怯え震えている様子であった。

 

「(威勢を張ってたが死ぬことは怖いのか)」

 

 瞬間、ガンマの脳裏に過ぎるのは自分を煽るミサキの様であった。

 そんな心の底からイラつかせる子供が今、目の前で死という恐怖に怯えている。

 一体、どんな表情をしてるのだろうか。どんな顔をして死を受け入れる準備をしているのだろうか。

 

「ふふ、ふははっ!」

 

 多分、自分でも驚くくらい気持ちが悪い笑みを浮かべていると自覚している。

 だが───この高ぶった心臓の鼓動を抑えることどころか、遠くから銃撃してトドメを指す考えなど到底浮かばなかった。

 

 ガンマはミサキに近付く。

 

 ミサキはフードを深く被っていた。防御性の無い薄い布切れ一枚で頭部を守れるとは思えないが、それどもとわらに縋るようにフードを被り体を丸めていた。

 

「…………………………………………………………」

 

 ガンマはミサキが被るフードへと手を伸ばす。

 恐怖に怯えるミサキの表情を見るべくフードを脱がした。

 

「……あっ、ど、どうも……?」

「!?」

 

 ミサキだと思って伏せていた少女はミサキではなかった。

 それどころか先程、尻尾を巻いて逃げた黄緑色の髪をした少女がそこにはいた。

 

「!?じゃあやつはどこ───」

「ここだよ…!」

 

 ガンマの背後からミサキが姿を現す。そしてガンマの後頭部に抱きつき、手榴弾のピンを口で抜き、間を開けずにガンマの口元へ手榴弾をねじ込む。

 

 それは以前、クシナが行った行為だ。

 だけど今回は違う。クシナは起爆しないようコックを歯で抑え込むように挿入した。

 だがミサキは確実に口内で起爆させるためにコックを外した状態でねじ込んだ。

 

「あんたは並の攻撃じゃ効かないからね。顎を吹き飛ばせばそれなりにダメージは入るでしょ……!」

 

 ミサキが告げた後、ガンマの口内で手榴弾が爆ぜ、爆ぜるのと同時にミサキはガンマから離れる。

 

「ひっ!?」

 

 ミサキはガンマの背後に立っているからガンマの様を見ることは叶わない。

 だがガンマの目の前にいたヒヨリはその様が間近で両の眼に映る。

 

「……!……!!!」

 

 下顎が吹き飛び、出血が止まらず抑えようにも顎の位置で手が空を切るガンマの姿が。

 

「くっ!こいつ!」

 

 ガンマは下顎が吹き飛んでもその場に立っていた。

 背後から近ずきミサキは首根っこを掴み力一杯吹き飛ばす。

 幸いなことに吹き飛ばした先はスクラップの山であったため幾つかのスクラップがガンマの動きを止めるかのように覆い被さった。

 

「ヒヨリ!立って!ここから逃げるよ!」

「……!あっ!は、はいっ!」

 

 数秒間、放心状態だったヒヨリはミサキの声で正気を取り戻す。

 

 こちらへ向かうミサキに手を伸ばすも…。

 

「あっ!み、ミサキさん!?」

 

 ミサキは足が縺れてヒヨリの目の前で前方に倒れる。

 ヒヨリは駆けつけミサキの様子を伺うも、全身は氷のように冷たく、腹部からの出血も酷く呼吸が荒い。

 

 こうゆうことに疎いヒヨリですら、ミサキの現状は死に瀕する状態だと分かる。

 

「ここ、まで、かな…。非力な私にしては、1人で頑張った方でしょ……。」

「な、なに、主人公が死ぬ前に自分に語りかけるみたいなこと言ってるんですかっ…!!」

 

 泣き目になりながらヒヨリはミサキを抱えるために肩に手をかけるべく身を伏せる。

 

「───へっ?」

 

 身を伏せたタイミングで頭上を大きなスクラップが通過した。

 スクラップが飛んできた方向に目を向けると、ミサキが瀕死に追いやったガンマがスクラップを跳ね除け周囲にばらまいていた。

 

 被さっていた物を全て払い除け、下顎がないガンマが立ち上がり覚束無い足取りでヒヨリ達の元へと向かう。

 

「───い、いや!」

 

 その様はさながら死を狩る死神のようにヒヨリには見えた。

 なんせ下顎がなく、上顎が顕になってる状態だ。頭蓋骨を風物とさせるその様を見れば否応でも死神だと誤認してしまう。

 

「……!……!!!!」

 

 ガンマは手を伸ばしヒヨリとミサキを睨みつける。何かを思っている様子だが、喋れるわけがなく意図が伝わらない。

 

「こ、来ないでください!あと!何言ってるのかわからないので喋らないでください!こ、怖いです!」

 

 ヒヨリはライフルを構えて威嚇する。

 だがガンマの歩みは止まらない。

 

「う、うわぁぁぁああん!!!」

 

 泣きながらヒヨリはガンマの額目かげて狙撃する。

 ライフル弾は直撃するもガンマは身体が必要以上に丈夫なため怯むことなく前進する。

 

「うぅ!うううぅぅううう!!」

 

 ヒヨリは唸り声を上げながら弾が尽きるまで狙撃する。

 何度かめの狙撃を終え、リロードするためにボルトハンドルを握ろうとしたが指が悴んでいたことから思うように握れなかった。

 

「も、もう指が動きません!やっぱり私の人生なんてこんなものなんです……!大事な場面で役に立てないゴミクズなんです……!う、うわぁぁぁあんん!!!」

 

 死を覚悟してライフルを投げ捨てその場に泣きじゃくるヒヨリ。

 攻撃が来るのを今か今かと身体を震わせ身構えていた───だが何秒立っても攻撃されることはなかった。

 

 恐る恐る顔を上げるとヒヨリ達の目の前で息倒れたガンマの姿があった。

 

「……と、とりあえず……。た、助かったってことでいいんですかね……?」

 

 悴む指に息を吹きかけ何とかして暖を取り、動くようになったところで投げ捨てたライフルを拾いに行く。

 拾ったライフルを棒のように使ってガンマを突くも反応がない。

 

「……ひ、ヒヨリ?」

「はひっ!?」

 

 いきなり声をかけられたものだからヒヨリは大きく反応する。

 

「み、ミサキさん!?ぶ、無事なんですか!?」

「…………ん、まあ、なん、とかね」

「よかったです!訳の分からないことを言ってたので死ぬかと思いました!う、うぅ!」

「ご、ごめんって……。」

 

 泣き出しそうなヒヨリはあやすためにミサキは手を震わせながら頭を撫でる。

 

「とりあえず、単純な理由だけど───」

「?」

「今は身体中が痛いから、死にたいって思いより、生きて早く傷を治したいって思いが勝ってるから安心して」

「!!!!み、ミサキさぁーんー!!!」

 

 感極まってヒヨリはミサキに抱きついた。

 

「ちょっ!い、痛いから抱きつかないで!」

「あっ!ご、ごめんなさい!く、空気読めてなかったですよね」

 

 ミサキはあたふたするヒヨリを微笑みながら見つめる。

 自分が死なずに喜ぶなんて、ヒヨリもクシナと一緒で変わり者だなとミサキは思う。

 

「(まあ、莫迦(クシナ)の戯言に付き合うって言ったからには……死にたいけど、まだ死ねないね……。)」

 

 矛盾しているような考えだが、本人に生きる意思があるのであればそれで良い。

 その意識がある限り、サオリ達もミサキにとやかく言うことも今後はきっとないだろう。

 

「謝らなくてもいいよ…。それより、謝らないといけないのはこっちだから……。ヒヨリ、無理させてごめんね」

「い、いえ。私はミサキ姉さんのフリをするだけでしたので……。こ、怖かったですけど。え、えへへ」

 

 ベータと相見える直前、ミサキはヒヨリに耳打ちで作戦を伝えていた。

 

「(ヒヨリは逃げるふりをしてここから離れてほしい)」

「(え!?そ、そうするとミサキさんが一人に……?)」

「(それでいい。あんなやつ正当法で勝てない。油断させたところで殺るのがベスト)」

「(油断、ですか?)」

「(うん、作戦は───)」

 

 作戦は至ってシンプル。

 ミサキが所持している煙幕弾を使用後、ミサキとヒヨリが入れ替わる。

 

 力の差が歴然であることからミサキは怪我を負うに違いない。入れ替わった後は地面に伏せて顔を隠し、確認しに来たところで攻撃を仕掛ける。

 

 怪我を負っている以上、倒れていても何も思われない。遠距離から攻撃をされる可能性を考慮して、ミサキはガンマを必要以上に煽り、ミサキに対する怒りを蓄積させ、自身の目の前で手を降すよう誘導する。

 

「(それは危険すぎます!それなら初めから2人で戦った方が───)」

「(それは無理。ヒヨリの実力を疑ってる訳じゃないけど、前衛の2人(サオリとクシナ)がいない以上、連携が取れても守りが手薄で全滅する可能性が高い)」

 

 それに狙撃手であるヒヨリにとってこの距離での戦闘は好ましくない。かと言って距離をとったヒヨリが攻撃を仕掛けても付け焼き刃の連携では到底叶わない。

 

 だからミサキは1人で戦うことを選択した。

 

「正直、ミサキさんの煽りがあそこまで効くとは思ってませんでした……。私達よりも歳上の方でしたが、精神年齢はそう大差がなかったようですね……。」

「……まあそんなところかな」

 

 とミサキは身体を休ませるためか目を閉じた状態で答えた。

 

「(ヒヨリ…会話の内容は忘れてたみたいだけど、作戦は覚えててよかった)」

 

 いざガンマと敵対した時、ヒヨリはテンパって2人では勝てないと発言していた。

 そのことはさっきの会話で話したんだけどな…とミサキは思っていたため、少し強い口調で。

 

「ヒヨリ、ちょっと黙って」

 

 と強く言ってしまった。

 

「(ヒヨリはなんとも思ってない様子だし…謝るのは今度にするとして───今は…。)」

 

「ヒヨリ、お願いがあるの」

「は、はい。さっきはなんの役に立たなかったゴミ以下の私ですが……。そんな私でもよければ」

「全然ゴミ以下じゃないから。寧ろ役に立ちすぎてて助かったレベルだからね?」

「えへへ、えへへへ!!そ、そうですかね〜!わ、私、そんなに凄い子でしたかね〜!」

「(こ、こいつ……!)」

 

 ヒヨリがネガティブな状態から一変して陽気になるものだから、ミサキが先程まで抱いていた罪悪感は吹き飛んでしまった。

 

「はあ……クシナが危ないかもしれない。私も後で追うから先行して様子を見に行って」

「!そ、そそ、そうでした!クシナちゃんは1人で戦ってるんでした……!」

 

 ヒヨリは陽気な様子からまたも一変。

 顔を青ざめ勢いよくその場から立ち上がる。

 

「すぐに様子を見てきます!み、ミサキさん動けるようになったら来てくださいね……!」

「うん……頼んだよ」

「は、はい!」

 

 ヒヨリはライフルを抱き抱えミサキの元から離れる。

 

 ミサキは遠のいていくヒヨリの背中を暫し見つめた後、ゆっくりと意識が遠のいていくのであった。

 

「───はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 ヒヨリはクシナの元へ向かう。

 クシナは誰よりも早くに戦闘を始めていた。

 ならばと最初にスクワッドと邂逅した場所にいるはずだと踏んでその場へ向かう。

 

 息を切らしながらクシナの安否を確認するべく、休むことなく進み続ける。

 

「(大丈夫。きっと大丈夫ですよね……。クシナちゃんは強い子ですから……!)」

 

 自分に言い聞かせヒヨリは前進する。

 

「───ひゅっ」

 

 ヒヨリは目の前の光景に驚き息を短く吸い上げる。

 

 手の力が抜け、抱えていたライフルがその場に落ちる。

 

 目の前の光景があまりにも壮絶すぎて目が離せない。

 

「う、嘘……ですよね?そ、そんな……クシナちゃん……?」

 

 ヒヨリが目にした壮絶な光景。それは───

 

 喉元にナイフを刺され血溜まりの中で仰向けで倒れるクシナの様であった。

 

 遠くからでもわかるほどの痛々しい荒様。

 10歳にも満たない幼子が受ける仕打ちとは到底思えない残酷すぎる光景が目に映る。

 

 同じく10歳にも満たない幼子であるヒヨリがその光景を目の当たりにしたらどうなるか。

 

「い、い、いやぁぁぁぁぁあああああ!!!」

 

 冷静でいられる訳などなく、ヒヨリの絶望の叫びが無情にも周囲に響くのであった。




このような話にした理由はアリウス自治区編最終話の後書きで語りたいと思います。

一応自治区編はあと2話で終了する予定です!
終われるように頑張りますので応援のほどよろしくお願いします!

ではまた次回の話でお会いしましょう!

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