仮面ライダーギーツvsこちら葛飾区亀有公園前派出所~両さん、デザグラに出るってよ~ 作:唐 十三郎
「あんの野郎! すっかり手の平返しやがってぇ!!」
わなわなと怒りの拳を握るウィン。
「それもこれも! 盗撮していた両さんのせいじゃねぇか!」
「いや、日ごろの軽口を反省しろよ、若人よ」
呆れ顔になっている両津。だがそんな言葉も聞かずウィンは報復を考える。
「ツムちゃーん、何か両さんの弱点って無いのー?」
「それがウィン様に耳寄りな情報が……」
「お、いいね~。どんなの?」
「な、何だ? ワシの弱点だと?」
ツムリが見せたタブレットの情報を見て露骨に邪悪な笑みをするウィン。
「両さーん! 天空の城ラピュタでロボットがゴリアテの砲弾で倒れるシーン!」
「ぐは! お前、それはワシの心に刺さった名シーンじゃねぇか……」
「本当だ……マジで効いてる」
タブレットにあった情報とは「両津勘吉はメカが破壊されたり非業の最後を迎えるシーンに弱い」と言うものだ。
「ほほう。それは聞き捨てならないな」
「え? 何々? 両さんメカフェチの極み?」
「すご……ここまで行くと神だわ」
「ほ~う……まさかのタートルズがねぇ」
ニヤニヤと笑って英寿たちも集ってきた。
「じゃあ俺から行くね! 両さん、クレヨンしんちゃん映画のロボとーちゃんの最後!!」
「あう! 藤原啓治さんの演技が最高だった……」
「じゃあアタシも!! えーとね、ゲーム・クロノトリガーのロボと400年離れる別れと再会。後は仲間のロボたちに滅多打ちに合うシーンもかな」
「ぐっ! あんなシナリオ辛すぎるだろ……書いたクリエイター、マジで神だ!」
大粒の涙を零す両津。ライダーたちの精神攻撃はまだ続く。
「じゃあ俺はアレだな。仮面ライダーBLACKのバトルホッパーとの別れ」
「あああああ!! あ、ありが……とう。ライダー……ちきしょう……サタンサーベルで貫かれても健気に闘うなんて漢だぜ!!」
「へーん! 俺ももう一回だ! 水星の魔女のガンダムたちが集って攻撃を防ぐけど、結果として全てのガンダムが消滅するんだよなー」
「ひぐぅううう!! なんでガンダムたちが犠牲にならなきゃならねぇんだよぉ!!」
「フ……甘いな、お前ら。これがハイライトだ! 1977年に宇宙に向けて送られた無人宇宙船ボイジャー号計画。しかも1号。既に太陽系を離れて今なおこの宇宙の先に向けて飛び続けている……」
「ふ、ふええええええええええええん!! この地球の現状を伝える大事な使命だからってなんで1機だけ先に進んでいってしまうんだぁああああ!!」
ここまで聞いていたツムリが最後に小声で囁きトドメを刺しに来た。
「両津様……機動戦士ガンダムの最終話。”ラストシューティング”」
「だあああああああああああああああああああああああああああ!! ガンダムの、ガンダムの腕が……頭が!! トミノ――――――――――――――――!!」
この世界に両津勘吉の弱点は結構ある。
かなり走った3人。恐らくジャマトライダーも追ってはこれない。周りの様子を伺っていた英寿がようやく喋り出した。
「ツムリから事情は聞いた。”運営を敵に回したら生き残れない” お前に言われた言葉をそっくりそのままお返しするよ」
「! ……何で助けた。お前も、両さんも」
そのウィンの問いかけに英寿と両津はそれぞれ答えた。
「俺の知りたい事をお前は知っている。だから脱落して記憶を消されちゃ困る」
「まぁワシは単なるお節介だ。ワシがゲームマスターに連絡してお前の立場もいよいよ危うくなったみてぇだしな」
英寿は清ました態度で、両津はカラカラと笑っている。対するウィンはグッタリだ。そのまま英寿は続けた。
「以前、デザイアカードに”母に会いたい”と書いたら却下された」
「英寿……それって」
その言葉は少し前に亀有公園で両津が聞いた内容だった。
――母に会いたい――
これが浮世英寿の真なる願い。だが不思議な事に運営はこれを認めない。
「なぜ母さんに会わせてもらえない? 運営は何を隠している」
「母さん……? 名前は?」
ウィンが訊ねた。英寿はゆっくりとその名を呼んだ。
「……ミツメ。それ以外の事はわからない」
それは遠い昔の記憶。白い服を来た母と別れた時の。別れ際、二人を憐れむ様に荘厳な鐘の音が鳴り響いていた。
「どうしても母さんに会いたくて、気付いてもらえるように俺がスター・オブ・ザ・スターズ・オブ・ザ・スターズにしたが……何の音沙汰も無い」
ウィンも両津もこのフレーズを聞く度に「なっが!」と思っているが今は黙っていた。
「だから運営側に近づいて探っていたのか」
「ああ」
「お前も運営に翻弄された1人だったんだな」
サロンの祢音と景和。祢音は休息を取りながらもベンとジョンからの連絡を待っていた。景和が訊ねる。
「鞍馬財閥がデザグラと繋がっているってこと?」
「英寿がそんなようなことを……」
「! じゃあ祢音ちゃんはコネでエントリーしたって事?」
「知りたいのはこっちだよ~……」
その時手元のスマホから着信音が聞こえた。
「もしもしジョン! 何かわかった?」
通話先のジョンは辛酸を舐めた様な顔をしている。
「それが……お父様の部屋を調べたら、意外な物が」
「何?!」
「IDコアです……」
ジョンは白いコアを、ベンは黒いコアを握っていた。
「どうしてジョンがそれを知っているの?」
「……これに触れた途端、全て思い出したのです。……嘗て、私とベンが仮面ライダーに変身していたのを」
ジョンもベンも、かつてデザグラでライダーとしてジャマトたちと戦っていた事を思い出した。
「……ベンとジョンが」
その通話に、ジョンの傍らにいたベンが割り込む。
「鞍馬財閥は、デザイアグランプリのスポンサーだったんです……」
「スポンサー?!」
「スポンサー?」
「スポンサー、ねぇ……」
「ああ、スポンサーだ」
丁度その頃、英寿たちも同じ言葉を口にしていた。ウィンが続ける。
「実は俺の爺ちゃん、大手商社の会長でな。デザイアグランプリに出資していたんだ」
☆
初めてウィンがデザイアグランプリの存在を知った時の事を思い出す。祖父が急に呼び出し、会長室でデザイアグランプリスタッフのユニフォームを手渡しされた事を。
「もう遊びは終わりだ! ……しっかり働け」
「ありがとう……ございます」
☆
「音楽で食っていけなくて、借金抱えていた俺に仕事を斡旋してくれてな」
「それで運営のスタッフに?」
立ち上がり言葉を続けるウィン。
「つまり俺はバイトで、お前の母さんの事までは知らない。ただ、ミツメって名前は聞いた事がある」
「本当か?」
「デザイアグランプリのナビゲーター。どれぐらい前だったかわかんねぇけど、ツムリの前任者だ」
「ありがとう」
「ま、詳しい事はゲームマスターにでも聞けよ」
「で、誰なんだ? ゲームマスターの正体は?」
「! しらばっくれんなよ」
思わず苦笑して英寿に向き直るウィン。
「気付いていたから家族になって近付いていたんだろ?」
「それな。ワシもそう思ってた」
「! なんで両さんがそれ知っているんだよ?」
「だってあからさまに怪しいだろ、アイツ」
「いやだって……アンタそんなに接点ねえだろ?」
ウィンはかなり動揺した。家族として過ごしていた英寿ならともかく、両津はさほど当人との繋がりは無い。そう思い込んでいた。
「あのなぁ。ワシはお前の穴を埋める為に臨時で呼ばれたの。それは知っているよな?」
「はい。その節はお世話になりました。非常に……助かりました」
私用でどうしてもデザグラ勤務が叶わなくなったウィン。私用と言ってもかつての音楽仲間の一人が妻帯者で、出産に立ち会えないので代わりに時間を取ったのだが。とは言えバイトと言いつつもゲームマスターから信用されているポストだ。急な穴を埋める要員も慎重に選ぶ必要があった。
「で、ゲームマスターにはその時とこの間会った。この間はお前も居たから知ってるよな?」
「ああ。急に現れたからあの時は驚いたぜ」
「そしてお前がその当人と日頃サロンで会っている時の態度だ。アイツの態度は明らかに他のライダーと接し方が違う」
「! 気付いていたのか?」
「厳しめに言うならあれで気付かないなら警察はやれん」
両津は日頃の態度こそ不真面目のように見られるが、新葛飾署での犯人検挙率は一番だ。だからどれだけ暴挙を行っても警察官として懲戒免職は喰らわないでいた。
「だいたいだな……体型から所作、体幹。全部一致だ。ワシの眼は誤魔化せんぞ!」
「恐れ……入りました」
思わず五体投地するウィン。両津はだいたいの変装を見破る名人でもある。例外は過去に3回。初めてマリアに会った頃と、舞台の特殊メイクをして全くの別人の姿で現れた秋本麗子。そして舞子さん姿になった纏だ。マリアは完璧なプロポーションと日本舞踊の名人でもあるから女性の姿を完全に模していたし、麗子も日頃のトレーニングのお陰で特殊メイクで作られた巨漢の身体をすっかり馴染ませていた。纏は元々母親が日本舞踊の講師をしていて幼少から嗜んでいたが学生の頃に兄の影響で様々なスポーツをする様になってから日頃の態度になっている。とは言えやはり基礎を覚えたものはそうそう薄れる事は無い。それくらい訓練されている人間でないと両津の眼は欺けない。もっと言うなら、気を許していない相手にはとことん厳しく、気を許している相手には極めて甘い。
「ぷっ……はははははは!! やっぱりアンタは面白いな、タートルズ!」
英寿が珍しく大口を開けて笑い出した。あまりにおかしいのか腹まで押さえている。
「やっぱり、アイツの孫だな……」
「あ、なんか言ったか?」
「いや、何でもない」
小声で呟いたのは両津の耳に届かなかったらしい。英寿は思い出す。かつてライバルであるにも関わらず自身の事を友として慕ってくれていた男の事を。何度騙してもあっけらかんと笑って、それこそ自身の窮地すら一緒に戦って救ってくれた男の事を。
「まぁ、これでわざとドライバーを取らせた甲斐があったってもんだ」
「あ? ……わざと?! お前、あれも全部計算だったって事か?」
ウィンが英寿の顔を見て大口を開けて呆れていた。ドライバーを道長に取らせたのは英寿の計算による行動だったようだ。
「負けたフリでもしなきゃ、運営を探れないからな」
「結局……狐に化かされちまったか。ゲームマスターにも騙されて、更に亀にまで笑われてるし……とんだザマだな」
しゃがみ込み手を額に当てて苦笑するウィン。
「だったら見返してやればいいだろ」
「諦めない限りチャンスはあるってな!」
「おい、それ俺のセリフなんだけど」
「いいじゃねぇかワシが言っても。ワシの自論でもあるからな!」
「フ……そうだっだな。パンクジャック、お前にだって叶えたい理想の世界が無いわけじゃ無いだろ?」
その言葉に、かつて自身の音楽を奏でてステージに立っていた頃の自分を思い出す。晴家ウィンは長年パンクバンドを組んでいて界隈でもかなり知られている存在だった。単なるパンクに留まらず、その音楽性は多彩。彼自身が努力家で、空いた時間はフィジカルトレーニングと音楽研究に勤しんでいた賜物である。彼自身が何故音楽で食べて行けなかったかと言うと「運が無かった」これに尽きるだろう。この世には「運も実力のうち」という非常に最悪な言葉がある。だがこれは真実でもある。どれだけ時間を費やして才能を高めても、運が巡ってこないと認められないのだ。だから人は何度も挫折し、且つ周りも当人を追い込んでいく。なんと無慈悲な世界で生きるものだろう。だが両津の、そして英寿の言葉で憑き物が落ちたような爽やかな顔になった彼はその名に恥じぬくらいの態度で言葉を返した。
「言ってくれるじゃねぇか」
不敵な笑みを浮かべたウィン。もうそこに運営の言いなりになってくすぶっていた態度は陰りも見せない。
筆者です。「罰散VII」をお送りしました。
先ずは前書きで遊ばせて頂きました。最近こち亀185巻「中川の意外な弱点の巻」を読んで思いついた話です。この話で中川の弱点が子犬であること、そして両さんの弱点が記述した「メカが破壊されたり非業の最後を迎える」ことに弱いと言う事が明らかになります。最後はオチとして前時代の遺物「アイボ」を見る事で二人とも泣き出すんですけどねw
さて、晴家ウィンが何故運営の手先になったかを記述しましたが、これは筆者自身もかつてバンドで身を立てようとして思いっきり失敗こいたので他人には思えませんでした。最近はボカロP、そして様々な形態の音楽をDAWで展開するのが主流かな? どの道音楽で一攫千金なんてなかなか狙えません。これに共感した視聴者さんも多いと思います。子供には絶対わからんと思いますがw
とりま両さんの眼力が尋常じゃないと言う事を強調するために過去に両さんが見抜けなかった例を3つ上げましたが、実際は3つどころじゃ無さそうですけどねw しかも上げた3つ全てこち亀ヒロインズだし。
いつもお読み頂きありがとうございます。お陰で少しずつですが書き溜めも行えて来ています。また体調を崩さないように気を付ける次第です。
またこれが更新された前日の8/19にていよいよこの作品のUAも15000件を超えました。重ねいつもご覧になって頂きありがとうございます。毎日更新の強みですが、日に500件程度のUAを頂けるのは本当にありがたいものです。ご感想・ご意見どんどんお待ちしております。励みになりますので(正直者)
明日も無事に書ききれたら17:30更新ですのでよろしくお願いします。
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