男女あべこべ自キャラ憑依曇らせ勘違い   作:maricaみかん

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占い? せっかくだから、最高の結果で!

 さて、昨日はダンジョンを1つ攻略して、金銭的にも余裕がある。

 なら、やることは決まり。自分へのご褒美だ! さて、何がいいかな。

 そうだな、適当にぶらついてみるか。気に入ったところに入ればいいだろう。

 

「何がいいかな。面白いもの、あるだろうか」

 

 いろいろと見て回っている中で、気になる店を見つけた。占いの店だ。

 『セブンクエスト』で占いなんて仕様はなかったからな。どんなものか気になってきた。

 

「占いか。どんな結果が出てくるのだろうな。よし、入ろう」

 

 地味な装いの建物の中に入っていくと、いかにも占い師といった格好の人が居た。

 定番の水晶玉を持っていて、ゲーム世界だと考えると本当に効果がありそうだ。いいな。

 

 長い銀髪に赤い瞳。そしてロリっぽい見た目。いかにもゲームのキャラクターという感じだ。

 『セブンクエスト』はモブだらけだったから、こうして独自の顔を見ると、やはり世界は息づいているのだと思える。

 最高だよな! こうして新しいゲームの世界を知れるのだから! 大好きだった『セブンクエスト』の!

 

 さて、この占い師はどんな人なのだろうか。エセ占い師でなければいいが。

 面白い話をしてくれるのなら、エセもありではある。それでも、本物の占いを見るほうが楽しそうだからな。

 

「いらっしゃいませです。どんなご用……えっと、その格好はどうされましたですか?」

 

「冒険のための装備です。気にしなくて良いですよ」

 

「そ、そうですか。占いをしてほしいですか?」

 

「そうですね。お願いします」

 

「お安くしておきますです。今後ともごひいきにしてくださいです」

 

「それは、結果次第ですね。いま約束はできないです」

 

「素直な方ですね。嫌いではないですが。では、始めていきますです。お名前はなんですか?」

 

「クリス・ヴィンランドです」

 

「あ、名乗っていませんでしたね。私はエリカ。占い師です」

 

「エリカさんですね。よろしくお願いします」

 

「では、静かにしていてくださいです」

 

 言われたとおりに静かにしていると、エリカは水晶玉に手をかざして動かし始める。

 うんうん。いかにも占いという感じだ。本当に結果がたのしみだ。

 しばらくエリカをながめていると、何やら呟いている。

 

「これは、まさか……いや、そんな……」

 

 何があるのか気になるが、静かにしろと言われているからな。黙っているべきか。

 そのまま待っていると、エリカはこちらを向いて話し始めた。

 

「あなたは、どうやら勇者の素質があるようですね。この世界を救う運命にあるのです」

 

 うん、俺の評価にピッタリじゃないか! 当たり前だよな! 本当にゲーム世界を救ったんだから!

 仮にこの世界に魔王が居たとしても、俺なら倒せる! 勇者、最高の響きだな!

 

「よく分かっていますね。ボクは魔王を倒すんですから」

 

「そう、ですね。もう1つ、特別な占いがあるんです。受けていきますですか?」

 

 特別な占いとはなんだろう。でも、エリカの占いなら、受けてみてもいいかもな。

 

「いくらですか?」

 

「いえ、お代はいらないです。サービスにしておきますです」

 

「じゃあ、お願いします。どんなところが特別なんですか?」

 

「それは、秘密です。じゃあ、始めていきますです」

 

 今度のエリカはこちらをじっと見つめている。赤い瞳に吸い込まれそうな感覚があった。

 なんというか、澄んだ目をしているよな。輝いて見えるというか。

 エリカが美人だからこその感覚だろうか。まあ、何でも良いか。

 占いが面白い結果を出してくれるのならば、それで十分だからな。

 

「結果、出ましたです。あなたは、過去に敵とたくさん戦ってきたですね」

 

 そうだな。『セブンクエスト』でこの体、『肉壁三号』は無数のモンスターたちを倒してきた。

 だから、エリカの占いはきっと正しい。それにしても、過去まで見れるのか。便利なものだな。

 

「よく分かりましたね。ボク、とっても強いんですよ」

 

「そうですね。分かりますです。クリスさん。困ったことがあったら、いつでも言ってくれていいです」

 

 よく分からないが、俺はエリカに気に入られたのだろうか。

 俺としては、そこまで親しくなったつもりはないが。というか、そもそもほとんど会話もしていない。

 まあ、占い師とのことだし、俺の何かを見た上で気に入ったのかもしれないな。

 それなら、しっかり頼らせてもらおうか。俺としては、困ることなんて無いと思うが。

 

「分かりました。なら、気軽に相談させてもらいますね」

 

「そうしてくださいです。では、また会いましょうです」

 

「はい。今日はありがとうございました」

 

「こちらこそです。ありがとうございましたです」

 

 そして俺は占い師の店から出ていく。ああ、気分がいい! 勇者なんて、最高の呼び名だ!

 本当にテンションが上がったから、モンスターを倒していこう! 今日はモンスター祭りだ!

 

「よし、チカバの洞窟へ行こう! いっぱいモンスターを倒すぞ!」

 

 俺はチカバの洞窟で、全力でモンスターを狩りまくった。ああ、いい占い師に出会えて、楽しい一日だったな!

 

 

――――――

 

 

 エリカという占い師は、救世の勇者が現れるという未来を見ていた。

 勇者はどんな人なのだろうか。楽しみに待ちわびる日々を、しばらくの期間すごして。

 目の前に現れた勇者は、とても儚げな男の人だった。

 なぜかは知らないが、拘束具のような衣装を装備した、可愛らしいはずの男の子。

 

 そんな男の子はクリスと名乗った。つまり、勇者としての名前だ。

 いまでも遊んでいるのがふさわしい、あるいは、誰かのもとで幸せに過ごしているのが良いはずの男の子が勇者。

 そんな事実だけで、エリカは胸が締め付けられるような思いをしていた。なにせ、クリスは悪い人には見えなかったから。

 勇者なんて、戦いの中で生きる運命に従わなければならない生を過ごすほどの罪を犯したようには見えなかったから。

 

 だから、本当は同じ名前の別の人物が勇者なのだと信じたくて、占った。

 けれど、結果は変わったりしない。エリカは苦しみながらも、クリスに運命を告げる。

 分かっているなんて返されて、エリカは思わず叫びたくなった。

 勇者の運命は、戦い続ける道でしか無いのに。可愛らしい男の子に預けて良い運命じゃないのに。

 

 どうしてクリスは自分の運命を当然だと思っているのだろう。

 エリカは我慢ができずに、クリスの過去を見ることにした。

 そこに映っていたのは、クリスが無防備に敵の攻撃を受け続ける姿。

 つまり、彼はずっと、悲惨な目に会い続けてきた。おそらくは、誰かから強制されて。

 

 クリスの悲惨な過去を知って、エリカはどうしても彼を支えたくなった。

 だから、何でも相談して良いのだと告げる。せめて、心だけでも楽にしてほしいと願って。

 

 ただ、エリカは勇者の真実を知って、運命を憎みたくて仕方がなかった。

 

「クリスさん。きっと、私があなたを幸せにしてみせるです。だから、せめて生きていてください……!」

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