男女あべこべ自キャラ憑依曇らせ勘違い 作:maricaみかん
今回はアブナイ平原のボスであるナダラカウルフに挑む。
ナダラカ平原のボスだからナダラカウルフだったんじゃないのかと俺も突っ込んだが、まあ仕方ない。
アブナイ平原に場所が変わっても、同種族であるのだと自分を納得させた。
それよりも大事なことは、どうやってナダラカウルフを倒すのかだ。
おそらくは、前回戦ったときと同じ戦術でいけるはずだ。
このあたりから、俺の受けるダメージは0ではなくなる。
それでも、HPがけずり切られるよりも倒す方が明確に早いだろう。
だから、何の心配もいらない。そもそも、HPが1になってからが俺のビルドの本領なのだから。
「今日はボスに挑みますから、気をつけていきましょう」
「そうだな。簡単ではないだろうが、アタシ達なら倒せるはずだ」
「頑張っていこうね。セカンライノの時みたいに情けない姿は見せないから」
「じゃあ、行きましょう。大丈夫。ボク達なら勝てます」
そして、ナダラカウルフのところまで向かっていく。
もう慣れたもので、ザコ敵に対しては流れ作業でも倒せるようになっていた。
ソル達の成長を感じて、とても嬉しい。まあ、俺の動きも成長したはずだ。
敵の引き付け方も、そろそろ分かってきたつもりではある。
いくらダメージを受けなくても、攻撃に当たるばかりは嫌だったからな。
でも、今回は受けきった方が良いだろう。ナダラカウルフは素早いからな。
「いました。ナダラカウルフです。では、ボクからいきますね」
アピールタイムを使って敵の攻撃を誘導し、そのまま耐えていく。
HPが減っている感覚はあるが、誤差のようなものだ。
噛みつきも引っかきも、虫がたかっているくらいの感覚。
だから、どうということはない。そもそも、ナダラカウルフごときにやられるはずが無いのだから。
「まだまだ。トレードカース」
前回と同じように、俺と敵にデバフをかけていく。
やはり同じ敵だけあって、デバフの効果は高い。同様の戦術を使い回せるのはありがたいな。
「いくぞ、ハイスラッシュ!」
ソルの先制攻撃だ。相変わらず鋭い剣の振りで、参考にしたいくらいだ。
まあ、今は観察よりもボス退治のほうが大事だよな。
俺をかじっているナダラカウルフに向けて、ソルは何度も切りかかっていく。
「私だって。ハイファイア!」
セッテから複数の炎が飛んでいき、ソルを避けてナダラカウルフに当たる。
連携は明確にうまくなったよな。ソルが敵から離れていなくても、ちゃんと敵だけに当たるのだから。
この調子で敵をけずっていけば、簡単に倒せるはずだ。
「いい感じですね。このままいきましょう」
「任せておけ! スラッシュ、スラッシュ、スラッシュ!」
ソルの連続攻撃が敵に当たっていく。
縦、横、斜めと方向を変えて切りつけており、回避を許さない。
いくら俺に敵の攻撃が集中しているからといって、ソルほどうまく攻撃するのは難しい。
俺が同じ事をしようとすれば、きっと失敗するだろうな。
根本的に、俺の戦いはステータスとスキルの性能に任せたゴリ押しだからな。
このパーティにおいて、戦闘技術という面では俺が一番下だろう。
的確に切りつけていくソルも、魔法を外さないセッテも、明らかに上手だからな。
だが、ありがたいことだ。俺はもっと成長できるという見本が目の前にある。
まだまだ『セブンクエスト』は味わい足りないからな。
「続くよ。ハイファイア!」
ソルを見事に避けながら、ナダラカウルフに複数の炎が当たっていく。
さすがだな。俺が魔法を使ったとして、きっと同じ事はできないだろう。
たまたま出会った二人ではあるが、相当な当たりを引けたみたいだ。
人格的な意味でも、実力的な意味でも。本当に俺はついている。
それからも何度か同じような動きを繰り返し、メガファイアの一撃で倒せそうなくらいになった。
「セッテさん、そろそろ」
「分かったよ。いくよ」
セッテが詠唱を始めて、俺は攻撃を引き付けていく。
そろそろ一割くらいのダメージを受けたかもしれない。どう考えても楽勝だな。アクシデントが10回起こったところで何の問題もない。
根本的に、俺はダメージを受けている方が強いんだ。だから、負けなんてありえない。
「じゃあ、アタシも負けてられないな! ハイスラッシュ! スラッシュ!」
ソルも連続攻撃を仕掛けていき、いよいよ最後といった感じだ。
しばらくナダラカウルフの攻撃を無防備に受けて、セッテが詠唱を終えた。
「いくよ。メガファイア!」
「アタシも! フルスラッシュ!」
炎の竜巻が敵に襲いかかり、さらにソルの全力まで叩き込まれる。
当たり前のように、ナダラカウルフは倒れていった。
「やりましたね、二人とも」
「ああ、そうだな。クリスは大丈夫だったか?」
「少しだけダメージを受けましたが、それくらいですね」
「本当に大丈夫? 無理してない?」
「へっちゃらです。本当にたいしたことないので」
「なら、いいけどな。じゃあ、そろそろ帰ろうか」
「そうだね。次はトリの街かな。私もトリに行く冒険者かあ。実感がないや」
「アタシもだ。だけど、見合う強さになっているはずだ」
「はい。お二人ならトリでも通じるはずです」
次の目標も定まったことだし、今日はぐっすり眠れるぞ。
新しい街に向かうのも楽しみだが、また二人が成長すること、そして俺のビルドをぶん回す瞬間が待ち遠しい。
何度でも思うが、『セブンクエスト』、そして『エイリスワールド』最高だな!
――――――
ソルもセッテも、いつからかクリスは無敵だとすら信じていた。
だが、そんなものは幻想でしかなかったと突きつけられる。
ナダラカウルフとの戦いの中で、クリスはHPの減るスキルを使っていない。
にもかかわらず、クリスはダメージを受けていたのだ。
つまり、敵の攻撃でもHPが減るということ。これから、もっと難しいダンジョンが待っているにもかかわらず。
クリスにかばわれることに慣れていた。クリスがダメージを受けないことに慣れていた。
だが、今までのような考え方では、これからクリスは傷つき続けるだけ。
思い知らされた現実はあまりにも残酷で、ソルもセッテも心からジクジクしたものが消えない。
「なあ、クリスの防御がなくなって、アタシ達は戦えると思うか?」
「無理だよ。だって、防御力が足りない。そりゃあ、一撃二撃は耐えられるよ? でも、そんなの何の意味もない」
「だよな……。アタシ達は結局、クリスに頼り続けるしかないのか。悔しいな……」
「私も同じ気持ちだよ。でも、どうすればいいの……?」
ソルもセッテも、迷子になったような気持ちから抜け出せなかった。