仮面ライダーギーツvsこちら葛飾区亀有公園前派出所~両さん、デザグラに出るってよ~ 作:唐 十三郎
「フッ……それくらい俺の情報網を駆使すれば容易い事さ」
ここで両津が唐突に110番通報を行う。
「もしもーしおまわりさーん。どうやら浮世英寿が幼女誘拐を計画しているそうですが」
「誰が誘拐計画だ失礼な! だいたい警察はお前だ不良警官!!」
「あ、そうか。じゃあ逮捕する」
「逮捕状も無いのに手錠をかけるんじゃない! 職権乱用と誤認逮捕で訴えるぞ!!」
「職権乱用はまだ良いとしてもだ」
「良いのかよ……」
「誤認逮捕はどうかなぁ? ウチの檸檬はこう言うとアレだがかなり可愛いからなぁ」
「可愛いのは認めよう。流石擬宝珠家の人間だ」
「うん。認めやがったな。もしもーし週〇文春ですか? 浮世英寿にロリコン疑惑がありましてね。記事として売れると思うんですけど」
「ゴシップ雑誌にデタラメ記事を売るな!」
有名タレントのありもしないでっち上げって何故か記事になるものだよね。
ここでアクシデントが起きる。
「! 変身!!」
超神田寿司の店内は緑色の閃光で満たされた。
なんでこんな事になったのか事の顛末を説明しよう。夏春都が憂鬱と話をしていた時にカウンターではこんなやり取りがあった。
「そういえばツムリ様が英寿様の姉君だと言うのは纏から聞いたがの。桜井景和、お主は何者じゃ?」
「俺? ……普通に学生です。これと言って有名人じゃなくてすいませんでした」
「?! 何故謝る! 檸檬はただ質問しただけじゃぞ?」
急に謝罪した景和に狼狽える檸檬。その様子を見て祢音は纏に質問する。
「ねぇ纏ちゃん。檸檬ちゃんって随分変わった喋り方するんだね」
「ああ、婆ちゃんの影響で時代劇が好きでさぁ。このくらいの歳の子って影響受けたものを口にしたがるだろ?」
「……そういうもの、かな?」
幼少期の記憶が薄い祢音にとってこの言葉は少々引っかかるものがあったが、今は纏と話を合わせる事にした。
纏と祢音の会話を横耳で聞いていた両津はここで檸檬に口を挟む。
「聞いて驚くなよ檸檬。こいつはな、現代に生きる忍者なんだぜ」
「なんと? マコトか、桜井景和?!」
「ちょっと両さん、何言ってるの?」
「ヘヘヘ。だって本当の事じゃねぇか」
「もー……子供相手だからって」
「桜井景和よ。檸檬はお主に興味が出てきた。是非忍びの技を見せておくれ」
目を爛々と輝かせている檸檬。流石にここまで期待されていて忍者じゃありませんとは言い切れなくなった景和は何か披露出来るものは無いかと考え出した。
「技って言われてもなぁ……ボイパとか?⋯…」
すると景和の口から打楽器やベースの音が安定したリズムで流れ始めた。かなり練習してきたものらしく、ちゃんとした曲としても聞こえる。
「おおー、大したものじゃのう。声を使った忍術か。他には? 他には?」
「他かあ……両さん、大根と包丁貸してもらえる?」
「あ? ちょっと待ってろ」
そう言って奥の厨房から大根と薄葉包丁を持ってきた。予めある程度の大きさに切りそろえてある。
「ははは。これは両さんには見透かされて居たかな? じゃあ先ずは定番の桂剥きを……」
「おお、これは見事じゃ」
差程時間をかけずに大根の桂剥きが出来上がった。
「じゃあ次だね。お野菜で彫刻を作るよ。……これがキツネさんで、これがネコさん。そして最後にタヌキさん」
「なかなかやるのぅ。ウチの職人達にも引けを取らん」
「お寿司屋さんのお嬢さんに褒められるなんて嬉しいな♪」
その見事な野菜彫刻に英寿も祢音も感心した。
「これは……再現度が凄いな」
「すっごーい! 景和って手先器用なんだねぇ〜」
「子供の頃から絵を描いたり工作したりするのは好きだったからね」
「見事じゃ。でも何か忍者っぽさとは違うのう」
檸檬のボヤきに両津が渡し船を出す。
「やっぱりアレだな。景和の忍者らしさと言ったら変身ポーズだろ!」
「え? いや、両さんそれはマズいんじゃ……」
「何? 変身とな?! 見たい見たい! 景和、見せてたもれ!!」
「えー……? まいったなぁ」
「ここまで期待してんだ。見せないのはヤボだぜ景和!」
「もー……両さんが言い出したんでしょ? 仕方ないなぁ」
そう言って立ち上がった景和は、カウンター席とテーブル席の間に立つ。
超神田寿司の座席間取りとしてはカウンター席とテーブル席の間は少し間隔を広めに取っている。従業員と客の行き交いでなるべくぶつからないようにする為だ。店からの細かな気配りの一つである。
上着を脱いだ景和は更に動きやすいようにと長シャツの袖も捲る。
「少し身体も解しておくか」
伸びをして、更に屈伸。これを数回繰り返した後は首・肩・腕・手首・足・足首をそれぞれ数回ずつ動かす。
「さてと……」
目を閉じて深呼吸をした。その様子に檸檬は息をゴクリと飲んだ。両津はニヤニヤと笑っていたが、この直後に急遽青ざめる事となる。景和の目が一気に見開かれた。”いつものように”デザイアドライバーとニンジャバックルを構えた。
「? あ?! バカ、止めろ景和!!」
『 SET!NINJA! 』
ドライバーから音声が鳴ると、”目にも止まらぬ速さ”で複雑な変身ポーズを繰り出す景和。
「変身!」
両津が止めるも間に合わず、超神田寿司の店内は眩い緑色の光が輝いた。光は直ぐに収まったがそこには、桜井景和の姿から変身した仮面ライダータイクーン・ニンジャフォームが現れたのである。
☆
ではここで改めて桜井景和が仮面ライダータイクーンに変身していくシークエンスを見ていこう。
・先ずレイズバックルをドライバーの右スロットに勢いよく差し込む。
・軽く腰を落とし、左側に向けて両拳を腕を交差させる状態で一気に突き出す。
・両拳を開きながら右腰に向けて別の型を構えるように回転を加え変化させていく。
・右腕を手刀のように左側へ突き出す。この時左腕は引き締めたまま。
・最後に、右手で自然にバックルのレバーアクションを行う。左手もそれに伴い左側に流れるように動かす。
この動作を2.58秒。本人の調子次第では0.48秒で行う場合もある。
☆
『 NINJA READY……FIGHT!』
「ど、どうかな? あ痛ぁ!」
変身したタイクーンの頭を思い切り殴る両津。
「何すんのさ両さん?!」
「本当に変身する奴があるか! フリだけで良かったんだよフリだけで!」
「それを先に言ってよ!」
「誰だって普通そう思うだろがー〜! 本当お前、そーゆー所だぞ……」
両津が呆れながらのツッコミをしているのを他所に纏・夏春都・憂鬱・そして真正面で見ていた檸檬はすっかり腰を抜かして驚いていた。
「こりゃたまげた……一瞬で姿が変わったよ! 最近のコスプレってのはここまで凄いのかい?!」
「これ本当にコスプレ?! 早着替えなんて域を超えてるよ!!」
「や、やだなー2人とも。コスプレだよコスプレー……」
丁度都合よく夏春都が「コスプレ」と言う単語を使ったので両津はそれに便乗するカタチで誤魔化す。しかし、夏春都は既に100歳も超えて久しいのにどれだけ現代文化に精通してるのだろうか。彼女の兄である両津勘兵衛と言い、浅草生まれの長寿の年寄りたちの柔軟さには頭が上がらない。
「檸檬もすっかり驚いちゃったよなー……ってあれ?」
両津が声をかけるとその場にへたりこんで居た檸檬は虚空を見つめ呆けていた。至近距離で、さらに真正面で見ていたのだ。その精神の衝撃たるや夏春都や纏の比では無いだろう。
「おい! 檸檬! 平気か?!」
「勘吉! 檸檬どうしちゃったの?!」
「勘吉ー! 檸檬に何かあったらタダじゃすまないよ!!」
「いやいや、ワシじゃなくて景和が……そんな場合じゃない! おい檸檬! しっかりするんだ!!」
両津の懸命な声掛けにようやく正気を取り戻した檸檬。
「はっ?! ……檸檬は一体どうしていたのじゃ?」
「あー……驚かすんじゃねえよ。寿命が縮まったぜ。あ痛え!!」
檸檬が正気を取り戻して安堵する両津だが、即座彼の頭を夏春都が全力で殴った。
「寿命が縮まったのはこっちだよ! 檸檬があのままだったらどうしてくれたんだい?!」
「そーだよ! 景和くんもあんまり小さい子を驚かさないでくれないかな?」
「ご、ごめんなさい!」
「……いや、良く考えたら悪いのはワシだ。景和は悪くねぇよ」
タイクーンを庇う両津。事の発端は景和の純粋さを見定めずに煽った軽口にあったからだと自らを諌めた。だがそこに檸檬が割り込む。
「婆ちゃんも纏ももう良い。カンキチも景和も檸檬を楽しませる為にやったのじゃ。何も悪くないぞ!」
「檸檬……」
「檸檬ちゃん……」
タイクーンに向き直り、ニンジャデュアラーを握っていない空いた左手をしっかりと握った檸檬は今までで最高の笑顔で景和を褒めちぎる。
「間違いない! 桜井景和、お主は間違い無く現代に生きる素晴らしい忍者じゃ! まさかカンキチにこんな凄い忍の知り合いが居たなんて……ズルいぞカンキチ! もっと早く紹介して欲しかったのじゃ!」
「悪ぃ悪ぃ。つってもワシだって知り合ったのは最近だぜ。早く会わせてやれて良かったよ」
「それなら仕方ない。のう景和、檸檬はお主の事がもっと知りたい。お主の事を教えてくれぬか?」
「ははは。良いよ。じゃあ何から話そうか?」
檸檬はすっかり景和に惚れ込んでいた。変身解除した景和の隣に座って色々な話を質問する。
好きな物、嫌いな物。家族の事や得意な事。両津とは何処で知り合ったとか、両津の印象とか聞ける限りの事を矢継ぎ早に聞いてくるので景和もすっかり上機嫌だ。
「のう景和。お主、檸檬に家来として仕えぬか?」
景和は少し俯き、そして顔を檸檬に向き直し、真っ直ぐな瞳で答える
「ありがとう檸檬姫。でも俺にはいま果たさなければいけない大事な使命があるから……。だから、だからもし仕えるとしたら、それを終わらせた後で良いかな?」
その真っ直ぐな態度に檸檬は首を縦に振り応えた。
「あいわかった。きっと大事な使命なのだな。お主がそこまで言うなら待っててやる。必ず使命を果たすんじゃぞ」
そこへ両津が冷やかし混じりのチャチャを入れる。
「ほほー、檸檬の誘いを断るなんて大したもんだなー」
「やめてよ両さん! 檸檬ちゃんだってそこまで本気じゃないでしょ?」
「何を言うか? 檸檬は何時だって本気じゃぞ? お主は間違い無く現代に生きる忍者じゃ! 忍者を家来に持ちたいのは当たり前じゃ!」
その様子に纏も割り込む。
「檸檬がここまで惚れ込むなんて大したもんだよ景和くん!」
「もー、纏ちゃんまでー……」
皆が再び和やかな空気になった頃合いで憂鬱は厨房に戻る。頃合い次第では早々お開きもあり得そうではあったのでお土産寿司を用意に入ったのだ。
ちなみに景和の変身に喜んだ檸檬の様子を見て英寿も続けて変身をしようとしたが祢音とツムリが止めた。少し不貞腐れた英寿はボソリと呟いた。
「なぁ、海苔佃煮は置いてあるか?」
筆者です。「認者IX」をお送りしました。
夏春都と憂鬱の会話の間に起きたものとしては随分短い時間で物凄い密度のやり取りをしているなと感じたアナタ! 時空が歪んだんです。そう感じて下さい。マンガや小説、アニメでは良くあることです。
桜井景和……というか佐藤瑠雅くんの変身ポーズですが。書いてて筆者もなかなか表現しきれていない部分も多く大変でした。けれどもこの話を書けて楽しかったです。肝心の変身ポーズについてはYoutubeでライダーの変身ポーズを研究している方が居ますので是非見つけてその凄さを知って下さい。
景和くんと檸檬ちゃん。恐らくこの二次創作で景和くんの闇落ちを救うキーパーソンは檸檬ちゃんしか居ないと思いこの話を書きました。時代劇マニアなのが助かりましたね。お陰でタイクーンと接点が出来ました。忍者好きと忍者ライダー。結構良いでしょ?
さて英寿様の無茶振りがまた飛んできました。実はこっちが本命だったりします。どうなるかは明日の更新で。そしてここで読んで頂いている皆さまにお知らせです。
なんと明日は、初めての同日2本更新です!
経緯としては、残り話数が2話だけであること。最後の話が2000文字と中途半端になった事。そして奇遇にも日曜日だからです。その為、通常の17:30更新と21:00更新を行います。
メインが17:30更新分で、21:00更新は単なるファンサービスです。お楽しみ頂ければ幸いです。
ではまた明日。よろしくお願いします。
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