仮面ライダーギーツvsこちら葛飾区亀有公園前派出所~両さん、デザグラに出るってよ~ 作:唐 十三郎
「いやーやっとこの話も終わるのかー!」
「お疲れ様なのじゃ!」
伸びをしている両津に檸檬が労いの言葉をかける。
「ありがとよ檸檬。と言うかこんな所に来ちゃダメだろ」
「どうしてなのじゃ?」
「ここは前書きコーナーと言って、本編以上に筆者が自由に書き進めていくから本編の登場人物たちが既に原型留めていないくらいキャラ崩壊させられていく魔空間みてぇなもんだ」
「よくわからないけど怖いのぉ……それで檸檬が此処に来るとどうなるんじゃ?」
「そりゃあお前、……どうなるんだ?」
咄嗟にツムリに向き直す両津。ツムリから紡がれた言葉は辛辣だった。
「この作品の筆者によって属性が付与されていきます。最近だと某アプリゲームの夏イベが始まったらしく限定PUに実装された日焼けキャラ2体にご執心のため、檸檬様が褐色にされる可能性が」
「なにー?! 日焼けギャル属性の檸檬だとー?!」
「可能性として後はスク水・紐ビキニ・スリングショット・フンドシと法被など着せられる可能性が」
「そりゃ完全に変態の思考じゃねぇか……」
「でも勘吉の趣味でもあるよね」
「?! 纏、何でそれを……」
気付くと纏が背後に立っていて物凄く白い目を向けていた。
「この家で隠し事が出来ると思うなよ勘吉。あんたが蔵で借りているスペースに大量のエロ本持ち込んでいるのくらいお見通しなんだからな」
「いや、あれは本田から預かっているだけだ!!」
「どーだかねー……どの道、檸檬や蜜柑の教育に悪いからくれぐれも外には出すなよ?」
すっかり凹んだ両津の頭を檸檬が撫でて慰めた。
「落ち込んでおるのかカンキチ? 早く元気になるんじゃぞ!」
「ふえええええ~~ん!! 檸檬、お前はそのまま真っすぐに育っておくれ~~~~~!!」
もうすぐこの話も一段落着くと言うのに、下世話な話題で申し訳ない。
「なぁ、海苔佃煮は置いてあるか?」
「海苔佃煮? ……英寿、流石に寿司屋で頼むもんじゃねぇだろ?」
「ははは。まぁ流石に無かったな」
「さっきのお稲荷さんもそうだったけど、英寿様って意外に庶民的な食べ物が好きなんだねぇ」
纏も呆れながら反応する。和食を中心に色々なメニューを提供できる超神田寿司だが流石に海苔佃煮は用意していなかった。両津は一応念のため厨房にも確認してみるが、昼のメニューに添え物で用意したシジミの佃煮なら用意できると告げるが英寿は断った。寂し気な表情をした英寿の横顔を見た夏春都は1人で邸内に戻る。数分後彼女は手元に小ぶりの壺を持って来た。
「勘吉。こいつをお出しするよ」
「……こいつは、良くワシらが朝飯で食っているモンじゃねぇか。客に出しても良いのか?」
「アタシが良いって言ったら良いんだよ。纏、手伝いな」
「? は、はい!」
厨房にて数人分の簡単なお膳を用意する。飯茶碗にそれぞれ1杯分のご飯。即興で作った大根の味噌汁。具の大根は先ほど景和がかつら剥きと野菜細工で出したものだ。更に大根の葉と白ごまで簡単なおひたしを作る。
「檸檬。おいで」
「わかったのじゃ!」
夏春都はカウンターで景和と戯れていた檸檬にも声をかけた。
「海苔佃煮とのバランスを見て欲しい。いいかい?」
「うむ……味噌汁は少し薄味で良いと思うぞ」
「こうかい?」
「うん♪ バッチリじゃ!」
「胡麻和えも見てくれるかい?」
「こっちは少し甘味が欲しいのぉ。婆ちゃん、クルミも足して良いと思うぞ」
非常にシンプルなお膳だが、その匂いだけで食欲をそそる。カウンターに居た4人は再び食い気が出てきたらしく照れ顔になっている。
「仕方ないよね……」
「うん。あんな美味しそうな匂いがしてきたらねぇ」
「非常に食欲が沸く香りです」
「……今日は来て良かった。さぁハイライトだ!」
英寿が右手でパチンと指を鳴らすと厨房から4人分のお盆が持ち運ばれた。
「「「「いただきます!」」」」
カウンターの4人の声が見事に重なる。
「あー……ダメだアタシ絶対食べすぎちゃう! こんなのご飯何杯でも入っちゃうじゃん!」
「同感。と言うか両さんお替わりもらえる?」
「早いな! ちゃんと噛めよ景和。ってツムリちゃんもか?!」
「私は良く噛みました。だからお替わりを所望します」
「理屈になってねぇよ。ハイハイ待ってろ。祢音ちゃんは?」
「わかってて言ってるでしょ。いじわる……」
「ハイハイ。お替わりな。英寿は良いのか?」
英寿はこれまで以上にゆっくりと一口一口をじっくりと噛みしめていた。ワンテンポ遅れて返事をする。
「もらうよ。でも先にこの海苔佃煮をゆっくり味合わせてくれないか。ようやく出会えた味なんだ」
「ホントに好きみたいだな」
「ああ。お稲荷さんを食った時にもしかしたらと思ったんだ。あの子にもう一度お礼を言いたいな」
「? ああ、檸檬か。おーい檸檬、英寿が呼んでるぞ」
檸檬も厨房で軽くだがご飯を食べていた。どうやら皆の食い気に充てられてしまったらしい。
「どうしたのじゃ、英寿様? お気に召さなかったのかの?……」
怪訝そうな顔色の檸檬の頭を撫でて優しく微笑む英寿。先ほどよりもより一層嬉しそうな顔だ。
「とんでもない。最高のご飯だったよ。”パルちゃん”の味を護ってくれてありがとう。御馳走様」
「”パルチャン”? 良くわからないけど美味しく召し上がって頂けて何よりなのじゃ! お粗末様でした」
厨房から覗いていた夏春都はその呼び名を聞いて衝撃が走った。急ぎ英寿の傍にやってきた夏春都。一縷の願いで恐る恐る英寿に質問をする。
「英寿様……もしやアンタ、”あの”英寿さんかい?」
「……うん。そうだよ。海苔佃煮の味、今も変えてなくて嬉しかったよパルちゃん」
「嘘……? だってもう何年経ったと……そんな、そんな!」
そのまま英寿に抱き着いた夏春都。目から大粒の涙を流してむせび泣いている。その頭をポンポンと撫でて英寿も瞳に涙を滲ませる。
「随分長い間待たせちゃったね。ゴメン」
「そうですよ……もう、本当に酷い人……」
あの夏春都が回りも気にせず泣いている。これには超神田寿司の面々がただただ驚いた。
時間が少し経った頃、玄関先で両津と纏、そして檸檬は皆を見送る事にした。
「ご馳走様でした~!」
「お土産ありがとう両さん! ちゃんと姉ちゃんにも食べてもらうから!」
「両津様、またお伺いします。今度は私と祢音様で!」
「ツムリちゃん、よっぽど気に入ったんだな……おう景和、足が速いネタも多いからしっかり今夜中に食えよ」
「わかってるって。姉ちゃんにハラ空かせて待っているよう言ってあるからさ」
景和との別れを一番寂しがっているのは檸檬だ。檸檬は景和の傍に寄って笑顔で見送るよう気を張っている。
「景和、姉君によろしくな。また食べに来い。遊びに来ても構わんぞ」
「うん! 是非ともまた来るよ。今度は姉ちゃんと一緒にね」
「じゃあ約束だ! 指切りげーんまん」
「嘘ついたら針千本のーます!」
楽しそうに小指で指切りをする景和と檸檬。丁度その頃迎えのタクシーが到着した。
「では両津様。英寿様の事を宜しくお願いします」
「ああ。夏春都次第だが適当に帰すよ」
「ありがとうございます。では皆様、ご馳走様でした」
出発したタクシーにいつまでも手を振る檸檬と纏。カウンターでは英寿と夏春都が横並びで杯を交わしていた。
「今までどうして来てくれなかったんですか? 水臭い……」
「何度も悩んだんだけどね……でもいきなりこの姿で会っても信じてくれるかわからなかったし」
「そうですねぇ……そう言えば兄に、勘兵衛には会いましたか?」
「会ったよ。会ったら速攻殴り掛かってきた」
「ハハハハハ! 全く、勘兵衛らしい」
両津勘兵衛。両津勘吉の祖父で夏春都の兄である。120歳も近くなったというのに佃島一帯でベンチャー企業を多数経営している下町の顔だ。
――遠い昔の事――
女学校を卒業した直後に頑固者の父から一方的な押し付けで、代々続けてきた佃煮屋の支店を兄・勘兵衛と経営する事になった夏春都。職人としては一端だが生来の遊び人の勘兵衛は店の経営を全く手伝わず、毎朝の仕込み以外は遊び惚けていたため支店の経営は全て夏春都が切り盛りしていた。お下げ髪で丸メガネ。気の強そうな眉毛と鼻が特徴的だが決して見劣りしない顔立ち。商才逞しい彼女の努力は”佃煮小町の夏春都お嬢さん”と言う二つ名で呼ぶ客が増えると共に売り上げを伸ばしていった。ある日、勘兵衛が飲み仲間の貧乏書生を連れてきた。また金の無いロクデナシを連れてきたかと適当にあしらっていたが、その線の細い色男の事が次第に気になっていた。今日も彼は店で一番安い海苔佃煮を買いに来た。
「ねー、もう少し負けてよパルちゃん!」
「ダメですよ。ウチだって厳しいんですから」
「ケチ! ……あれ? 少し多くない?」
「お値段は負けませんけどね。これは私が食べきれなかった分オマケです」
「へへ! いつもありがとう。やっぱりパルちゃんは美人だよ! よ、佃煮小町!!」
「もう。褒めたって何も出ませんよ!」
こういう何気ないやり取りが続くようになっていた。
だが少しずつ兄の様子がおかしくなっていく。毎朝の仕込みは欠かさず続けていたのに徐々にサボるようになっていた。あくる日、二人はとうとう喧嘩をする。
「仕込みさえ手伝わないってとうとう気が触れちまったのかい、この宿六!!」
「うるせぇ! ”でざぐら”だよ”でざぐら”!! 勝ち上げれば俺たちぁいつまでもこんなみみっちぃ商売なんかしなくても良くなるんだ!!」
また何処かで流行り出した賭博か政治運動でも手を出したのか妙に熱の入った兄の言葉にただため息を吐く夏春都。どうせ直ぐまた飽きてしまうだろうと我慢する事にした。その時に変な借金を作ってこなければ良いなと頭を悩ませたものだ。
数日後、居間で1人寂しく酒を飲んでいた兄。日頃酒が入ると笑ってばかりいる彼が珍しく泣いていた。
「ちくしょう……英寿! 英寿!! なんで俺の代わりに……馬鹿野郎!!」
いつになく真剣な表情で泣いていた勘兵衛に声をかけられなかった夏春都。そして気が付くとあの書生、英寿もパッタリと店には姿を見せなくなった。
――遠い昔の事である――
「何があったのかはもう聞きませんけどね」
「うん……」
「勘吉まで悲しませないでくださいね」
「……うん」
「ふふふ……相変わらずウソがつけないんですね」
「……俺のウソを見抜けるのはパルちゃんくらいだよ」
「そうですかねぇ? まぁ勘兵衛も勘吉も単純なだけですけどね」
「全く……君たち本当に血が繋がっているのかねぇ?」
「そうですねぇ。まさかでもこうして勘吉が縁を繋いでくれるとは思いませんでしたよ」
「おう! 呼んだか?」
両津が厨房から肴の追加を用意して現れた。刻んだ油揚げとカイワレを梅干しとごま油で混ぜたものだ。
「またアンタは……勝手に店の食材に手ぇ出してんじゃないよ!」
「魚介には手ぇ出してないからいいだろ別に? ほれ英寿、食えよ」
「お、イケるなコレ!」
「だろ? お稲荷さんも良いが酒のアテならこっちも気に入ると思ってよ」
「はぁ……英寿さん、勘吉は勘兵衛よりタチが悪いから気をつけてくださいね」
「パルちゃんが言うなら間違いないね」
「何だよ二人して! だいたい英寿、てめぇ夏春都と知り合いだなんて聞いてねぇぞ!」
「言ってないもん」
「二人だけの秘密なんだよ。割り込むんじゃないよ、勘吉!」
「知るか! あ、結局お前だって口付けてるんじゃないかよ夏春都!!」
「そりゃーアタシの店ですし。店の食材で粗相する若い衆のお仕置きは必要だろ? あら、やだよコレ。美味いじゃないか」
「ケッ! いつも檸檬ともども鍛えて頂きありがとうございますってんだ!」
「そういや檸檬はどうしたい?」
いつの間にか店には3人だけだ。夜婁紫喰・憂鬱・三吉は明日もあるので早々に部屋に戻っていた。纏と檸檬ももう奥に引き上げている。
「纏が寝かしつけてるよ。4歳児には刺激が強い夜だったからなぁ」
「……わかってると思うけど勘吉、アタシと英寿さんの事は」
「わぁってる。余計な詮索はしない。だが夏春都、アンタもワシと英寿の事は深入りせんでくれ」
「……構わんさ。けど勘吉これだけは言わせてくれるかい?」
「何だよ?」
そう言うと夏春都は、自身も含めて英寿と両津の杯に酒を注いだ。
「英寿さんで悲しい酒だけは飲むんじゃないよ」
「……ああ」
「……ありがとう、パルちゃん」
3人は一気に飲み干した。
筆者です「認者X」をお送りしました。
いよいよあと1エピでこの認者も終わりとなります。予想以上に書けましたね。途中で体調不良に襲われなかったらどうなっていたのやら? それでも何とか毎日更新を行えたのが奇跡です。それこそ前書きと後書きを極力シンプルにする、或いは全く書かないという方針で進める事も考えましたが、それこそ楽しみを奪うものなのでそれは今現在無いかなぁと。さて昨日のお伝え通りに本日は21:00にもう1本更新を行います。日頃お読み頂いている皆さまへの感謝の気持ちを込め、認者のラスト話のUPとなります。お楽しみください。
では今回の小ネタを。
・ご飯セット・・・英寿の海苔佃煮リクエストに対して夏春都が即興でこしらえたものです。居酒屋とかでたまにありますよね。お茶漬けだったりオニギリだったり。前回にて景和が大根で野菜細工を作っていたのもあり野菜くずが沢山出てきたのも丁度良く使う事が出来ました。フードロス。食材は大切にしましょう。
・海苔佃煮・・・英寿の思い出の品にしました。安いんですよね。
・両津夏春都・・・こち亀本編よりかなり設定を盛っています。基本骨子のイメージはこち亀の企画単行本999巻ってのがありまして、そこに出てくるパラレルワールド夏春都ですね。顔のシワが少なく、本編よりも落ち着いていて檸檬とプラスに向けた笑顔が素敵でした。過去英寿と関わっていた頃は今の時代(2023年)から考えると第二次世界大戦に入る前くらいを考えていますので時代背景から女学校卒業だと17歳くらいです。顔立ちは纏や檸檬そのままで丸メガネをかけて性格は少しキツめくらいだと考えて頂ければ。……我ながらかなり盛ったかもしれませんねw
・両津勘兵衛(若)・・・こち亀本編のかなり昔、勘兵衛初登場回にて書かれていた数多のセリフからかなり盛り込んでキャラメイクしました。夏春都との年齢差が10歳前後程度で30代手前ですね。「若い頃はモボ(モダンボーイ)と呼ばれていた」との発言もあったのでイケメンの部類にはしてあります。酒と遊びにだらしないですけど。実はこの勘兵衛と夏春都の過去話でもう少し文章書こうかなと考えていたのですが、体調不良の事とこの小説の進行頻度も考えて断念しました。そう、過去英寿と勘兵衛が戦う過去のデザグラです。ただそれやるともうこち亀のスピンオフからどんどん外れていくんですよねw そのためこちらはいずれ書きたくなったら趣味で書こうかとも考えています。
さてまだまだ書きたい事はありますが、本日は掟破りの2本更新。続きはこの後の方に書きます。ではいつもと変わり、この後21:00更新をお待ちください。
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