仮面ライダーギーツvsこちら葛飾区亀有公園前派出所~両さん、デザグラに出るってよ~   作:唐 十三郎

18 / 161
「いよいよ暗号の詳細がわかった一行は合言葉の寿限無をジャマトの言葉に組み立て直しました。さて、扉は無事に開き、皆さまは無事に脱出できるのでしょうか? 実際に組み上がったものは前回をもう一度お読みください」
「よくよく考えたらとんでもない合言葉を設定したもんだな……」
「資料によると、沢山のジャマト達が挑んだらしいのですが、唯一出入りできたのは噺家ジャマトだけのようですね」
「ちょっと待て。だから噺家ジャマトがあそこに居たのか?」
「最初は知性あるジャマトだけ通れるようにと設定していたらしいのですが、余りにハードルが高いからと送り込まれたようです」
「どっちもどっちだなぁ……」

 ツムリと両津のやり取りをしていたその頃、とある男たちが電話越しに喧嘩をしていた。

「「お前が悪いんだろ!!」」


変攻XIV:愛僧渦巻く迷宮の脱出ゲーム

 先ほどの両津たちと同様に一人ずつ読み上げる。何分初めて読む綴りのため、思うように最後まで読み切れない。

 

「こ……これは厳しいですね」

「でも……このままじゃ皆が!」

 

 流石の一徹もこれは手こずるらしい。梢も何とか頑張ってみるものの途中で噛んでしまう。

 ギーツたちも何とかジャマトたちを皆から遠ざけるもあまりの数にジリジリと後ろに下がってきていた。ジャマトライダーも多数混ざっているため、もしこの防衛ラインを越えてくると一般人皆の首に巻かれた首輪が一気に締め付けられる。最悪の場合は首が千切れ飛ぶ。それだけは何としても阻止しなければならない。涙目で読み上げようとする良樹と梢を見て苛立ちが頂点に達した者が居た。

 

「いいかげんに……しなさ――い!!」

 

 誰もがその光景を見て我が目を疑った。

 突如、大ハンマーのような強烈な蹴りが飛び込んできて音声認識装置を破壊したのである。

 

「え?……」

「嘘?……」

「マ、マリア様?」

 

 怒りの形相凄まじいマリアに声をかけたのはツムリだった。流石のツムリもこれには仰天したようで口をパクパクと開いたり閉じたりしている。我に返ったマリア自身も自身が行った凶行に驚いていた。

 

「?! ご、ごめんなさい……皆さんが必死なのに嘲るようなブザー音が鳴り続けるので……つい」

 

 これで脱出は完全に不可能となり、誰もが絶望を覚えた。だがその時である。

 

『……ンポーン。ピンポーン。ピンポンピンポンピンポンピポピポピポピポピポ……ピンポーン!!』

 

 破壊されて暴走したらしい音声認識装置が誤作動を繰り返したらしく、重く閉ざされていた扉がズズズと開き始めた。

 

「マジか……でかしたマリア――!!」

「やりましたわ、両さま――!!」

 

 マリアの蹴りによって生じた爆音に気付いた他のライダーたちもこれには唖然としていた。いち早く正気を取り戻したギーツが皆に声をかける。

 

「と、とにかくこれで出口は開いた。皆、早く外に出るぞ!」

「……もしかして最初からマリアちゃんに任せていれば早かったんじゃない?」

「ナーゴ、それは言うな……」

 

 英寿は良樹を抱えて走った。景和も一徹を背におぶって走る。そしてマリアは両津をお姫様抱っこをして走る。

 扉の向こうから眩い光が溢れていた。そして皆が扉の外に出ると背後にある筈の扉は無くなっていた。城らしき建物はあるが、予想より遥かに小さめの建物となっている。どうやらジャマトが作った異空間は消失したようだ。少し先に一般人が乗っていたバスがハザードランプを点滅させて停車していた。まるで何も無かったかのように。

 

「私たちは夢でも見ていたのでしょうか?」

 

 と、尾形が呟いた。

 

 英寿は良樹に近づき、しゃがんで良樹の目線まで腰を落とす。軽く頭を撫でて笑顔で別れの言葉を告げた。

 

「じゃあな」

「ありがとう!」

 

 両津は別れを惜しむマリアを宥めるのに必死だった。

 

「また派出所で会えるだろ?」

「でも、でもマリアはこのまま両さまとご一緒したいです。せっかく結婚式場だって目の前にあるのに……」

 

 マリアは両津の背後の直ぐ先にある城を眺めて願望を口にする。ちなみに迷宮だった城は結婚式場としての貸し出しもしている一部の界隈では有名な建物だ。

 

「?! バカ言うな! 結婚式なんて誰がするか! それにワシは生涯独身主義だ。伴侶なんて要らん!」

「そんな……マリアは悲しいです。ヨヨヨヨヨ……」

 

 そんなコントじみたやり取りをしている2人に別の2人が近付いて来た。晴家ウィンと吾妻道長である。

 

「おう、お前らどうした?」

「竜二さん……いや、マリアちゃんに話がある」

「アタシにですか?」

「その……おい、お前から言えよ」

「お前が言い出したんだろ?」

「? ハッキリしないヤツらだなー。そろそろマリアを帰さないといけないんだが」

 

 両津のその言葉に時間が無い事を悟った2人は思い切って言う事にした。

 

「「せーの……お願いします! サインください!!」」

「え? アタシの……ですか?」

「「はい!」」

「もうアタシは引退した身ですよ」

「「……構いません! お願いします!!」」

「困りましたわ……両さま、どうしましょう?」

「いいんじゃねぇか? してやれよ」

「両さん!」

「オッサン……」

 

 渋るマリアにサインを促させた両津に、ウィンと道長の顔が笑顔になる。

 

「引退したので本当はサインとかしないんですけどね」

「すいません……ありがとうございます!」

「……すんませんっした。一生大切にします!」

 

 2人のサインはツムリが用意したマジックで彼らが着ていたTシャツに書かれた。あくまで麻里竜二と言う存在が過去のものだと強調されるかのように、現役時代の麻里竜二のサインが書かれた上から思いきり✖の字が足され、その横には「今は公園前派出所のマリアです♡」と書き足されていた。

 互いのTシャツに書かれたサインを見て誇らしげになる2人。その様子を見ていた両津は少々呆れ顔になった。

 

「皆さんは責任を持って送り届けます!」

「おう! 群馬から葛飾は少し遠いから道中気を付けろよ!」

 

 バス運転手の尾形に両津が返した言葉で皆が呆れ顔になる。そこへツムリがツッコミを入れる。

 

「両津様、ここを群馬と決めつけないでください」

「う……わかった。ところで気になる事があるんだけどよ?」

「? 何でしょうか?」

 

 ツッコミをもらったついでに両津は疑問を投げかけた。

 

「マリアもそうだが、あの一般人の皆はもうこの記憶が無くなるんだろ?」

「ええ、そうですね」

「路線バス一台が丸っと消えて乗客も数時間とは言え行方不明になったんだ。そいつぁどうなるんだ?」

「運営側がいい感じの力を使っていい感じに記憶改ざんが行われます。事故か誘拐事件ですね」

「……誘拐事件。それじゃ誘拐事件になったとして真っ先に犯人として疑われるのは」

「恐らくあのメンバーで考えられるのは尾形様ではないかと」

「! そうか……そうだよな。アイツもとことんツイてないぜ」

 

 そうとは知らず屈託の無い笑顔でお辞儀をした尾形は皆を乗せてバスを発車させた。

 そしてデザグラ参加者もそろそろサロンに戻ろうとしていたが、ここでツムリが一徹の処遇についてアナウンスする。

 

「桜井景和様のエントリーに伴い、丹波一徹様はここで脱落となります」

「ああ……助けてくれてありがとう」

 

 一徹は景和に、そして皆に、腰を摩りながら深くお辞儀をする。

 

「でも……おじいちゃんにも叶えたい理想の世界があったのに」

「いや、今を精一杯生きていればまだまだ現役。若くなりたいとは、思わなくなったよ」

 

 問いかけた景和の肩をポンポンと叩き、爽やかな笑顔で返す一徹。

 

「どうか……お元気で」

『 RETIRED 』

 

 景和が挨拶を告げた瞬間、一徹のIDコアが焼失し、それと共に一徹の身も消えた。最後にはその場に一徹が使用していたデザイアドライバーだけ残される。それをツムリが拾い回収した。

 丁度その時、少し離れた場所で道長はウィンに耳打ちした。

 

「なんで運営側のお前がゲームに参加している?ゲームマスターの目的は何だ?」

「そいつぁこの後のお前の態度次第かなー? なぁお前、”DAJYON”って入ってるか?」

「いや、最近は時間もあまり無いからサブスクは殆ど止めている……」

 

 ウィンの言う”DAJYON(ダジョーン)”とはスポーツに特化したサブスクリプションで、国内外のあらゆるスポーツに精通し、大小問わず試合のライブ配信や過去の名勝負の特集動画、現役選手や引退した名選手へのインタビュー動画、スポーツの歴史などをまとめた動画等を配信している。マリアの父、植木流翻堕羅(ほんだら)拳法総帥の麻里晩も出資者の一人で、引退したとは言え麻里竜二に関する動画が沢山見れるサービスでもある。

 

「俺、プレミアム会員でさ。特典で竜二さんの全試合動画とか、特集動画とか見放題なんだよね」

「……なんだと?」

 

 道長の眼が鋭く光った。かなり本気の眼をしている。

 

「今度付き合えよ。話は動画見ながらにしようぜ」

「……少しだけなら」

 

 そのやり取りが行われている直ぐ後、景和はツムリから渡されたデザイアカードに自分の願いを書き記していた。それを見ていた祢音が景和に声をかける。

 

「また世界平和をお願いするの?」

「ううん。俺の願いは”退場した全ての人たちが蘇った世界”」

「相変わらず壮大だな」

 

 少し離れていた所に居た英寿が言う。その言葉に景和が返す。

 

「その為にも、出来る事からやるよ。……勝ち抜けると信じて」

 

 その言葉を聞いた英寿は景和の肩を叩き軽口を告げる。

 

「ま、勝つのは俺だけどな」

「「……感じ悪っ!」」

 

 その英寿の態度に祢音とツムリの心からの声がハモった。英寿と景和はどことなく気まずい空気になり、英寿は多少凹みながら歩いていく。

 

 こうしてデザグラ2回戦、迷宮脱出ゲームは幕を閉じた。

 

DGPルール「ゲームマスターの許可があれば、エントリー権の譲渡が可能である」




 筆者です。変攻XIVをお送りしました。

 お話としてはここで終わるのですが、明日の更新分で後日談をお送りします。なんとなく筆が進んだのでお読み頂ければ幸いです。

 では今回の小ネタを。

・マリアちゃんの蹴り:両さんの影響で気が短くなっています。まぁあれだけ寿限無を頑張ったのに開かなけりゃね……皆のフラストレーションを具現化しました。

・DAJYON(ダジョーン):元ネタはスポーツ系サブスクのDAZNです。マリアちゃんの父・麻里晩が関わっていると設定したのでこの名前にしました。名前の元ネタはおそ松くん(おそ松さん)のダヨーンとハタ坊の口癖「だじょー」です。きっとホンダラ拳の試合も中継されているでしょうw

 今回はこの辺で。明日も17:30更新です。よろしくお願いします。

この作品をお読みになっている貴方は

  • 男性
  • 女性
  • どちらとも言えない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。