仮面ライダーギーツvsこちら葛飾区亀有公園前派出所~両さん、デザグラに出るってよ~ 作:唐 十三郎
「あそこのチームが戦っているジャマトって麦わら帽子被ってないか? ワシのとこに居なくて良かったー!」
麦わらジャマトも三刀流ジャマトも黒足ジャマトもきっと居た。
1Wave目を凌いだ参加者たちはサロンにて待機していた。スタート時に比べ人数は半分近くに減っている。
「何とか倒せたなー。やっぱりこういうのは苦手だぜ。おい、おまえら大丈夫か?」
「はははは……はい」
「辛いブヒ……」
「全く。最初からそれだとこの先持たんぞお前ら」
両津たちチームのやり取りは全く関せずで道長が自分のチームメイト2人の不甲斐なさを嘆いていた。どうやら1Wave目で彼のチームメイトが殆ど役に立たなかった事に不満の声を上げた道長に対して文句を言っているらしい。
「だったら腹括れよ。願いを書いたらもう、仮面ライダーなんだよ!」
チームメイトに恫喝する道長。そこへ壁際に居たウィンが近付いていく。
「あーそうだ! パンピーの俺らにもチャンスが巡ってきたんだ。デザ神目指すしかないっしょ?」
道長のチームメイトの老人にハッパをかけている。そこへカウンター席に座っていた英寿が近づいた。ウィンに質問をする。
「おまえ、あのパンクジャックなのか?」
「あん?」
英寿のその言葉に驚いた道長は英寿に問い質す。
「パンクジャック?!」
「ここの運営スタッフに居たアイツだ」
その言葉は両津の耳にも届く。
「?! あいつら何を話しているんだ?」
両津はチームメイトにある相談を持ち掛けつつ、英寿たちのやり取りに聞き耳を立てていた。
「いやいや人違いだろ。俺は……知る人ぞ知るぅ~♪ パンクロッカ~♪ 晴家、ウィーーン♪」
「いちいち弾かなくていいから」
ギターを奏で歌って自己紹介するウィンに冷淡に接する英寿。
「別人だろ。と言うかむしろ……」
二人のやり取りに呆れつつ道長の目線は少し離れていた場所にいる両津を見ていた。
「あのオッサンの方がそうなんじゃね?」
「うん?」
道長が視線の先に見ているものを英寿も見始めた。英寿の視線も感じて両津は焦り出した。
「マズい! あの二人、もしやワシがパンクジャックだった事に気付きだしたんじゃないだろうな?!」
「りりりりり両津さん?」
「どうしたんだブヒ?」
「あー、いや何でもない」
冷や汗をかきながらチームメイトへの相談を続ける両津。道長はそんな両津の体型とウィンの体型を交互に見比べる。
「あのオッサンの手足の長さならパンクジャックの体型と一致する」
「そうか? 俺には良くわからんが」
「って、お前マジで言ってるのか?!」
キョトンとした態度を取る英寿の言葉に驚く道長。
「はぁ……お前なぁ、ホントそういう所だぞ」
「何がだ?」
「いやいやいや……こいつの体型とパンクジャックだと全然一致しねぇだろ?」
「そうか?」
英寿はウィンとチームメイトだったため、実際にウィンがパンクジャックに変身する所を見ていた。そもそもサロンに浮かぶモニターにも「晴家ウィン/仮面ライダーパンクジャック」と表示されている。
「まぁだからと言って何がどうって事も無いけどな。でも油断はするなよ」
「お前なぁ……敵の心配とかしているなんてどんだけ余裕なんだよ!」
英寿の態度は道長の地雷を踏んだらしく、英寿の右肩をガッっと押し出した。だがそこへ、
「なんだよー? あんなオッサンばかり見つめてないで俺をもっと見ろよ~。ヘーイ!!」
「あー! もうなんなんだよお前らはぁ……」
ギターを弾いたウィンが割って入る。その態度に白けた道長はソファに座りため息をついた。
少し時間が経ち、2Wave目に移る。1Wave目の疲労は全員回復できたらしく、声にも元気が戻っていた。
「いいいいい行くぞー! ああああああの子と一緒になるんだー!!」
「勝ち残るブヒ! 待ってろ世界中の美味いものー!!」
「本当にこんなんで大丈夫かなぁ……?」
全員既に変身を終えてジャマトの出現に備えていた。
「まぁ、今の戦い方なら特に問題無いだろ! さージャマト、とっとと来ーい!」
威勢の良い両津の声に反応するように地面に黒いモヤが現れた。だが1Wave目とは様子が異なり……
「な、なんじゃあこりゃあ?」
目の前が全て黒く染まる。その表現が一番正しいだろう。両津たちの周囲3メートルを除き、視界の駐車場の地面という地面が全て黒いモヤで染め上げられていく。気が付くと辺りは全てジャマトが蠢いている。100? 200? 一体何体居るのだろうか?
「こここここれ全部ジャマト?!」
「どーするんだブヒ?! こんなの防ぎようが無いブヒ!」
狼狽するギリギリスとブートン。この状態はタートルズも予想してなかった。だがギブアップは即退場。今の彼にその選択肢は無かった。
「慌てるなー! こんなの数がちょっと増えただけだ!!」
実際はちょっとどころで無いのだが、二人の緊張を解くために虚勢を貼って2人にハッパを利かせるタートルズ。彼に呼応するようにギリギリスとブートンはやる気を取り戻した。
「ややややってやる!」
「そうだブヒ!」
「よーし、その意気だ! 」
タートルズたち三人は1Waveの時以上に奮闘した。
「数が多いなぁ、こんちくしょ~! こいつめ! こいつめ! こいつめ!!」
「くくくく来るな! だだだだだダメだっての! くくくくくく来るなぁっ!!」
「ブヒ! ブヒ!! あーもう鬱陶しいブヒー!!」
だが明らかに状況は悪い。サロンのモニターで観戦していたツムリもこの異常事態に気付き、別室に居たゲームマスターに連絡をした。
「ゲームマスター? ご覧になっていますか? タートルズたちのチームに予定には無い大量のジャマトが……」
「ああ、こちらでも把握した。あのチームには特別に追加でミッションボックスを送る事にする。急ぎ連絡したまえ」
「畏まりました」
ツムリとの通話を終えたギロリは低く静かに呟いた。
「さぁ両津勘吉……仮面ライダータートルズ。このピンチ、切り抜けられるかな?」
連絡用のスパイダーフォンを操作し、ツムリはタートルズチームだけに音声が聞こえるグループ通話を開始した。
『タートルズ・ギリギリス・ブートンチームは見事ジャマトを100体倒しましたので、ゲームマスターから追加ボーナスが与えられます』
「追加ボーナスだぁ?」
「ああああああああれは?!」
「金色のボックスだブヒ!」
ブートンの足元に金色のボックスが現れる。だがそこへジャマトたちが妨害にやってきた。
「マズい! あいつらあのボックスを狙っている!!」
「ささささささせるかぁ!!」
ウォーターガンの乱射でジャマトたちを蹴散らすギリギリス。ブートンの周りに居たジャマトが一掃される。ボックスを開けたギリギリスはその金色に輝くバックルを手に取った。だが、
「危ねぇ! 後ろだぁ!!」
「え?」
タートルズの声に気付き後ろを振り返るギリギリス。だが遅かった。サーベルを構えたジャマトは無慈悲にもギリギリスの背中を斬りつける。
「ジャジャジャマジャマジャジャ!」
「ぎゃあああああああああ!!」
「ギリギリスーーーーー!!」
致命傷になった。悶え苦しむギリギリス。その間にも他のジャマトが旗を取りに来るためブートンは動くことが出来ない。
急ぎ戻るタートルズだが、無数のジャマトがギリギリスに襲い掛かっていた。
「間に合え! 間に合え! 間に合えーー!!」
ギリギリスを襲っていたジャマトたちを蹴散らす事は出来た。だが集中攻撃を受けていたギリギリスはすっかりボロボロだ。
「大丈夫か?!」
「ももももももうダメです……」
「そんな事言うなよ! 推しと幸せになりたいんだろ?!」
「そそそそそうですね。だだだだから俺の代わりにコイツを使ってください……頼みます」
『 SET FEVER!』
そう言うとギリギリスは身体を丸めて守っていた金色のバックルをタートルズに手渡した。受け取ったタートルズはそれを左側のスロットにセットした。バックルから軽快な音声が鳴り、空間投影されたスロットがけたたましく回り始めた。コインのようなものが大量に溢れドライバーから、
『 FEVER BIG WIND FAN 』
と聞こえてきた。ドライバーを回転させるとタートルズの身体が少しだけ宙に浮き上下が反転していく。上半身だけじゃなく下半身にも緑色の厚いプロテクターが施され、首のマントは金色に輝いている。
「はははは! まさかのスロットかよ! さーてワシの運とお前らの運……どっちが強いか、勝負だぁあああああああ!!」
タートルズの指がバックルのスイッチをガチっと力強く押す。
『 GOLDEN! FEVER! VICTORY!』
ドライバーから軽快な音声が鳴る。
「うぉりゃああああああ!!」
「「「ジャジャジャジャジャージャ?!」」」
フィーバーフォームとなったタートルズは手に持ったハリセンをブォンと振るう。その振るった事で生まれる衝撃波はソニックブームとなってっ目前のジャマトの群れを薙ぎ払う。
「こっちもだぁ! うぉおおおおおおおおおお!!」
「「「「「ジャマジャマジャマジャジャジャ?!!」」」」」
タートルズがハリセンを振るう度にその直線状に居たジャマトたちがチリになっていく。あれだけ大量に居たジャマトもほとんど消えていった。その凄まじい力を見ていたキリヤとブートンは唖然としていた。
「すすすす……凄い」
「凄すぎるブヒ……」
とうとう視界には一体のジャマトも居なくなった。勝ちは確定しただろう。霧散したジャマトたちの粉塵が舞う中、タートルズがフラフラになって二人の所に戻ってきた。
「いやすげぇな、このバックル……頭の中までスロットでかき回されている気分だったぜ」
「りりりりり両津さん!!」
「凄いブヒ! 凄すぎるブヒ!!」
「よせよー! まだまだ1回戦だぜ……とは言えこれでクリアだな。いよっしゃ! 勝ったぞ――――!!」
両津は天に向かってハリセンを突き上げ勝利の雄叫びを上げた。
だがその直後ギリギリスとブートンの変身が強制解除され、キリヤとムトウの姿に戻っていた。二人の身体にノイズみたいなものが出始める。
「やややややっぱりこのダメージじゃダメなのかな?」
「俺もガードしていたとは言え、ジャマトからフルボッコだったからブヒ…?」
「何でだよ? お前ら頑張って戦っていたじゃねぇか?!」
デザグラの審査は運営側によって厳しく行われている。例えルール上問題無くても運営が失格と判断すれば強制退場させられる。
「だだだだ大丈夫ですよ。なななななんか俺、ずずずずずいぶんスッキリしました」
「俺もだブヒ。両津さんの戦っている姿を見て腹の減りなんて忘れていったブヒ……」
「おまえら……」
爽やかな笑顔で応える二人にかける言葉が見つからない両津。少しの間だけのチームメイトではあったが、彼ら二人は両津の戦う姿に惚れこみ一瞬の間だけ自分の夢を忘れることが出来た。
「だだだだから俺たちの分も頑張ってくださいね」
「負けたら承知しないブヒ!」
「おう! お前たちの分も頑張るぜ!」
両津が応えた直後にキリヤとムトウの二人は消えた。後にはそれぞれのデザイアドライバーが残っていたが、その中央にはめ込まれていたIDコアも直ぐ消えてしまった。それと同時に音声が2つ鳴り響く。
『 RETIRED 』
『 RETIRED 』
デザイアグランプリの敗北は「退場」と「脱落」の2種類があり、ゲーム中にジャマトの攻撃などによってIDコアが破損すると参加者が赤いノイズに包まれてレイズバックル以外が消滅し、「MISSION FAILED」の音声とともにデザイアグランプリから退場してしまい現実世界でも失踪扱いとなる。またルール上、ゲームの進行状況や結果、病や負傷などの緊急の理由によって参戦不可能となってゲームから脱落すると「仮面ライダー失格」となり「RETIRED」の音声とともにIDコアが消滅し、出場者自身も青い光に包まれて消滅するが退場者とは異なり、デザイアドライバーは残される。脱落となった出場者は、デザイアグランプリに関する記憶を消されて元の生活に戻されるが、デザイアカードに記載した理想を願う心を失う。
両津が以前デザグラに参加した時は運営のアルバイトスタッフだったためにデザイアカードへ願いを書く権利を与えられなかった。それ故に記憶だけ失っていたが、今回は本格参戦だ。脱落したら存在抹消か理想を失うか。かなりリスクの高いイベントである。
「これが運営のやり方か……ワシも油断したらこうなるってのか。何度見ても良いもんじゃねぇな」
両津はパンクジャックとして参加した時にパートナーだった小金屋 森魚(こがねや もりお)こと、仮面ライダーメリーを思い出した。前回のデザグラで失格となり退場する所を直ぐ傍で見ていたのである。
「だがワシの夢は例え運営でも邪魔はさせんぞ!」
一際険しい顔をして闘志を燃やす両津であった。
どうも筆者です。昨日の続きで珍戦IIIをアップしました。
では今日も小ネタの解説です。よろしくお願いします。
・タートルズの由来:米国出の某亀ヒーローまんまなネーミングもありますが、実際は先のぽん酢さんのイラストツイートのリプライの言葉ですね。亀有のお巡りさんですし。
・キリヤとムトウの口癖:マンガとかで良くある手法ですが見た目や口癖を設定しておくとそいつが誰かわかるっていうやつですね。
・仮面ライダーギリギリス:キリヤの外見が痩身で吃音……まぁドモりですね。常にギリギリ感が強そうな青年なので連想しました。
・仮面ライダーブートン:単に豚からの連想です。わっかりやすい!
・タートルズフィーバーフォーム:ギーツが実際に変身するのは本編11話からですが、拙作では先に両さんに使わせました。ギャンブル好きの両さんにはピッタリのバックルですねぇ。
では明日で「珍戦」も最後。夕方17:30にアップされる続きをお楽しみに。
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