仮面ライダーギーツvsこちら葛飾区亀有公園前派出所~両さん、デザグラに出るってよ~ 作:唐 十三郎
「果物を爆弾になんて姑息な事を考えるねぇ! 食べ物を扱う身としては許せないよ!!」
纏が怒りを露わにする。流石寿司屋の娘、食べ物を粗末にする者は許せないらしい。
「そういえば手りゅう弾の事をパイナップルと言うらしいですね」
「あー、ボルボさんに聞いたよ。形と色が似ているんだってね」
第二次世界大戦でアメリカ軍が良く使用したと言われているマークII手榴弾がそれである。
「あと、聞いた話では両津様が爆弾を食べたと」
「は? 何言ってるのツムリちゃん。いくら悪食の勘吉でも流石に爆弾は食べないだろ?」
「いや纏くん、ツムリさんの言っている事は本当だ。私も良く知っている」
「部長さん?!」
唐突に前書きに現れた大原部長。その時に立ち会っていた1人だ。
「いったい何で勘吉は爆弾なんて……」
「暑い日でねぇ。私の知り合いの警官がスイカ型の爆弾を押収して派出所に持って来たんだが、アイツめ。意地汚くそれを盗んで本物のスイカだと最後まで思い込んで食べきったのさ」
「あのバカ……でもスイカの形をしているだけで爆弾だったんですよね? 普通は金属の器に入っているから流石に食べるのは無理なんじゃ……?」
「それがアイツの恐ろしい所でな。ワシらが追いかけて切羽詰まったらしく、表面にかじりついてムシャムシャと食べたそうだ」
35巻に収録されているエピソードである。”ワシの歯と勝負!”とかじりついて鋳造されているスイカに似せた金属の外皮ごと食べ、火薬さえも”ちょっと粉っぽいが美味い”と胃に納めて消化したというとてつもないエピソードである。
「だから纏くんもくれぐれも気を付けたまえ。アイツを飢えさせると店の建物ごと食べ始めるかもしれんぞ」
「そんな~。流石にそれは無いでしょー……」
「纏さま。本気で仰ってますか?」
「ウソです。かなり怖くなったのでアイツが戻ってきたら常に何か食べさせる事にするよ……」
両津の食欲を侮ってはいけない。
母の伊瑠美からの連絡にウンザリする祢音。通話はまだ続いている。
「……パパが何と言おうと、こんな危険なショー……ママは認めません!」
「……そういう訳にはいかない。助けたい友達が居るから」
「! 友達なんてどうでも良いでしょ!!」
「! どうでもって!!」
「……貴女には、結婚を約束したお相手が居るんですから」
「私は認めていない。あんな親の七光りでロクな会社運営も出来ないハゲでメタボデブの奥さんだなんて……前の奥さんも男として全然魅力を感じないから離婚したんでしょ?」
「ちょ……良い人よ~? 家柄も良くって。そりゃあ見てくれはアレだし、人柄も問題はありそうだけど……でも! あの家のお金があればアンタ、不自由なんて無くなるわよ~!」
「不自由だらけじゃない! 友達と遊ぶことも、恋愛する事も禁止されて……私の自由を何もかも奪って! この先の未来まで奪う気?!」
祢音の様子を見に来た冴と纏は祢音の会話を聞いているだけでゲンナリしていた。
「冴先輩……祢音ちゃん、絶賛修羅場ってね?」
「修羅場だね……聞いてるだけで何かイヤになるわ」
「結婚かぁ……冴先輩、カレシって?」
「聞くんじゃないわよ。今そんな余裕なんて無いんだから」
「スイマセンデシタ……」
冴の地雷に触れたらしい纏は深々と頭を下げて謝る。
「纏、今度合コンでも開いてよ」
「えー……? アタシの店の若い衆か警官ばかりになるけど良いの?」
「んー……まあ良いとする!」
「冴先輩、男の好みが厳しそうだからなぁ……」
「そんな事無いよ! アタシより強ければ!!」
「ほらも~……そこから既にハードル高いよ!」
2人が女子トークをしている間に祢音は伊瑠美との平行線な通話を続けていた。
「……これは、貴女の幸せの為なんです!」
「自分の幸せは、自分で叶えるって……私、決めたから」
「ちょっと待ちなさい! 祢音! ねーおーん!!」
苛立ち混ざりでスマホの赤い切断ボタンを押す祢音。
「うがぁあああああ! もう! こんな時にぃ!!」
「ね、祢音ちゃん……」
「あの~……だ、大丈夫?」
怒りに任せてスマホを地面に叩きつけようとする祢音に冴と纏が恐る恐る声をかけた。
「う、うん! 平気平気っ!」
「……うん」
「全っ然、そうは見えねぇ~……」
強がって笑顔を見せる祢音を見て、真っ白になる冴と纏であった。
景和以外のライダーたちは一旦サロンに戻ってきた。そして英寿は何か手掛かりが無いかとまた出て行く。
―― 日没まであと3時間06分57秒 ――
残っていた祢音と冴と纏はサロン内で祢音が確保している彼女の部屋に居た。
「でも……まさか参加者の家族が狙われるなんて」
「ウチも心配だなぁ……念のため連絡しておくわ」
冴の言葉に思い出したかのように応える纏。そして祢音が質問してきた。
「そう言えば、冴さんにも弟と妹が居るって言ってたよね?」
「自分の家族が標的にされたらって想像したらとてもじゃないけど冷静じゃいられない」
「冴先輩……」
「……」
少しだけ無言になる祢音と纏。そして祢音が優しい表情で尋ねる。
「どんな家族なの? 冴さんち」
「ウチ……沖縄料理屋なんだけどね」
冴は嬉しそうに自分用のスマホを手に取り家族で撮影した写真画像を見せる。店の看板の前で冴以外の家族が無邪気に笑っている。
「潤くんと澪ちゃん! 随分逢って無いな~。大きくなったねぇ!」
「2人とも良く纏の事を話しているよ。そのうちまた遊びにおいで」
「うん!」
「でも……もう少し経ってからね。お父さんが退院するまでは」
「あ……そうか」
「え? どういう事?」
冴の父親が少し前に大病で倒れ店の経営がままならなくなった事は纏も知っていた。冴の母親・真紀は方々を頼り支援を募った。そして超神田寿司の夏春都が2つ返事で支援する事となった。だが当面の問題は店の経営が立ち行かなくなった間の家族の生活、弟と妹の事であった。妹の澪はテニスを、弟の潤はサッカーをやっている。
「スポーツで全国を狙っている下の子たちの夢を叶えさせてあげたくて……」
「冴先輩はそれでデザグラに……」
「家族を支えるために……」
「年齢で衰えない強い身体があれば、私も現役で居られるから……だから負けられないんだ」
冴の家族の写真を見て心が暖かく、かつ寂しさを覚える祢音がポツリと呟く。
「そう言う風に家族を思えるって……羨ましいな」
「祢音ちゃんの家族は?」
「ウチはちょっと……特殊だから」
「祢音ちゃん……」
「そっか……」
その祢音の態度に家族との絆が伺えた冴と纏はそれぞれの瞳に涙を浮かべていた。
景和が項垂れた顔で戻ってきた。それに続いて英寿も戻ってきた。
「どうすれば良いんだよ……英寿、何かわかった?」
「爆弾にしているフルーツにもいくつか種類があるようだ」
「ウチに仕掛けられていたのはパイナップルだった。……と言う事は、パイナップル爆弾を使うジャマトを捕まえれば!」
「ああ。問題は俺たちに後ろから爆弾を投げたデザスターが誰か」
「……誰なんだよ?」
「どっか――――ん!!」
「うわぁあああああああ?!」
苦悩する景和の背後にいきなりチラミが現れた。
「デザスター投票中間発表よ~……」
サロンに空間投影されたデザスター投票画面。見事に票が割れている。景和以外のライダーたちそれぞれに票が1つずつ入っていた。画面を見て冴が呟く。
「見事に割れたね」
「今は私たちが足を引っ張り合っている場合じゃないよ。沙羅さんを助ける方法を探そう?」
「ありがとう祢音ちゃん……」
だが英寿は、その言葉で怪訝そうな顔色になっていた。それを見た纏が英寿に声をかける。
「何か心配事でもあるのかい?」
「別に……デザスターに邪魔されなければ問題無いさ」
「こんな状況でそんな奴が居るなんて信じられないよ」
「そう願いたいものだ。だがな……人間の欲望は純粋な心をアッサリと邪に出来るんだぜ」
「……アンタは今までそれを沢山見てきたってワケかい?」
「まあな」
「……」
その陰りのある表情を見て纏は何も言えなくなった。歳こそ同じくらいの筈だが、英寿の佇まいは自分よりかなり年上の年長者が放つ落ち着きと風格を持っている。祖母の夏春都よりももっとずっと……
そしてサロンの固定電話がリンリンと鳴り始める。チラミが電話に出た。
「はいは~いサロンでーす♪ ……ジャマトが見つかったわよぉ」
―― 日没まであと0時間49分37秒 ――
都下郊外の廃屋。配送ジャマト数体が幌付きトラックの荷台からいそいそとダンボール箱を運んでいた。
「イズキョトス!」
「イズキョトス!」
「イズキョトスイズキョトス」
駆けつけたライダーたちは物影から様子を伺っている。英寿が景和に指示をする。
「パイナップルを使っているジャマトを探すぞ」
「ああ! 変身!!」
「変身!」
『『 SET 』』
『 NINJA 』
『 MAGNUM 』
景和が急ぎ飛び出した。姉の沙羅を助けたいあまりに必死になっている。
「たぁ!」
「ジャパ!」
「せぃ!!」
「ジャマ?!」
2体のジャマトが急ぎトラックに乗り込み逃げ出した。残っていた箱の中身を確認するタイクーンとギーツ
「……違う!」
「リンゴかぁ……」
トラックの荷台に乗っていたジャマトは遠隔装置でフルーツ爆弾を爆発させた。
「ポスデチャラ! ポスデチャ~ラ!」
「クッ……待て!!」
トラックを追いかけるタイクーンとギーツ。次々と起爆させられる爆弾の爆風でなかなか追い付かない。
「ぬん! せぁあああああああ!!」
「ジャアアアアアアアアア!!」
分身したタイクーンは幾重もの緑の閃光となって幌付きの荷台を斬りつける。2人は荷台からこぼれたフルーツ爆弾を探す。
「パイナップルはどこだ?」
「ん……?」
ギーツは爆炎の向こう側で人影が揺らめいた事に気付く。吾妻道長がやってきた。
「道長さん……本当に無事だったんですね」
「お前らの相手は俺だ」
タイクーン、景和の心配そうな声に冷淡に返す道長。ジャマト化している左手でジャマトバックルを構えて凄む。
「……え?」
「変身……うぐ、う……ぐぇああああああああああ!!」
道長はいつもの変身ポーズを決めようとするも壊れているIDコアとジャマトバックルの影響で全身に激しい痛みが走る。あまりの激痛に冷静さを保てない道長は絶叫しながらジャマトフォームに変わっていく。
『 JYAMATO 』
筆者です。「麗羅XV」をお送りしました。
前書きの両さんがスイカ型爆弾を食べたエピは筆者のお気に入りの一つです。実に両さんらしいバカ話だなぁとw こと食べ物に関しては様々な話が作られたこち亀ですが、その種類も実に様々ありまして。秋本先生のアンテナの貼り方は流石だなと思うばかりです。
祢音と母・伊瑠美とのやり取りに若干アレンジを入れました。どう考えてもこの婚約者ってキューンの事では無かったでしょうし、だとしたら問題ある金持ちの後家とかで政略結婚とかもあり得そうかなと。あくまで筆者の偏見ですが、お金持ちの結婚ってそういうドロドロが渦巻いて居そうなんですよね。
とは言えもう暫くは本編準拠。そしてこの時点まですっかり忘れていましたが纏・ラヴィの変身ポーズをまだ明確に書いていませんでしたので次回書きます。差し込むのすっかり忘れていましたw 次回の冒頭は女性ライダーの同時変身ですので、その時点で差し込みます。ギーツもタイクーンも時折そう言うの差し込んであげないといけませんね。
と言うのもですね、この作品も既にトータルで40万字を越えていまして、これは文庫本だと4冊分くらいになっているんですよ。そしてそうなると既存キャラの外観とか細かな所作がおざなりになっていくんですね。これは仮面ライダーシリーズだと変身シーンの割愛とかで顕著に表れています。4クール一年間と長く続く放送なのでその辺りは仕方の無い事かもしれませんが。けれどこちらは小説。その為、時折はそういう文章も度々書いておかないと皆さまの印象も薄れるのかなと心配になるわけです。そしてまた暫くは本編準拠で行きますが、どうかお付き合い頂ければと思います。決して文字数稼ぎとかでは無いですからねw 合間合間にジャマーガーデンの波乱も出てきます。果たしてあの人はどんな再登場をするのか、どうかご期待下さい。
では明日も間に合えば17:30更新ですのでよろしくお願いします。
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