仮面ライダーギーツvsこちら葛飾区亀有公園前派出所~両さん、デザグラに出るってよ~   作:唐 十三郎

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「リアリティライダーショー、デザイアグランプリ! 明日の延長戦に向けてそれぞれの時間を過ごしているライダーたち。英寿様は生きていた道長様とお逢いされました」
「ああ。意外に元気そうだったな」
「お、生きてたか。何より何より」

 屈託の無い笑顔で喜ぶ両津だったが、英寿は複雑な表情になる。

「と言うか様子がおかしくてな……」
「あ? どういう事だ?」
「うーん……何と言うか、ノリが軽い……」
「は? あの年中しかめっ面の道長が?」
「別に年中しかめっ面じゃねーし!」

 道長が現れる。でもやはり眉間にシワを寄せてしかめっ面だ。その部分を両津は指摘する。

「ほらお前、そーゆー顔してるから年中しかめっ面だって言われんだよ」
「そうかぁ? でも流石に年中って事は無いハズだぜ? ……たぶん」
「自分でも自信無くなってきてんじゃねーか。もっと面白いものとか見ろよ。お笑いとかギャグ漫画とか。手前味噌だけどこち亀とか良いぞー」

 そう言って両津は全201巻を持ってこようとするも、あまりの冊数に断念して集英社オンラインが提供している”毎日こち亀”をスマホで開いた。


「何これ? 毎日日替わりでこち亀読めるのヤバくない?!」
「だろーな。まさか集英社もこんな方法でこち亀を宣伝するとは思わなかったぜ。これなら興味を持ったやつが電子とかで単行本買いやすくなるからな」

 ちなみに道長が読んだのは偶然にも駅弁を取り扱った話で、両津がフォアグラの鴨宜しく、延々と各地域の有名駅弁を食べ続ける回だ。

「いやいや両さん、いくら何でもこの量は食べ過ぎだって――!!」
「そーいやあったなぁ……金が無いからと出版社の企画で延々駅弁食べたのが」

 金欠時の両津が行うライフハックの1つで、出版社の無茶な企画本の為に暴飲暴食を行っている。以前は延々と酒を飲み続けるものもあった。


「いやーヤバい……これなら無理なく笑顔になれるわ」
「おう。時折コイツを見ておけば顔面に張り付いたしかめっ面も少しずつ取れていくと思うぜ」

 そして実践してみた所、確かにしかめっ面は治ったが、その代わり毎度毎度不気味に笑う状態になっていった。

「うぉらぁああああああギーツぅう何処に行ったぁああああ? ひゃーはははははは!!」
「おい両さん、アンタのせいなんだからどうにかしろよ……」
「いやぁまさかここまで効果が出るなんて思わなかったぜ……」

 真面目な人ほど影響を受けやすいという例である。


玉晒XIII:築いたものは崩される

「両津様?! ……どうされましたか?」

「中川の使いだ。データ寄こせってこのグラサンオネェが言っていたからな。直接ワシが持って来た」

 

 ツムリからの質問に、チラミの後頭部を思いきりぶん殴っていた両津が答える。

 

「あーたは! どうしてもっと大人しく現れないのよ?!」

「ほーん……ここにもカメラを設置しやがったか。後でまた取り除かなきゃな~」

「! あーたって人は……」

 

 チラミが怒鳴るも、両津はチラミが見ていたモニターから隠しカメラの位置を冷静に把握していた。そしてテーブルの上にUSBメモリを無造作に置いた。

 

「さて渡すモンも渡せたし、これで引き上げるわ。じゃーな。」

「待ちなさい。こいつが本物かどうかチェックする必要があるわ。偽物を掴まされたらたまったもんじゃないもの」

「めんどくせぇなぁ~。まだ残れってのかよ……」

「勿論、タダってワケじゃないけどね。1杯ど~お? 今朝のご飯のお礼も兼ねて……」

「ほーう。ま、タダ酒にお呼ばれされて断る道理は無いわな~」

「じゃあ大人しく座って頂戴ね」

 

 チラミがフィンガースナップをパチンと鳴らすとツムリが銀トレイにワインボトルとオープナー、ワイングラスを2つ乗せて現れる。綺麗な所作でテーブルにワイングラスとボトルを置くと代わりにチラミからUSBメモリを受け取り部屋を出た。

 

「さて、タダ酒を飲ませるために引き留めたワケじゃねぇだろ?」

「そーね。中川ちゃんから色々聞いてはいるんでしょ、アタシとか運営とかの事も」

「ああそうだ。デザスターの依頼があった事とかな」

「あら~そこまで話をしていたのね♪ ……それで、どう思ったの?」

「実に中川らしい返答をしたものだと思ったぜ。と言うかおまえらバカだろ? あれで中川を落とせるなんて良く思ったな?」

「ええ。見事にフラれちゃったわね~」

 

 要約すると両津にデザスターになって行動して欲しいと中川通じで依頼があった訳だが、両津に相談するまでもなく断ったそうだ。

 

「ま、ワシでもそうするな。と言うかお前らやり方が姑息過ぎるんだよ。な~にが”疑惑と裏切りのシェアハウスが始まるのよ~ん♪”だ。ワシらをバカにするのも大概にしろ」

「? アンタいつからこの部屋に居たの?!」

 

 つまり両津はある程度チラミの話を聞いていたと言う事である。両津が気配を感じさせないのもあったが、それ以上に自身が油断していた事を呪った。

 

「ギロリを馬鹿にする発言もしていたよな。”押忍!! 俺のデザイアグランプリ!!”だっけか? 言っておくけどな、アイツの方がオマエよか何倍もマシだ。裏切りと敗北を誘発してそれを笑いものにする姑息なオマエらよりな」

「なんですってぇ~?!」

 

 昨今のSNS普及による弊害がこれである。他者が他者の成功を呪い、かつ失敗を願う。日本が30年以上成長できない本質もここにあると見る者も増えてきた。竹を割ったような性格の両津には、長らくこの他人を嘲る風潮だけはどうにも馴染めずに居た。

 

 ―― 殴るなら直接殴れ ――

 

 ―― 他人の失敗を笑うな ――

 

 この2つの信念が根付いている両津にとってリアリティライダーショーの裏側で笑っている存在は何とも不愉快なものだろう。

 そこへツムリが戻ってきた。

 

「両津様がお持ちになったデータの解析が終わりました。全て本物の様ですね。……本当にこんな事が可能なのかは驚くばかりですが」

「何よそれ……両津勘吉、アンタたちは一体……」

「ワシの願いは知っているだろ? ”デザグラをぶっ潰す”。ま、せーぜー見えない所で震えていろ」

「言ったわね! その言葉は明日の延長戦で勝ってから言いなさいよ!!」

「勝つに決まってんだろ? じゃあな、ごっそさん!」

 

 供されたワイングラスを一息で飲み干し、それも足りず更にワインボトルに残っていたワインもグビリと飲み干して両津はチラミの部屋を後にした。

 

「決めたわ……両津勘吉、アンタを終わらせてやるわ! アタシに啖呵を切った事を後悔しなさい!!」

 

 深夜のサロンにて。皆がそれぞれの寝床で寝入っていたが、景和だけは夢見が悪くうなされていた。

 

「うぅーん……だからぁ、俺に草加雅人の笑わせ方を強要しないでくださいよぉ……浅倉みたいに酷い事なんて出来る訳が無いじゃないっすかぁ……」

 

 恐らくケケラと一緒に行ったライダー研究会にてかなり偏った見解を見せられたのが元凶と思われる。

 サロンのドアが開き、廊下の灯りが差し込んだ事で景和は目を覚ました。

 ドアを開いたのは英寿である。

 

「悪い、起こしたか」

「いや……眠れなくて」

「よし……今度は俺が夜食でも作るか」

「へ?」

 

 サロンのカウンターをそのまま選挙した英寿のプライベート空間。ここに美味そうな匂いがたちこめる。

 

「やっぱり、肉は牛だな」

「うん……けど……夜食の域、越えてない?」

 

 英寿が夜食に選んだのは熱く熱した鉄皿の上でジュウジュウとソースを焦がしながら焼かれている牛肉。所謂ビーフステーキである。だが用意したのは英寿じゃ無い。

 

「なんでワシがステーキ焼いてるんだよ……」

「良いだろ? 俺が焼くよか上手なんだし」

「起こしちゃってゴメンね」

「いやいや、景和が謝らなくても良いって」

 

 ステーキを焼いたのは叩き起こされた両津だった。手慣れた手つきで都合6人分のステーキを次々用意していく。冴と祢音、そして大智も美味そうな匂いに釣られてやってきている。

 

「結局全員分用意してるし……」

「そりゃあれだけ美味しそうな匂いがしちゃうとねー!」

「牛肉は脂分が少ないからノーカンなの!」

「玄海町の佐賀牛だね。非常に柔らかく美味だと噂になっていると聞いているが」

「良く知っているなナッジスパロウ。ふるさと納税の返礼品だ。味わって食えよ」

「英寿、ふるさと納税とかやっていたんだ……」

 

 それほど時間もかからず全員分のステーキが用意された。熱されたステーキ皿の上でソースがジュワジュワと焦げていて匂いが室内に充満していく。付け合わせにニンジンソテー・インゲン・ジャガイモも乗せられていた。更にパンも用意されている。

 

「「「「「「いただきます!」」」」」」

「美味し――!」

「うん、凄く柔らかい~」

「これは何かワインでも飲みたくなるね」

「ワシのとこにあるやつなら適当に飲んで良いぞ」

「ホント? じゃあ俺取ってくる」

 

 景和が戻ってきてワインボトルのコルクをオープナーで開けた時に英寿が呟いた。

 

「牛といえば……バッファに会った」

「「「「「?!」」」」」

 

 ライダーたち全員が驚く。冴と大智は直接の面識こそ無かったが、前回退場者として記録だけは目を通していた。景和が質問する。

 

「ウソでしょ!? 退場した人って元の生活には戻れないんじゃ……」

「あいつは、生きているのは自分だけだって言ってた。その言葉を信じるなら、他の退場者は、もう……」

「そうなんだ……」

 

 落胆する景和に向かって至極適当に答える英寿。

 

「ま、どんな悲劇だろうと救えるのがデザグラだ理想の世界を叶えさえすればな。その為にはデザスターだと思える奴に投票しないとな」

「「「「「――!」」」」」

 

 酷な現実を突きつける英寿。そう、このリアリティライダーショーでは誰かを必ず突き落とさないと先には進めなくなっている。

 

「英寿は俺のこと、信じてくれてる……よね?」

「信じてほしかったら、証明してみせろ。自分はデザスターじゃないってな」

 

 皆が俯き、せっかく用意されたステーキにも口をつけ辛くなっていた。だが両津だけはモリモリと食べ続ける。その姿を見て皆が呆れかえる。

 

「? ん? 何だよお前ら、ボーっと見て?」

「いや、何と言うか……」

「両さんはブレないなぁって……」

「あ? そうか? まぁどいつがデザスターなのかって気にしたらキリが無いけどよ。それと目の前の美味い肉とは別の話だ。残すなら食ってやるぞ!」

「要らないなんて誰も言ってないでしょ!」

「そーよ! ちゃんと食べるし!!」

 

 冴と祢音が全力で抵抗して美味そうに食べ続ける。その姿を見て大智がほくそ笑んだ。

 

「全く……この人は皆の緊張をスパスパと解いてくれるなぁ……」

 

 そして暗転しインタビューが始まる。今回受けるのは五十鈴大智(24)だ。

 

 ―― 今のデザグラについてどう考えていますか? ――

 

「たとえデザスターじゃなくても全員から疑われたプレーヤーは脱落する。それがこのルールの肝だ。ちょろいやつを疑わせて脱落させちゃえば数を絞れるからね」

 

 ―― でも貴方は今回そこまで積極的に誰かを追い詰めていませんね ――

 

「ゲームへの捉え方が変わったのさ。プレイヤーであるライダーたちを貶めるよりも視聴者であるオーディエンスに向けて常に問いかけた方が楽しくなってきてね」

 

 ―― 問いかけ……ですか? ――

 

「ああ。これは彼の言葉そのままなので少し申し訳無いが、実に的確なので使わせて頂くとしようか。”さぁ、オーディエンスの皆は誰がデザスターか……見抜けるかな?”」




 筆者です。「玉晒XIII」をお送りしました。

 前書きの”毎日こち亀”は本当に集英社オンラインで実施しているサービスです。気が向いた時に是非チェックしてみてください。これまた偶然にも、これを執筆している時に駅弁回”男の駅弁旅の巻”が読めましたのでミッチーに読ませたらどうなるかとSSを書いてみました。ミッチーって真面目過ぎる所があるから結構暴走しがちかなぁと。拙作のミッチーはだいぶユルくなってきましたが(だいたい筆者のせい)暖かく見守って頂ければ幸いです。

 さてステーキを食べる話。珍しく英寿が率先してステーキを焼く話を広げてみました。そして本編でもここから大智くんのインタビューとなるのですが、拙作の大智くんは姑息なマネをあまりしないようにしていますので、むしろオーディエンスに挑戦する態度を取っています。いかがでしょうか?

 さて、本編通りに進むとミッチーが運営に襲われて、ジャマーボールの延長戦が行われ、大智くんの脱落となるわけですが……拙作では果たしてどうなっていくのか。是非お楽しみください。

 では明日も間に合えば17:30更新ですのでよろしくお願いします。

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