誰が為に私は魔女になる   作:オオル

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今回からアリスクメンバー全員登場します!
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それでは本編をどうぞ!


生きる意味を知っていますか?

 姉さんの埋葬が終わったあと私は姉さんと一緒に住んでいた家を燃やすことにした。

 ここは私と姉さんの住処。私達の家族以外の誰かがこの家を住処として使用するのはなんだか癪だったからだ。

 それに半年間も亡くなった姉と過ごしていたものだから腐敗臭がかなり染み付いていると言われ前述の内容と相まって焼き払うことを決意した。

 

「燃やす必要まではなかったんじゃないか?」

 

 家が燃えるさまを2人で眺めていた時、サオリが私にそう話しかけた。

 

「私は自覚なかったけど相当臭かったんでしょ?なら燃やしてあげないと臭いが残ってしまう」

 

 思えば私達の住処の周囲に住む人が少なかったのはこれが原因だったのかもしれないな。

 

「そろそろ燃え尽きるな」

「そうだね。なんだか不思議…人も物も燃え尽きる速さってあんまり変わらないんだな」

 

 姉さんの遺体を燃やした。姉さんと過ごした住処も燃やした。ずっと眺めていただけだけど不思議と苦ではなかった。姉さんと感じた苦楽は私にとってかけがえのないものだったと、その認識を改めれるいい機会だと前向きに捉えれる気がする。

 

「そろそろ日が暮れる。暗くなる前に私達の住処へ行こう」

「うん、そうしよっか」

 

 しゃがんでいた私は立ち上がりおしりに着いていた土を払う。

 隣に置いていたはち切れそうなリュックを空ってサオリの元へと向かう。

 

「クシナ、この場を去るが未練はないか?」

「……未練?」

 

 未練はないか。馬鹿言え、未練なんて数えればいくらでもある。それこそ姉さんと一緒に戦ってこの世界を生きれなかったこと。姉さんの隣に立てなかったこと…数えればキリがない。

 

 そう、だから。

 

「未練は数え切れないほどある(・・)。だから未練はない(・・)

「!…………そうか」

 

 サオリはクシナの発言に対して驚き目を見開く。クシナの言う言葉は一見矛盾しているかのように捉えられるが本人は至って真面目に語ったのだろう。

 

「(未練があるから未練がない…言葉遊びのようで心を着く発言だな)」

 

 人はそのことを未練と呼ぶ。

 だがこの場でそんな酔狂なことは言うまい。本人が未練はないと言うんだ。姉としてその言葉を素直に受け止めることが道理ってものだ。

 

「では先を急ぐぞ。アリウスの生徒を見かけたら私に声をかけろ、今日は戦闘を控えて住処へと向かう。わかったら返事をしろ」

「わかった」

 

 こうして私は数年間姉と共に過ごした住処を立ち去る。

 振り返ってその場でお辞儀をして姉を埋葬した箇所を見つめながらサオリに聞こえない声で述べた。

 

「今までありがとう。さようなら」

 

 姉へ感謝の言葉を。そして別れの言葉を告げ駆け足をしてサオリの後ろへと向かう。

 その後クシナはサオリの背中にへばりつくよう追尾するのであった。

 

◆◆◆◆

 

 サオリ達の住処へと向かう途中に何度もアリウスの生徒を見かけた。サオリはアリウスの生徒に気付くとすぐに私へ隠れるよう指示を出してその場に隠れ、本当に戦闘をせずに住処の付近まで無事にたどり着くことができた。

 

「なあサオリ、私はこれからお前のことをなんて呼べばいいんだ?」

 

 今日から私の姉となる存在であるサオリに対して呼び捨てってのはな…。

 

「他の妹達は「サオリ姉さん」と私のことを呼んでるな」

「じゃあそれで」

「……いや、それは遠慮しておこう。クシナからサオリ姉さんと呼ばれるとなんか、こう、なんだ?」

「なんなんだよそれ!?」

 

 私の姉になるという発言は一体どこへ。妹に姉さんと呼ばれて虫唾が走るなんて発言する姉がこの世界にいるんだと思わなんだ。

 

「とにかくお前のようなクソガキに姉さんと呼ばれるのはちょっとな。すまないが別の呼び方で呼んでくれ。もうこの際サオリと呼び捨てでもいい」

「く、クソガキだと…?」

 

 サオリはニヤニヤしながら発言していた。お前、数分前に姉を亡くした新たな妹に対してそのような台詞が述べれる精神を教えてほしいものだ。

 

「なんて冗談だ。好きなように呼べ、私は今まで通りクシナと呼ばせてもらから」

「好きなようにって…じゃあサオリ姉、これでどうだ?」

「ほう、なかなかいい呼び名じゃないか。気に入った。是非そう呼んでくれ」

「……わかった」

 

 最低限姉であることを敬い名前の後ろに姉を付けることにした。姉さんと呼ぶのは私とて少し癪だからな。

 サオリが姉さんになることには抵抗はないが、姉さん呼びは世界でたった1人だけにしたい…はっ!まさかサオリはそのことを望んで…?

 

 私は思ったことを考えながらサオリの背中を見つめる。

 

「(クソガキとかほざいてたしそんなわけないか)」

 

 思っていた考えを破棄して私はそのまま黙ってサオリ姉の後ろをついて行き、日が落ちて丁度辺りが暗くなったところでサオリ姉達の住処へと到着した。

 

「着いたぞ。ここが私達の住処だ。そしてお前がこれから住む場所だ」

 

 場所は私の住んでいた場所から大分離れたところ…ってここら辺って唯一まともに飲める川辺の付近じゃないか。なんていい所に住んでんだ…。

 建物も私達が住んでいた木造物件ではない。頑丈なコンクリートで建設された立派な建物だ。恐らく中には鉄製の支柱なんかが入ってるんだろう。寒さも風も凌げれるし私からしてみては、いやアリウス自治区に住む住人全員から見ても優良物件じゃないか。

 

「おーい、みんなー今帰ったぞー」

「!」

 

 サオリ姉はボロボロの暖簾をくぐり建物の中へと入っていく。

 

「(か、勝手に入ってもいいのかな…?)」

 

 こんな立派な建物に勝手に入ってもいいのだろうか。他の妹達から警戒されたり冷ややかな目線を送られたりしないだろうか。

 

「何をしている。早く入れ」

「お、おい!だから服を引っ張るな!」

 

 服を掴み無理やり私を室内へと連れ込むサオリ姉に対して伸びるだろうが、と言いかけたところで建物に入った途端、恥ずかしくて声をすぼめてしまった。

 

 中へ向かうにつれて少し明るくなる…。

 あ、そうか。こんな暗闇で盛大に明るくしてたらここに誰かいますよって言ってるもんだよな。うちでも夜になるとロウソクに火をつけてその灯りだけで生活してたしな。

 

「みんな、紹介する。今日から新たに私達の家族に加わることになったクシナだ」

「…………………………………………………………」

『…………………………………………………………』

 

 サオリ姉に紹介された私は何を言えばいいのかわからず黙って目の前にいた3人を眺めた。

 

 1人は床に座り私を睨んでいた。

 

 もう1人はソワソワしながら私を眺めていて。

 

 最後の1人は私の顔をじっと見つめながらよってきて話しかけてきた。

 

「こんばんは」

「こ、こんばんは…はは」

「うん、ちゃんと挨拶できて偉いね」

 

 薄紫色の頭髪をした少女がこんばんはと挨拶をしてきたものだから咄嗟に挨拶を返してしまった。

 

「私はアツコ。よろしくね、クシナ」

 

 アツコと名乗った少女は握手を求めるかのように手を差し伸べて来た。

 私は戸惑いながら手を取るよりも先にアツコの表情を伺うように顔を確認した。

 

「?」

 

 アツコの顔はなんと言い表せばいいのだろうか。私と同じストリートチルドレンなのかと疑うほど容姿端麗で…気を抜くとその顔に魅入ってしまうほど美しかった。

 

「よ、よろしくね。アツコ」

 

 恥ずかしがりながら手を伸ばしアツコと握手を交わした私はしばらくまともにアツコの顔を見ることができなかった。

 家族になるのだから今後はちゃんと目を見て話せれるようにならないといけないな。

 

「えへへ、姫ちゃんは可愛いのでお話する時無意識にて、照れちゃいますよね…。あ、私はヒヨリって言います。よ、よろしくで…よろしく…」

 

 先程ソワソワしていたエメラルドグリーン色の頭髪の少女が話しかけてきた。

 微笑みながら話しかけてきたが普段笑い慣れていないのかその笑顔が少しぎこちなく見えた。

 

「ヒヨリ、よろしく…それとさっきからなんでそんなにソワソワしてるんだ?」

「えっ!?わ、私ソワソワしてましたか!?」

「!はは、ヒヨリ〜妹ができて嬉しいと思ったんだろ〜?」

「ふぇ!?な、なんのことですか、わ、わたしがクシナちゃんのお姉さんになるだなんて……えへへ、そんなこと考えてませんよ」

 

 と嬉しそうに顔をふにゃらせ頭を掻きながら否定するヒヨリの様子を私、サオリ姉、アツコの3人は眺めていた。

 

「嬉しそうだねヒヨリ、だけどクシナが妹になるかはまだわからないよ?」

「?あっ、く、クシナちゃんはおいくつなんですか?」

「……私は8歳だけど」

「じゃあ私と同い歳だね」

「えへへ、では私の方が歳上さんですね…改めてよろしくです。クシナちゃん」ニマニマ

「う、うん?」

 

 ヒヨリは何となく同い歳、もしくは歳下だと思ってたけど歳上なのか。てか、え、アツコと私って同い歳なんだ。てっきりサオリ姉と同い歳かと思ってた。

 

「…………………………………………………………」

 

 それはそうと先程からずっとこちらを睨む人がいるんだけど…。

 チラリと横目で容姿を確認する。ミディアムヘアで目付きがすごく悪い。いや、単純に私を睨んでいるから目付きが悪くなってるんだろう。

 

「ほら、ミサキも座ってないでクシナに挨拶しな」

「…………………………………………………………」

 

 サオリ姉はミサキと思われる少女に話しかけていた。

 ミサキは何も答えず先程まで私に向けていた視線をサオリ姉へと向ける。凄い目付きだ。まるで何かをサオリ姉へ訴えているようだ。

 

「……なんだ?何か言いたいことがあるのか?」

「…………はあ、別になんでもない。それとクシナだっけ?よろしく」

 

 ミサキはため息をついた後、なんでもないと答え私に話しかけた。が、アツコやヒヨリと違ってミサキは私と目を合わせず上辺だけの挨拶を行いその場から離れようとした。

 

「待てミサキ、何処へ行くんだ?クシナにちゃんと挨拶しろ。クシナは今日から私達の家族になるんだぞ」

「…………今日の寝ずの番って私でしょ。少し早いけど屋上に行ってくる」

「…………………………………………………………」

 

 ミサキはそう答え私達の前から姿を消した。

 サオリ姉はそんなミサキを見つめ何か考えていた様子だが私には何を考えていたのかわからなかった。

 

「(あ、もしかして私ってミサキから歓迎されてない感じかな?)」

 

「……ちょっとミサキの所に行ってくる。姫とヒヨリはクシナに部屋の案内をしてくれ」

「うん、わかった」

「は、はい…」

「…………………………………………………………」

 

 サオリ姉はアツコとヒヨリに指示を出してその場から去る。

 

 ミサキは私が家族に加わることが気に入らないようだ。そりゃいきなり家族が1人増えますなんて言われてもそうそうに受け入れられないよな。

 そう思うとアツコとヒヨリは私が家族になることを拒まなかったことが不思議だな。

 

「……その、いきなりごめんね。急に家族が増えるとか言われてさ、紹介されても困ったでしょ?」

 

 アツコとヒヨリのことを思って私はそう発言した。いっそのことここで本音で返してくれればミサキに拒まれ、アツコとヒヨリにも拒まれれば潔くここを出ていける決心が着く。

 

 と、思っていたが。

 

「ううん、困らないよ。私は家族が増えて嬉しい。それに私もクシナと同じであとから家族に加わったから…クシナの気持ち、少し分かる」

「……そうなの?」

「は、はい。クシナちゃんが来るまでは姫ちゃんが最後に加わった家族でした。あ、私はサオリ姉さんとミサキさんに誘われて家族に加わりました…」

「つまり私もヒヨリもみんなサッちゃんやミサキに誘われた身なんだよ。だからクシナだけが特別ってわけじゃないから気にしないで」

 

 アツコとヒヨリは自分達もあとから家族に加わったから気にする必要はないと言ってくれた。つまりこの家族はサオリ姉とミサキの2人から始まったってことか。

 今までサオリ姉とミサキの2人が承諾して家族に加えていたであろうにも関わらず、サオリ姉が1人で私を家族に加えることを決めたから怒ってるのかな…。

 

「大丈夫。ミサキはいい子だからクシナもすぐに仲良くなれるよ」

「……そう、かな」

 

 正直今の段階では仲良くできる自信が無い。向こうがこの先も避けて続けるのではと不安しかないんだけど。

 

「ミサキさんは優しいですよ。私みたいな子にもご飯を分けてくれますし…今日だってサオリ姉さんが戻ってくるまで一緒に本を読んでくれてたんです…」

 

 果たしてその優しさを私にも恵んでくれるのか知りたいものだ。

 とりあえずわかったことが2つ。アツコとヒヨリ、そしてサオリ姉は私が家族に加わることに抵抗がないこと。そしてミサキは私が家族に加わることが気に入らないってことだ。

 

「それじゃあ部屋を案内するね。着いてきて」

「わかった」

 

 場の空気を切り替えるかのようにアツコが手を叩き部屋の紹介をすると言い出した。

 

「ここがキッチンだよ。今の家は広いからここでみんなと一緒にご飯を食べてるの」

「こ、こんな救いも何も無い世界でまともな食料もありませんが、みんなで食べるご飯は結構美味しいんですよね…不思議ですよねぇ…」

 

 それは分かる気がする。私も姉さんが亡くなってからの半年間は1人で食していたものだから寂しくて…そして味のない食料がいつも以上に無味に感じた。

 

「ご飯はあとで一緒に食べようね。じゃあ次は寝室に行こうか」

「!うん、わかった」

 

 そ、そうかもう家族なのか…。ならばアツコやヒヨリ、サオリ姉と一緒に食卓を囲むのは至って当然か。

 私は後の食事の時間に胸を高鳴らせながらアツコの後ろを着いていく。

 

「ここが寝室だよ。クシナの布団は…流石に用意できてないね…」

 

 それはそうのはずだ。なんせ私が家族になることなんて誰も知らなかったのだからな。逆に1人分布団が用意されていたのなら尚更不思議だ。いや不思議ですよねぇ。

 

「なら」

「な、なら!」

 

 思い耽っているとアツコとヒヨリが同時に声を上げた。

 

「……なら?」

「あ、姫ちゃんからどうぞ…」

「ふふ、多分私とヒヨリが考えていることは一緒だと思うよ」

「で、では姫ちゃんもクシナちゃんと寝たい…ってことですか!?」

「うん、一緒に寝たい」

「ッ!」

 

 な、なんて可愛い子達なんだ…。こんな残酷な世界でもこのように尊くて可愛い子達がいるとは…まるで私の周囲に住んでいた奴らがクソガキだったことを裏ずける証拠じゃないか。

 

「それじゃあクシナ、ヒヨリも一緒に寝たいみたいだから今日は私とヒヨリの布団をくっ付けて3人で寝ようか」

「姫ちゃん、それは名案です!く、クシナちゃん一緒に寝ませんか?あ、い、いやなら大丈夫ですので…うぅ」

 

 なんだ?なんかヒヨリが今にも泣き出しそうなんだが!

 私は泣かせまいと急いで口を開き全力で肯定する。

 

「一緒に寝よう!いえ!寝かせてください!お願いします!」

 

 ははーと私はその場で両膝を着き土下座をしながら一緒に寝て欲しいと懇願する。

その後何もリアクションがなかったため様子を確認する。2人は私の意味不明な行動が余っ程おかしかったのか口をポカーンと開けて私を見下ろしていた。

 

「ふふっ!ふはは!クシナ、なにそれ…。わかった。そこまで必死にお願いされたなら今日だけじゃなくてこれからもずっと一緒に寝てあげないとね」

「へ?」

 

 滑ったと思ったがどうやらツボに入ったようだ。アツコは笑いながら、そして時折涙を拭う行為を行いながら前述の内容を述べた。

 

「もちろんヒヨリも一緒だよ?」

「ふぇ!?わ、私もですか!?ただでさえ1日だけでも姫ちゃんと一緒に寝ることすら烏滸がましいのに…い、いいんですかね」

「全然大丈夫だよ。それに私とクシナは同い歳だしね。ヒヨリもクシナのお姉ちゃんとして仲良くなるきっかけになると思う」

「こんなみすぼらしい私のために気を使ってくださるなんて…う、うわぁぁぁああん!!姫ちゃん…!」

 

 アツコはよしよしと言いながらヒヨリの頭を撫でで宥めさせていた。

 ヒヨリの方がアツコより歳上なんだよな?なのにこの光景…。

 なんだかヒヨリが私の姉になりたがってた理由がわかった気がする。ヒヨリは今のアツコみたいなのことがしたかったんだな…。

 

 こうして部屋の紹介が終わり、ヒヨリも泣き止んだところで私達は初めて顔を合わせた居間へと戻る。

 

「ねえクシナ、ずっと気になってたんだけどその背負ってるパンパンのリュックはなに?」

「あ、これ?これはね…よいしょっと」

 

 ずっと背負っていたリュックを床に下ろす。そしてリュックを開き中からあるものを取り出す。

 

「私が備蓄していた食料だよ。ふふ、どう?これ全部1人で集めたんだよ?凄くないか!?」

『…………………………………………………………』

 

 あまりの食料の量に驚きが隠せないのかアツコとヒヨリは目を見開き驚きを露わにする。

 

「クシナちゃんす、凄いです!あっ!これなんてソーセージの缶詰めですよ!こっちは魚!こ、こんなにバリエーション豊かな缶詰めの山を見たのは生まれて初めてです…」

「ふふーん♪でしょ?」

 

 元々は姉さんが目を覚ました時に驚かそうと思って備蓄していた食料だ。

 姉さんが亡くなってからの半年間は1人でずっと食料を集めていた。毎日沢山集めては備蓄しての繰り返し。少しぐらい食べても良かったけどそれよりも姉さんの喜ぶ顔が見たかった。そして何より褒められたかったがために望んで備蓄していたのだ。

 

「これは私からのみんなへのプレゼントだよ。いきなり家族に加わるんだから何かあげないと割に合わないでしょ?」

 

 これだけ食料があれば大家族であろうと1ヶ月近くは持つはずだ。

 

 あ、そうだ。これだけ食料があればミサキだって私を受け入れてくれるに違いない。

 

 突如としてクシナの脳内に溢れる家族になるための方程式。

 

 ミサキに大量の缶詰めを渡す→ミサキ感謝感激雨あられ→クシナにありがとうと言って抱きつく→家族になれる

 

「(これだ!)」

 

 この大量の食料を取引材料として私を家族に加えてもらうことを認めてもらおう。よし、早速行動だ。私はリュックから缶ずめを抱えるように取り出す。

 

「?クシナ?」

「これミサキの所に持ってくね!そしたらきっとミサキも喜ぶと思うから!」

「!そうですね、ミサキさんも初めて見る缶詰めがあれば驚くと思います。それに食料はいくらあっても嬉しいですからね…」

「だよね!ちょっと言ってくる!」

 

 ヒヨリが背中を押すように激励の言葉を述べてくれた。そこからは私はすぐに口角を上げながら屋上へと向かう。

 屋上はアツコに紹介されてないがミサキの向かうた方へと進めば自ずと屋上へと続く階段が視界に入る。

 

 階段を上る。

 

「!」

 

 屋上の手すりに寄っかかるミサキの元へサオリ姉が向かっている。そう言えばサオリ姉がミサキの元へと向かったことを忘れていた。

 

 盗み聞きするのは心苦しいがどんな話をするのか気になって仕方がない…。私は屋上へと続く扉に耳を当てて会話の内容を聞く。

 

『…………………………………………………………』

 

 耳を当てても声が聞こえにくい。こうなれば少し扉を開けて…。

 私は極力音を立てずに、そして2人にバレないようにゆっくりと扉を開く。

 

「ミサキ…私がクシナを家族に誘ったのがそんなに気に食わないか?」

「……別に気に食わないわけじゃない」

「じゃあ何が不満なんだ。勝手に誘ったことに対して怒ってるのか…?」

「…………勝手に誘ったことに対しては怒ってない。だけど…不愉快なのは確か」

「……つまり何が言いたいんだ。言いたいことがあるならはっきり言ってくれ。でないと私はミサキの気持ちを知ることができない」

「…………………………………………………………」

 

 どうやら私のことについて話していたようだ。それにしても不愉快とは一体何が…。

 

「クシナを家族に誘った理由はなに?まさかこんな世界で惨めな生活を送っていたそこら辺の少女に哀れみの情でも感じたの?」

「ッ!それは…違うと言えば嘘になる。だけどそれだけじゃない」

「?他に何か理由があるの?」

「いや、それは…」

 

 サオリは答えようと口を開くも喉から声が出ていない。その様からは何か言葉を発しようと思ってるのだろう。だけど声に出す勇気がでないのか…その言葉は誰の鼓膜も揺らさない。

 

「……ほら、また何も言えない。理由すら言えないのにどうしてクシナを助けるような無駄なことをしたの?」

「…………………………………………………………」

「なんでこんな苦痛しかない世界で私だけじゃなくてクシナも生かそうとするの?」

「……苦痛しかないのは今だけだ。この先、もしかしたらこの苦痛から解放されるかもしれないだろ…」

「でた。また根拠の無い先の話を切り出して…返答に詰まった時はいつも未来の話をするもんね。そうやって救いも希望もない未来に縋って生きることと今苦痛に虐げられながら生きるのになんの違いがあるの?」

 

 ミサキの言うことはきっと正しいんだと思う。この先、私達が幸せになれる保証など何処にもない。世界は残酷で無慈悲で私達に救いの手を伸ばすような存在はいない。そんな世界で今の苦痛に虐げられながら生きるのと何が違うのか問われたのなら返答に困るのは当然だ。

 

 確かにサオリ姉は私を救ってくれた。私の生きる理由となってくれた…。だけどそれだけで私はミサキから見てもこの世界から見ても本当に救われた人ということにはなり得ない。

 

「もう2年だよ。あの女が内戦の終わりを宣言して2年。サオリ姉さんが姫を守ると言ってアリウスからの逃亡生活が始まって2年。この2年間、苦痛に耐えて、耐えて耐えて耐えて…必死に姫とヒヨリを守ってきた。でも…もう、私には無理」

「……ミサキ…」

「私にはクシナまで守れる自信が無い…。だから…これ以上は無理…私は頑張れない…!」

「!?」

 

 ミサキに嫌われていると思っていた。

 だけどミサキの発した言葉はその事が嘘であることを裏付けるような内容なのであった。




お姉ちゃんムーブをかますヒヨリをこれからも見たくないか?
ってことでクシナちゃんはアツコと同い歳で末っ子となりました。
次の話でクシナちゃんのプロフィールを公開予定ですのでお楽しみに!
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