そして!新たにお気に入り登録してくださったGAiTOさん、クロノフィア・フィルフェールさん、七味アンチャさん、サフさん、Rachel SRさん、ラインズベルトさん、アスパさん、punyusanさん、ルイボスティーポッツさん、成竹小人さん、しめじフォンデューさん、五月雨五色さん、Holderさん、まさかかまいたちさん、ありがとうございます!
短期間で一気に増えてて驚きました!
では本編をどうぞ!
アツコと2人で住処へと戻り寝室に向かった。
ここを出で大分時間が経過したものだからサオリ姉とヒヨリは起きていると思ったがまだ夢の中のようだ。
「2人とも起きてなくてよかった。勝手に外に出たことがサッちゃんにバレると怒られるからね」
「……アツコは外出禁止令でも出されているのか?」
「そこまででは無いけど外に出る時はサッちゃんかミサキのどちらかが同行するようになってるの」
「?……そうなんだ」
そう言えば昨日サオリ姉とミサキとの会話で聞いたな。
「サオリ姉さんが姫を守ると言ってアリウスからの逃亡生活が始まって2年…」
とミサキは発言していた。サオリ姉含めて全員がアツコのことを姫と呼んでいるため姫=アツコで間違いない。
となるとアツコを守るために逃亡生活が始まったってことだよな…。
「(アツコって何者なんだ?)」
アリウスから狙われていることは間違いない。故にアツコという人物に執着する理由は何なのだろうか。
気になるが先程の会話でアリウスから追われているとアツコ本人が語っていないためここで聞き出すとなれば何処でその情報を知ったの云々を語る必要がある。……このタイミングで聞くのはやめておくか。
「そう言えばみんなアツコのことを姫って呼ぶよね。私もそう呼んだ方がよかったりする?」
「呼び方に関してはなんでもいいよ。でも…同い歳のクシナからは名前で呼ばれたいかな」
「!そ、そうか。わかったよ、なら私は引き続きアツコと呼ばせてもらうね…でもなんでみんなアツコのことを姫って呼ぶのかな?」
「それは私がお姫様のように可愛いから?」
「?」
明確な理由を語ってくれるのかと思えば可愛いからときた。それはご最もな理由だな。
「それは…そうだね。私も初めてアツコの顔を見た時、整いすぎて魅入ってしまいそうになったもん」
「それは私も同じ。クシナが可愛かったから話しかける時、少し緊張したんだよ?」
「え!?そうなの!?」
「うん」
真顔で答えるアツコを直視できないんですけど。何この子、本当に可愛い。幸せにしてやりたいんだが。
「……ん?う、うーん、あ、姫ちゃん、クシナちゃん、おはようございます」
私の声が大きかったのか傍で寝ていたヒヨリが目を覚ましたようだ。
アツコが変なことを言うものだから驚いて大声が出てしまったじゃないか。ヒヨリに申し訳ない。
「おはよう、ヒヨリ」
「おはよう、ヒヨリ、あと起こしてごめんね?」
「……いえ、そろそろ起きる時間でしたので…それより姫ちゃんとクシナちゃんはちゃんと眠れたのでしょうか…?」
「うん、眠れたけど?」
「……えへへ、それはよかったです…私の寝息が臭くて眠れなかったとか、いびきがうるさかったとかで眠れなかったのではないかと思いましたので…」
ヒヨリの寝息は臭くないしいびきなんてかいてすらいなかった。私もアツコも嫌がってる素振りなど見せていなかったはずなんだが…どうやらヒヨリは自尊心が低いようだな。
「全然寝れたから大丈夫。だからそんなこと言わないで」
まあ私は色々あってなかなか寝付けなかったんだけどね。
でもそれはヒヨリに問題があった訳では無いためここでは何も言うまい。
「ふふ、ヒヨリ、私もクシナも困ってないから今日も一緒に寝ようね」
「えっ!?あ、そ、そうですね…なら今日もご一緒させていただきます…」
ヒヨリはえへへと笑いながら答えた。
その後は3人でサオリ姉が起きるまで何をしておくかと話した。
「そうだ。ヒヨリ、昨日ミサキと一緒に本を読んでたんだよね?どんな本を読んでたの?」
「そういえばそんな話をしてましたね…。昨日ミサキ姉さんに読んでもらってた本は…取ってきますので少し待っててください」
ヒヨリは立ち上がり居間へと向かう。
向かう途中廊下からヒヨリが転んだような物音が聞こえたが無事だろうか。
「お待たせしました…」
案の定戻ってきたヒヨリは鼻血を出していた。
やはりあの物音はヒヨリが転けて生じた物音のようだ。それも鼻血を出しているということは顔面からダイブしたようだ。
「大丈夫?はい、ハンカチ」
「あ、ありがとうございます…あ、これが昨日ミサキさんと一緒に読んでた本です…」
ハンカチで鼻を押えながらヒヨリが本を私に渡してくれた。
これは本なのか?本にしては薄いし結構でかいと思うんだが。
私はヒヨリから本を受け取り開く。
「……なにこれ、服の本?」
「それはファッション雑誌です。あ、雑誌というのは写真とかが沢山載ってるもので…多分クシナちゃんが想像しているものとはかけ離れている本、かと…」
「雑誌…?」
雑誌という本か。それにしても見たことがない服装をしている人達が写ってる。頭の上にヘイローがあるからこの世界で生きる住人だと思う。だけど…なんだろうか。アツコと顔を合わせた時と同じ感想を抱いた。
「この人達も私達と同じストリートチルドレンなのになんだかキラキラしてるね」
「……えっと、それは…この人達は私達とは違うんですよね…」
「?どうゆうこと?」
「…………クシナはもしかして外の世界を知らないの?」
「???」
外の世界…?
「何言ってるんだ?世界に外も内もないでしょ。アリウス自治区がこの世の全てじゃないの?」
「…………クシナ、世界はアリウス自治区だけじゃないよ」
「……え?」
「アリウス自治区の他にも様々な自治区がこの世には存在するんです…。ここは地獄みたいな救いもないゴミ溜のような苦しい世界ですが、外の世界、いえ、他の自治区はここよりも何倍も豊かな生活を送ってるんですよ…本当、私達って惨めですよね…」
「…………………………………………………………」
この世界がアリウス自治区だけではない…?
世界にはここ以外にも自治区があって?その外の自治区で生活する人は私達よりも豊かな生活を謳歌している…だと。
「(何故?)」
何故、私達が惨めな生活をしているのか。
何故、外の住人が私達より豊かな生活をしているのか。
何故、外の住人は私達を助けようとしない。
思い返せば不自然だった。
私は生まれた頃から不幸だと、この世界が残酷であったが故に瞬時にそのことを理解できた。
でも外の世界、つまり他の自治区では私達のような惨めな生活は送ってない…。
では何故、私達はこのような惨めな生活を送ることになったんだ?
「2人はなんで自分達がこんな世界で惨めな生活を送っているのか知ってるの?」
「……それはわかりません…物心がついた頃から一人で生活してましたしサオリ姉さん達も語りませんので…知る余地もありませんでした」
「……そうなんだ…アツコは?」
「………………私は…」
アツコは知ってるかのような間を開けた後口を開いた。
「みんな、おはよう」
『!?』
3人で外の世界について話していたところでサオリ姉が目を覚ましたようだ。
目を覚ましたサオリ姉は私達の元へ近づきおはようと挨拶をしたことでアツコの言葉がかき消された。
「……おはよう、サッちゃん」
「お、おはようございます、サオリ姉さん」
「サオリ姉、おはよう」
私達3人はサオリ姉とおはようと挨拶を返す。サオリ姉は微笑むと再度おはようと言ってきた。
「ごめんアツコ、上手く聞こえなかった」
挨拶を交わしたところで私はアツコへ話しかける。
「……私も知らないよ。それよりサッちゃんも起きたし朝ごはん食べようよ。ヒヨリ、ミサキを呼んできてくれる?」
「あ、はい。わかりました…」
「いや、私が呼びに行こう。姫達は朝食の準備をしててくれ」
サオリ姉はそういうと寝室を出ていった。
アツコなら知ってると思ったけど知らないようだ。サオリ姉やミサキなら知ってるだろうか?
「それじゃあ朝食の準備に取り掛かろうか」
「は、はい…」
「……わかった」
私はその場でサオリ姉に言及することはなかった。こうして朝食をとることになった私達であったがミサキがリビングに姿を現すことはなかったのであった。
◆◆◆◆
朝食を摂り終えた私達は住処の裏庭へと集まる。なんでもサオリ姉が食事が済んだら裏庭に来いと言っていたからこうして集まった訳だ。
「よし、みんな揃ったな」
「……ミサキは?」
「ミサキは寝ずの番で疲れている。今朝は寝かせてあげよう」
「そ、そうですよね…。疲れてますよね…」
ヒヨリはこちらをチラチラ見ながら発言する。
私のことを気に気にしてくれるのはありがたい。私もこの場でなら少しは話せると思ったんだけどな。
「では今からクシナの戦闘能力の確認を行う」
「?私の?」
「ああ、私達はアリウスに追われている身だ。いつ戦闘が起きても連携を取れるよう各自の戦闘におけるポテンシャルを把握しておく必要がある」
「追われている身…か」
それはアツコを守っているためか。
まあ私もアツコ含めみんなを幸せにすると決めたんだ。アリウスだろうがなんだろうが私達が花を咲かせるために邪魔となる芽は潰して奥に越したことはないか。
「理由はわかった。でもどうやって戦闘能力の確認をするの?」
「まずは射撃性能の確認からだ。ここに的があるだろ、私のアサルトライフルを貸すから射撃してみろ」
「おっと」
サオリ姉から投げ渡されたアサルトライフルをキャッチする。
そんな物騒なものいきなり投げないでいただきたいところだがそうも言ってられないか。
「(さてと…どうしたものか)」
何を隠そう私は銃火器を握ったことがない。
今までナイフ一本で戦ってたものだから銃火器なんて触れたことがないんだよな…。
おかしな話だと思うが事実だ。そもそも銃火器なんて大それたものを入手することすらこの世界では困難なのだから。
「…………サオリ姉、ごめん…まず使い方から教えてくれ」
「……わかった」
私は素直に使い方を教えて欲しいと願った。
サオリ姉は何も言わずわかったと1つ返事で使い方を丁寧に教えてくれた。とてもわかりやすい説明だ。ひょっとしてサオリ姉は教えることが上手いのではないか。
「説明は以上だ。やってみろ」
「うん、わかった」
言われた通り脇を引きしめ標準を目標に合わせて引き金を引く。
引き金を引くと銃弾が発射され的に着弾する。
成程…結構反動が来るんだな。
「そのまま続けて射撃しろ」
「わかった」
続けて射撃する。
サオリが以前使用していたハンドガンとは訳が違うようだ。一発一発銃弾を発射させるのではなく連続で発射させるものだから射線を修正するのが大変だな。
「撃ち方止め。もう充分だ」
「……ど、どうだった?」
「…………まあ初めて銃火器に触れたばかりだからな」
「いっその事下手だと言ってくれた方が助かるんですけど!?」
サオリ姉は的を回収して私に見せてくれた。
中心からかけ離れた外の円を見事に撃ち抜いている。こうゆうのは本来真ん中を狙うべきなんだろう。
「クシナは今まで銃火器に触れたことがなかったの?」
「う、うん…基本戦闘は姉さんがしてたし?私はこれ一本で今まで生きてきたから」
私は懐からナイフを取り出し逆手持ちで構える。
「さ、サバイバルナイフ、ですよね…。で、でも他の人達が銃火器を使う中で近距離戦を虐げられるナイフで戦うとなると相当危険なのでは…」
「…………………………………………………………」
サオリは初めてクシナと戦闘した時のことを思い出し話しかけた。
「クシナ、以前私の弾丸を避けたよな。あれはどうやって避けたんだ?」
「?あーあれね。あれはただの奇跡だよ」
「奇跡かもしれんが何かは意識したはすだ。あの時何を意識したんだ。言ってみろ」
「えー」
私はあの時避けるときに何を考えていたのか説明した。
人の急所である頭が無防備であったものだからそこを狙うだろうと。そして案の定サオリ姉の構えた銃口が予想通り額を指していたから避けたのだと。
「……なるほどな。じゃあその感覚を射撃する側に転換しろ」
「……どうゆうこと?」
「つまりクシナ自身がサッちゃんの立ち位置になって狙いたい部位に照準を合わせるってこと」
「そうゆうことね。わかった」
アツコが助言してくれたことで内容を理解した。要はあの時のサオリ姉のように狙いたいところに銃口を向ければいいってことだろ?
「!真ん中に当たった!」
「的とそこまで離れていないこの距離なら狙った箇所に当てることは可能だ。だが銃弾は離れれば離れるほど当てることが難しくなるからな。そのことを忘れるなよ」
「???」
「じ、自由落下と言って重力の影響で銃弾が標準で狙っていた中心よりも下に着弾するんですよ…風とかでも銃弾が左右されるので、遠くから当てるのは至難の業なんです…」
「……詳しいんだね、ヒヨリ」
「ヒヨリは狙撃手だからね」
なので私の説明はライフルの場合なんですけどね。と、ヒヨリは付け加えていた。
「まあ近距離戦なら狙っところに当たるんでしょ?なら簡単簡単、もとより私って近距離戦が得意だし」
「それはそうだが危険だろ」
「じゃあ私が近距離戦でも負けないぐらい強くなるようにサオリ姉が鍛えてよ」
「!言うな…クソガキが」
「なんだと!?」
出会ってからずっとクソガキと言われてんだが。とは言っても昨日出会ったばかりなんだがな。
「それじゃあ次はお得意の近距離戦の腕前を見せてもらおうか」
「!おう!」
木の棒を渡され私は何時ものナイフを握るように逆手で握る。
サオリ姉も私に渡した木の棒と同じ棒を握り構える。
「行くぞ!」
「来い!」
足に力を込めサオリ姉へと急接近する。
サオリ姉が自分の懐に入ったところで木の棒を振り下ろす。
サオリ姉は私の攻撃の軌道がわかっていたのか木の棒を立ててその攻撃を防ぎ、両者が力を込め木の棒はメキメキと音を立てる。
「初動の動きは悪くない」
「……まだまだこれから!」
「ッ!」
木の棒に込める力を緩めた。
瞬間サオリ姉の腕が前と出た隙を着いて空いている手を使いサオリ姉の服を掴み引き寄せたところで木の棒をサオリ姉の喉元へ突き刺す。
「……なるほど。ナイフ一本で生きてきただけのことはある」
「何言うか。サオリ姉めっちゃ手を抜いてんじゃんか」
「はて、なんのことやら」
木の棒を放り投げ降参するようにサオリ姉は両手を上げた。絶対手を抜いてるよ。
「って呆気なく終わっちゃったな…もっと長く戦闘すべきだった?」
なんせ戦場では如何に素早く敵を倒すかを求められる。そこで私が生み出したのがナイフを首元にぶっ刺すことだ。
ここの人達は体のあちこちに切り傷をつけたとて屁でもないような様子だったものだから、ある時を境に喉に刺せば行動不能になることを知り、それ以来ずっと喉を狙っているのだ。
「それでいい。お前がどのように戦い生き延びたのかわかった…思い返せばはじめて会った時も喉を狙ってたもんな」
確かにサオリ姉とはじめて殺り合った時、私はいつもの癖でサオリ姉の喉元にナイフを立てていた。やはり長く同じ行動をとっていると癖になってくるもんだな。
「よし、次は体力測定だ。死ぬまで周囲を走り続けろ」
「え?こんな道が舗装されてない所を走れと?」
近接戦闘の腕前を確認したところで次に体力測定だとサオリ姉は言い出した。
サオリ姉に言った通り周囲は舗装されてないスクラップが散らかるあれ道だ。体力を測定するにあたって高低差があるような場所で測っても体力の消費が激しいのだから意味がないと思うんだが。
「自治区で生きていくためだ。四の五の言わずに走って来い!」
「ひぇーはいはい」
サオリ姉に背中を叩かれ私は走り出した。
「クシナ、ファイト」
「く、クシナちゃん、が、頑張ってください…!」
アツコとヒヨリの声援を聞き少しだけやる気が出た私はサオリ姉の言う通り死ぬまで住処の周囲を走り続けるのであった。
◆◆◆◆
「はぁ、はぁ、はぁ……くっ!」
もう足が動かない。高低差のあるスクラップが転がるこの道をどれぐらいの間走り回ったことだろうか。
「もうおしまいか?」
「……死んでないと言いたいの?」
「阿呆言え、大事な妹をこんなところで死なすわけないだろ。あれは…あれだ。言葉のあれだろ」
「あれってなんだよあれってよ!」
私は産まれたての子鹿のように足を震わせながらサオリ姉を指差しあれとは何かと追求した。
「あ、あの、サオリ姉さん、これ」
「ああ、時間を計ってくれてありがとうヒヨリ」
「えへへ」
サオリ姉にタイマーを渡したヒヨリは頭を撫でられていた。ヒヨリは嬉しそうに顔をふにゃらせながら黙ってサオリ姉から撫でられ続ける。
「うわ、凄いねクシナ。3時間近くも走ってたよ」
「さ、3時間!?」
サオリ姉が握るタイマーの数値を後ろから覗き込んだアツコが言葉を漏らした。私はと言うと3時間という時間に驚き私は声を出した。
「体力は申し分ない。足場が悪い道だと言うのに問題なく長時間走れている。近接戦闘を行うにあたって必要となる機動力も走りの様子を見た限り優れているようだな」
「へ、へへ、そう?」
道を塞ぐスクラップや大きな岩など手を使い乗り越えたり、通れないであろう道は滑走して潜り抜けとりあえず止まらず走り続けた。
その結果、サオリ姉からはなかなかいい評価をいただけたようだ。
「……しかし分からないな」
「?」
「……いや、なんでもない。とにかく疲れただろ、ほら、肩を貸してやろう」
「た、助かる」
サオリ姉は何か私に質問をしようとしたが、口を詰むり言い直したところで私に近付き肩を貸してくれた。
私はサオリ姉の肩に手を回してサオリ姉と一緒に住処へと戻る。本当に足がこれ以上動きがしなかったけど何故か不思議とサオリ姉と一緒だと歩けた。
「クシナ、キツそうなら私も肩貸そうか?」
アツコが下を向く私の顔を覗き込むようにわざわざ下から見上げるように屈んで話しかけてくれた。相変わらずアツコは顔がいい。
「大丈夫、住処まであと少しだし」
私は目を逸らしながらそう答えた。
「それにしてもクシナちゃん、3時間近く走るなんて凄いです。私なんて30分程で根を上げたというのに…」
「ヒヨリはもう少し体力をつけないとな。明日から一緒に走るか?」
「うっ!そ、それは丁重にお断りさせていただきます…」
サオリ姉の提案をヒヨリが丁寧に断ったことで一同あははと笑いあったのであった。
ちなみにアツコは1時間半ほどしか走れないと後程語ってくれた。アツコやヒヨリと比べると私は大分体力がある方のようだ。
「ちなみにサオリ姉はどれぐらい走れるんだ?」
「……私は5時間だ」
「ごっ!?」
う、上には上がいるんだなと痛感した瞬間だった。
その後は他愛もない話をしながら進み無事に住処へと辿り着く。
疲れた私に水を渡せとサオリ姉がヒヨリに指示を出してヒヨリが綺麗な水をバケツから汲んでくれた。
ヒヨリから渡された水を飲む。乾いていた喉が一瞬にして潤う。うん、住むべき場所は飲水に困らない川辺だな。
こうして水をちまちま飲みながら居間の床に座り休んでいた私にサオリ姉が話しかけてきた。
「疲れただろ。少し休んでおけ」
「サオリ姉、気を使ってくれてありがとう。足がもうガクガクで…お言葉に甘えて休ませて貰う」
「無理させてすまないな」
「体力測定だから仕方がないでしょ。何も思ってないから大丈夫」
「ならよかった。……それじゃあ私達は先程の場所へ戻る。何かあればそこに来てくれ」
「何故戻るんだ?」
「戦闘訓練だ。ヒヨリもアツコもまだ弱い、私が常に守れる訳じゃない。ここで生きていくためにも自分の身は自分で守れるようにならなければいざという時に困るだろ」
「……それはそうだな」
今の発言からしてきっとサオリ姉もミサキと一緒で私を守るべき妹して捉えているに違いない。
「……何か言いたそうな雰囲気だな」
「別になんでもない。ちょっと寝る」
「…………そうか」
私は逃げるようにその場で横になりサオリ姉から顔を逸らす。サオリ姉も何かを察したのか言及せずにその場を後にしてくれた。
「(このままじゃだめだ)」
私は先程誓っただろ。サオリ姉達を幸せにするために善人になると。
そんな守られている身でありながらサオリ姉達を幸せにできるか?いやできるはずがない。
「?」
廊下から物音が聞こえた。廊下に背を向けていたものだから顔を廊下へと向ける。すると居間の入口から私を見つめるミサキの姿があった。
「あ、えっと…こんにちは?」
「……………………………………………………」
ミサキは機嫌が悪いのか私と目を合わせた数秒後には目を逸らして別の場所へと行ってしまった。
アツコ曰く挨拶は大事だと言うのにミサキは返事をしてくれなかった。
ミサキもミサキで私のことを守る対象として捉えている。更にミサキにとってはアツコとヒヨリを守るのに精一杯なのに私まで加わるとなれば困難だと昨日サオリ姉に打ち明けていた。
「……それこそダメだよな…」
ミサキの負担を減らすためにも私は守られる対象としてではなく守側にならなくてはならない。
「(私が強くなってみんなを守る…)」
そして、何より…。
「もう私のために誰かに死んで欲しくない…」
私なんかのために誰にも死んで欲しくない。姉さんみたいな人をもう生み出したくない、今度は私が誰かを守って姉さんみたいな存在になりたい。いいや、ならなくちゃこの先みんなを守ることなど到底叶わない。守るどころか幸せにすることもできない…。
「!」
そう思い老けながら寝返りを打ったところで私の手が何かに当たった。
「これは…ヒヨリが読んでた雑誌だ」
先程教えてもらった外の世界の雑誌だ。
それにしても驚いた。私はてっきりこのアリウス自治区が世界の全てだと思っていたのに…外にはこんなにキラキラと輝く人達が住んでいるんだな。
「…………………………………………………………」
私は雑誌を手に取り、雑誌に掲載されている外の世界に住む住人の顔を凝視しながら最後のベージまで読み耽るのであった。
クシナちゃんのプロフィールは下記になります。
名前:紅耶クシナ
容姿:頭髪は藍色。インナーカラーは黒。瞳は紅。
ヘイロー:二重線を束ねた六芒星型。中央には大きな十字架が浮いている。色は黒。
性格:自己犠牲の塊(今後その性格が際立ってきます)
アツコ曰くクシナちゃんは可愛いそうですよ。
ではまた次回のお話しでお会いしましょう!!