ああいう展開最近見なくなりましたけど、割と好きなんですよね。
京都に拉致られたボクであるが、やる事はそんなにない。
と言うのも半ば強引に引っ張って来られた関係もあり、京都の妖怪組織へのかかわりは最小限にさせられているのが原因だ。
まぁ酒呑童子からしたらいつ裏切るかわからない存在を組織運営に関わらせるのはリスクでしかないからなぁ。
じゃあ、なんでそんな存在であるボクに酒呑童子は虎の子の殺生石の欠片を埋め込もうと考えたのか?
それは簡単な話で、由来までは探り切れなかったけども理性を失くした妖怪を操る術を酒呑童子が所持しているからに他ならない。
この術原作でも深く掘り下げなかったし、酒呑童子も手の内を探らせないためにボクには詳しく言わないから……。
発動しない限りは自意識の喪失こそないものの、既に殺生石の欠片を埋め込まれた以上は一度この力を発動したらボクの自意識の喪失は避けては通れないと思われる。
ちなみに埋め込まれた時の流れはエッチな事なんてなく、酒呑童子がつまんだ殺生石の欠片をボクに押し付けた瞬間にその欠片はボクの身体に溶けるように取り込まれた感じだ。
微粒子レベルどころか魂レベルで混ざったせいで、欠片を取り出せば万事解決とはいかない詰み案件である。
「そんなわけで大変なんだけどどうしたらいいかな九尾様」
「知らん、管轄外じゃ」
と言うわけでボクは夢の中で、殺生石の欠片に残っていた九尾の残滓と作戦会議と洒落こんでいる。
しかしコレ、祈りや想いを受け取る力があるボクからの働きかけではなく……夢を見ていると思ったら九尾が現れると言う、向こうからの接触なのだ。
「そもそもな話、妾が封滅された頃ならいざ知らず千年近く経っている今の事など知った事ではないわ」
そして割とこんな感じで我関せずというか無関心な九尾である、取り付く島もない。
されども聞けば教えてくれるし、何かしらアクションをすればリアクションしてくれるのが救いか。
「じゃがお主が飲み食いした現代の食物も悪くはないのう」
「気に入ってもらえてよかったよー」
気怠そうに寝そべりながら、平安貴族の人が使ってそうな小さな机に肘をついていた九尾はそう言うとひらりと手を振ってその手にプラスチックコップに入った抹茶ラテを取り出す。
ボクの五感と記憶は九尾も無条件にアクセスできる故に、ボクが飲み食いしたものや見たモノは九尾も味わう事が出来る故に出来る芸当と言える。
そして想定外だったんだけど……どうやら九尾はボクの記憶にもアクセスできるみたいで、それがどういう事かと言えば。
「しかし宵闇行状譚……だったかの? 随分と面白い話じゃ」
ボクの原作知識も筒抜けと言う事である、やっべ。
ついでにボクの考えも筒抜けなはずだが、そこまで意識を払うのも煩わしいのか今のところボクの思考に九尾が干渉してくることはない。
「まぁ確かに子狐が独楽鼠のように慌てふためくのもわかるのう」
なんて言えば良いかボクが逡巡してる間にいつの間にか、九尾の傍らには宵闇行状譚の単行本や設定資料集が横積みになって積みあがっている。
九尾の口ぶりからするに、どうやら昼間のうちにボクの記憶にアクセスして全部読み終えたようだ。
「正直なところ現世がどうなろうと知った事ではないし酒呑の小僧が何をしようと知った事ではないが……あやつの思い通りになるのも癪じゃのう」
「……と言うと?」
「察しが悪いのう子狐は、手を貸してやると言うておるのがわからぬか?」
え、まじで?
コンタクトをとれたのはラッキーと思ってたら原作知識にアクセスされて詰んだと思ったけど、想定外の流れである。
「酒呑の小僧が理性を失った妖怪を操れるのはあの小僧が持つ能力であり、あの小僧が勢力を得るに至った源泉じゃ。それは知っておるな」
「うん、そこは原作や設定資料集でも書いてあったし、明確に抵抗は難しいって書かれてたよねー?」
「そうじゃ、そしてその力は妾の欠片を受け取った狐でも難しいと言えよう……しかし、妾の力全てならともかく欠片程度なら少し鍛えれば子狐でも壊れる事はなかろうて」
やだ、この九尾様思った以上に細かく教えてくれて優しい。
九尾の力を発動させながらも理性を失わなければ操られる事はない、シンプルだけどわかりやすい話だ。
こんな大妖怪のバックアップがあるなら京都編は勝ったも同然だな!
「じゃあ、安心だね!」
「たわけ、今のままの子狐が欠片とは言え妾の力を使おうとしたら暴走からの酒呑の小僧の手駒待ったなしじゃ」
なんてこった。
「え?そ、そこは九尾様がうまいこと手助けしてくれたりは……?」
「そんな虫の良い話あるわけなかろう、まっちゃらてとぱんけえきに免じて乗っ取っておらぬが妾がお主の身体を奪っても良いんじゃぞ?」
なんてこった(Take2)
呑気でたわけた事を抜かしたボクに、九尾様はその切れ長な眦を釣り上げてボクを見つつ指を鳴らすと抹茶ラテや原作単行本の山を消し。
平安時代のお屋敷の部屋みたいな空間から、真っ白で何もない空間へと切り替えられた。
「欠片程度とはいえ白面金毛九尾である妾が手解きしてやろうと言うのだ、なぁに安心するがよい」
「この場所は夢と現の境界、四肢が捥げ腸が飛び出し頭蓋が砕けようと死する事はないからの」
久方ぶりの戯れだと言わんばかりに妖気を解放する九尾様の姿に、思わず白目を剥きそうになるボク。
慌てて立ち上がり応戦姿勢をとりつつも、ワンチャンを願って必死に口を開く。
「や、やさしくしてくれると嬉しいな!」
「たわけ、死戦を繰り返すよりも効率的なものなど存在せぬわ」
やべえ、こいつ頭平安だ!?
この後ボクは死んだ方がましレベルに何度も叩きのめされては体を治され、直されてはまた叩きのめされるという地獄めいた手合わせを繰り返す事になるのであった。
げ、原作の弦哉君達も似たようなことやってたけどボクもやるの?!
「そ、そりゃ弦哉の足引っ張ったりしなくて済みそうなのは願ったりかなったりだけど……ぎゃーーーーー?!」
「男の事を言えるとはずいぶん余裕があるのう、その心意気に応えて夜毎に手解きをしてやるとするかの」
た、助けて弦哉くぅぅぅぅぅん! サドの九尾にボク壊されちゃうぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!?
と言うわけで堕姫ちゃんの修行編でした。
ここからは夜な夜な九尾様(欠片)に夢の中で鍛えてもらう事になります、やったね堕姫ちゃん!インフレ展開についていけるよ!
『ここから正気』
ちなみに九尾様の見た目は、死姫さんを九尾にした感じです。
抹茶ラテに対して最初は何とも言えない顔したけど、これはこれでと気に入った模様。