誰が為に私は魔女になる   作:オオル

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まず初めに。暫く執筆活動を勝手に休止して申し訳ないです。
理由についてですが単純にモチベ低下です。

それはそうと!休止中にお気に入り登録者100人突破!ありがとうございます!
少しでも面白いと思ったら感想をいただけるとモチベが上がります。

では本編へどうぞ!


ドッキリという言葉を知っていますか?

「……痛い…」

 

 頭の頭上が物凄く痛い。具体的な場所を言うならばヘイローの真下辺りが異様に痛い。

 理由は分かる。昨日私が愛してやまない家族の長女である錠前サオリに愛ある拳をもろに食らったからだ。

 

「ちょっとからかっただけなのにな…」

 

 思ったよりも本気で怒らせてしまったらしい。エゴイストと言ったことに怒ったのか、はたまた泣き虫と言ったから怒ったのか、考えたところで両方ともだろうと思った私は布団から抜け出し洗面所へと向かった。

 

 洗面所で顔を洗い、濡れた前髪をタオルで拭き取り、水気を取ったところで居間へと向かう。

そして居間に設けられているちょっとした本棚から本を1冊手に取り読む。

 

 本の内容はグルメ雑誌だ。キヴォトスの全自治区から選び抜かれた食べ物のランキングが掲載されているようだ。

 

「(なるほど…外の世界は全ての自治区を総じてキヴォトスと呼ぶのか)」

 

 となると全ての自治区を統括する輩がいるってことか…そいつらがサオリ姉達をこんな生活を送らせることとなった諸悪の根源なのだろうか。

 

「……ラーメン?特集、か」

 

 数ページ読んだところでラーメン特集のページに目が止まった。

 

 他の食べ物にはあまり興味がわかなかったがラーメンと呼ばれる料理は美味しそうだ。

 

「(いつか外に出た時、家族みんなで食べれればいいなぁ)」

 

 これで不味かったらこの店を潰してやるからな。何せお前達はサオリ姉達の不幸があって今の生活が出来ているだけの輩だ。そのくせして不味いものをサオリ姉達に提供してみろ。お店ごと木っ端微塵にしてやる。

 

「(柴関ラーメンな。覚えたからな)」

 

 柴関ラーメンの店長らしき犬っころを睨みつけ私は雑誌を本棚へと収めた。

 

 その後は今朝ヒヨリと読む本を見繕う。昨日、就寝前に明日は一緒に本を読もうとヒヨリと約束したからな。ヒヨリも私が読みたい本を提示した方が対応しやすいだろう。

 

 雑誌はもういいとして一緒に読むのなら何か童話ものでも…って流石に無いか。

 

 前の住処には姉さんが集めてたから結構あったんだけどなーもう燃やしちゃったからないもんな。

 

「あ、おはよう、クシナ」

「!アツコ、おはよう」

 

 目を擦りながらアツコは私におはよう挨拶を行った。私もおはようと挨拶を返した。

 

「……よかった。ちゃんと家にいたんだね」

「え、なにが?」

「だって起きた時クシナの姿がなかったから…何処か遠い所に1人で行ったのかなって」

 

 アツコは顔を逸らしながら発言した。どうやらアツコに余計な心配をさせてしまったようだ。私は何処にも行くつもりないというのに…何かそう思わせるようなことでもしただろうか。

 

「ないない、絶対ないよ。私はずっと今の家族と一緒にいるから」

 

 とりあえず否定しておこう。

 

「……ちょっと怖い夢を見たの」

「夢?」

「うん、クシナが何処か1人で遠くに行っちゃう夢…なんでも…罪を償うって…。クシナ、何か悪いことでもしたの?」

「ん、んー?」

 

 悪いこと、か。アリウス生徒の喉にナイフをぶっ刺すことは悪いことだと思うけど…別に私はその事に対して罪の意識はないんだが。

 

 あ、なんかアツコって特殊な血筋の子なんだっけ。予知夢とか?なんかそんな特殊能力とか宿してるのかな。

 まあそうだとしても今の私は家族から離れるという考えなど一切ない。何せ一緒にいないと守ることなどできないのだから。

 

「何も悪いことなんてしてないよ。そんな夢なんて気にする必要ない。ずっと一緒いるから、約束するから、ね?」

 

 私は急いでアツコの元へ向かう。アツコの元に着くや否や手をアツコの頭の上に置き慰めるように撫でる。

 

「ならよかった…。うん、ずっと一緒だよ?」

「……うん」

 

 こうしてアツコは落ち着いた。その後はみんなが起きるまでに昨日と同様一緒に家を抜け出し花の庭園へと向かい暫し一緒に幾千もの花が咲き乱れる花達をまたも眺めるのであった。

 

◆◆◆◆

 

 アツコと2人で花を眺めたあと何食わぬ顔で住処へと戻った。

 

「みんな起きてるかな」

「結構早い時間に抜け出したから大丈夫なんじゃないかな」

「だといいんだけどね。前も言ったけど勝手に外出るとサッちゃんに怒られちゃうから」

「…………………………………………………………」

 

 あれ、そう言えば昨日の寝ずの番ってサオリ姉だったよな…。あれれ、なんか嫌な予感がするぞ。

 

「2人とも、おかえり」ニコニコ

『…………………………………………………………』

 

 案の定家に着くと玄関でサオリ姉が腕を組み仁王立ちしニコニコしながら出迎えてくれた。

 どうやら抜け出したことが普通にバレていたようだ。

 

「サッちゃん、ただいま」

「ああ、おかえり。それで?何か言うことは?」

「……楽しかったよ。クシナとのデート」

「!?」

 

 アツコは目元を雑にしながら素直に答えた。

 それにで、デートだなんてクシナさん照れちゃうな。

 

「まさか昨日も抜け出したのか?」

「ううん、今日が初めて」

「ミサキに聞けばわかるんだぞ?」

「うん、聞いてみなよ」

 

 アツコさーん。普通に雑な目元で嘘つきますやん。

 

「ま、まあまあサオリ姉、無事に帰ってこれたんだからよかったじゃん。それに1人で抜け出した訳じゃないんだから多目に…」

「ダメだ。今回は運がよかっただけに過ぎない。敵はアリウスなんだぞ?何時、何処で襲撃されるのかわからないのだから気を付けるべきだ」

 

 ご最もな意見であります。そんなこと言われたらなんも言えないじゃないか…。サオリ姉は正論の鬼だな。

 

「姫、拘束しているようですまない…だけど事前に声をかけてくれれば全然外出して構わないんだ。だから次からはちゃんと声をかけてほしい」

「わかった、じゃあ今言うね。これから毎朝クシナとデートしてもいい?」

「ま、毎日か!?」

「うん」

 

 サオリ姉は驚き声を荒らげた。流石に毎日となれば話が変わってくるのだろうか。サオリ姉は私に視線を一瞬向けた後、何か1人で頷き意を決したかのような瞳で口を開けた。

 

「わかった。許可しよう」

「やった。クシナ、これで気にせず外に出られるね」

「……う、うん?」

 

 サオリ姉が何か言いたげにこっちに視線を送ってるんですけど。

 

「それじゃあ姫、みんなを起こしてきてくれないか?私とクシナは朝食の準備をしておくから」

「わかった」

 

 アツコはルンルン状態で寝室へと向かった。私とサオリ姉はそんなアツコの後ろ姿を見つめ、アツコと大分距離ができたところで私がサオリ姉へ話しかけた。

 

「……なんでアツコの外出を許可したんだ?」

「なに、お前になら任せてもいいと少しだけ思っただけだ」

「ッ!?へーなるほど?」

「自惚れるなよ、少しだけだ。これから姫を1人でも守れるように昨日告げた通り厳しい訓練を課すからな」

「ふん!バッチコイ!」

 

 元気よく私が答えたところで2人してキッチンへと向かう。棚に収めていた缶詰めを人数分手に取りそれぞれテーブルへと並べる。

 

「私が持ってきたやつは何時食べるの?」

「あれは本当にどうしようもなくなった時用だ。今は家にあるもので済ませよう」

 

 サオリ姉は続けて語った。もし、襲撃を受けて逃げるとなった時、私が持ってきた食料は既にリュックに詰められているのだから、いざと言う時に私のリュックを回収するだけで暫くは食料に困らなくなる…とのこと。

 

「サッちゃん、クシナ、みんなを連れてきたよ」

 

 アツコがキッチンのドアからちらりと顔を出しながら私とサオリ姉に話しかけた。そのアツコの後ろを通りミサキ、ヒヨリが姿を現しキッチンへと入っていく。

 

「みんな、おはよう」

「お、おはようございます。サオリ姉さん」

「……おはよう」

 

 サオリ姉のおはようという挨拶にヒヨリとミサキは上から順に答えた。

 

「さあ、みんな集まったし朝ごはんとしようか」

「うん、食べよう」

 

 アツコはそう答えると私の隣に座る。席順とかは特段決まっては無いがアツコは毎回私の隣に座ってくれる。

 

「それじゃあ食べようか」

 

 サオリ姉の言葉を合図に私達は缶詰めを開けて食べだした。ヒヨリの言う通り普通の缶詰めだけど家族と食べると不思議ととても美味しく感じてしまう。

 

「……サオリ姉さん、今日姫と2人で近くの川辺に釣りに行ってもいい?」

 

 みんなでご飯を食べている中、ミサキは淡々と口を動かしサオリ姉にそう話しかけた。

 サオリ姉は一瞬ピクリと眉を動かした後、咀嚼を終え、食べ物を飲み込んだところで口を開いた。

 

「アツコと2人でか?」

「うん、昨日寝る前に姫から釣りに行こうって誘われたの。最近ここら辺でアリウス生を見かけないし数時間程度ならいいでしょ?」

「……わかった。許可しよう」

 

 サオリ姉は先程と同じセリフでアツコが外出することを許可した。

 

「じゃあご飯食べた後すぐに行こうか」

「……そうだね。朝方の方が魚も釣りやすいと思うし」

 

 流石にサオリ姉でも寝ずの番の後だから数時間ほど休むはず。であれば私は予定通りご飯を食べ後にヒヨリと一緒に本を読もうか。

 

 ヒヨリに少し視線を向けるもヒヨリは缶詰めを美味しそうに食べていたため私の視線に気付かなかったのであった。

 

 こうして朝食を食べ終えた私はサオリ姉とヒヨリと一緒にみんなが食した缶詰めを片付け、洗っていた。

 アツコとミサキがいない間3人で何をするかとサオリ姉に問われた時、ヒヨリが真っ先に私と本を読んでおくと答えた。

 サオリ姉はその間に少し休ませてもらうといい私の予想通りの過ごし方になることとなった。

 

「えへへ、じゃあクシナちゃん、居間に行きましょうか。きょ、今日は私がどんな本でも読みますので……。あの、私文字だけはみなさんより読めると思ってますから」

 

 自己肯定感が低いヒヨリだが文字を読む、つまり本を読むことに関しては得意だと思っているようだ。

 発言最中は相変わずオドオドしてたが終始笑顔だったことから私と一緒に読書することを楽しみにしてたんだろう。

 

「じゃあ一緒に読書しようか。実は読んでもらいたい本決めてるんだー」

「ほ、本当ですか?それは嬉しいです。え、えへへ、もしかしてクシナちゃんも一緒に読書することを楽しみにしてましたか?」

「うん、そうだね」

「で、ですよね。こんな苦しい世界での楽しみなんて食事か本を読むぐらいですもんね……。あれ、改めて考えると楽しみが本当に指で数える程度しか……うわぁぁぁぁああん!!」

「ちょっと!いきなり泣かないでよ!?」

 

 居間に向かう廊下でネガティブ思考を炸裂したヒヨリがいきなり泣き出した。

 なんか私が泣かせた感がいが目ないから泣き止むようすぐにヒヨリの頭を撫でる。

 

「泣き止んだ?」

「は、はい、すみません……私お姉ちゃんなのに、こんな情けない姿を、う、うぅ!」

「大丈夫大丈夫、そういった思考は良くないかもだけど…まあ仕方がないよ」

 

 こんな世界で生きていればネガティブ思考になるのも無理はない。

 

 今すぐにそのような思考はやめろとは言わない。ヒヨリがそんな思考をせず、読書以外に楽しいと思えることができるよう私はヒヨリを、ううん、家族全員を幸せにしてみせる。

 

 居間へと向かうヒヨリの後ろを歩きながらあらためて決意する私なのであった。

 

「う、うわぁぁぁあっ!?」

 

 ヒヨリが居間に着いたところで驚きの声を上げた。

 

「…………アツコ?」

 

 私の眼に居間の床にぐったりと倒れたアツコの姿が映る。顔色を変え明らかに体調が悪い様子のアツコの元へヒヨリがすぐに駆け寄り話しかけた。

 

「ひ、姫ちゃん!?ど、どうしたんですか!?」

「う、うう…ヒヨリ、ごめんね。体調が優れないの…」

「か、風邪ですか!?う、うう、タダでさえ不健康な生活を送ってるというのに、風邪まで引くだなんて……苦しいですよね。辛いですよね。う、うう…!」

「待ってヒヨリ、今泣いたところでアツコの体調が良くなる訳じゃないでしょ。とりあえずサオリ姉に報告しよう」

「……は、はい……」

 

 泣き出しそうになるヒヨリを宥めて私はキッチンへと残っていたサオリ姉の所へ報告するために向かう。

 

「姫!大丈夫か!?」

 

 話を聞いたサオリ姉はすぐに居間と向いアツコへ近寄り声をかけた。

 

「ごめんねサッちゃん。昨日の夜、屋上に長居しすぎたのかも…」

「だから早く戻れと言ったのに…。いや、今はそんなことどうでもいい。ヒヨリ、応急箱から風邪薬が残っていないか確認してくれ」

「わ、わかりました」

 

 ヒヨリはサオリ姉の指示に従うよう立ち上がり王宮箱の元へと向かう。

 

「……姫?」

 

 ヒヨリが部屋から退室するのと同時に入れ違うかのよう釣り針を手に持ったミサキが姿を現した。

 

「ミサキ…ごめんね。釣り、一緒に行けそうにないみたい」

「!……釣りなんてまた今度でいいよ。今は治療に専念して。サオリ姉さん、ヒヨリは応急箱を取りに行った認識であってる?」

「ああ、風邪薬があればいいんだが…。」

 

 サオリ姉とミサキが横たわるアツコを囲い必死に看病をする。以前、サオリ姉は妹達が風邪をひいた時、看病をすると言っていたがこれほどに適切な対応ができるとはな。流石大家族の長女と言ったところか。

 

「ミサキ、でも…私、お魚が食べたい、かな」

『???』

 

 アツコは弱々しい声で体調を崩しているのに魚が食べたいと言い出した。

 

 その場にいた私達の頭上には?マークが浮かぶ。

 

「姫、気持ちはわかるが今食べたところで味わって食せないと思う。ミサキの言う通り魚は次の機会に…」

 

 サオリ姉が優しい言葉を選びアツコに魚を食すのはまたの機会に言いかけたところでアツコが間髪入れず口を開く。

 

「嫌。」

『???』

 

 またも私達の頭上には?マークが浮かんだ。

 

「今日食べたいの。絶対食べたいの。お願い…お姉ちゃん…」ウルウル

 

 目をうるうるさせながらアツコはサオリ姉とミサキに懇願する。

 

 2人の様子を見るがかなり困惑しているようだ。きっとアツコが何を考えているのか検討もついてないんだろう。

 

「魚の缶詰でも…「嫌。」……そうか」

 

 打開策を提案したサオリ姉であったが一瞬にして拒否されてしまった。サオリ姉とミサキの様子からして2人はアツコの要望にはできる限り答えるようにしてるようだ。まあ私が来るまではアツコが末っ子だったのだからそれはそうか。

 

「ど、どうすればいいんだ…。素直に魚を釣りに行くべきなのか…?」

「でも行くってなるとペアで行きたいかな。私と……」

「!」

 

 ミサキはそう発した後、私をしばし眺める。

 

「……頼りないけどヒヨリかな」

 

 あーはいはい、私とは行きたくないわけですね。

 

「ヒヨリはダメ。ヒヨリには看病してもらいたい…だから、クシナと一緒に行って…?」

「!?」

 

 その発言で私は理解し、アツコへと視線を送った。するとアツコは私を見つめながらコクリ頷いた。

 

「わかった。じゃあ私がミサキとクシナが2人っきりになれる機会を設けてあげる」

「そんなことできるの?」

「うん、今日は無理だけど…明日ならできるよ」

 

 昨晩、屋上でアツコと話した内容だ。アツコはきっと、今まさに私とミサキが2人っきりになれる場を設けようとしているんだ。

 

「(となるとアツコのこれは演技か)」

 

 必死に息を荒くして如何にも辛そうな面をしているが全部芝居か。いやはや、凄いなアツコ。

 

「ミサキとクシナの2人で、か?」

 

 サオリ姉は視線をアツコから私へと変えた。

 

「私はいいよ。ミサキが良ければの話だけど。それに今までの会話からしてアツコが魚を諦めるとは思えない」

 

 私の意見が求められているようだったからそう答えた。

 

「……………………………………………………」

 

 するとサオリ姉は何か考えるように黙りを決めた。

 

「!全く、姫には敵わないな…。どうして姫がそこまで魚にこだわるのかは知らないが…他ならない姫の頼みだ。ミサキ、クシナと2人で一緒に行ってくれないか?」

 

 サオリ姉は一瞬眉をぴくりと動かした後、先程よりも少しだけ声のトーンを上げて応えた。

 

 さては気付いたのか。

 

「……はあ、わかった。サオリ姉さんが言うなら従うよ。クシナ、すぐに準備して。姫の体調が気になるからすぐに釣って終わらせるから」

「う、うん。じゃなくて、おう」

 

 ミサキは溜息をつきダルそうに立ち上がる。

 

「じゃあ玄関で待ってる」

 

 ミサキはそう発言後、居間から退室した。それと同時に風邪薬を探しに行ったヒヨリが居間へと戻り、先程とは逆の立場となった。

 

「サオリ姉さん!か、風邪薬ありました!そ、それとお水になります!」

「ありがとうヒヨリ、でも大丈夫だ」

「へっ?それは一体どういう…」

 

 困惑しているヒヨリに対して横たわっていたアツコはムクリと起き上がり声をかけた。

 

「テッテレー。ドッキリ大成功〜」ブイブイ

「???」

 

 満面の笑みでダブルピースをしながらアツコはヒヨリにそう言葉を送った。

 

「ど、ドッキリ?え、どうゆうことですか!?」

「しっ!ヒヨリ、声が大きい。ミサキにバレる!」

「す、すみませんサオリ姉さん。で、でも…せ、説明をお願いしますよ!」

「実はミサキとクシナを2人っきりにするための演技だったの。サッちゃん、ヒヨリ、騙してごめんね。あとミサキも…。」

 

 玄関に視線を向けながらアツコはミサキにも謝罪な言葉を送った。

 

「クシナはわかってたでしょ?」

「……まあ最後辺りになってわかったけどさ。でも流石に無理やりすぎたんじゃない?サオリ姉とミサキ、大分困惑してたよ」

「無理やりでもいいの。こうしてちゃんとクシナとミサキが2人っきりになれる機会を設けることができたんだから」

 

 誇らしげに胸を張りながらアツコは語った。心做しかふんすと鼻息らしき音が聞こえた気がした。

 

「姫がクシナと2人で行くように発言したあと、お前達アイコンタクトを取ってただろ。その時なんとなく察したんだ。それでクシナの返答と来たものだから姫が何か企んでいると確信した。だからミサキにクシナと2人で釣りに行くよう仕向けたんだ」

「流石サッちゃん。鋭いね」

「でも企んでいたことがクシナとミサキが2人っきりになれる場を設けることとはな。通りでヒヨリが同行することに躊躇していた訳だ」

「???」

 

 ヒヨリは話が読めずに困惑していた。ヒヨリは今の今まで行っていた一連の流れを知らないものだからサオリ姉が簡潔に説明をしたことで内容を理解してくれた。

 

「ではクシナちゃんは今からミサキさんと2人で釣りに行く、と…」

「うん、一緒に本を読む約束してたのにごめん」

「い、いえ!本なんていつでも読めますから!是非!この機会にミサキさんと親睦を深めてください!……そ、その……」

「?」

「お、お姉ちゃんが陰ながらお、おおおお応援してますのでっ!」

「………………ヒヨリ、ありがとう」

 

 目を瞑り必死に思いを伝えたヒヨリだった。

 

 アツコには機会を設けてもらった。

 

 ヒヨリからはお姉ちゃんとして声援を送ってくれた。

 

「(なんとしてでもミサキと仲を深めないとね)」

 

 私はそう決意した。座っていた床から立ち上がり、頬を数度叩く。そして。

 

「アツコもありがとう。それじゃあ私はミサキと2人で一緒に釣りに行ってくるよ」

 

 アツコとヒヨリは頷き私に頑張れと視線を送ってくれた。その視線を感じながら私は居間を出る。

 

「待て、クシナ」

「?なに?釣竿ならミサキが2本持ってたよ」

「それじゃない。いいから少し待っててくれ」

 

 サオリ姉はそう答えると物置へと向かった。数秒ほど待ったところでサオリ姉はアサルトライフルを片手に戻ってきた。

 

「アリウスの本部からは大分離れているが、いつ戦闘になるかわからないからな。武器は装備しておけ」

「……おう、ありがとう」

 

 どうやら余ってた部品をかき集めて私専用のアサルトライフルを昨晩作成してくれたようだ。

 

「それとこれを」

 

 サオリ姉はタオルに包まれていたある物を私に受け取るよう前に突き出した。

 

「サバイバルナイフ?」

「ああ、アリウス生から奪った一級品だ。私の予備だったがお前に渡そう」

「いいのか?」

「武器のメンテナンスは大切だ。あんな刃こぼれしてるナイフを使い続けてたらいつか大事な時に使い物にならなくなるぞ」

「……今度、武器のメンテナンスの仕方を教えてくれよな」

「ああ、わかった。だけど今は目の前のことに集中しないとな」

「おう!任せな!」

 

 私はサオリ姉に拳を突き出した。サオリ姉は私の想いに応えるように拳を突き出しグータッチを行った。

 

「それじゃあ、ミサキも待ってるし行くね」

「アリウス生には気を付けるんだぞ」

「わかった!」

 

 武器を受け取り準備も整ったところでミサキが待つ玄関へと向かう。

 

「……遅い」

「ごめん。準備に手間取った」

「……さっきも言ったけどすぐに終わらせるから。急ぐよ」

「お、おう」

 

 相変わらずの態度をとるミサキだった。だけど今の私はそんな態度に怯むほどの精神力ではない。アツコが作ったこの機会、絶対ものにしてみせる。

 

 川辺へと続く道を先導して案内するミサキの後ろを歩きながら改めてクシナは決意した。

 だがこの些細な一連の出来事が、クシナを含む、家族全員の人生を大きく変える転機となることを知らないのであった。

 




モチベ低下の理由ですが、皆さんがこの作品を楽しんで読めているのか不安になったからです。評価やお気に入り登録を沢山の方がされてますが感想が一切ない…。そんな状況でしたので上記のような不安が僕を襲ったって感じです。まあ完全に僕が未熟だから勝手に凹んだだけなんですけどね!

次回こそ、クシナとミサキが言い合います。
では…また次回の話でお会いしましょう!

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