仮面ライダーギーツvsこちら葛飾区亀有公園前派出所~両さん、デザグラに出るってよ~ 作:唐 十三郎
「まぁ俺が一言でも美味いと言わなければタートルズは負けるんだけどな」
「何だと―?! 絶対美味いって言わせるからな!」
「ふん。狐の舌をナメるなよ」
そこでスマホ検索をしていく両津。
「狐って雑食なんだな。基本何でも食べるのか」
「おい、いくら何でも失礼だろ!」
「なぁ、鉛玉でも喰らうか?」
「そりゃゴンギツネじゃないか! ……アンタ、大昔の発砲癖がまだ消えてないのか?」
初期の両津勘吉は気に入らないと直ぐ発砲するクレイジーポリスであった事は有名。
「「いただきまーす!」」
「……いただきます」
景和と祢音は明るく。英寿は落ち着いた声で感謝の言葉を告げた。最初の一口を食べただけで景和と祢音の顔色は一気に蕩けるような表情になっていく。
「美味しい……! 予想以上だ!!」
「! すごい美味しい~。他の店で食べるのと全然違う……」
「ふん……まぁ良いんじゃないか?」
景和は少々オーバーアクションぎみに。祢音はやはりセレブなのか寿司そのものは珍しく無いらしい。だが彼女の舌を唸らせるだけの味を持っていた事に両津は満足だ。だが肝心の英寿の反応はいま一つの様だが。景和が両津に質問をした。
「この玉子焼き、両さんが焼いているの?」
「いや、今日は違うな。少し待ってろ……おお、纏が焼いたのか。なら納得だ」
「マトイ……? この店の人?」
「おう! 今は店に居ないけどな、後で伝えておくぜ」
「うん! こんな美味しい玉子焼き食べたの初めてだから是非お礼を言いたい!!」
「嬉しい事言ってくれるじゃねぇか! 次どうする?」
両津の言葉に一考する景和。間を開けず次のネタを告げる。更に祢音も便乗した。
「じゃあ中トロ! やっぱりマグロ系は食べておかなきゃ」
「じゃあアタシは大トロかな~。これはかなり期待できるでしょ」
「ヘヘッ! 2人とも良いノリになってきたじゃねぇか! はい中トロ1丁、大トロ1丁!」
「「「ヘイ!!」」」
景和と祢音の楽し気な雰囲気とは一線を画して英寿は淡々としていた。喉が渇いたと追加で注文を受け、英寿と景和にはビール、ツムリには純米酒の日本酒が供された。祢音はお茶のままだ。あまり酒は得意じゃないらしい。
ツムリが頼んだものと同じものを食べていくも英寿の反応はやはり薄かった。逆に無言のツムリの反応の方が面白い。態度こそ無言なのだが、一口食べる毎に笑顔のまま蕩けていき、自身が頼んだ一番最後のイクラを食べ終えた後は。
「結構なお点前で……」
「そりゃ茶の湯の礼の挨拶だ」
「あら失敬。大変美味しゅうございました」
思わず礼の言葉がバグる始末だ。だいぶ気に入ったのだろう。
だが英寿は何をどれだけ食べようと顔色1つ変えずに居た。いよいよ敗色濃厚かと思っていたその時、英寿から初めて注文が出た。
「なぁ……稲荷寿司は頼めるのか?」
「お、おう? 稲荷か?」
「ああ、稲荷寿司だ」
一般的に稲荷寿司とは、袋状に開いた油揚げを甘くあるいは甘辛く煮付け、寿司飯をそのまま、あるいはニンジンやシイタケなどの具材を煮込んで混ぜた寿司飯を詰める。多くは米俵を模した俵型(円筒に近い直方体)に仕上げたものが供される。稲荷神社の稲荷神(五穀を司る宇迦之御魂神・倉稲魂命を参照)は商売繁盛と共に豊作の神様であり、米を使用した俵型の稲荷寿司につながる。(Wiki調べ)
「英寿も結構シンプルなものが好きなんだね」
「でもさ、こういう高級店だと稲荷寿司って出してないんじゃ」
「そうか……食えないのか」
「出せるぜ」
英寿が少しだけ寂しそうに口を尖らせた直後、両津が応えた。その言葉に景和が返す。
「出せるの?」
「ああ。お品書きには書いてないけどな、時折頼む人も居る。時間は少しかかるけど良いか?」
「構わない。頼んでいるのはこちらだしな」
「皆も食うかい?」
「俺も食べたい!」
「アタシも!」
「お願い致します」
「ぃよっしゃ! へい、お稲荷さん四丁!!」
「「「ヘイ!!」」」
返事が聞こえた厨房に両津は急ぎ足を向けた。早速憂鬱が油揚げを浸す煮汁の作成にかかっていた。
「憂鬱! それが出来たら急ぎ檸檬の所だ」
「ああ、わかっているよ両さん!」
憂鬱が満面の笑顔で返した。稲荷寿司用の煮汁はしょう油・みりん・酒・砂糖・だし汁が基本である。作り手や地方によって差異はあるが煮汁を使う場合概ねこの辺りが良く使われている。手早くひと煮立ちさせ酒のアルコールを飛ばした後に憂鬱は急ぎ檸檬の所に向かう。その様子を見ていた夏春都は複雑な心境ではあったが、誇らしげな気持ちの方が多かったと後に語る。
「檸檬。味見を頼みたい」
「……憂鬱か。わかった、入れ」
檸檬は気持ちを落ち着ける為に纏を相手に将棋を指していた。とは言え余程気持ちが落ち着かないのか珍しく纏に惨敗続きの様だったが。
「煮汁の味付けから煮魚では無いな。稲荷寿司か?」
「ああ。浮世英寿様直々のご注文だ」
「! なんと、英寿様が?!……わかった。しかと味見をしよう」
檸檬が小鉢の煮汁を舐めて神経を集中させている間に纏は憂鬱と共に廊下に出て、現在の店内の様子を聞いてみた。
「実際どう?」
「檸檬にはまだナイショな。驚いた事にもう一人凄い人が客に来ていた」
「へー……流石英寿様。で、どなた?」
「鞍馬祢音」
「! マジ?!」
「シッ! 檸檬に聞こえる。今は味に集中させたい」
「そっか……こりゃ益々負けられなくなっちゃったねぇ」
纏と憂鬱が話し込んでいる間にも檸檬はまだ味見に悩んでいた。意を決し憂鬱に質問してみる。
「英寿様はお酒は飲まれたかの?」
「えーと……軽くだがビールを飲んでいた筈だ」
「ふむ。それなら気持ち程度で構わぬがしょう油と砂糖を増やせ。このままでも問題無いとは思うが、せめてもの気配りじゃ」
「わかった!」
一般的にビールだけに限らず炭酸飲料を飲むことによって舌からは酸味・塩味が抑えられていく。ビール好きが塩気の濃い食べ物を好む傾向が強いのもこの辺りが大きい。
檸檬の部屋から戻った憂鬱は指示通り、しょう油と砂糖を気持ち足して更に中火で煮まわした。そこに夜婁紫喰が用意していた油抜きをした油揚げが浸される。四丁分の油揚げに煮汁が十分浸った所で一旦火を止めて更に煮汁が浸透するのを見極める。頃合いを見て鍋から引き揚げ、ほんの少しだけ余熱が消える頃合いでカウンターの両津の所に持ってくる。
ここからは両津によるスピード勝負だ。予め酢飯を詰めやすく切られた油揚げに器用に手先だけで適量の酢飯が詰め込まれ、抜群の握り加減で成型されていく。待たせていた分、急ぎ握られ供されると言うのは寿司では良くあることらしいが、両津の握りは神技と言って差し支えない匠の領域であった。
「へい! お稲荷さんお待ちどうさま!!」
「両さん凄いね……お揚げが来てから直ぐに握っちゃった」
「そっか? 慣れればこんなもんだろ」
「いやいやいや、慣れとかそういう話?」
景和が感心しているのを全く素知らぬ態度を取る両津。そこに夏春都が横やりを入れる。
「お客さん、良く見てますねぇ。そう、そこの勘吉ってのはなかなか手が速いものでしてねぇ」
「やっぱりそうなんですね」
「ええ。寿司の技術もそうなんですが蔵に眠っていた高額な掛け軸とか小判とかも持ち出そうとしていたりとか」
「! マジですか?!」
夏春都の余計な一言で景和と祢音の見る目が一気に冷める。
「両さん。それはダメでしょ……」
「両さん、ドロボウは……」
「ち、違う! 別にドロボウでやったんじゃない!! おい、夏春都。余計な事言うんじゃねぇ!!」
「ヒヒヒ……どこまでが本当だかねぇ~」
夏春都が意地悪くも楽し気に両津をいじっている。その姿を見て少しだけ英寿の表情がほころぶ。その仕草に気付いたのは正面に居た両津だけだったが。
改めて4人に供された稲荷寿司。勢いよく食べる景和と祢音。しみじみとその造形を眺めるツムリ。そして一瞬口の前で動きを止めるも迷わずに食べる英寿。4人の感想は……
「美味~い!」
「美味し~い!」
「……美味です」
「……うん。美味い」
とうとう英寿も美味いとその感想を口にしたのだった。
筆者です。「認者VII」をお送りしました。
今回文字数を3000文字とさせて頂きましたが、これは本文を最後までお読み頂いた方ならわかる、所謂クライマックス的演出のためです。そんな、話数稼ぎとかUA稼ぎだなんて滅相も無い。
という訳で英寿に美味いと言わせました。いや、言わせる気でしたけどね。稲荷寿司が出てきた辺りで予想出来た人も多かったのでは無いでしょうか? ただしまだ舞台超神田寿司は続きます。是非お楽しみに。
今回の小ネタです。
・超神田寿司の玉子焼き・・・こち亀本編でも描かれているエピソードなんですが両さんも纏ちゃんも店では特級の腕前なんですよね。結果論としては纏ちゃんの技術を両さんも真似たという所でしょうか? ちなみにまだ言えませんが実は今回の話は今後の伏線をガッツリ盛り込んでいます。玉子焼きもその一つです。
・稲荷寿司・・・これまたこの二次創作を書き出した頃、手元の第200巻を読んでいた時に目についた本編エピですね。きっと英寿なら気に入るだろうなと思ってチョイスしました。ちなみに本編では檸檬ちゃん用のキャラ弁とかも両さんが作っていたりします。秋本先生、両さんにどれだけスキル付与してんでしょうか?
体調もだいぶ落ち着きましたが、それでも寝込んでいた分のペースダウンは否めないですね。なるべく途切れない様に調整したいものです。では明日も17:30更新ですのでよろしくお願いします。
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