【ANY%】架空原作クラス転移トゥルーEND地球帰還姫様酷使無双チャート【RTA】   作:てんぞー

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バニーミンチサンド

 カットシーン。

 

 7割崩壊しているぼろぼろの船が東国の出島に到着する。舵輪の前にはミンチになった船長の肉塊が船長の帽子と共に置いてある。忙しそうに働いている筈の船員たちも大半がミンチ肉になって甲板に転がっている。乗客たちも護衛も大半がミンチになっている。

 

 その中、船から港へと繋がるタラップが下ろされ、そこをべちょりとミンチ肉が滑り落ちる。

 

 そう、私です。

 

 カットシーン終了。べちゃりと桟橋を這いずるグロテスクなミンチ肉である俺が持ち上げられ、そのままオン・ザ・姫様する。

 

「後で勝手に蘇るので今はこのまま姫ボディを乗っ取って続行します」

 

「正気か?」

 

 姫様の体でエモートのサムズアップをジョック君に向けるとドン引きされる。どうしてだよ……。とりあえず流鏑馬補正が欲しいので幼馴染に弓を持たせて姫様の上に乗せる。

 

 バニーミンチバニー。バニーとバニーにミンチ肉が挟まれちまったな……。

 

「不思議で御座るなぁ。何も羨ましそうに見えないで御座る」

 

「本当にな。ただのグロ画像だわ」

 

 酷い言い様だ。そう思いつつバニーを操作して桟橋を駆け抜けて出島を走る。

 

「東国についたのでちょっと東国の状況を話します。現在東国は玉藻の前という大妖怪によって支配されており、彼女の手によって帝が囚われている為、東国は誰も逆らえないという状況にあります。その玉藻の支配する組織が百鬼夜行、東国は百鬼夜行と戦うのがメインコンテンツです」

 

 ばびゅーんと出島の港から外国人街に到着する。

 

「基本的に外国人は入国の制限がされていて東国本土には上がれません。玉藻Changが東国を完全支配したら大陸のマゾッパリとバチバチにやり合う予定なので、それまでに横やりを入れられたくないからです。プレイヤーはそんな東国の解放を試みます」

 

 外国人街を横断する。

 

「様々な勢力が入り乱れている混沌とした東国の地、新しいスキルに新しいコンテンツ、まだ見ぬ神秘に新しいコレクション要素! もはやDLCを超えた一つの作品レベルで詰め込まれた内容に誰もが大満足のVer1.1でした。ちなみに帝は既に死んでいて玉藻Changが死体操ってます」

 

「!?」

 

 通りすがりの町人たちが今の発言にぎょっとした表情を浮かべるのを無視し駆け抜ける。そう、この地が未だに戦国タイムに突入していないのは帝が生存していると思われて、それが人質として機能しているからだ。死んでいたら戦国タイムになってこれまでひたすら耐える事に集中していたレジスタンス組織が全部命を燃やし始めるだろう。

 

 というかそれが東国におけるメインシナリオみたいなものだ。

 

 大陸の勇者の活躍で真実を知った東国の民たちは団結し、玉藻へと立ち向かう。これはそういう王道シナリオなのだ。その間に多くのサブイベントをこなす事で東国に理解を示し、更なる強化を得て、ラスボスと同等の強さを持つ玉藻と戦う様になる。

 

「という訳で東国は玉藻を討伐する事でクリアとなります。玉藻は専用の強力なステート攻撃を保有しており、シナリオとサブイベをクリアして行く事で対抗手段を揃える事が出来ますが、今回はこれをガン無視してバグやグリッチの悪用で突破します」

 

「何時ものじゃん」

 

 はい、何時ものです。という訳で外国人街を抜けて出島の出口までやってくると、当然のように道は封鎖されている。道を封鎖しているのは人間ではなく、面を被った天狗たちだ。

 

 ちなみに街並みも一気に中華と極東を混ぜたような異国感あふれる景色で中々趣がある。この東国は中華+日本がコンセプトの場所だ。

 

「待て、そこの……そこの……なんだ? いや、本当になんだ貴様その恰好も姿もやっている事も存在も何なのだ!? 一体何なのだお前は!?」

 

 強制的に足を止められてしまう。鴉天狗が困惑の表情をバニーミンチサンドへと向けている。理解の出来ない存在を初めてみる様な表情を浮かべ、これ以上なく困惑している。その横で一緒に道を封鎖している鴉天狗がバニーミンチサンドを見て首を傾げる。

 

「この者達もしや……」

 

「待て待て待て! もしかしてこの奇怪な姿に見覚えがあるとか言わないでくれよ? 見覚えがある方が怖いぞ!」

 

 ジョック君が見事なツッコミだと言わんばかりにうんうん頷いている。

 

「大陸で名声が一定以上稼がれていると、PCの顔は割れてるので東国でも直ぐに認知されます。闘技場制覇、リヴァイアサン撃退、そしてメディンギラ脳破壊の功績で現在は大陸規模の有名人となっています。このクラスだと東国でも顔が認知されるようになります」

 

 そしてこれだけ名声があれば相手の対応も変わってくる。

 

「やはり……この者ら、大陸で有名な勇者とその従者たちだ」

 

「相棒よ! 一体何を見てそれを判断したのだ! どうしてそんなに確信を持って言えるのだ!? 相棒よ! 答えてくれ相棒よ! 私は初めて人類がこれ以上なく怖く感じているぞ! 見ろ、あの肉塊さっきからうごめきながら解説しているぞ!!」

 

 にちゃあ、ミンチスマイル。鴉天狗、数歩下がる。その代わりに横の鴉天狗が武器を構える。

 

「勇者よ、玉藻様がお前に会いたがっている。大人しくついて来てもらおうか……」

 

「ここで逃げないと連行され、狐桜城の地下牢に連行されます。なのでここは逃げずに素直に捕まります。この会話の間にインベントリウィンドウを開いて、連行される準備をします」

 

「相棒よ! こいつら絶対におかしい! 死体が喋ってる! 相棒! 正気に戻ってくれ!!」

 

 てっぽてっぽと鴉天狗が近づいてくる中、SANチェックに失敗している鴉天狗が叫ぶ。

 

「相棒ォ―――!!!」

 

 暗転。視界が出島から地下牢へと切り替わる。気づけば俺の体が復活している。お帰り、俺のボディ。同じ牢屋内には他のPTメンバーが揃っており、牢屋の外には妖怪の牢番がいる。

 

「玉藻の前様はまだしばらくは忙しい……そこで会える時を待っていろ」

 

 そう言うと奥の方へと姿を消して行く。

 

「という訳で捕まって到着しました、狐桜城地下です。ここは玉藻Changの拠点です。一定以上の名声がある状態で捕まるとこうやって地下牢に送られ、後々玉藻Changに謁見できるようになります。ですがこれは強制的にゲームオーバーになるので謁見の前に脱出します」

 

 牢の外を確認する。まだ牢番は起きている。しばらくはイライラタイムだ。

 

「というかお前、生き返ったんだな」

 

「死んだままでは謁見させられないので1回蘇生させた……というのがプレイヤーの間での説です。真実は不明ですが捕まってここに移動するとHPが完全回復した状態になります。優しさで溢れてるのかお前?」

 

 ここまで開いていたインベントリを閉じる。

 

「ここで開いていたインベントリを閉じると本来は牢屋にぶち込まれた時に没収されていたアイテムや装備の類が全部手元に残っています。これを使用して壁抜けグリッチで脱獄します。問題はタイミングで、牢番が此方を見てない時に殺る必要があります」

 

「殺意ぃ」

 

 まずはインベントリから属性武器3種をそれぞれ11本ずつ地面に置く。

 

 地面に捨てたアイテムの表示限界が33なので、ここで上限までエフェクトがキラキラしてる属性武器を地面に捨てる。そうする事で描写限界に限りなく近づくので、今の環境に対して負荷を発生させる事が出来る。

 

「これで高負荷世界に突入しました。自分の装備をWファイソにし、落ちている武器を抜けたい壁にぶつけます」

 

 落ちているファイソを蹴って牢に当てると半分めり込んだ状態の後にゆっくりと弾かれてくるので、それが牢から抜ける前に剣を振りながらサイドステップで剣の上に乗り、そこからサイドステップで牢屋をすり抜ける。

 

「壁抜け完了天誅ッ!!!」

 

「ぐぁっ」

 

「レベル差と装備の性能差で余裕で牢番は始末できます。サクッとふいだまアタックして始末しましょう。この後は上階に向かいます」

 

 当然PTメンバーはワープでやってくる。リーダーさえ脱獄すれば後は勝手に出てこれるのは楽だよなぁ……苦労してるのは俺だけって事!? まあ、RTAだからそらそうか。

 

 牢屋のある地下から階段を上がると、月光が差し込んでくる窓と捻じ曲がった廊下、そしてパズルのようにバラバラの場所へと繋がる扉が行く手を阻む。とはいえ当然、最短ルートは脳内に叩き込んであるのでここら辺のセキュリティはまるで無意味だ。

 

「狐桜城1階に到着しました。城内は異次元みたいに捻じ曲がっており、正しいルートを通らないと玉藻Changの所へとたどり着けないように設計されています。そして玉藻Changは基本味方も信用していないので常に警備が大量に城内をうろついています」

 

 振り返りながら笑顔でサムズアップをしながら滑るように廊下に出る。直ぐ横には警備の妖兵がいるのだが、それが気づく事はない―――可視範囲も、認識できる音も全ては分析済みだ。背中合わせに武器を構えながら少し儀式をしたところで絶対に気づく事はない。

 

 そしてなぜかPTメンバーの存在が視界に入っても脱獄に気づく事はない。

 

 そう、彼らは無能兵。鋼鉄の歯車っぽい所の兵士と似た感じのAIを組まれている。だから背中合わせに二刀流Wファイソで松明儀式ごっこで遊んだ所で絶対に気づかれないのだ。

 

 こんこんこんと近くの壁を叩く。

 

「む! 誰かいるのか!?」

 

 振り返る無能妖兵に合わせて横に並んで武器を構えながら走り、確認に脚を止めた所で一緒に脚を止める。

 

「……なんだ、誰もいないのか」

 

 視界の範囲から的確に外れるように動きながらまた背中合わせに歩き、互いの見えない所をカバーリングするように動く。そして足を止めた所で摺り足ヘッドショットで始末する。死体がどさりと倒れる前にキャッチし、それを窓の外から捨てて処理する。じゃあの。

 

 ふぅ、と額の汗を拭う振りをして振り返り、サムズアップをカメラ目線で向ける。

 

「ここからはスニーキングで玉藻ルームへ向かいます。無能兵vs伝説のRTA傭兵の時間です」

 

「これ、相手から見たらホラージャンルでしょ」

 

 最短最速で玉藻Changにアンブッシュだぁ!




 でもよぉ、画面内にバニーが2人もいるのはそれはもう幸せだと思うんだ。たとえ直ぐ横にうごめく肉塊とかいうホラーがあっても。
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