【ANY%】架空原作クラス転移トゥルーEND地球帰還姫様酷使無双チャート【RTA】   作:てんぞー

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殺意>愛

 男女が仲睦まじく腕を組んで歩いている。仲が良さそうに身を寄せ合い、笑いながら歩いている。心底から信頼しているような表情が見え、楽しそうに談笑しながら歩いている。ああいう恋人って憧れるなあ、なんて事を一瞬でも考えると脇腹をツンツンされる。考えてませんよ。

 

「仲の良いカップルですねェ」

 

 見てから、振り返り、笑顔を浮かべて頷いてからそこら辺で拾った石ころを投げつける。

 

「痛ッ、誰だお前、喧嘩を売ってるのか……カハッ」

 

 敵対状態になった瞬間恋人が変装していた魔族の胸に包丁を突き差した。一体どこからそれを持ち出したんだ、とか言ってはいけない。魔族は信じられない表情を浮かべながらフリーズし、その瞬間を逃がさないように恋人が魔族を掴んで道路に押し倒し、マウントポジションを取った。

 

「魔族死すべし、慈悲はない……」

 

「お、お前になら……」

 

 カメラ目線を意識してサムズアップ。

 

「だがもうない」

 

 繰り広げられる惨劇を背景に、3アサシン始末完了。今回のサムネはこれで決定だな……とか思っているとジョック君が近づいて、胸をノックしてから耳を当ててきた。

 

「もしもし? 人の心? もしもーし?」

 

「そこにないならないですねぇ」

 

 

 

 

「3アサシン始末しても魔軍から新しいスパイが送り込まれるんじゃね!? という話もあるかもしれませんが、闇落ちルートを選んで第二皇子に味方しない限りは相当厳しいです。というのも今は帝国がかなり警戒度上げていて侵入ルートがほぼ抑えられているので、ピクニックらんらんらーんしている皇帝にまで接近できるレベルの暗殺者が用意できないんですねぇ」

 

 だからアサシンは追加されない。

 

「その代わりに第2皇子があれこれと策略を用意するのですが、短期的に成果を発揮できるものはないので、その前にゲームクリアが出来てしまうので気にする必要ありません。事実上帝国への妨害はこれでクリアです。簡単やったな!」

 

「あの惨劇を生み出してこれぇ?」

 

 ジョック君は未だに愛し合っていたカップルを殺し合わせた事に不満を覚えているらしい。不満を覚えるならずっと肩車させられている姫の方に向けてみろよ。慣れた? 慣れちゃった? 自然感ある? そっかぁ、俺も歩くより楽だしな……。

 

 この慣れ、人としてあんま良くないな?

 

「ではアサシンを抹殺した事で稼いだ名声を頭に残しつつ闘技場へと向かいます。場所は帝都の中央なので凄く解りやすいです」

 

 アサシン死亡現場からもそう遠くない為、ロイヤルダッシュで闘技場に到着する。そのまま闘技場の受付前までくると、にこやかに受付嬢が対応してくれる。

 

「初めまして、帝都闘技場へようこそ! 各地にある闘技場の中でも最も大きく、そして最も栄えたる闘技場へ! ここでは個人戦と団体戦、団体戦は対人と対モンスターが行えますよ。ご登録なさいますか?」

 

「うわ、動じない」

 

 一切動じない受付嬢のスタンスにジョック君が慄けば、受付嬢が笑顔で対応する。

 

「お神輿や騎馬戦でやってくる人たちもいるので、腹から血を流しながら肩車しているのはそこまで奇抜じゃありませんよ」

 

 これが本物のプロ受付だ。相手が何であろうが仕事の邪魔をしないのであればオールオッケー、それを実行できる笑顔の受付嬢。

 

「ではここでは個人戦で登録します。それぞれのランクで勝利する事で名声や金銭、装備やアイテムなどの報酬が貰えますが団体戦は複数のエネミーが出現する関係上1戦の時間がかかります。なので個人戦Fから一気に上までクリアしていきます」

 

「はい、トキエダ・ユージ様ですね、登録しました。控室はあちらになります」

 

「なのでサクッと個人戦を突破して名声を回収します」

 

「マジで顔色一切変えずに対応しきったよあの人」

 

 プロだからな。

 

 闘技場の個人戦を処理する為に受付から控室に移動する。個人戦の他の出場者はいないらしい。リアル環境故に何か変化があるかどうか不安だったが、あまり変わらないらしい。控室に入った所で早速インベントリを開く。

 

「試合前の準備時間中に装備を更新します。弓をアストラルチェイサーにフェアウェルを合成したフェアウェルアストラルチェイサーを装備します。これで雑に弓の火力が重量武器クラスになります。無限増殖で竜牙の矢を999まで増やしつつこれをメインウェポンにします」

 

「竜牙の矢は1本1本が高いで御座るが、防御貫通効果があってどれだけ硬い敵であろうともダメージが入る様になるで御座るよ」

 

 解説を入れながらも矢を増殖する。片手剣であるフェアウェルの攻撃力が圧倒的に高いので、Wアストラルチェイサーよりこっちに合成した方が攻撃力的には高い。斧の方が純粋な攻撃力は高いのだが、アレは氷属性が付与されてしまうので駄目だ。属性攻撃は高難易度相手だと直ぐに対策される。

 

 無属性+防御貫通。シンプルだがこれが戦闘における一番対策されづらい組み合わせなのだ。

 

「ユージ選手、入場お願いします」

 

 よいしょ、と姫様の肩から降りる。死体になったぶりの地上だぜ。おニューの武器の使い心地を確かめる為にも懐かしの魚雷で控室から闘技場へと登場、闘技場の観客たちのどよめきが広がる。これまで魚雷になってホバーインした選手なんて存在しなかったからだろう。

 

 フィールドに入ると反対側からこれまた三下感たっぷりのバンダナ姿が出てくる。

 

「けーっひゃっひゃっひゃ……けーっひゃっひゃっひゃ!」

 

 どうやら人語は喋れないらしい。地上に着地しながら剣が融合した弓を取り出し、矢を片手に取る。

 

「それではFランク第1試合……開始!」

 

「け」

 

「試合時間0.4秒、少し時間がかかりました」

 

 開始直後、0.4秒でケヒャの頭を竜牙の矢でふっ飛ばして試合終了。1秒未満の試合だがゲーム時代であればワンパンは0.2秒から0.1秒で出来た筈だ。モーションの事前入力込みでの試合速度だが、リアル環境になるとゲームほど肉体が自由ではない。

 

「小さなタイムロスになるなあ……チャンピオン戦がちょっと困るかもしれないなこれ」

 

 弓を何度か弾いてモーションを確かめているとこほん、という声が聞こえてきた。

 

「ユージ選手、続けてFランクの第2試合も行いますか?」

 

「やります。負けるまで試合続けて昇格戦もノンストップでやります」

 

「了解しました! 久方ぶりに活きの良い奴が闘技場に来たぞ! 命知らずの野郎ども! 準備は良いかぁ!」

 

 うおー、と轟く様に闘技場に声が響いた。

 

 

 

 

「うっわ、えっぐ。というか殺して良いのか?」

 

「闘技場内での殺傷は試合中に限り許可されてます。白熱した結果死んでしまうのはまあ、良くあることなので。出来る事であれば最前線で命を消費して欲しいという意見は多いのですが、何故か海外から多くの命知らずが闘技場に来るようでして……」

 

「へぇ」

 

 控室近くの観戦席からありさ、エリシア、西脇、そして吉田が試合を見守る。1試合が1秒以下で終了する以上、ガンガン対戦相手が投入され、それを1撃で頭を粉砕して終わらせる。数分前まではFランクだった個人ランクが一気にDにまで上げられていた。

 

「西脇君、ここはゲームだとどういう感じなの?」

 

「RTA的に、で御座るか? ここはノンストップで最上位ランクまでを踏破してチャンピオン称号を得るのが目標で御座るよ。名声が美味しく、そして帝国内で知らぬ者無しになる効果があるので御座るよ。そのおかげで広い帝国内を馬車を利用したファストトラベルを活用して移動時間を短縮できるで御座る」

 

 バグ加速による飛行とファストトラベル、安定を取るかバグを取るのかの違いだと西脇は言う。

 

「ただ名声報酬は美味しいで御座るよ。エルヘヴンに突入する上で必要な名声をかなり稼げるで御座る。中央大陸最大の闘技場という事は中央大陸最強を決める施設でも御座るからな……」

 

「成程なぁ」

 

 Dランクを突破し、Cランクに上がる。出場する敵、出現するパターン、その動き、ステータス、RTAをする上でそれらのデータは必要な事だ。そしてそれが全てゲームデータとしてユージの頭には叩き込まれていた。

 

 故に試合開始と同時に相手が防御するか回避するか、それを理解しての偏差射撃を弓で行い、相手が回避した先に矢を置く事で一発で矢を頭に当てている。見ている人間からすればそれは何らかの曲芸か、或いは神業にしか見えないだろう。

 

 だが西脇からすれば、これぐらい出来て当然のテクニックの一つでしかない。RTAで走るのに必要な能力である以上、絶対にやれるようにする。それは走る上での前提でしかないのだから。

 

「ただ氏は中々苦戦しているようで御座るな……」

 

「うん、現実とゲームの差異を調整しようと頑張ってるね。たぶんさっき関所で死んだのもそれが原因なんじゃないかと思うんだよね」

 

 当然のように理解者面する2人の姿に吉田が腕を組んでから俯く。

 

「いや、ゲーム風の異世界だからってノータイムでゲームと全く同じ動きを実現する方がおかしいだろ……いや、この世界の事を考えれば正しいのか……?」

 

「ジョック様、勇者様の動きはこの世界基準でも狂ってますよ」

 

 吉田は笑顔で言い切るエリシアの顔を見た。そして心の中でこの女、あの振る舞いが異常だと解っているくせに全肯定ロイヤルバーサーカーしてるのか、と密かに頭の中の狂人ランキングを上げた。

 

 そうやって軽く雑談をしている間にもCランクを抜け、Bランクへと上がる。

 

「Bランクで御座るな。敵のレベルも大体40台から50台になってワンパンが無理な範囲になるで御座る。敵も最前線で捕虜になった魔族が使用されたりで中々強敵になってくるで御座る」

 

 試合へと4人の目が向けられた。マシンガンの様な矢がRTAの化身から放たれた。攻撃力保存の法則を利用せずとも、武器で増強された自前の火力を攻撃判定の重複によって弓をマシンガン化させたのだ。

 

 当然のように発生した100ヒット防御貫通攻撃が頭にヒットし魔族の頭は秒も持たずに破裂した。

 

「攻撃判定の重複さえしてしまえばどうにかなるで御座る」

 

「改めて懸命に生きてる全ての命に対して申し訳なくなる無法っぷりだな……」

 

 Fから始まりAランクまで蹂躙、所要時間は30分にも満たない。スケジュール通りに闘技場を消化し、いよいよSランク戦が始まる。




 闘技場も慣れちゃえば作業ゲーなんですよね。やってる事はほぼ悪党スレイヤーと変わらんので……。チャンピオン戦だけ毎回変に緊張するけども。帝国ももう半分ほど終わりっすねぇ……。
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