仮面ライダーギーツvsこちら葛飾区亀有公園前派出所~両さん、デザグラに出るってよ~   作:唐 十三郎

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「デザイアグランプリ敗者復活戦! ですが英寿様と両津様は逃亡中。2人は無事に戦えるのでしょうか?」
「ハンターから逃げきると賞金が出るとか」
「出ません」
「妻殺しの罪を着せられた医師として、警察に追われながらも真犯人を見つけ出すとか」
「しません」
「なんでワシよか英寿のネタの方が古いんだよ?」
「フ……経験の差かな?」

 ちなみに両津が言っているのは2004年から放映されている”run for money 逃走中”と言うバラエティ番組、英寿が言っているのは1963年に放映された”逃亡者”と言うドラマである。
 世代から考えたら逆の筈なのだが。

「つまり英寿はワシよりオッサン……」
「! 何か言ったかな?!」
「変身無しでマグナム握って銃口を向けてるんじゃねぇ!!」

 浮世英寿におじさん発言は禁句らしい。



思縁III:だからこそ彼が居る

「おーい、入るぞー!」

「ちったぁ返事くらい待ちな! 全くせっかちだねぇ」

「よう両さん。調子はどうだい?」

 

 手当を受けた英寿も至る所絆創膏や包帯塗れだが、いつもの落ち着きを取り戻していた。

 

 

「今のお前よか全然大丈夫だがな」

「言ってくれる。後で吠え面かくなよ?」

「全く……二人とも心配ばかりさせて何を言ってるんだかね」

 

 数時間前の夏春都の部屋にて。

 急ぎ運ばれて衣服を脱がされ、全身を拭かれた後で手当てを受けたらしく、清潔な包帯や塗り薬の匂いがあちこちからしている。それが目を覚ました英寿の最初の印象だった。見慣れない天井。辺りを見渡すと夏春都の姿があった。ウトウトとしていたらしく、声をかけるのも躊躇した英寿はゆっくりと起き上がり部屋を出ようとした。だが……

 

「! こりゃ思っていたよかダメージが大きかったな……」

「何処へ行こうとしてるんですか?」

「……起こしちゃったか」

「全く……ウチのロクデナシだってもう少しマシですよ」

「両さんか……」

「あら? この間まで他人行儀だったのに随分距離を縮めてくれたんですね」

「色々あってね。やっぱりアイツは勘兵衛に似てるよ。ズケズケと人の心の扉を勝手に開いて、そのまま居座って。それであんまり不愉快にならないから不思議なもんだ。まぁ度が過ぎる時もあるけど」

「勘兵衛も勘吉もどちらもラテン系のチャランポランですからね。よいしょっと……」

 

 そう言って立ち上がる夏春都。

 

「お水持ってきますね。まだご飯は食べられないでしょうから」

「えー? 水だけー?」

「そんな身体で何か食べたら、それこそ吐き戻しちゃいますよ。我慢しなさい」

「わかったよ……」

 

 数分後、水差しとグラスのコップを持って戻ってきた夏春都。英寿は大人しく待っていたようだ。

 

「ぷはぁ! 沁みるなぁ……」

「そんなに一気に飲もうとするからですよ。……こうして貴方の手当てをするのは何十年ぶりですかねぇ」

「あったなぁ……そんな事も」

 

 ――夏春都! 救急箱だ! 俺ぁ今から近所のヤブ医者叩き起こして連れてくるからよ!!――

 

 遥か昔、まだ夏春都が勘兵衛と一緒に佃煮屋の支店を営んでいた頃。すっかり顔なじみになっていた英寿を引きずって夜中に帰ってきた勘兵衛。その時の英寿は今日と同じボロボロの姿であった。

 

 ――何でこんな姿に?!――

 ――……ちょっとドジやっちゃってね。ゴメン――

 

「あの時は今日と同じで心臓が跳ね上がりましたよ。貴方と来たら、いつもアタシの心配ばかりかけるんですもの」

「へへへ……毎度申し訳ありません。……これって旦那さんの?」

 

 英寿は自分が着ている寝巻に気付いた。古い男物の甚兵衛羽織を着込んでいる。

 

「ええ。随分前に亡くなりましたけどね。どうしても捨てられなくて。英寿さんだと丈が短いかもしれませんが我慢してくださいね」

「そうか……アレが旦那さん?」

 

 仏壇に飾ってある古い写真が目に入った。英寿とは少しタイプが違うが目つきが優しいキリっとした男前だ。

 

「ええ。夜婁紫喰が産まれて、育ててきた若い職人も実力を上げてきて、これからだって時にポックリと。どうしてアタシの周りの男たちは肝心な時に居なくなるんでしょうねぇ……」

「…………」

 

 その言葉に何も返せなくなる英寿。彼もまた、夏春都を置いていった1人だからだ。

 

「さぁ、それを飲み切ったらもう少し寝ていてください」

「仕方ない。朝まで大人しくするよ」

「せめて今夜くらいはその寝顔を見せてくださいね。数十年ぶりなんですから」

「やれやれ。あんまり寝顔は見られたくないんだけどなぁ……」

 

 そう言うと英寿は無言となった。どうやらまだ疲労が大きいらしい。

 

「ふふふ……本当に昔のまんまですね。ぜーんぜん変わってない……」

 

 今では身内にも滅多に見せない、少女の様な笑顔になる夏春都であった。

 

 翌朝。英寿も同じく洗濯されていたデザイアグランプリのジャケットに袖を通そうとした所で部屋の襖が開いた。両津がやってきたのである。

 

「さてと、そろそろ行くか」

「そうだな……このふざけたゲームを終わらせようぜ!」

「ちょっと2人ともそんな身体で!」

「そうじゃぞ! 英寿様もカンキチもボロボロなんじゃぞ!!」

「全く……この2人は何処までバカなんだろうね……」

 

 まだ怪我が治りきっていないのに出ていこうとする2人を心配する纏と檸檬。そして呆れる夏春都。そこへ板長の三吉がやってきた。

 

「大女将! お取込み中失礼します!!」

「どうしたんだい?」

「その……若いお嬢さんが店にやってきて。英寿様に会いたいと」

「なんだい? ミーハーなファンならお断りだよ。居ないって言っておきな」

「ええ。あっしもそう言ったんですが、”デザイアグランプリの関係者です”って言って聞かなくて」

「「!」」

 

 纏と檸檬はその言葉を聞いて青い顔となる。

 

「……デザイアグランプリ」

「デザイアグランプリ……」

 

 纏は大原部長から。檸檬は神田神社での顛末があった後、電極プラスから聞いた言葉だ。

 檸檬は道長が言っていた事、そしてプラスが言っていた”デザイアドライバー”。更に両津から聞いた”デザグラ”と言う言葉が気になって、プラスに訊ねていた。

 

 ――僕も父の書斎で見かけただけなのでまだ良くわかりませんが、あの装置を使って変身する仮面ライダーという者たちが”デザグラ……デザイアグランプリ”と言うものを行っているのは間違いないようです――

 ――でも深入りは危険です。檸檬さんも巻き込まれるかもしれません。だからこの話は皆さんには内緒にしてください――

 

 その言葉を聞いた檸檬は今まであった事を組み立てていた。4歳児であるとは言え、檸檬はプラス以上に洞察力が鋭い天才児とも言える子供である。景和・道長・英寿・そして両津の4人がデザイアグランプリに関わっていると言う事。そしてそれが危険なものであると言う事を理解してしまっていた。何せその2人が真夜中にボロボロの姿で帰ってきたのだ。その幼い身にしまい込むにはとうとう限界が来た檸檬は泣きだしてしまった。

 

「イヤじゃ……デザイアグランプリなんてイヤじゃ――! 英寿様もカンキチも死んでしまうのはイヤじゃ――――!!」

「檸檬……」

「檸檬……アンタ……」

 

 纏は檸檬を抱きしめて頭を優しく撫でた。

 

「そうか……檸檬、アンタも気付いていたんだね」

「もうイヤじゃ! デザイアグランプリなんて嫌いじゃ――――!」

 

 その言葉に英寿はうつむいた。だが両津は檸檬の目の前でしゃがみ込み。ニカっと笑っている。

 

「泣くな檸檬!」

「? ……カンキチ?」

「ワシがそんな簡単に死ぬワケ無いだろ? でもワシらの為に泣いてくれてありがとうな」

「カンキチ……」

「さっきも言ったけど、ちゃんと待ってろ。ワシがぜーんぶ終わらせてきてやるからよ」

「カンキチ――!」

 

 両津の胸に飛び込む檸檬。その頭を何度も撫でる両津。その姿を見て少しだけ笑顔になる英寿。

 

「言ってくれるねぇ……やっぱり似てるよ、アイツ」

「ですねぇ。全く……せめてロクデナシの所は似てほしくなかったんですけどねぇ」

「あの、大女将? どうしましょうか」

 

 自分が言った言葉で檸檬が泣きだしてしまったくらいしか理解が追い付かない三吉は動揺してしまっていた。

 

「とりあえず店先で待たせるのも何だ。ここに連れてきな」

「ヘイ! お待ちください!!」

 

 ニヤリと笑った夏春都に三吉は威勢の良い返事で応えた。そして少し経ってツムリがやってきた。

 

「おはようございます。英寿様と両津様、昨晩は良く眠れましたか?」

「おはよう。良くここに居るってわかったな」

「おはようさん。ケッ! 随分な御挨拶だこって……」

 

 ツムリはいつもの笑顔だが、英寿と両津の顔には緊張が迸っていた。特に両津は完全に敵意剥き出しだ。

 

「ゲームナビゲーターですから。舐めないでください」

「そのナビゲーターが、朝から何の用だ?」

 

 その言葉にツムリは持って来たアイテムボックスを開く。レイズバックルでも入っているかと思いきや、中身は栄養剤のビンが2本入っていた。

 

「回復薬をお持ちしました。今後の事もありますので飲むならお早めに」

「おいおい……ここまでするのはアリなんかよ?」

「いや、ルール違反だろう」

 

 両津の疑問に声に英寿が答えた。

 

「ですのでゲームマスターには、ナイショです!」

 

 普段営業スマイルが多いツムリだが、今この場に居た者は全員、この時の彼女の笑顔は心の底からの物に見えた。先ほどまで警戒していた擬宝珠家の面々も緊張が少し解ける。

 

「流石姉さん。家族って良いね!」

「姉さんはやめてください!」

 

 思わず笑顔になる英寿にツッコミを入れるツムリ。

 纏からお茶を供され、夏春都の部屋のちゃぶ台を囲む。ツムリは英寿と両津に問いただした。

 

「英寿様、何故毎回あんな願いを?」

「知りたいんだ。何故俺みたいな存在が生まれたのか……俺が生きている意味は何なのか。母さんに会って確かめたいんだ」

 

 その言葉に真っ直ぐな目を向けるツムリ。夏春都は少し俯いた。数十年前と殆ど変わらない姿で会えた彼という存在の断片を察してしまったからだ。纏と檸檬はそれすらわからず、そして両津はバツが悪そうな顔をしていた。英寿はツムリに訊ねる。

 

「君の前任者、ミツメという人を知っているか?」

「ミツメ……そんな、そんな筈は……」

「知っているんだったら教えてくれ!」

「ごめんなさい……私には話せません」

「だと思ったよ」

 

 神妙になるツムリに対して諦めも入っているのか力の無い笑顔で返す英寿。その顔を見た夏春都は今にも泣き出しそうだ。ツムリはデザイアカードを取り出した。

 

「両津様、どうしてこんな願いを?」

「そりゃあ叶えたいからだ。決まってんだろ?」

 

 そのカードにはこう書かれている。

 

 ――この世界で一番の億万長者!! 両津勘吉――

 

「叶えたいから……ですか」

 

 ツムリはデザイアカードを手に取り盤面を一定の操作で触っていく。その動きを良く見ると上上下下右左右左となっていた。そうするとデザイアカードに書かれていた内容が変わっていく。

 

 ――デザイアグランプリをぶっ潰す 両津勘吉――

 

 その内容を見て、英寿と擬宝珠家の面々。特に檸檬は心を激しく揺さぶられた。檸檬は先ほどの自分の癇癪とそれに対して両津が言った言葉を反芻していた。

 

 ――もうイヤじゃ! デザイアグランプリなんて嫌いじゃ――――!――

 ――ちゃんと待ってろ。ワシがぜーんぶ終わらせてきてやるからよ――

 

「カンキチ……うん! やっぱりカンキチはカンキチじゃ!」

「ふふ……そうだね。勘吉は勘吉だね」

 

 檸檬の言葉に共に笑顔になる纏。大原部長の言葉は芯を貫いていたのだ。

 

 ――だから纏くん! 両津の事は迷惑かも知れんが、ちゃんと信じてやってくれ!!――

 

「言った通りでしたね、部長さん。勘吉はやっぱり勘吉でした」

「纏?」

「ううん。何でもない」

 

 不思議がっている檸檬へ言葉少なに笑顔で返す纏。ツムリは両津に問いただしている。

 

「何故運営を欺いてまでこんな願いを?」

「”言いたくない”……って言ったら?」

「それは両津様の自由ですが。しかし良くこんなものを用意できましたね」

「ま、そいつぁ内緒って事で」

「運営のシステムまで欺けるなんて大したものですよ。お陰でギロリは貴方を全力で排除しようとしていますが」

「だろうな、あのキレっぷりだとな」

「ククク……やっぱり両さん、アンタは面白いな! そいつは俺でも気付かなかった!!」

 

 さっきまでの焦燥感漂う態度はどこへやら。予想外のものが出てきてすっかり笑顔になる英寿だ。そしてそれを見た夏春都も笑顔になっている。

 

「ほんと、こういう所だけは勘兵衛以上だねぇ。悪ガキっぷりは3つの頃から全然変わってないんだから」

「あ? ワシ、その頃に夏春都に会ったか?」

「覚えてなくていいんだよ。なんせアンタまだ幼稚園生だっただろうから」

 

 流石にそれまで神妙だったツムリも釣られて笑ってしまった。そして腹の音が鳴る。流石に恥ずかしかったのかこれまたツムリにしては珍しく顔を真っ赤にして謝罪した。

 

「す、すいません! こんな大事な時に」

「いやいいって。そういやハラも減ってきたな。ワシ、何か作ってくるわ」

「あんまり高い食材を勝手に使うんじゃないよ! 纏、アンタも手伝っておやり」

「は、はい!」

「婆ちゃん! 檸檬も手伝う!!」

「そうだねぇ。英寿様とツムリさんのために美味しいご飯を用意しておあげ」

「うん!」

 

 姉妹2人、先に行った両津を追いかける形で夏春都の部屋を出て行った。

 

「あの2人を見ていると昔のパルちゃんを思い出すよ」

「そうですか? アタシは纏ほど猛々しくも無かったし、檸檬ほど聡明でも無かったですけどね」

「うーん……何と言うか、雰囲気? 佇まいとか」

「ああ、それなら確かに。決して曲がらないように育ててきましたから」

「うん。だからこそここまで繋がってきたんだ」

 

 ツムリは2人のやり取りを見て改めて”人と人の絆”と言うものを感じさせられた。

 

「……これが絆」




 筆者です。「思縁III」をお送りしました。
 超神田寿司滞在時間、少し長かったかなぁとも思いましたが、これが何と筆がガシガシ進むのだから恐ろしい。たぶん擬宝珠家が居ると筆が運ぶのかもしれません。特に檸檬ちゃん。

 さて、これまた随分長く温めてきた、両さんの真なる願いのお披露目回でした。これは読者さん方には申し訳ありませんでした。てっきり「大金持ち」一択だと思っていたでしょ? 筆者もそう思っていましたw 実際ここに行きついたのは珍戦Fをアップし終えたくらいで、ご感想にもこの件が書かれていたもので「このままでいいのかなぁ?」と考えた結果、”いずれバレる真の願い”ってネタを仕込んだ次第です。まぁ主人公ムーブと破壊者ムーブを混ぜちゃいました。ちなみに両さんが仕込んでいたデザイアカードの解除コードは懐かしのコナミコマンドです。

 
 しかし前回と今回とやたらと頭を撫でる回になりましたな。前回の話で本来の役目は終えても良かったのですが、もうそろ両さんの真の願いバラすかなと思い立ち、そしたら英寿と夏春都の甘い時間とか檸檬のガン泣きとか色々増えていった訳ですね。今回は珍しく5000文字越え。アンケのご期待に少しは応えられたかもしれません。

 さてこれが上がる日がガッチャード1話の放映日だった訳ですが、皆さまご覧になりましたか? ネタバレは避けますが、筆者の最推しがアトロポスになりました。演じてる沖田絃乃ちゃん、9歳ですってよ……筆者がロリペド扱いされる日も遠くないかもしれませんなw 南野陽子さんも出演されてますね。40年前は南野さんも東映作品で鉄仮面を被った主人公をしていましたので興味のある方はお調べください。

 では明日も間に合えば17:30更新です。よろしくお願いします。

※追伸

檸檬の発言で少し食い違いが起きていたので修正をしました。先にお読みになっていた方、大変申し訳ありませんでした。

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