仮面ライダーギーツvsこちら葛飾区亀有公園前派出所~両さん、デザグラに出るってよ~ 作:唐 十三郎
「ところで気になったんだけどさ、両さん」
「あ、どした?」
祢音が両津に訊ねた。
「冴さんや大智くんをあんな風に呼んでたけどさ、もしかしてアタシたちの事もそんな風に言ってた?」
「あー……うん、まぁな?」
「何それ? 聞きたい聞きたい!」
景和も喰いついてきた。
「……怒らないか?」
「別に大丈夫だよ~じゃあ俺から俺から!」
「ボンヤリタヌキ」
「へ……? ええええええええ? 何それ酷くない?!」
「いや、最初の頃だぞ? 今はそんな風に思わねぇよ。お前結構しっかりしてきたし」
「そ、そうかな?」
「じゃあアタシは?」
「あまったれニャンコ」
「酷くない?!」
「だからー! 最初の印象だっての!!」
「お、どした?」
「俺も教えてくれよ、両さん」
ウィンと道長もやってきた。
「じゃあ俺だな!」
「バカパンク一代」
「両さん?! 有吉より酷くない?!!」
「そんなに酷いか、ワシのセンス?」
「じゃ、じゃあ俺は?」
「猛牛牧場」
「……泣いていいかな?」
「え? そこまで?」
「両さん、もしかして俺も?」
英寿が恐る恐る聞いてくる。
「なんだよ、そんなにビビるなよ英寿」
「そうだよな! だって俺スターだし」
「ナルシスコーン」
「……あんまりだ」
ガクっと肩を落とす英寿。更にツムリがズイっと訊ねてきた。
「両津様……私にはそんな酷い言い方してませんよね?」
「う、うん……顔近いよ、ツムリちゃん」
「じゃあ教えてください」
「スマイル冷血人形」
「もしもしチラミですか? 両津様の退場をお願いします」
「本気で怒ってる?! よりによって退場かよ!」
その様子を見ていた冴と大智は真っ白な顔になって呟いた。
「アタシら、まだマシな方だったんだね……」
「うん。……アレに比べたらね」
素の両津勘吉のあだ名付けはマジでヤバい。
開会セレモニーが行われた直後に即で何処かの公園に飛ばされたライダーたち。
言っておくがここは茨城県つくば市の某公園では無い。そうだと思いたい。
公園の広場に居た英寿たちは足元に現れた赤いアイテムボックスの蓋を開いた。
景和と祢音、そして両津には毎度お馴染みのニンジャ・ビート・ビッグウィンドファンが。冴にはゾンビ、大智にはモンスターが。そして英寿はこれまたお馴染みブーストが与えられた。
それぞれがバックルを手に取ると一般人の悲鳴が聞こえてくる。どうやらジャマトに襲われているらしい。だが今回のジャマトはまた変わった格好をしているようで……
『ジャジャジャ! ジャッケンナ! ジャケェ!』
『ジャリジャリ! ジャリジャリ~!』
「オラァ! ジャァ! ジャケンナ!!」
『ジャジャジャ~ジャ、ジャ~ジャジャジャジャジャジャジャジャ~♪』
着古したTシャツの上から改造制服を羽織り、頭にはこれまた不似合いなリーゼントのヅラ。手には金属バット。まるで昭和の不良”ツッパリ”ルックを決め込んだジャマトたちが現れる。他の衣服を着込んだ者は居ない。改造制服やTシャツの柄に差異はあるものの、概ねこのスタイルのジャマトのみだ。
「何あれ……?」
「ヤンキーってやつ……?」
景和と祢音が半ば呆れている。そこへ大智が口を挟んだ。
「あれは昭和の不良学生が好んでいたファッションスタイルだね。学校指定品では無く、専門の服飾店で購入したり、自身で改造したりして己の権威を見せつけていたそうだ。まぁ、孔雀みたいなものさ」
「良く知っているなぁ、お前。そーそー、あーやって威張り散らしてな。でもだいたいが社会に出て世間の厳しさにコテンパンにされて結局丸くなるか迷惑な老害候補になったりするんだよなー」
大智の知識に感心し、実体験の過去を懐かしむ両津。何分その時代をリアルに経験している世代だ。発言の重みが違う。
「随分懐かしい風体だな。町の住民に威張り散らしたりと当時のままだ」
英寿も両津の発言に乗ってきた。その時代をリアルに経験している世代では無い、筈なのだが……
「お前も随分詳しいな、英寿」
「まぁ見てきたからな」
両津の問いにサラリと返答する英寿。景和も祢音も、そして冴も不思議がっている。
「ねぇ、英寿って今こんななの?」
「う、うん。両さんと一緒の時は特に」
「最近になって自分の事も喋るようになってきたよね~。たまに今みたいにわけわかんない事も言うけど」
3人がどよめくも知った事かとツムリからのアナウンスが入る。
『不良ジャマトたちから町を守り、何処かの学校に居る校長ジャマトを退治してください』
その言葉に過去に対峙したジャマトライダーの言葉を反芻する景和。
――ワタシハ カタナキャ ナラナインダ……――
「ジャマトを……そうだよな。今度こそ理想の世界を」
景和の呟きに反応する大智。声はかけず景和の様子を観察している。
「お嬢様……足引っ張んなよ?」
「そっちこそ」
祢音にハッパをかける冴。軽い挑発には乗らず、笑顔で返す祢音。ビートバックルを構えた。それを追いかけるように冴をはじめ、他のライダーたちもそれぞれバックルを構える。
『『『『『『 SET 』』』』』』
「へーん……」
「「「「「「変身!(しん!)」」」」」」
『 ZOMBIE~ 』『 NINJA 』『 BOOST 』『 BEAT 』『 MONSTER! 』『 BIG WIND FAN 』
「「「「「「てやぁあああああああああ!!」」」」」」
『 READY……FIGHT! 』
最初から乱戦が始まる。無数の不良ジャマトたちと応戦するギーツたち。
「てやぁああああ!」
タイクーンが転がしたジャマトに追い打ちをかけようとしたその時、
「はっ!」
「! うわっ?!」
ロポがゾンビブレイカーを手に持って突進してきた。ロポの身体に突き飛ばされて、その勢いで植木に頭をぶつけるタイクーン。苛立ちをロポにぶつける。
「もう! 邪魔しないでよ!」
「邪魔はそっち!!」
ロポは返事だけで相手にせず、次のジャマトに攻撃をしていく。
ナッジスパロウは数体のジャマトを引き付け公園の砂場まで誘導する。
「ふん、こっちだ!」
「ジャ!」「ジャ!」「イクゾオラ!!」
不良ジャマトたちが纏めて突進してきて砂場の上に来ると、手にしたモンスターグローブで勢い良く砂を叩く。無数の星が砂と共に舞い上がった。パンチ力の爆風で砂場の砂が突如無くなり、バランスを崩したジャマトたちは砂に埋もれてしまう。
「……良し! んん?! ……はぁ」
「んん~~~~~~~……! い――……!!」
引き付けたジャマトたちを全て砂に埋めたナッジスパロウだが、ナーゴまで巻き込んでしまっていた。苛立ちのあまりため息だけではなく憎まれ口まで叩く。
「余計な事はしないでくれるかな?」
「それは私が言いたい!!」
言われたナーゴも砂から起き上がり文句で返す。起き上がる時にナッジスパロウへ砂をかけてしまう。わざとではないが、そう取られても仕方ない態度だろう。
「……何やってんだ。はぁっ!」
「全くだ。おう英寿、アイツらがモタモタしている間にワシらでこいつらシメとくか」
「ああ! てぃや!!」
他の4人がそれぞれ足を引っ張り合う中で、ギーツとタートルズは息の合ったコンビネーションを見せる。
「やっぱり勘兵衛とは違うが、両さんの動きは合わせやすいな。血は争えないって事か」
「あ? 何か言ったか?」
「別に何にも。ホラ、そっちに行ったぞ」
「おっと……でぇい!!」
どんどんジャマトの数を減らしていくギーツとタートルズの動きを見て感心する他の4人。
「あの2人、ホントに凄いや……」
「なんであんなに互いの動きがわかるの~?」
景和と祢音が呆れ混じりに呟く。
「以前の英寿ならこんな動きはしなかったよね……」
「ああ。彼を変えたのは間違いなくあのタートルズ、両津勘吉……」
冴と大智もこれまで見てきたギーツの戦い方と目前のものが全く別である事に驚かされていた。そしてそれを引き出しているタートルズ・両津勘吉と言う存在に益々引きつけられてきている。
残ったジャマトが倒れたジャマトを担ぎ逃げていく。後を追おうとするもツムリから撤収の合図が届いた。ライダーたちは変身を解除して一旦サロンへと引き上げる。
「皆さん、お疲れさまでした」
サロンに戻るとツムリが会釈をして皆の帰りを出迎えた。
「これから参加者の皆さまはここで共同生活を送って頂きます」
「共同生活?!」
ツムリからの突然の報せに真っ先に驚きの声を上げた景和。更に冴も続く。
「そんな話は初耳だけど?」
『君たちに拒否権は無い』
突然くぐもった声がした。サロンの奥からフード付きのマントを羽織った仮面の男が現れる。以前のギロリと全く同じ格好をしているが何処か違和感があった。
「うわぁ……またヤバそうなゲームマスターが来たね、両さん」
「同感。しかしギロリと比べて何か違くね……? あ!」
嫌気が過ぎて素直に感情を吐露する景和に両津も共感する。そして一瞬そのゲームマスターに感じる違和感を考えたが即で答えに行きつく。背丈がギロリに比べて低いのである。165センチくらいだろうか。
サロンの中央まで歩いてきたその男はいきなり身悶えながらマントを脱ごうとする。恐らく普段着慣れていない為に脱ぐのも慣れていないのだろう。
ようやくマントを脱ぎ捨てると仮面を取り外した。仮面の下から金フチフレームで丸レンズのサングラスをかけた男が現れる。髪は少し緩めのパーマで鳥の巣の様な印象を受ける。こげ茶色のジャケットとパンツを着ていて中のYシャツは白地に柄が入っているが少々悪趣味な気もしてくる。
「ども――! 新しくゲームマスターに任命された……チラミよ~」
唐突に明るい態度で名乗った男・チラミ。オネェ言葉で名前まで言い切ると右目のレンズを指でパカリと開く。どうやらかけているサングラスはそれぞれのレンズが可動式になっているようだ。フレームの下から覗く目つきは、その少し丸みがある顔立ちには不釣り合いに細かった。
「シクヨロ――――♪」
両手をブルブルとコミカルに振って更に挨拶を続けるチラミ。お茶らけているとも取れるその態度にライダーたちは全員引き気味になっていた。ただ1人例外を除けば。引いているライダーたちに近づきニヤニヤと笑いかけながら彼らの引いている反応を楽しんでいるかに見えた。
「ん~~――――! ナイスリアクション フレッシュ、取れたて野菜ぶべら!!」
突然チラミが3メートルほどぶっ飛んだ。両津に殴られたのである。
「「両さん?!」」
「「――――?」」
「……ぷっ。くくくく……」
いち早く異変に気付いた景和と祢音が叫んだ。英寿は既に笑いを堪え始めていたが、冴と大智は完全に唖然としている。
「な……な……何するのよアンター?!」
「あ? 一発じゃ足りなかったか?」
右頬を真っ赤に腫らしたチラミは殴ってきた両津に食ってかかったが、殴った張本人の両津は怒りの形相凄まじく眉間に深い縦ジワを刻んでチラミを睨みつけている。だがチラミは突然明後日の方向に向かい別のものに声をかけていた。
「! カメラー、こんな所撮影するんじゃないわよ!! オーディエンスの皆さまがどん引いちゃうでしょ?!」
「カメラ?!」
その言葉に祢音をはじめライダーたちが驚く。知らぬ間に定点カメラがサロンに設置されていて皆の様子が映されていたのだ。後ろを振り返ったチラミが説明をし出した。
「いい? 戦いだけじゃなく、仮面ライダーの私生活も……ショーの一部になるのよ~♪」
「おう、これがそのカメラか」
「へ? 何するのよアンタ?」
定点カメラを探し出した両津。どうやら真鍮製のクラシックカーの模型に仕込まれているのを見つけたらしい。
「……ワシらの断りなく、勝手に撮影してんじゃねぇ!!」
「何してんのよアンタ――――――――?!」
「うるせ――――――――――――!!」
クラシックカーの模型ごと仕込まれたカメラを破壊する両津。怒りの形相になったチラミは今にも殴りかかりそうになっていたがツムリが羽交い絞めで押さえる。両津も再度チラミに殴りかかりそうになるが、こちらは英寿が羽交い絞めにして押さえた。
「いい加減にしなさいよね、アンタ――――!! アタシを殴るだけじゃ飽き足らず中継の邪魔までするってどういう了見なのよ?!」
「黙ってろ、このグラサンオネェが!! ふざけた態度で現れた上にワシらに断りもなく中継だぁ? プライバシー侵害も良い所だろうがよぉ!!」
その様子を見て景和が呟いた。
「あ、これテレビで見たことあるわ……うん、警察24時とかで」
「でもそれって暴力団とか違法経営とかの怖い人でしょ……両さん、警察官じゃん。むしろそういう人たち押さえる側じゃん……」
祢音も真っ白になりながら応える。
「あれで警察官?!」
「両津勘吉……興味が尽きないな!」
冴が引いている横で大智は目を光らせて笑顔になっていた。
「いい加減説明させなさいよ! 失格にするわよ!!」
「チッ……あ? 説明だぁ?」
「そうよ! ……この中に1人だけ、事前に運営が指名した”デザスター”が居るのよ!!」
「デザスター?」
祢音がその言葉を繰り返す。
「デザスターは、他のライダーを妨害する秘密のミッションが与えられているの♪」
「……要はスパイ、って事か」
英寿の言葉に景和・祢音・冴がハッとなって気付く。
「「「だから……スパイ?!」」」
祢音は大智を。景和と冴はお互いを指差して叫ぶ。
「はぁ……君たち単純過ぎるよ。そう簡単に、スパイがわかるわけないでしょ?」
「それも……そっか」
3人の態度に呆れた大智がため息交じりに諭す。その言葉に祢音が返した。殴られた頬を押さえながらチラミは説明を続ける。
「あたたた……デザスターは、最終戦まで正体がバレずに生き残っていられたら、デザ神の座を横取りできるフーッ……あっぷぁああああああ!!」
ソファに座って仰け反りながら説明をして、最後に楽しそうに奇声を上げたチラミのアゴを蹴り飛ばした両津。チラミの奇声は最後は蹴り飛ばされたリアクションの奇声になっていた。
「るっせぇってんだよ! 今度そのキモい動きと声出したら二度と動けなくするぞ?」
「いってぇえええええええええええ!! もー、いい加減にしなさいよ――――?!」
「この中の誰かが……」
「だから少数精鋭でスタートってワケね」
痛みを訴えるチラミには見向きもせず、冴と大智はこのゲームの意図を知り口に出した。
「あ――――……、マジでアゴ大丈夫かしら? コホン! 正解! これは、男女6人の仲良し共同生活じゃあない……疑惑と裏切りのシェアハウス……偽りの仮面を被ったライダーは果たして、誰だぁあああああああ?!」
「なんだよ、そっちにもカメラが仕込んであるのか……」
「え? ちょっとやめなさい、両津勘吉! やめなさい! だからやめてって! お願いします、マジでやめてください!!」
チラミがこれまた派手なリアクションでカメラ目線で動いていった先に向かう両津。2台目のカメラも壊そうとするもチラミに羽交い絞めにされてとうとう敬語で止められようとしていた。
筆者です。「照裏II」をお送りしました。
先ず謝っておきましょう。チラミ役山崎樹範さん、本当に申し訳ありません!!
テレビ本編でのチラミの登場がインパクトあり過ぎて、かなりイラっと来たのは筆者です。そしてこのチラミと言うキャラと両さんが絡んだらどんな反応するかなーと模索したら、たぶん両さん本気で怒りそうだなと考えてしまいまして、お陰でこんな酷い扱いにせざるを得なかったものでした。今後も多分酷いと思います。
今回お陰で筆がノって、珍しく5000文字越えました。チラミファンの方には重ね申し訳ありません。いや、好きですよチラミ。ただ、両さんは即キレるだろうなとw
今回の後書きはここまで。本文に力注ぎ過ぎました。
明日も無事に間に合えば17:30更新ですのでよろしくお願いいたします。
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