仮面ライダーギーツvsこちら葛飾区亀有公園前派出所~両さん、デザグラに出るってよ~ 作:唐 十三郎
「お前が連れてきたんだろうが……」
「両さんの実力を見誤ったベロバ様が悪い」
悶絶するベロバを白い目で見る道長と大智。
「ちょっと! アンタたちアタシと両津勘吉とどっちの味方なのよ?!」
「両さん」
「当然両さんだ」
「即答?!」
ベロバの問いに何を今更とアッサリと返す道長と大智。だがここで風向きが変わってくる。
「何てめぇ両さんの事を気安く呼んでんだよ?」
「君こそ、”全てのライダーをぶっ潰す”とか息巻いている割には随分馴れなれしいじゃないか?」
互いを睨み合う道長と大智。両津勘吉を慕う気持ちは2人とも強いのだが、それがどうやら地雷となってしまうらしい。
「俺なんて両さんが握った寿司食った事あるしぃ!」
「……クッ、寿司か。だが君は両さんが作った朝食を食べた事はあるまい! あれは美味かったぞ」
「朝メシ?! なんだよテメェ、ズルいぞ!! く~~~~……良いなぁチクショウ!」
「寿司か……まだ僕だって食べていないのに……羨まし過ぎる!!」
「あ、あのさぁ……両津勘吉を無事に捕まえたらどちらも叶うんじゃないかな~……」
「「それだ!!」」
見事にハモる道長と大智。
「力技なら任せろ!」
「じゃあ僕は両さんが仕掛けるトラップや戦術を全て先読みしよう!」
「う、うん……じゃあ早く捕まえてきてよ」
「「おう!!」」
そう言うが早いかに2人は両津の所に急ぎ向かっていった。
「両津勘吉……やっぱり連れてきて正解だったんじゃない」
そう言う意味ではベロバの読みは当たっているのだが……
2週間前、チラミの悪だくみによりデザグラを脱落させられた両津は、デザグラに関しての記憶を失った状態で神田神社の境内に居た。相変わらず似合わないDGPロゴ入りジャケットに身を包んでいる事に違和感を覚えたが、どこぞのサバゲーに参加したものだろうと勝手に納得した。何か物凄く憤慨する事があった気もしているが、肝心のそれが一体何なのか全く思い出せない。時計を見ると既に夕方5時を過ぎている。超神田寿司の夜営業はとっくに始まっている。夕方6時を越えるとピークタイム、忙しくなる時間だ。夏春都のカミナリが落ちる前に急ぎ店に戻ろうとしたが、その時不思議な事が起こった。
「……嘘だろ? 何でアレがこんな所に?」
両津の目の前には海外の老舗ポルノサイトが1960年代にまだ雑誌媒体で活動していた黎明期、その記念すべき創刊号が落ちているのである。様はレア物の無修正ポルノ雑誌……エロ本が落ちていた。
「あんな超レア物、無造作に……しかも神田明神に置いてあるなんてバチ当たりな。いや勿体なさすぎだろ!」
自身が警察官である事なんてすっかり忘れて、両津はそのエロ本を凝視していた。もちろん超レア物なので両津も現物を見るのは今日が初めてである。ちなみに今も昔も無修正のポルノ媒体所持は犯罪となる。
「きっとこの胸のモヤモヤを見かねて神が粋なプレゼントを用意してくれたんだ。そうに違いない!」
実際に天界で神そのものにも逢って戦いを挑み、あげくコテンパンにした両津なのだが。このエロ本の件に関して神自身は”そんな勿体ない事をするか、たわけ!”と関智一さんボイスで叫んだらしい。ちなみに最近の神だが、天使たちや女神たち、はたまたここ数年で天に召された魂たちにモテたいからとフォームチェンジに研鑽を重ねていた。結果、金髪碧眼で金色の甲冑を身に纏った青年の姿も身に付けている。いずれ来るであろう最終戦争、両津とのリベンジマッチに向けて闘志を燃やしていた。
「いよっしゃぁあああ! お前はワシの秘蔵コレクションにしてやるぅうううう!! ……あれ?」
みっともなくエロ本に飛びつこうとするも、何故かエロ本はスルリと逃げた。更に飛びかかるもまたしてもスルリと逃げる。そんなやり取りを数十回も神田明神境内で繰り返した。
「ちょ! おい! 待て! 待てよコラ! おーい! 待ってくれ! ワシのエロ本――!!」
物凄く情けない叫びを聞いて流石に神田明神の巫女たちも何事かと集まったが、その挙動と発言の不気味さに近付けずに居た。そしてそのエロ本を1人の女性がヒョイと掴む。
「お、おい! それはワシのエロ本だ!! だいたいお姉ちゃんには不要だろ? 頼む、ワシにくれ!!」
「この時代のオトコって何でこんなモノを喜ぶんだかね~~ フフフ、おもしろ――い♪」
怪しく笑う女。いや、外見こそ大人びているがその本質は少女のそれに近い。そう、エロ本を拾ったのは誰であろう、ジャマトのスポンサーであるベロバであった。
「こんなモノより、アタシともっと楽しい事をして遊ばない?」
「あ? デートクラブのお誘いか? 随分手の込んだマネしてくれたみてぇだが、ワシは警察官だ。だいたいそんな所で余計なカネなんか使えるか!」
「違うわよ! 何でそうなるわけ? アタシが言いたいのは、仮面ライダーを潰そうって事よ?」
「は? 仮面ライダーってあの仮面ライダーか? 最近の若いお嬢ちゃんでもライダーを好むコも増えたって言うけど、また随分物騒な事を言うもんだぜ。恰好からして悪の組織ゴッコか? 最近のコンカフェも色々あるなぁ……」
デザイアグランプリの記憶が無い両津の頭には毎週日曜朝9時から放送している東映特撮のシリーズが頭に浮かんだ。どの作品も好んでいるが、往年の初代1号こそ至高と考えている両津にしてみれば”仮面ライダーを潰す”と言う発言自体があまり好ましいものではない。またベロバのゴシックルックからいわゆるコンセプトカフェ、略称コンカフェを連想してしまったため、高額の金銭がかかると勝手にイメージしてもいた。
「どっちにしろ乗る事は出来んな。いいからそのレア物エロ本をワシに……あ? 何だこりゃ?」
「へぇ~~あの鳴滝ってオジサンの言う通りこんな事が出来るんだー。まぁこんなの使わなくても別に次元移動なんてできるけどさ、でもせっかくだから演出は欲しいわよね~♪」
「はぁ? 何だこのモヤは……おい、ワシをどうしようって言うんだ?!」
「じゃあ一緒にイイ所に行こっ♪ え? あれ? 何これ……嘘?!」
「うぎゃあああああ! ボッタくられるぅううううう!! コンカフェの体を取ったボッタクリキャバに連れて行かれるぅううううううう!!」
「違うったら! もうどうなってんのよコレ?!」
両津とベロバの周囲には灰色のオーロラのような揺らめきが起きている。だがよりによってベロバがその機能を使いこなせなかった。そして気が付くと両津はジャマーガーデンから少し離れた場所に。アルキメデルもあまり手を入れてない原生林の密集地に居た。
「ここは……ここは何処だぁ――?!」
結局ベロバはやりなれない方法で次元移動をしたせいで、両津とはぐれてしまったのだ。
それから少しして行き倒れになっている道長を見つけた。付近に自生している植物の葉を利用した簡易的な包帯で応急処置をするも、付近の様子見をしている間にその姿が無くなった。アルキメデルの指示で付近を探索していたジャマトたちに保護されたのである。
それから2日後、両津はジャマーガーデンの温室の一つを見つける。
「何だあの建物……うわ?! バケモノの巣かよ!!」
デザグラの記憶が無い両津にしてみたら、これが初めて見るジャマトたちとなる。人間とは明らかにかけ離れた造詣をしているジャマトを見て、恐怖を覚えても何の不思議は無い。
「……食ったら美味ぇのかな?」
前言撤回。両津が恐怖を感じるワケが無かった。もう既に食えるか食えないかで判断し始めている。
丸一日温室の様子を伺って、深夜に進入すると悪夢の様な光景が広がっていた。幼生ジャマトが何体も木になっているのである。まだ形成されたばかりの目玉をギョロリと向け、ケタケタと笑っているその様子を見た両津は明らかに現実とは違う世界にやってきたと思い込んだ。
「昨今流行りの異世界召喚とか異世界転生ってやつか? いくら原作者が生粋のオタクだからって、まさかワシをそうさせるなんてな……読者も呆れるぞ、コレは」
原作者の秋本治先生でも流石にそれはやらんだろうという願いを込めつつ、両津は温室内を散策する。ここで両津の腹がグゥ~っと大きな音を立てて鳴った。今日まで数日、自生していたキノコや果物で凌いできたが流石に限界が来たらしい。目の前でケタケタ笑う幼生ジャマトに触って呟いた。
「食ったら美味ぇのかな?」
幼生ジャマトたちの笑い声がピタリと止まった。両津の口元にジュルリとヨダレが垂れている。こうなるともう食べきるまで止まらないだろう。
「ゲテモノは総じて美味だって言うけど、こいつらはどうかな?」
「ジャ? ジャマジャマ! ジャマジャマジャマジャマ~~!!」
涙目で懇願する幼生ジャマト。木から伸びた蔓を千切ろうと握ったその時、両津の背後から人間の声がした。
「両さん、その子に手をかけないで!」
「お、おい……何でお前が居るんだよ。寺井?」
両津に声をかけたのは寺井洋一。またの名を丸井ヤング館。……その記憶を持ったジャマトの1体、赤い羽織を着込んだ噺家ジャマトであった。
「そりゃこっちのセリフだよ。どうして両さんがこんな所に?」
「あ~……そりゃワシにも良くわからんのだが……」
両津はここまでの経緯を簡単に説明した。そして噺家ジャマトも自身に何があったのかを説明した。
「嘘だろ……お前はあのバケモノと同じで、寺井の記憶を持っただけの紛い物だなんて……」
「うん……僕も自分がそうだって知った時は悲しかったけど、けれどもだからこそ何か出来る事が無いかって考え始めていてさ」
「寺井……やっぱりお前はどんな姿になっても寺井だな」
「へへへ……そうなのかな? まぁ場長の考え方とは合わなくなってきちゃったけどね」
「場長?」
「ここ、ジャマーガーデンの運営をしている人だよ。確か名前はアルキメデスとかアキレウスとか……」
「お前も知らねえのかよ……」
「だって普段は場長って皆が呼ぶからさぁ……」
両津はここに来て一考する。何故自分は此処に連れてこさせられたのか。そしてジャマトとは何なのか。そもそも此処、ジャマーガーデンでジャマトを育成し人類の敵としてライダーたちにぶつけるのは何故なのかと。
「よし寺井、ワシと一緒に来い!」
「両さんと?」
「ああ。ちょいとここいらでひと暴れしたくなってきた」
キョトンとしている寺井の姿の噺家ジャマトにニカリと笑った両津は、幼き日のヤンチャ坊主の頃そのままの笑顔をしていた。
筆者です。「双乱III」をお送りしました。
以前にも後書きで書きましたがオリジナル展開となると筆が早くなります。今回もこの執筆分で2時間かかっていません。本編準拠だと先ずは本編の描写をある程度書いて、それからこち亀キャラを差し込み走らせていくのでかなり時間がかかるんですね。けれども暫くはオリジナル展開。両さんがジャマーガーデンでのやらかしを楽しんで描いていこうと思います。
先ずはベロバがいかに両さんをジャマーガーデンに導いたのか。何気にこの作品を始めた頃のツムリが両さんに逢いに行った場面に対してのセルフオマージュとなっています。エロ本を使用した事、そのエロ本の元ネタ、ボッタクリコンカフェ等々、即興で思いついたにしては我ながら気に入ってます。エロ本の元ネタはここであまり克明に書くと流石にBANされそうなので控えますが、一応実在しています。ボッタクリコンカフェはあり得そうだなと常日頃思っていましたが、検索するとこれまた実在するそうです。可愛い女の子が居るからと油断は出来ないですね。
両さんが言っていた”神”ですが、本文にもある通り、この作品独自設定でバージョンアップしています。神がこち亀に出てきて30年くらい。流石にモデルチェンジくらいしているだろうと予想した次第です。閻魔大王もそうしようかなと考えます。あちらはショタかロリ化。どちらも発想元はFGOですけどねw
しかし両さんが本文で復活してからまた皆さまがご感想を書いて頂いて嬉しい限りです。デザグラの脱落。からの失踪。そしてジャマーガーデンズとしての復活。ここまで皆さまの予想を超える展開を描けたのは二次創作冥利に尽きますね(調子に乗り過ぎないよう気を付けますが)。
今後も皆さまが驚くような笑えるような展開を書けていければなと思う次第です。ギーツ側とこち亀側で新たに絡ませたい組み合わせも思いつきましたので。是非にと。
では明日も間に合えば17:30更新となります。よろしくお願いいたします。
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