仮面ライダーギーツvsこちら葛飾区亀有公園前派出所~両さん、デザグラに出るってよ~   作:唐 十三郎

5 / 161
「波乱の幕開けで始まった今回のデザイアグランプリ。参加した両津勘吉様は無事に1回戦を勝ち抜きました。さて、2回戦はどうなるのでしょうか?」
「いや、俺も参加してるんだから紹介してよ、ツムちゃーん!」
 
 晴家ウィンの声が空しく響く。


変攻編
変攻M~I:愛僧渦巻く迷宮の脱出ゲーム


 翌日の朝。

 御馴染み、葛飾区亀有公園前派出所の朝礼。

 この日は役職として一番上の大原部長が点呼と朝礼係を務めていた。

 

「両津! おい両津!」

「……勘吉、呼ばれているぞ!」

 

 又従妹で同僚、そして今は両津が住み込みをしている超神田寿司の長女”擬宝珠 纏”(ぎぼし まとい)が両津の右わき腹を左肘で小突く。だが両津の反応は無い。どうやら立ったまま眠っているようだ。そんな彼の目前に大原部長の顔がずいっと近づいた。

 

「バッカモーン!!」

「ぶぶぶぶ部長?! あ、そうか……ワシ、派出所に居たのか」

 

 大原部長の怒鳴り声が響いてようやく我に返る両津。横に居た纏は額に手を当てて苦い顔をしている。

 

「あーあ……だから言ったのに」

「全く貴様は! 警察官としての使命もロクに全うせず寿司屋との二足のワラジまで履きおって!! 貴様に住みつかれた擬宝珠くんの苦労も少しは考えたらどうだ?!」

「あ、いや……アタシは別に」

 

 少し顔を赤らめた纏。内心で纏は両津が自分の家に住むようになった事を嬉しく思っている。両津のお陰で超神田寿司のIT化も発展したし、そのお陰で集客拡大も出来た。祖母の夏春都(げぱると)も以前より益々元気だ。妹の檸檬(れもん)もすっかり懐いているし、家族が増えたと一家や従業員はいつも喜んでいる。まぁ……問題児ではあるが。

 

「だから今朝だって朝の仕込みを手伝ってきましたよー。超神田寿司って買い出しも含めて午前組は朝の4時半起きなんですよー。眠いったらありゃしない」

「思いっきり朝帰りで遅刻したヤツが言うな!」

 

 両津のグチにツッコミを入れる纏。両津が昨晩サロンを出た頃終電は既に無く、タクシー代をケチって派出所に泊まって過ごした。何とか始発には乗れたものの午前組の仕込み開始の時間には間に合わず、夏春都から雷が落ちたのである。

 

「はぁ……もういい。あまり擬宝珠くんたちに迷惑をかけるなよ。せっかく増えた家族なんだから。麗子くん、水をくれないか? 怒鳴り過ぎてまた胃が痛くなってきた」

「はいはい。もう用意してますよ。いつもながらその元気に感心しちゃうわ。お薬飲んだら少し奥で休んでてくださいね」

 

 金髪で長身のスタイル抜群な美人警官、秋本麗子が皮肉を混ぜながらも気遣う。口がたまに悪い時もあるが常に皆の気を配る葛飾署の人気者だ。金髪なのは染めている訳じゃなく、彼女がフランス人とのハーフだからだ。最初は両津並に破天荒な言動が目立つ彼女だった。だが語学に優れている為、観光で訪日した外国人や在日外国人への案内を彼らの母国語でできることや、老人や子供に優しく接する事などで葛飾署だけでなく近隣署の婦人警官からの信頼も厚い。

 

「いつもすまんね……とにかく両津! 署の周知には目を通しとけよ!! 最近物騒な事件も増えてきた。お前もフラフラしてないで区民の皆の安全を守るよう少しは努力しろ!!」

「へーへー。わかりましたよー。またそーやって怒鳴っていると胃がもっと痛くなりますよーだ」

「貴様! ……アタタタ。こりゃたまらん」

 

 そう言って胃の辺りを押さえて派出所の奥にある休憩所へ行く大原部長。ちなみに両津も昨晩はそこで休んだ。

 

「さてとー、じゃあ大人しく周知でも見ますかね。おーい中川、タブレット貸してくれ」

「中川さんなら今日は休みだよ」

「? マジか。珍しいな」

「昨日急に欠勤の申請があったみたいだよ。まぁタマには休みたいんじゃない? あの人も忙しいし」

「まぁ中川コンツェルンの代表との掛け持ちだからなぁ」

 

 中川とは両津の後輩警官、中川圭一の事だ。世界有数の財閥「中川コンツェルン(財閥)」の御曹司。16歳まで住んでいたニューヨークでシティポリスに憧れを抱く。これが警察官になる動機である。自分のワガママを貫く為に財閥の御曹司としての責務も果たす。故に同世代の若者と比べプライベートの時間はだいぶ少ない。そのため日々一番会う警察官としての同僚で先輩である両津とは似た趣味を持つ者として、かつ気心が知れた間柄として気が置けない仲である。その彼が両津に連絡も無しに急に休みを取るのは珍しいことであった。ちなみに両津と全く違うのは経済力だけでなく、ルックスや学歴もである。体力面でもかなりの成績を出しているので非の打ちどころが殆ど無い。強いて言うなら「安酒に弱い」。そして「我を失うと拳銃をぶっ放す」。ある意味、両津以上の狂人かもしれない……。

 

「まぁいいか。あれ? マリアも居ないのか」

「そ! だからこうしてアタシが応援要因。しかし中川さんも居ないなら勘吉のお守りはアタシと麗子さんかぁ」

「うるせぇ。勝手に子守りになるんじゃねぇ」

「しょっちゅう寝坊しているアンタに言われたくない!!」

 

 マリアとは葛飾署の美人警察官、麻里 愛(あさと あい)のニックネームだ。本名の読み方を変えてマリア。そのニックネームをつけたのは他ならない両津である。美しく長い黒髪をしていて、前髪は眉毛近くで真横に切りそろえた所謂姫カット。遅刻しそうになっていた両津と街でぶつかり、彼に一目ぼれしたマリアは勢いで警察官になり派出所勤務となる。その一途な乙女心は誰もが感心するが大きな問題があった。それについてはまた後程。

 

「仕方ない、自分のスマホで見るか。葛飾署の署員用HPってスマホじゃ見辛いんだよなー」

「だったらホレ、アタシのタブ貸すからさっさと見とけ」

「おう、サンキュ! わりぃな、家でもこっちでも」

「そう思うなら朝帰りとかするな!」

 

 用意したタブレットで両津の頭を軽く小突く。赴任した時は両津の存在が気に入らないと一触即発であった纏であったが今やすっかり打ち解けている。

 擬宝珠纏。葛飾署の交通課で勤務する名物婦人警官。神田育ちの下町っ子で、そのキップの良さと愛嬌でこれまた葛飾署だけではなく近隣署でも有名だ。ただ美人というだけではなく、あの両津勘吉が唯一頭の上がらないという点が一番大きいのだが。身長は170センチ程度と160センチ台の両津にいつも上から目線だ。ちなみに彼女もよく腕まくりをしていて同僚たちから両津共々似た者夫婦とからかわれる。実際二人は結婚手前まで進んだ事があるが、両津のだらしなさが原因でご破談となった。二人してその話になると顔を真っ赤にして頭を抱えてしまうのであまり言わない方が優しさだろう。

 交通課の彼女だが派出所の人員が足りない時は今日みたいに応援補充で来ることがある。その都度、同じく交通課の同僚警官の磯鷲 早矢(いそわし はや)からは是非交代してくれと真剣に頼まれる。だがどれだけ頼まれても纏はノラリクラリと適当にあしらっている。なんだかんだ言って纏も両津の傍が気に入っているのである。

 頭を小突かれブツクサ言っていた両津は纏のタブレットで署員用HPを適当に見ていた。だがある項目に目が留まり、じっくりと読んでいく。

 

「所轄内での失踪事件と変死事件増加。パトロールの強化を実施するよう各交番で調整するように……か」

「ん? あーそれね。ウチでも課長が言っていたよ」

「交通課で?」

「そ。こっちも読んでみ」

 

 いつの間にか両津の真横に居た纏が手を伸ばして画面をスワイプさせた。二人で1つのタブレットを見るため顔が自然と密着する。

 

「ふむふむ……路上で謎の横転している車両を多数発見。車両にあまり大きな破損は見られないのに中の運転手は強い衝撃を受けたかのような状態で死亡している事が多い。原因調査に辺り刑事課と交通課で連携体制強化……」

「ね? なんか妙だろ」

「さぁなぁ。今の日本、そこいらで物騒が増えているんだ。こんな事もあるんじゃねぇのか?」

「まーたアンタは呑気な事言って……」

「へん! まぁ路上出る時は気を付けろよ。あんまり無理はすんな」

 

 両津なりの纏への最大級の気遣いだった。

 

「アンタに言われたくは無いね。また変な事に首突っ込んでケガするんじゃないよ。アンタが生傷作るとバァちゃんや檸檬が悲しむんだから」

「わーってるよーっと」

 

 一番心配しているのは他でもない纏自身なのだが照れ臭くて言えない。そんな彼女の気持ちを知ってか知らずか、両津は座っていた椅子から立ち上がり、派出所の外で大きくノビをする。軽く深呼吸したが先ほど見た周知が頭から消えずに居た。

 

「まさかデザグラやジャマトの件と関係してるんじゃないだろな?」

 

 ボンヤリと小声で呟いたが、その言葉は纏の耳に断片的に聞こえていた。

 

「……? デザグラ? ジャマト? アイツ、何言ってるんだろ?」

 

  ☆

 

「はぁ! はぁ! はぁ! ……あー、間に合ったぁ!!」

 

 前回のデザグラに参加した仮面ライダータイクーンこと桜井景和。敗退した代償としてライダーの記憶を失った彼は今、目下就職活動中。面接先の企業へ向かうためのバスが発車しそうとなり、大慌てでダッシュして飛び乗る。

 バス内では中学生くらいの女の子と小学生くらいの男の子の二人組が仲睦まじくしている。どうやら姉弟らしい。会話のやり取りから、弟がアプリゲームでガチャを回すも良いキャラが引けなかったらしい。

 

「またガチャ外れたー……ツイてないなぁ……」

「元気出しなー。きっとそのうち良い事あるって」

「えー? 本当~?」

「うん!」

 

 凹んでいる弟に姉は優しく微笑んで元気づけている。

 

「……君もか」

 

 嘆いている弟を見て自身と重ねた景和。自分の姉からも不甲斐ない今の状況を優しく慰められた事を思い出す。いつまでも姉に迷惑をかけたくは無かったが、この不景気ではなかなか良い勤め先が見つからない。せめて少しでも姉の負担を減らせるくらいの稼ぎが出せる企業へと数多く尋ねるも、どれも空振り続きだった。そして何故か今はあまりやる気が起きない。これまでの自分と今の自分に違和感を感じるが、それがどうしてだか全くわからない事に苛立ちも起きた。

 ふと視線をずらすと手前の座席には綺麗な黒髪の女性が居た。保護ミラーが施されたスマホ越しに見たその女性は今まで出会った女性たちの中で一番と思えるくらいの美人だった。

 

「うん! 良い事ってあるかもしれないね!!」

 

 こっそりとガッツポーズを取る景和。やはり彼も男の子。その辺は非常にシンプルである。

 

「♪~。……様へのお土産、何にしようかしら?」

 

 想い人へ渡すお土産の事を考えているその独り言が聞こえてしまい、一気に落胆する景和。

 

「いや、そーだよねー。あんな美人だもの、彼氏さんくらい居るよねー……」

 

 ため息を漏らしたその時、異変が起きた。目前の道路が突然陥没したのである。

 運転手は回避しようと急ブレーキをかけた。

 

「?! ぐぁっ!!」

「!! うわぁ!」

「?! きゃぁあああ!」

「! 何ですの?!」

 

 最後にバスの運転手が叫んだ。

 

「う……うわぁああああああああ!!」

 

 バスは陥没に巻き込まれ乗っていた皆の悲鳴ごとそのまま奈落へと落ちた。




 どうも筆者です。1日空けになりましたが無事に更新できる運びとなりました。前回までの「珍戦」4日連続更新で、思っていたより反響があり皆さんから感想やご指摘を頂きまして有難い限りです。この場を借りてお礼を申し上げます。これもギーツ・こち亀の2大コンテンツのお陰ですね。オリジナルだととてもここまでは……。まぁ今時分もっとHotなコンテンツがありまして、そちらの作品のUAに比べたら全くなのですが、そっちはそっちで盛り上がって頂ければ良いかなと。何分、筆者の中で今一番書きたくなったのがこれなのでw
 ちなみに前回の後書きで言ってたガンダムキャリバーンのプラモ組み立ては、こちらの執筆のために中断しました。せっかく楽しんで頂けている皆さまがいらっしゃったのでお待たせするのも申し訳無いなぁという事と、何より筆者自身が一番早く続きを読みたかったので。

今回から本編11話「謀略II」~を土台にして作成しています。但し、両さんを活躍させる都合上、どうしても本編から削らなければならないシーンやカット、表現演出がありますので、それは割愛して頂くようお願い致します。申し訳ありませんが、それが気に入らないなら他所でお求めになるかご自身の作品で書いてください(つっぱね)。

では今回の小ネタを。

派出所の皆さま・・・5話目にしてようやく書く事ができましたね。この作品が現時点、両さんがギーツの世界にお邪魔する形になっているのであまり出せないのが辛い所ですがこれからも隙あらば登場させたい次第です。ご感想に特殊刑事課の面々を出して欲しいとご希望が多数来てますが、彼らはもう存在が最終兵器なので……

擬宝珠纏・・・現時点筆者の最推しヒロインです。と言うか秋本先生ももしかしたらそうだったのかも知れませんが、野放図の両さんに帰りを待つ家族が欲しかったので、舞台装置として超神田寿司が必要でした。けど原作読み返したら改めて彼女の魅力に気付いて出番を増やした次第です。この辺色々ご意見はあると思いますがどうかご容赦を。

桜井景和・・・この作品の執筆時(2023/07/20)絶賛闇落ち中の景和くんですが、ようやく登場させる事が出来ました。さて、彼がバスで見かけた美女は誰でしょうねw


では明日も夕方17:30に更新です。お楽しみに。

この作品をお読みになっている貴方は

  • 男性
  • 女性
  • どちらとも言えない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。