仮面ライダーギーツvsこちら葛飾区亀有公園前派出所~両さん、デザグラに出るってよ~ 作:唐 十三郎
「姉さん、その話長くなる?」
どうもツムリの興味スイッチは謎である。
エントランスホール。待ち構えていたかのように大量のジャマトが居た。混戦の中を逃げながら東の館・通路に抜ける。
「ジャマトは追ってきていない。ひとまず大丈夫だろう」
英寿の声で安心する一行。一徹は腰痛が酷くなり景和がそれを気遣った。姉は泣き出した弟を慰める。そこへ両津がズイっと近づいた。泣いている弟の頭にポンと振れ撫でてやる。
「あんまり姉ちゃんの前で気弱に泣くな。姉ちゃんだって泣きたいのを我慢してお前を元気付けようとしてんだぞ?」
その言葉にハッと気が付いた良樹は梢の顔に振り向く。良く見ると梢の瞳にも涙がうっすら溜まっているのが見えた。
「お姉ちゃん、ゴメンね」
「……大丈夫。アタシも怖いけど、良樹の無事が一番だから」
そのまましっかり抱き合う葉山姉弟。暫くはパニックにならないだろう。
「両さま……」
「へっ! 余計なお世話だったかな」
両津を気遣うマリア。照れくさそうに笑う両津。その言葉が心にチクリと刺さる者がもう一人居た。景和である。
「そうだ。俺がしっかりしないと姉ちゃんが……」
周りのジャマトたちの様子を見ながら暫しの休息を取る。いつの間にか道長たちとウィンたちが見当たらない。どうやらはぐれたようだ。
景和は思う所があり、両津に近づいた。
「あの……両津さん、でしたっけ?」
「おう。なんだ? 桜井景和」
「少し質問良いですか?」
「ん? なんだ?」
屈託の無い笑顔で返す両津。強張っていた景和も少しだけ気が軽くなる。
「両津さんにも、弟さんが居るんですか?」
「ああ。ワシと違って優秀なのがな。自慢の弟だよ」
両津には金次郎という弟が居る。破天荒な両津と違って堅物で真面目な人物だ。子供の頃からヤンチャな兄を見て反面教師として育つも芯の強さは兄弟同じで、子供の頃出会った弁護士から正義を教えられ、猛勉強の末に本人も弁護士になった。受験の時に誤って受験票を隅田川に流してしまい、両津が川に飛び込んで拾った事もある。
「なんか、弟さんが羨ましいです。俺なんか全然ダメで……」
「そうか? ワシは結構お前の事、気に入ってるけどな」
「え?」
両津はパンクジャックとして前回のデザグラに参加した時の景和を思い出した。小金井森魚のイカサマで一瞬だけパートナーとなったが、気弱でもひた向きな真っすぐさを見て微笑ましくもあったのである。
――諦めずに頑張れば、きっと勝てるって!――
ダミージャマト相手に景和と練習していた時の言葉だ。英寿は否定していたが、実は両津は少しだけ頷いていた。息の合ってない素振りを見せたが、内心は力になってやりたかったのである。海岸で景和が小金井とビーチバックル勝負を行っていた時も加勢するか悩んだくらいだ。道長が機転を利かせてパートナー交代のクジを引いたのは不幸中の幸いだ。運営から指示されたのは「パートナーを組んだライダーを脱落させる」というミッションだったが、景和を落とすのは気乗りしなかった。
「まぁ、お前さんはまだ若いんだ。どんどん悩んで壁へぶつかっていけ。諦めずに頑張ればきっと勝てるから。な?」
「え……それって?」
一瞬何かを思い出しそうになるも、直ぐに思い出せなくなる景和。ただそれが過去の自分に大切な事であったような気がした。
「あれ? ところで両津さん、なんで俺の名前知ってるんですか?」
「え? あーそれな! ほら、アイツらが教えてくれたんだよ! 英寿と祢音ちゃん!」
苦し紛れの誤魔化しをする両津。だが、
「俺は言ってないぞ」
「アタシもよ。なーに言ってるんだか両さんは。それともーパン……もが!」
危うく祢音がパンクジャックと言いかけたので口を塞ぐ両津。もうどうやら祢音も確信を持っているらしい。
「や、やだなー二人とも~」
「え? 何で有名人の浮世英寿さんと祢音ちゃんが?」
いよいよ誤魔化すのが難しくなってきたその時、ライダーたちのスパイダーフォンに通話呼び出しが鳴り始めた。
西の館・通路に居た道長も、北の館・教会に居たウィンも通話に出る。ゲームマスターからだ。
「想定外の事態だな、仮面ライダー諸君」
「ゲームマスターか。ジャマトがライダーに変身した」
英寿の言葉にゲームマスターは返す。
「ジャマトは進化する生き物。何も驚く事じゃない。緊急措置として、ジャマトライダーに対抗しうるアイテムをそちらに移送しておく」
そう言うとゲームマスターはアイテムボックスを数個。洋館の上空に転移させた。その中に真っ黒いボックスが1つ混ざっている。
「なんだってあんな得体の知れないレイズバックルまで……? 一体アイツは何を考えているんだ?」
不満そうな声を漏らしたゲームマスターはその場を去った。
転移されたアイテムボックスは上空から自由落下で庭園内に落ちた。だがそれに気付いたメイドジャマトはボックスを持ち去ってしまう。
英寿たちはジャマトに警戒しながら東の館・ラウンジに移動していた。スパイダーフォンを見ていた一徹が気付く。
「お! アイテムが届いたみたいだ」
「動いて……いる?」
一徹が見せたスパイダーフォンの画面を見た祢音はマップ画面の中でアイテムを指し示す黄色い点がゆっくり移動している事に気付く。
英寿は壁にかかっていた絵の下にある文字らしきものを確認していた。
「オマワリ……暗号のカギになりそうだが、これだけじゃな」
「何? このオッサンの絵? まるで両さんそっくり……」
「なんだとー?! ……うん、確かにワシに似てるな」
英寿に近づいた祢音は絵を見た素直な感想を言う。祢音の言葉に両津も気付いて絵に近づいたが、確かにその絵は両津にそっくりだった。
その絵はヴィンセント=ヴァン=アキモトと言う昔の画家が描いた「オマワリ」と言う作品だ。恐らく複製画だろう。作家は日本になんて来たことがないらしいし、そもそもこの絵が描かれた当時の日本はまだ明治時代だ。なのに何故作者が現代日本の警察の制服を着た中年男性を描いたのか制作背景に謎が多いという事で時折画談に上がる1品だ。
その時、一般人たちが急に苦しみだした。首輪が締まってきている。どうやらジャマトが近付いたらしい。そう気付いたのが遅かった。ラウンジの扉が開き、ジャマトたちが侵入してくる。英寿が傍にあった帽子掛けを手に取り、ジャマトたちを抑え込む。
「逃げろ! 早く逃げるんだ!!」
その頃ウィンはツムリと一緒に館の北西・庭園に来ていた。無事なアイテムボックスを見つけ開けてみる。中にはフィーバーバックルが入っていた。
「どうやら、他のアイテムはジャマトに持ち去られたようですね」
ツムリの言葉に耳を貸さず移動するウィン。西の館・メインホールにて絵画の下にある文字盤らしき飾り石を並び替えている。
「やる事が姑息だと思いますが」
「なんだ? アイツとの家族ゴッコを楽しんでいるのか?」
「それはイヤです。なんであんな人の姉にならなきゃならないんですか? 姉プレイマニアとか身震いします。だからと言って貴方にされたらもっと引きます! 嫌過ぎて舌を噛み切りたいくらいです」
「いや……そこまで言わんでも」
軽口で余計な呼び水になってしまってすっかり凹んでいるウィン。そして思いの丈をぶちまけるツムリ。そんな2人の前に道長が尾形のネクタイを引っ張りながら現れた。
「妙な組み合わせと思ったら……なんで運営のお前がギーツを落とそうとしている?」
道長がウィンたちに問いかけているその頃、英寿たちは中央の館・エントランスまで逃げのびていた。
「なんでこんなツイてない事ばかり起きるんだよ……俺の人生メチャクチャだよ……」
「しっかりしなさい! 小さい子たちだって頑張っているんだから」
一徹から激が飛ぶ。その声で葉山姉弟たちを見つめる景和。先ほどの両津の言葉で僅かながらやる気が起きた筈なのに、また弱気に心が飲み込まれている。このどうしようもない心の弱さに自分でも嫌気を覚える。
「景和らしくないね……誰よりも世界平和を願っていたのに」
「仕方ないさ。脱落によって記憶を消されると、同時に消されてしまうものがあるからな」
「え……何?」
祢音が恐る恐る聞く。振り返った英寿は景和を見つめながら言った。
「デザイアカードに書いた……理想を願う心だよ」
その言葉に顔が強張る祢音。両津にもその言葉が聞こえ戦慄する。
「ああなってしまうってワケか……」
「だからワタシ、覚えていなかったんだ……祢音TVやっていた事も、家出した事も」
そこへジャマトたちが現れる。英寿と祢音は身構える。姉弟とマリアの首輪が一気に締まり苦しみだした。
「皆を頼む。ジャマトから出来るだけ離れろ」
「はい!」
「おう!」
一徹と両津が答えると共に、英寿と祢音は変身する。
「「変身!」」
変身した2人を後に残りの人間でその場を逃げる。階段を下っていくと、その先にもジャマトが居た。実質挟み撃ちだ。逃げ場は無く、締まり続ける首輪で苦しみ続ける葉山姉弟とマリア。
「この世には順番ってものがあるんだな……」
そう言うと震える手でドライバーを構えた一徹。
『 SET 』
ドライバーから音声が鳴り、一徹がポーズを取る。
「変……身!」
『 ARMED PROPELLER! 』
一徹は苦しむ皆と両津に促す。
「じいさん!!」
「両さん! みんなを連れて逃げなさい!!」
「何考えてんだ?!」
階下のジャマトの群れに突進するケイロウ。だが元々戦闘慣れしていなく、腰痛のせいで周りに集中できない。更に数も多いためジャマトたちの攻撃に成す術もなくダメージばかり受けていく。
「ぐは! ……げふぅ!」
「ちっきしょう! てめぇらどけよ!!」
先走ったケイロウを追いかける為に急ぎドライバーを構えた両津。
『 SET 』
「変身!!」
『 BIG WIND FAN 』
「邪魔だぁ!!」
大ハリセンを振るうも間に入るジャマトたちの数が多すぎてケイロウの所に行けない。迂闊に進むと苦しんでいるマリアたちがジャマトに襲われる。そんな両津に気付き、苦しみながらも立ち上がるマリア。
「……両さま、この子たちはアタシが守ります。だ、だからあのおじい様を!」
「し、しかし……」
「大丈夫……貴方のマリアを信じて下さい」
「……! わかった。任せたぜ、マリア!!」
マリアを信じて一直線に進みだしたタートルズ。だがケイロウはジャマトライダーに捕まり、痛恨の一撃を喰らってしまう。
「うぁあああああああああああ!!」
筆者です。「変攻V」をお送りしました。
今回の話でようやく景和くんと両さんを絡ませる事ができました。今後もどんどん絡ませたいのでどうか宜しくお願いします。頼むよ景和! 闇落ちしている場合じゃないんだからね!!
では今回の小ネタを。
ヴィンセント=ヴァン=アキモトのオマワリ・・・秋本先生の別作品で「Mr.クリス」と言うマンガがありまして、作中に出てきた時にたった1コマのネタなのに大爆笑した想い出があります(作中ではヴィンセント=ヴァン=「コ」ッホ)あの時の大爆笑がこうして筆者の小説のネタになるなんて人生はわからないものですね。本編でヒマワリの絵が出たので電撃で思いつきました。
さて、本編11話で言う所のクライマックスに差し掛かりました。既に本編視聴済みの皆さまならこの後の展開をご存じですが、そこに今、両さんが居ます。どういう展開になるかは明日夕方17:30の更新にご期待ください。
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