仮面ライダーギーツvsこちら葛飾区亀有公園前派出所~両さん、デザグラに出るってよ~ 作:唐 十三郎
「無い。単に寿司を食いたくなっただけだ」
即時返答する英寿。オチもへったくれもない。
「またまたー。英寿様が何か企んでいるってのはギーツ本編からのファンは確実に見抜いてますよ」
「そんなに信用されていないのか」
その顔を見た景和と祢音が複雑な表情をしている。
「そりゃ何度も本編でやってきたし……」
「ねぇ?」
「あのなぁ……こっちは二次創作だぞ?」
そして更に両津も加わる。
「まぁこれに懲りて暫くは誰かを騙すってのは控えるこったな~」
「いいのか、タートルズ。お前だって警察官なのにかなり危ないマネをしてきたみたいじゃないか」
「ん? どういう事だ」
英寿は文字がびっしり書いてあるメモ帳を広げ読み上げ始めた。
「確か以前に葛飾署にハッキングして給料調整をして4000万円を不正横領したとか」
「この話題危険だから本編行こう、ツムリちゃん!!」
実際過去にそんなのがマンガ原作として発行されているから凄い。
「ちょっとそいつぁスジが通ってねぇんじゃないか、夏春都?」
「どういう意味だい、勘吉?」
「ヘン! 檸檬がガキだからダメだ? だったらそのガキに味を任せてきたワシら大人だって十分ダメだろ。こんな店へ食べに来る英寿が可哀想だ。その金を渡して帰らせな」
「何言ってんだい、このロクデナシ!! せっかく前金まで渡した客を追い返せって商売ナメてんじゃないよ!!」
夏春都が本気の怒りを見せた。だが両津は引かない。むしろ更に食ってかかった。
「檸檬がこの店で一番偉いんだぞ?! その檸檬をないがしろにして奥に居ろなんてどれだけ身勝手なんだよ! もうこんな店なんざ辞めちまえ、強欲ババァ!!」
「言ったな、このクソガキ!! もう頭に来た! アンタのクビをかっきって浮世英寿の皿に盛りつけてやるよ!!」
日本刀を持ちだして鞘を抜いた夏春都。勘吉も両腕の袖をまくり、今にも殴りかかりそうだ。
「お母さん落ち着いて!」
「そうですよ! 血圧が上がりますよ!」
大慌てで夜婁紫喰と桔梗は夏春都を押さえる。
「勘吉! いくらなんでも婆ちゃんに言い過ぎだぞ!!」
「イチロー! ここは冷静になれ!!」
纏と三吉は両津を押さえた。2人とも気を緩めたら即殺し合いを始めそうなくらいに怒りが頂点に上っている。
「カンキチも婆ちゃんももうやめるのじゃ! 檸檬が我慢すれば……憂鬱?」
檸檬が泣き叫んだその時、憂鬱が笑顔で檸檬の頭を撫でていた。
「大丈夫。このまま両さんに任せておきな」
「憂鬱……でも、このままじゃ……」
そう言った瞬間、両津が大声で怒鳴った。
「夏春都! ワシと勝負しろ! ワシが負けたらこの首、テメェにくれてやらぁ!!」
「ほう……? 言うじゃないか」
両津の言葉で冷静になる夏春都。大声で怒鳴った両津も喉を押さえながらちゃぶ台に用意してあったお茶を一気に飲み干した。
「その言葉、忘れるんじゃないよ。で? 勝負って何をするんだい?」
「ヘッ……後で吠えヅラかくなよ?」
2人は互いの顔を睨みながらも口元は笑っていた。
夜6時50分。超神田寿司の店先に2台のタクシーが到着した。1台は英寿とツムリ。もう1台は祢音と景和が乗っていた。4人はタクシーを降りて店の佇まいにそれぞれの感想を口にした。
「ようやく着いたかー。ちゃんとしたお寿司屋さんなんて子供の頃以来だよ~」
「へー、これが超神田寿司かぁ。ウワサには聞いていたけど初めて来た~」
「江戸時代から代々続く名店と聞いております。楽しみですね」
「ああ。とても楽しみだ」
景和は念のための正装と言う事で祢音の見立てで新品のスーツ一式と靴を揃えてもらった。流石に金を払おうかと思ったが、レジにて清算をした時に聞いた額で驚愕してしまい、仕方なくプレゼントとして頂く事にした。頭文字にPが付く有名ブランドのスーツを着込み、靴も頭文字にRが付くブランドのものだ。祢音にしてみたらかなり景和に寄って安目のものにしたらしいが、揃えて着込んで面接に行ったら間違いなく落とされるだろうなかなかの品である。
祢音は頭文字にDの付くブランドのイブニングドレスを着込んでいる。最近お気に入りの一着らしい。
ツムリはいつも通りの白と黒のパーツを様々あしらった何とも不可思議なデザインをしたドレス。ジャケットは、姫袖ボレロ。下は長めのアシンメトリーなデザインをしたスカート。コルセットも装着している。つまり普段着だ。
そして英寿はいつも以上に決め込んだ様子のタキシード姿だ。頭文字にAの付くブランドのものを気だるげに着崩している。英寿だから許されるものだろう。
タクシーの停車音が聞こえて店先に夏春都が現れた。丁寧にお辞儀をして挨拶をする。
「浮世英寿様ですね。当店の女将をしています擬宝珠夏春都と申します。本日はようこそおいで頂きありがとうございます」
「ああ、今日はよろしく。そうかアンタが擬宝珠夏春都か。やっぱりね……」
「? どうかされましたか?」
しげしげと夏春都を見つめる英寿。まるで懐かしい者でも見るような眼だ。
「いや、こっちの話。うん。やっぱりアンタ、今でも綺麗だな」
「……お世辞を言ってもお代はまけませんよ。さぁさ、皆さまお店にどうぞ」
夏春都に促されて店の入り口に向かって歩く一行。祢音が英寿の脇腹を小突いて尋ねてみた。
「何、英寿ったらあんなおばあちゃんが好みなの?」
「そうだけど、何か問題が?」
「守備範囲広っ! まさかの浮世英寿様の好みがあんなに年上だとはねぇ……」
「……あの人は昔から綺麗だったからな」
「何それ? 知り合い?」
「まぁ昔にな」
英寿の言っている事が理解できない祢音は首を傾げるだけだった。
暖簾をくぐり、広い店内のカウンターには両津が待っていた。
「へいらっしゃい! ……何だ、お前らもか。あれ? 4人だけか? 予約じゃ7人って聞いていたが」
「バッファとパンクジャックも誘ったが来なかった。父さんもな。なんか知らんがサロンで盛り上がっていた」
「サロンで?」
「ああ。プロジェクターで麻里竜二の昔の試合中継の動画を見ていた」
「マリアのかよ。アイツらも物好きだねぇ」
「まぁ無理に誘っても仕方ないから置いてきた」
「あまりサロンの設備を私用で使ってもらいたくないのですが」
両津と英寿の会話にツムリも混ざった。
「2人とも凄かったよね」
「俺、あんな明るい道長を見たの初めてかも」
祢音と景和もそれぞれの感想を呟いた。
「まぁいいや。それで何処に座る? 座敷なら直ぐに通せるぜ」
「いや、ここでいい」
言うが早いかカウンター席の真ん中に座る英寿。それに習って残り3人もカウンター席に並んだ。入り口側からツムリ・英寿・祢音・景和となる。いつの間にか割烹着を着込んでいた夏春都が湯呑を持って来た。お茶を注ぎながら英寿に話しかける。
「勝手ながら英寿様にお願いがありまして」
「? どうした?」
「ウチの勘吉が貴方様と勝負をしたいと」
「ほう? 一体何の勝負をしたいんだ?」
両津の顔を見る英寿。いつになく真剣な表情をした両津は口を開く。
「浮世英寿、ワシと勝負してくれ。お前がワシの寿司を食って美味いと言ったらワシの勝ちだ」
「ほう。それでもし俺が一言も美味いと言わなかったら?」
「ワシは運営に頼んで脱落する」
「「「?!」」」
その言葉に英寿以外の3人が驚く。英寿は至って平静を保ったままで、夏春都から渡されたおしぼりで手を拭いて湯呑に注がれた熱い茶を飲んでいた。
「俺がわざと言わないって事もあるぞ」
「構わんさ。それはそれでお前の勝ちなんだから」
「随分本気みたいだな」
「まあそれだけワシもケツに火が点いてるって事さ」
喉を潤す程度にお茶を飲んだ英寿は湯呑を置いて言葉を紡いだ。
「わかった。受けてやる」
「ちょっと、英寿?!」
「両さんも! 本当にそれでいいの?」
心配する祢音と景和。そして我関せずと決め込むツムリはカウンターに置いてあるお品書きを眺めていた。
「お前ら好きなの頼んで良いぞ。俺も同じのを頼んでいくから」
「……わかった。それじゃあ、何にしようかな?」
「じゃあ、俺は玉子! 両さん、玉子握ってくれる?」
「もっと高いのを頼んで良いんだぞ、タイクーン」
咄嗟に玉子を決めた景和に声をかける英寿。だが景和も自信ありげな顔をしている。
「わかってる。他のも頼むよ。でもこういうお店は玉子が美味しいってのが鉄則なんだって」
「へぇ……言うじゃねぇか景和」
「じゃあアタシも頼もうかな。両さんアタシにも!」
「お、いいねぇ祢音ちゃん。ツムリちゃんはどうする?」
「私は、ウニ・イカ・大トロ・ヒラメ・イクラを順番にお願いします」
「……遠慮が無いねツムリちゃん」
「よし、決まったな。玉子つごう3丁! ウニ・イカ・大トロ・ヒラメ・イクラをそれぞれつごう2丁!」
「「「ヘイ!」」」
厨房奥から夜婁紫喰・憂鬱・三吉の3人の威勢の良い返事が聞こえてきた。
超神田寿司のカウンターにはネタケースがあるが、それは一部の食材だけ。管理を慎重に扱うものなどは厨房内の冷蔵庫から持ってくる。厨房の板長が予め切り分けたネタを持ってくる場合も多い。玉子焼きは厨房で焼いたものを直ぐ傍の冷蔵庫で保管しているのがこの店のルールだ。
切り揃えた玉子焼きを三吉が運んで来た。用意されたシャリを手慣れた手つきで握った両津は綺麗に成型していき、整ったシャリの上に玉子焼きを乗せて更に軽く握って計6貫の玉子の握りが出来上がる。その出来栄えに景和と祢音は目を見張った。
「凄い。本当に両さんが握っちゃったよ……」
「話には聞いていたけど、目の前で見ると驚いちゃうよね~」
「何だよ、お前らどうせ英寿から聞いていたんだろ?」
「ハハハ。まぁそうなんだけどー」
☆
話は昨夜の事。
デザグラ第2回戦を終えた一行はサロンに戻ってきた。景和は一般人たちとバスに同乗せずに成り行き上で来ただけに過ぎないが、久々に訪れるサロンの空気を吸って、改めて高揚感を覚える。ここで英寿が皆に提案をした。
「さてタイクーンも復帰した事だし、ここで1つ親睦会でもするか」
「そんな……いいよ、親睦会だなんて。だって俺たちこれから戦い合うんだろ?」
「アタシは賛成! こんな毎度毎度戦いだけじゃ息が詰まっちゃうよ」
「祢音ちゃん……ありがとう。凄く嬉しいよ」
その言葉に優しさを感じた景和は祢音に微笑みかけた。
英寿は構わず続ける。
「さて場所だが」
「サロンで良いんじゃない?」
英寿の提案に景和が答えた。だがそこに祢音が割り込む。
「待った! もっと他の所でやろうよ。せっかくの親睦会なら美味しい料理が食べたいな~」
「美味しいもの……ステーキかな?」
「! ステーキ……!」
景和の「ステーキ」という言葉を聞いた瞬間、道長は全身に悪寒が走った。道長自身が牛と言う訳では無いが、仮面ライダーバッファは牛、バッファローを模した仮面を被っている。共食いと言う言葉が頭を過り同時に「モ~!」と言う鳴き声が聞こえた気がした。
「ステーキも良いが寿司にしよう。タートルズが握っている店に行ってみたいんだ」
「両さんが?! お寿司屋さんだったんだ……」
「意外……」
景和も祢音も驚きを隠さなかった。
☆
景和・祢音・そして英寿に供された玉子の握り。その完璧とも言える出来栄えに陶酔する景和。3人がそれぞれ食べ始める。
「「いただきまーす!」」
「……いただきます」
筆者です。「認者VI」をお送りしました。
もうじきコミケが行われますが、こちらの読者の何名が出向かれるものなのでしょうか? 筆者は近年は同人ショップにてコミケX日目を過ごすだけになってしまいましたが、コロナ渦以降は色々整備されたらしく一昔前に比べたら快適に過ごせるようになったとの事。有料制・人数規制ってのはやはり必要な措置だったのですね。とは言え酷暑に対しての対策は例年通り必要かと思われますのでくれぐれもお気をつけを。島本和彦先生のキングオージャー本が気になる次第です。
前回のご感想に「大人としてスジを通している夏春都に何故両さんは意を唱えたか」と言ったものがありまして、そちらの問いに対しての回答が今回のお話ですがご納得できましたでしょうかね? 檸檬ちゃんが敢えて裏に引いているならまだしも、今回は憧れの存在が来るのでかなり乗り気だったんですよ。まぁ見事にそれを諫めたのは夏春都でしたが。
また英寿の発言もよくご注意ください。彼が転生者なので筆者なりの遊び心が加わっています。今回の話が今後どれだけ影響するかはまた以降の話にご期待あれと言った所ですね。
では今回の小ネタです。
・ギーツメンバーが着てきたコーデ:すんごく適当に書いたんですけどね。一応裏付けはあります。先ず景和ですがスーツがPaul Smith。靴がREGALですね。ちょっと頑張れば何とか買えなくも無いだろうけど、直ぐに買うのは一般層だと厳しいかなってものを揃えました。こんなん面接に着ていったら一発で落とされますな。次に祢音。DIORです(キッパリ)本編の衣装とかと照らし合わせしていたら合いそうなのがこれくらいしか思いつかなかったんですよねー。英寿のARMANIも同様に。どちらも一着で数十万くらいしますが。ツムリのデザグラ衣装がもしかしたら一番安いのですが、実は調べたらわかるh.naoto製でプレバン商品としては少し高価です。既に在庫無しで88000円します。実際の縫製とか気になる所ですが、あれかなり目立つし着る人選ぶ服だなぁと思いました。それこそ祢音の見立てでツムリにも何か別の服を着させる展開も考えましたが、それはまた別の機会に。
では辛うじてまだ書けますので引き続き翌日17:30更新です。よろしくお願いいたします。
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