仮面ライダーギーツvsこちら葛飾区亀有公園前派出所~両さん、デザグラに出るってよ~ 作:唐 十三郎
「まさか噺家まで居るとはなぁ。他にもどんなジャマトが居るんだ?」
「私が認識しているのは警官・消防官・自衛官・政治家・学生・教師・漫画家・小説家・ミュージシャン・警備員・建築作業員・宅配の配送員・主婦・赤ティアン・神主・巫女・美容師・理容師・エステティシャン・銭湯の番台・バ〇ダイなどなど」
「多い多い。そして最後がおかしい」
「失礼しました。ちょっとしたギャグです」
「ツムリちゃんもギャグとか言うんだな……」
「寿司職人も居ますよ」
「居るのかよ?! まぁこれだけ色んなジャマトが居るなら寿司屋が居てもおかしくないか」
「神田の超有名店の店員に……」
「ウチの店かよ?!」
ジャマトはもう一般社会に紛れているかもしれない。
執事ジャマトの導きで最前列の席に案内される2人。目前に居る噺家ジャマトは明朗快活に演目を続けている。いよいよ寿限無の見せ場、子供に付けられた異常に長い名前を連呼する場面だ。
『寿限無、寿限無、五劫の擦り切れ、海砂利水魚、水行末、雲来末、風来末、食う寝る所に住む所、薮ら柑子のぶら柑子、パイポ、パイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助ちゃんいないいない、バー...ガク! あぁ!おじぃちゃん死んじゃった!!』
「凄いですわ……あんなにスラスラと」
「良くもまぁ噛まずに言えるもんだぜ。さっき戦った奴らはたどたどしい日本語じみたもんだったがなぁ」
噺家ジャマトの見事な読み上げに確実に感心した両津。何分両津自身もアニメのエンディング曲のレコーディングで散々苦労したのが、この異常な長さの子供の名前の部分である。
その後も名前の連呼はあるものの、とうとう一度も噛まずに最後のセリフに辿り着いた。
『――ポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助! 起きやがれ!と親父が頑張って起こそうとするも、せっかく来てくれた友達から出た言葉が、おじちゃん! もう学校、夏休みになっちゃったよ!! てなオチがついてしまいましたとさ。おあとがよろしいようで』
ホールで観戦していた全てのジャマトからドッとした笑いが、そして惜しみない拍手が送られた。ここで高座の噺家ジャマトが話しだした。
「ポキョテテロ△ケキョジキョトチャケコエインビビオツテテ△キョロア。△モ△ラアーブラ△アビビ、コラサトトエオイズテテ△クバビテウ△ア。 ではみなさん、このふたりをたおしましょう!」
途中から人間の言葉を話し出した噺家ジャマトが手に持った扇子で観客席のジャマトたちに指示をした。ジャマトたちは一斉に立ち上がり、両津とマリアを取り囲んだ。
「ヘッ! ……落語のお代はワシらの命でってか?」
「両さま、このままでは……」
「わぁってる! 戦うっきゃねぇな! ……って、ああ――?!」
勇んでいた両津が急に素っ頓狂な声を上げた。心配になったマリアは慌てる両津に質問した。
「両さま! どうされたんですの?!」
「バックル……落としちゃった」
「ええ――――?!」
どうやらギーツと共闘した後でビッグウィンドファンバックルを落としてしまったらしい。
「それが無いとどうなるんですの?」
「変身は出来るが武器が無い……そうか! マリア、さっき渡したバックルを寄こせ!」
「え、ええ。ではこれを」
両津は先ほどの移動中、アイテムボックスを見つけた。だが小バックルと呼ばれる所謂簡易武器系のバックルであったため、邪魔になると思ってマリアに預けていたのだ。
「あんまり期待は出来ないが、無いよかマシだ! じゃあ行くぜぇ!!」
『 SET 』
両津の目前に文字が浮かび上がった。『 ASHTRAY 』と表示されている。急ぎポーズを取ってそのバックルの丸いボタンをカチッと押した。
「変身!」
『 ARMED ASHTRAY 』
いつものライダー〇ンヘルメットと、小バックル特有の簡易防具である肩アーマーと右胸を保護するプレートが装備された。そして両手には……
「は?! もしかしてこれって……」
「灰皿……ですか?」
「なんだと――?!」
『 READY FIGHT 』
「うるせー! こんちくしょー!」
「両さま、来ますわ!!」
「くっそー! やぶれかぶれだー!!」
タートルズが手にしたのはなんと灰皿。それも鈍器と形容するようなしっかりしたものではなく、アルミで出来た薄っぺらな灰皿そのものに見えた。サーベルを振り下ろしたジャマトの攻撃を手にした灰皿で受け止める。カンッと軽い音が鳴った。
「っイテテテ……衝撃はあるけど何とか防げるな」
「後ろからも!」
「こなくそぉ!」
左手にもう1つ持っている灰皿で後ろから襲ってきたジャマトのサーベルを受け止める。非常にピンポイント的な防御方法だが、サーベルを防ぐくらいの強度は持っているらしい。更にそのサーベルを受け流し、ジャマトの背後に回ったタートルズは灰皿の接地面で思いきり後頭部を叩いた。カンッ!と小気味良い音が響いて叩かれたジャマトはその場に崩れ落ちる。
「……意外とイケるんじゃないか、コレ?」
「両さま! ボーっとしている余裕はありません!!」
「おっと、そうだった。マリア、首輪は大丈夫か?」
「ええ! 今はまだ平気です」
どうやらライダーになれるジャマトは居ないらしい。両津とマリアはホール中のジャマトたちを蹴散らす事にした。
「せーぇのっとぉ!!」
両津がおおきく振りかぶって手に持っている灰皿をフリスビーの要領で投げてみる。なんと遠心力で切れ味が足され、スパスパとジャマトたちを切り倒し手元に戻ってきた。
「ヘヘッ! なんかイケそうな気がしたんだよな~」
「……両さま、遊んでませんか?」
「馬鹿言うな! おっとマリア、その場に伏せろ!!」
「はい!」
マリアがしゃがむなり、その周囲に居たジャマトたちに向かって再び灰皿を投げる両津。切れ味抜群の灰皿がまた大量のジャマトを倒していく。こうしてホール内のジャマトは高座に居る噺家ジャマトだけになった。
「さーてと、残るはコイツだけか……」
「ちょっとまってよ! らくご、おもしろかったでしょ? たすけてよ!」
「両さま……この怪物、懇願されていますが。その、命乞い的な」
「ん? そーか? ワシには良く聞こえんなー」
「そ、そんな~!」
「さーて、覚悟はいいか?」
「うわー! やだー! たすけてー!」
ポコッ! とした音が鳴った。
「ひ、ひどいよ……りょうさん」
両津は手持ちの灰皿で噺家ジャマトの頭を軽く小突いた。そこまで強力な力で叩いたわけじゃなかったが、恐怖心に負けた噺家ジャマトは気絶して倒れたのである。
両津はジャマトの着ていた着物の帯を解いて、後ろ手に縛り猿ぐつわとして口も縛った。
「これで良し!」
「でも両さま、本当に倒さなくてよろしかったのでしょうか?」
「んー、そうしたら何か後味悪くなりそうな気がしてな。マリア、こいつの声に聞き覚えが無いか?」
「え……言われてみれば、何方かに似ているのかも……」
「直ぐには出てこないか。アイツだよ、丸井ヤング館」
「丸井……あぁ、元・寺井様ですね」
「元・寺井って……女子たちではその呼び方しかしてもらってないのか……せっかく改名してやったのに」
丸井ヤング館。元々の名前は寺井洋一(てらい よういち)。両津やマリアと同じく葛飾署で亀有公園前派出所勤務の警察官である。二児の父で妻と一緒の四人暮らし。都心は高いからとわざわざ茨城県にマイホームを構えている苦労人である。特徴は「地味」これに尽きる。特に特徴は無い天然パーマの短髪で、丸メガネをかけた両津以上に中肉中背と言う言葉が似合う男だ。座右の銘は「人生送りバント」。マンガ原作よりもTVアニメの方が待遇の良い特異なキャラで、それもその筈、声を担当した声優さんは初代が茶風林さん。そして二代目は落語界の雄、九代目・林家正蔵師匠である(当時は林家こぶ平名義)。ちなみに両津が言っている似た声と言うのは、二代目の林家師匠の方である。丸井ヤング館というのはマンガ原作にて両津が改名した名前で、この名前にしてから運気が爆上がりした。但しその代償なのか以後出番が激減。マンガ原作最終回にすら出られなかった不遇の男である。
「だからよ、迂闊に倒すとなんかワシらの夢見が悪くなりそうだからさ」
「そういえば最近お見掛けしませんね」
「そう。ワシもそう思った。コイツと何か縁があるのかもしれんから、今回はここでこうしておくさ」
「そうですね。落語のお礼としておきましょう」
「さて、用事も済んだから英寿の所に戻るぞ」
「はい!」
こうして2人は場内の演芸ホールを後にして英寿たちの待つ教会まで戻る事となった。
☆
ジャマトたちを防ぎ、教会の扉に手近にあった頑丈そうな鎖を巻き付けて何とかバリケードとした一行。だがここも時間の問題だ。景和はホールで言っていたギーツの言葉とタートルズの言葉を反芻していた。
『死を覚悟するな。必ず勝ち抜けると信じろ』
『景和……お前もこんなんだったんだぞ。グズグズしていていいのか?』
そして景和は恐る恐る尋ねた。
「……どうしたら皆を守れる? どうしたら、戦える?」
英寿は自分のデザイアドライバーのIDコアをトントンと叩いた。
「触ってみろ」
「英寿?」
祢音が心配そうに声をかけた。構わず続ける英寿。
「思い出すはずだ。俺が知っているタイクーンを」
無言で指を伸ばす景和。英寿のIDコアに触れた瞬間、電流のような痺れが指先から全身に走った。そして記憶が濁流のように押し寄せ、前回のデザグラでの事を思い出す。
「そうだ……俺は……」
景和が呟いた途端に英寿のスパイダーフォンが鳴った。ゲームマスターからだ。
「勝手な行動は慎んでもらいたい、浮世英寿くん」
景和はすぐさま英寿が手に持っていたスパイダーフォンを掴み自らの願いを告げる。
「ゲームマスター! 頼む! ……俺をエントリーさせてくれ!」
サロンに居たゲームマスターはその言葉に鬱陶しそうに返事をする。
「桜井景和くん。君は守られるべき一般人だろう?」
呆れ混じりに返ってきたゲームマスターの言葉に、信念を抱いた景和はゆっくりと答えた。
「こんな俺でも、やれる事があるって信じたいんだ!」
その言葉に英寿も続けた。
「これが本当に世界を守るゲームなら、断る理由は無い筈だ。それとも、それだけではない秘密でもあるのか?」
英寿の言葉に苦い顔をするゲームマスター。ソファから立ち上がり、訝し気に返事をした。
「いいだろう。仮面ライダーケイロウが、エントリー権を譲渡するなら」
その言葉に教会の奥で休んでいた一徹が返事をする。
「ああ……構わない!」
その言葉を聞いたゲームマスターは指示をする。
「タイクーンのIDコアを移送する」
スパイダーフォンの通話が終わると教会の入り口がメキメキと壊れる音がしてきた。強引に押し切って現れたジャマトたちによって扉は破れた。1体のジャマトライダーが率いる形で無数の執事・メイドジャマトたちが教会に侵入してきた。
「……! 直ぐに戻る。それまで頼む!!」
景和は教会奥の別の入り口に突っ走り、急ぎ自分のIDコアを取りに出た。その姿に少し顔を緩めた英寿と両津は返事をした。
「待ってるぞ!」
「へへっ! 転ぶんじゃねぇぞ!」
英寿・祢音・両津の3人はバックルを構える。
「さーてと、正念場だぜ。英寿! 祢音ちゃん! 持ちこたえろよー!!」
「もっちろん! 景和が戻るまで頑張るからね~」
「当然……さぁ、ハイライトだ!」
お決まりの指を鳴らす英寿。3人とも、ドライバーにバックルを差し込んだ。
『 SET FEVER!』『 SET 』『 SET 』
「「「変身!」」」
『 MONSTER 』『 BEAT 』『 ARMED ASHTRAY 』
筆者です。変攻Xをお送りしました。
恥ずかしながらこの文章を書きながら暫く視聴を控えていた「ギーツエクストラ 仮面ライダーパンクジャック」を視聴していまして、今は本編の視聴からオーコメの視聴に入っています。概ね運営の裏側ってのが予想通りでなかなか驚いています。IDコアの設定は本作オリジナルでして、本来は1人1つだけなんですよね。なので両さんがウィンの代わりにパンクジャックをしていたのは本編志向主義の方からすると反則です。ついで言うと、臨時スタッフを退任時に両さんもギラギラを抜かれましたが、尋常じゃない回復力の両さんなので記憶抹消後戻された翌日には普通にギラギラを取り戻していました。この辺はこち亀設定に沿っていますw
さて、今回の小ネタを。
・噺家ジャマト(完全版?):CV林家正蔵師匠ですw 落語を題材にした時点でもう決めておりました。ちなみに変攻VIIIでアルキメデルのオッサンが通話先に言われていたのはこのジャマトの件です。拘りが拗れましたw 実はこの噺家ジャマト、もしかしたらお気付きの方もいらっしゃるとは思いますが、まだ仕掛けがあります。それはまた追々と。
・灰皿バックル:新喜劇にあるポコポコヘッドが元ネタです。フリスビーは筆者が子供の頃にそうやって遊んで怒られた経緯があったからです。イタズラもこうして小説のネタにしてるのですから、この筆者とことんタチ悪いと思いますけどどうかお付き合い頂ければ幸いです。
ではまた明日17:30の更新をお楽しみに。
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