原作の扱いと行動を見て絶句する人の感想からしか摂取できない栄養があると思います。
不満たらたら文句たらたらのメスガキツネ転生した今世を送っている僕であるが、それでもまぁ心のどこかで浮つきフワッフワだったのは否定できない。
紙書籍で全巻揃えるのは当然、関連書籍から資料集に画集からキャラソン全集まで網羅した作品だからしょうがないと言えなくもないが。
なんのかんの言って、とりあえず自衛出来る戦闘力と立ち回りさえあれば後は主人公と敵対しないようにしておけば良い。
そんな風に考えていた時が、僕にもありました。
「ケヒヒヒヒヒヒィ!肉ゥ!新鮮ナ肉ゥ!!」
「がぁっ!?」
原作主人公が怨霊に襲われ、その怨霊が抱えていた深い悲しみと絶望を理解して涙を流し。
それでもその悲哀と絶望をただ破壊と暴力を振りまく事でしか発散できなくなった……そんな悲しい怨霊を生まれ持っていた霊能力によって祓い撃破するという、文句なしの名シーンをウキウキ気分で見に来た僕の眼前で繰り広げられていたもの。
それは。
「怪しい気配は感じちゃいたが……まさかこんなのが出てくるなんてな……!」
痩せ細った体躯、しかし下腹部は醜く肥大化し……血走らせた目で獲物である少年こと『宵野 弦哉』を、半開きの口から涎を垂れ流しながら群れで襲う餓鬼の群れでした。
弦哉君は逃げようにも背後に腰が抜けて逃げられない、怯えた様子を見せる小学生っぽい子供達を庇っている関係で逃げるに逃げられないようだ。 って、ちょいちょいストップ。
いやまてまてちょっと待って、なんで餓鬼がいきなり弦哉君襲ってんの!? 原作開始の合図であり弦哉君が覚醒する最初の敵って、半グレ連中に玩具にされた挙句自死した女の人の怨霊じゃん!?
餓鬼が小学生襲おうとして弦哉君がインターセプトするの、もうちょい先の話じゃん!?
あれ?ちょっと待って? 半グレ連中に玩具にされた挙句、自死した女の人の怨霊?
弦哉君を陰から見守る僕の脳裏に、ふとある日の夜の女性を嬲り者にした悪党を仕置した日のことがよみがえる。
……あ。
あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛?!?!
そりゃそうだよね!本来ならあの半グレ連中って原作開始直前少しぐらいの時期に怨霊に襲われて死亡(社会的には変死)してたけど、そうじゃん!
あの日僕達があいつらの悪行がエスカレートする寸前で止めて、仕置きしたわけだから暴走する怨霊生まれてないじゃん! ついでに怨霊になりそうな生霊や怨みの念全部晴らしてたじゃん僕ぅぅ!?
アカンこのままじゃ弦哉君死ぬぅ!?
そう思い至った僕はこりゃいかんとばかりに、人間への擬態を解除しながら尻尾を翻して作り出した鬼火を手近な餓鬼へと投げつける。
「お嬢?!」
興味深そうに状況を見守っていた夜霧さんが突然の僕の行動に思わず声を出したようだが、それどころじゃない僕は突然の乱入者に静まる路地裏で不敵に笑う。 内心は叫ぶビーバーみたいな状態なのは内緒だ。
ここで万が一にでも弦哉君が死ぬと僕の人生設計が木っ端微塵におじゃんとなり、組織で疎まれ気味な僕は薄い本な感じの扱い待ったなしなのだ。いやまじで。
「おにーさん頑張ってるね♪ ちょーっとお手伝いしたげる」
内心を悟らせないようニンマリと笑みを浮かべメスガキツネムーブをかましつつ、僕に狙いを変えてとびかかってきた餓鬼をひょいっと避けながら軽やかに弦哉君の隣に立つ。
「何だよアンタ……と言うかその耳と尻尾、人間じゃねーな?」
「そうだよー? それとアンタじゃなくて堕姫ちゃんだよー、よろしくねー?」
僕に対して訝しげな視線を送りつつも、すぐに脅威度の高い餓鬼に弦哉君は視線を向ける。
彼は今は一般家庭でのびのびと過ごしているけども、幼少期田舎の祖父母に少しだけ妖怪や怪異について知識を授けられている関係で僕の正体にすぐ気づいたようだ。
「おにーさん随分霊能力強いみたいだし、足手まといいるの抜きにしてもこんなの楽勝なんじゃないのー?」
「バカ言ってんじゃねえよ、こんなのと殴り合いなんて今日が初めてだこちとら!」
僕の言葉に忌々しそうに答えながら、無防備にとびかかってきた餓鬼をハイキックで迎撃して壁に叩きつけてる弦哉君。
いやぁ、どう見ても怪異との初エンカとは思えない攻撃力と戦闘センス。 多分コレ餓鬼がもっと数少なかったら切り抜けれてたね!
これもしかすると、わざわざ姿現さなくても影から援護しておけば良かった話では?
そんな思考が頭をよぎり、ちらりと物陰の夜霧さんに視線を送れば何やってんだアンタと言いたげな視線を僕に送ってた。
……よし、切り替えていこう!心に棚を作って!
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化け物……餓鬼を全て撃退し、餓鬼を封印していた祠をいたずらで壊した悪ガキ共に拳骨を落として安全なところまで送る。
問題は怪異を認識した子供は怪異に狙われやすくなる、そこをどうしたものかと考えていた俺なのだが……。
「はいはーいぼく達ー、この炎をじっくり見てねー。うん、よいこだねー……君達は今日見た化け物をぜーんぶ忘れるー忘れるー」
突然現れ俺を助けてくれた妖狐の女、堕姫が鬼火を作り出すとゆらゆらとその鬼火を揺らして悪ガキ共の記憶処理を手早く終えてくれたおかげで、俺の心配も無用になった。
……けどあの悪ガキ共、鬼火の向こうに見えていた堕姫の胸元に視線釘付けだったよな……エロガキめ。
その後堕姫は簡単に狐耳と尻尾を隠して着物姿から洋服姿に化けると、悪ガキ共を適当な公園で解散させ。
「じゃあねーおにーさん!」
俺に手をひらひら振って去ろうとした。
その後ろ姿を見た俺は、衝動的に堕姫を呼び止める。
「待ってくれ!」
「ん? なーにー?」
悪戯っぽい笑みを浮かべて振り返った堕姫の横顔は夕陽に照らされており、この世のものではない存在であると言われても納得しかない色気を感じさせる。
妖狐は色香を振りまき惑わせるから気をつけろといっていた爺ちゃんの言葉を俺は思い出し、慌てて邪念を払いながら堕姫へお礼を述べる。
「悪い、助かった。お前が来てくれなかったら俺は多分死んでいた……」
「そうかなー? おにーさん強かったし僕が来なくても切り抜けれていたと思うよ?」
餓鬼達との戦いの時もそうだったが、この女はなんでここまで俺を無条件に信じられるんだ?
俺は昔から幽霊や妖怪が見えていた、その事が原因でトラブルが絶えなかったし学校内外でも俺に近付こうとする連中なんて両手で数えられる程度なんだぞ?
「助けられっぱなしってのは苦手なんだ、何かお礼をさせてくれ」
「気にしなくていーのにねー」
俺の言葉にケタケタと愉快そうに笑いながら、俺の目にしか見えない尻尾をゆらゆらと楽しそうに揺らす堕姫。
そのあと少し何かを考えこむと、妙案を思いついたとばかりに口を開いた。
「じゃあさ、僕がピンチになったら助けにきてよ弦哉」
「わかった、約束する」
堕姫の言葉に俺が即答すると彼女は少し目を見開き、そして心から嬉しそうに笑うと夕暮れの中へと消えていき。
俺は彼女がいなくなった後も、しばし夕陽の中に佇んでいた。
「……俺、あいつに名前教えたか?」
最後に名前を呼ばれた事に、微かな疑問を抱きながらもすぐにその疑問を振り払う。
俺は強くならないといけない、約束を果たす為に。
原作主人公こと弦哉君、少年漫画主人公にあるまじき女っ気のなさに驚く人が割と多いと聞いて確かにと思った。
序盤はクラスメートの女子となんかよい雰囲気になる事あったけど、バトル展開が加速するにつれて女っ気がフェードアウトしていったから……。
そのせいでBL方面で話題になり、公式グッズも一部そんな感じに見えない事もないグッズ出してる辺り酷い話(白目)