久々にやった恐竜の島でサバイバルするゲームがいけないのです!!!時間を食われた!!!!!!!もぐもぐもぐ!!!!時間、美味いっ!!!!!!!!ね!!!!!!!わかりました!!!!!!!か?!?!?!?!?!?
はい。
見知らぬ街並みといつも通り青い海を眺めて私は思う。
〆切を引き伸ばす漫画家の気分だと。
あれからなーんにも進展はなかった。
信徒たちの集団自殺の後、こっそりあの場から離れた私たちはスーシェの助けもあって疑われることなく学園に戻ることが出来た。
とはいえシロは神に魅入られた疑惑も恋占いの拡散も発覚したばかりで、何一つ解決したわけではない。むしろ問題も増え、潜在的な脅威の可能性が増したと言うべきだろう。明らかに
とにかく、それからというものの遠足までに解決まではいかずとも、決定的な一手を見つけるくらいのつもりで活動していた。
のにこのザマである。
私とシーア、それに私の
私が直接シロを探ったときに得られた情報はゼロ。
シーアはセラスなどシロの友人にそれとなく聴き込んだときにシロの同室の子から得られた「最近はぜったい私より早くねるようになったなー。なんかいじでもって感じでふしぎだぞ。とつぜんこわがりになったのかな」という情報だけ。
スーシェは信徒たちの方を探ったが、現状出た結論はあそこの急進派……と呼んでいいかわからない方々が巻き込まれただけで今のとこ邪悪な信徒との関わりはないということだ。
やだ、私ってば何も出来てない。
そんなわけで遠足一日目になってしまった。予定していた〆切になんの準備もなく踏み込んだ気分はどうだ? 印刷所に怒られてしまう。
というわけで今日から3日ほど私たちはこの島で過ごすことになる。
遠足といえば日帰りのイメージがあるが、この世界は島だらけだ。広大な敷地を持つ王都が座す本島だって、東京都心より狭いくらいだ。よって行先は本島近くの別の島になる。
だから移動の時間を含めて多めに時間が取られてる。
ここは王都が直接管轄している島のひとつ、浜と沼の町だ。確かゲーム本編だと2周目以降にしか来れない。水着イベントの舞台だ。
名前とゲームでの扱いの通りここには砂浜がある。海が危険なこの世界にしては珍しくだ。とはいえ私たちが用のあるのは浜ではなく沼の方。沼に住むと呼ばれる神さまが祭神の神殿に勉強に来たのだ。
遊びに来た訳ではない。
それに私たちにはいくつも問題が折り重なっているのだ。自由時間に波を感じに行こうだとか、日光浴をしたいだとか考えているはずがないのだ。
「ツキちゃん、さっきからずっとビーチ見てるね」
「見てない」
「見てるよ」
ないったらない。
……そんなことよりだ。
今は島について一日目。先程宿屋に荷物を預けて神殿に向かっているところだ。
私が言うのもなんだが、ちびっ子に祭司など見せて勉強になるのだろうか。小学校の英語教育みたいに、感覚的なものを養おうとしてるのかもしれない。ちなみに私は小学校の英語教育で何も得られなかった。
とはいえ、魔法そのものの授業はしっかりしたものが多いんだよな。
祭司を見学し、少し手伝う。もしかしてこれは現場に慣れさせるための教育……?
どういう意図があるのだろう。
「ねえシーアさん、ツキさんはなんであんなむずかしい顔してるの?」
「たぶんまた考えなくていいことかんがえてると思う」
そんな私をよそにシーアと会話をしているのはコルというショタだ。というか同学年にショタっ子とロリっ子以外がいたら恐ろしいのだが。
コルという子は今回の私たちの遠足行動班のひとりでスーシェの友達だ。スーシェにも生徒という顔があるので友人はいるのだ。
あとゲーム内におけるメインの攻略対象のひとりである。
幼い頃原作主人公と仲の良かった男の子。いわゆる幼なじみキャラだ。
原作主人公が編入してくるのは高等部からなのでそこで彼女はコルと再会を果たすことになる。
短髪で、茶色かつもふもふの尖った垂れ耳がある。この子のモチーフは覚えている。マヌルネコだったはずだ。
モチーフ通り、体のケモノ部分は本当にもっさもさのもっふもふ、夏場は大変そうな見た目をしている。私にもクマ耳が生えているのでその利便性と不便さはいくらかわかる。
「考えなくてもいいこと? ……俺のみみ、ずっと見てくるんだけど」
「だいじょうぶだよ。どうせあつそうとか考えてるだけだよ……あっあれかな」
シーアが指さした先を見ると、ウチの島にもあったような神殿が見えてきた。
住宅地から少し離れた山の方に、まるでここから先の湿地への入口みたいに構えられたその建物はどこか強い圧を感じた。
「あれみたいだね。司祭さんがこっち見て待ってるし」
「あれがここの魔法使いのひとってことかな」
「だと思う」
「ここの神さまってぬまに住んでるんだよね?」
「らしいね」
「じゃあぬまで儀式するのかな。きがえもってこさせられたし、よごれてもいい服できてっていわれてるし」
「え……」
待って。なにそれ知らない。私知らない。
着替え? 沼で儀式をする……?
道理で私以外のみんなの荷物に、なにか必要以上に入ってる気がしていたのだ。必要なものが入っていないのは私の方だったってこと?
前世からこういうときに忘れ物をしやすい人間なのを失念していた。
「もう、わすれたんでしょ」
「せ、先生そんなこと言ってたっけ……?」
「遠足のしおりにかいてたよ」
「うそ……」
「ホントだよ」
私はそっと天を仰いで額に手を置く。
帰りは私だけ泥まみれで宿に帰るのか。仮にも精神年齢が三十を超えてる私が。
そういうとシーアは背嚢を少し開けて中身を見せてきた。
「ほら、ツキちゃんわすれてるだろうと思ってもってきといたよ」
「……!」
神か。
シーアは神さまだった。
少なくとも今この瞬間私にとって、この幼なじみこそがもっとも尊敬に値する存在だ。
「この御恩は必ず返します……」
「いいんだよこれくらい。いつもツキちゃんががんばってくれてるからね」
彼女はそっと手を伸ばして、私の頭を撫でた。
お姉ちゃん……っ。
「友だちっつーか……なんだろ。ふしぎな仲だよなお前ら」
「うんうん」
その様子を後ろから見ていたスーシェが呟いて、コルがそれに同意を示した。
◆
何度か説明したことだが、この世界の魔法は神さまとやらに願って奇跡を起こしてもらうものだ。
もちろん奇跡というからにはいつも頼んでいてはありがたみを忘れてしまうから気軽に使ってはいけない……と教わりはするが私は訓練のために持ち物を熱する魔法を願うことも多いし、聞けばそういう魔法使いも多いはずだ。
結局のところ気軽につかってはいけないことの本質は神さまとやらを身近に感じてはいけないということなのだろう。
そこにいるのが当たり前、いつでも奇跡をくださる。そんな心構えはただの不敬だ。たとえ信仰対象でなくともお願いする立場の行動ではない。
学園のどこかにこんなことが書かれた紙が貼っつけられていた気がする。
「敬うことを忘れるな」
誰にと書かれていないのは全てにということだ。
神さま……というかまあその正体は人の目が届かないところに棲む怪異たちなのだが、彼らと親しくなるということはいつでもそちらに引き込まれるやもしれないということだ。
ゲーム中のシーアは、とあるルート中に登場した
彼らが理外の存在ということを忘れて畏れから逃れてはならない。畏れなくなるということは彼らになるということなのだから。
というわけで我々魔法使いが彼らと交流する道具としてもっとも主要な祭司を見学に来た。祀る手法を沢山知って知識を増やすだけでなく、略式でない正式な儀式をその身で感じることでその畏怖と威を思い出させるのだ。
……と、ここまでが私が精一杯解釈したこの遠足の目的だ。
そも科学の発達した時代に生きていた一般的な人間が秘教的な行事の意味を真に理解しろと言うのに無理があると思う。すくなくとも私はそれがわかるほどに偉い存在ではないしなるつもりもない。
結局のところ「とりあえず偉いならなんとなく敬っとけ、神でも人でもなんでもいい」という発想が前世から今日まで私の基礎にあるから何とかやっていけているのだと思う。
「ようこそエリーナ総合学園初等部のみなさま、私はこの沼の神殿の司祭をやらせていただいておりますニーカと申します」
メガネをかけ簡素な服に身を包んだ長身痩躯の男はニーカと名乗った。
若くはない。しかし老けすぎてはない。三十代後半といったところか。
彼が街を歩いていても少し背の高い人だな程度にしか思えない、それくらい普通の外見だ。しかし、この石の匂いのする建物の中ではどうしても非日常的な空気を纏っていた。
占い師ほど怪しくはなく学者先生ほどの偉さは感じない、けれど不思議……そんな人だ。
「ここは大昔から浜と沼の町を見守っていてくださる神さまを祀る神殿となっています。沼にお住いになられているので、沼の神殿という名前なのです」
祭神の名前をいわないのはおそらく伝わっていないからと思われる。この世界だとよくあるのだ。
失伝したか初めからなかったのか、しかし勝手に新しい名前をつける訳にはいかずに無名の神として祀られる神が。
ただここの神は沼に住まうということはわかっているから、便宜上沼を識別の称号をしているようだ。
「さて、まずは施設の紹介からです。私についてきてください……」
初めに案内された部屋に荷物を置いたあと、台所、仮眠室、研究所など私たちに見せてもいい設備を回った。
一通りみた頃、その部屋がやってきたのだ。
ここまで回ってきた部屋は全て特別な部屋といった雰囲気だったのに対し、ここだけはどこか
今までのどこの部屋よりも広くて、床は木の板が張られている。奥の壁は一面取り払われていてその外が見える。
よく濡れて泥だらけの地面、生い茂る木々。
一言で表すならば、山中。
里と山の境に立てられた神殿の最奥が山の中というのは、至極単純な事実だった。
だが入口の景色とは思えない。正しく山の中、人里離れた森の中といった風情だ。
「靴を脱いで上がってくださいね。ここが祭司の部屋です。とはいえなんと呼んでもらっても構いません……泥の間、お祭りするところ……ここに特に定まった呼び名はないのです」
裸足で感じる床は、どこか土っぽく湿っていた。
彼の話は部屋そのものに移っていく。
「壁の棚に置かれたこれ……これの意味がわかる人はいますか?」
「はいっ!」
「じゃあ元気よく手を挙げてくれたキツネの女の子」
「えと、神さまがここにきてくれるようにしたかざり……?」
「ええそうです。正しくは沼の神様にまつわる昔話に登場したお部屋の再現となっています。“右手に草を編んだ食器が置かれていて、左手には作りかけのわらじが落ちていました。そう、少年は神さまのすみかにまよいこんでしまったのです”ってね。
神様のお部屋を真似て、安心して訪れて頂けるようにしているのです」
何せここは彼のお家なのですから。
そうして彼は棚に乗せられた草編みの籠をひとつとって外の沼の泥をひと掬いした。
「今から皆さんに儀式をお見せします。この後一人一人やってもらいます。簡単ですのでよく見ていてくださいね」
籠を掲げてそっと傾けて泥を被り、その舞は始まった。
……。
…………。
………………。
いやむっっっずいわ。
何が簡単だから見とけあとからやってもらうだ。ゆっくり動いてるとはいえ舞だぞ、舞。踊りを一回見ただけで覚えられるわけないだろう。
あの男、きっとアホである。
正式な儀式といいつつも私たちがどうにかできるようにいくらか簡略化されている節はある。節はあるがそれでも難易度が高いことに変わりはないだろう。
「セラスちゃんきれいだったね」
「そうだね……そうだね…………」
「ツキちゃん?」
彼の儀式が終わり、今度は私たちが体験する番になったのだが……だが……なんだこれ。
えっみんなできるの? 私だけ? 恥かくの私だけ??
ミスをしつつも横にいる司祭の男に教えて貰いながらどうにかこなしていく同級生たちを眺めながら私はこれから訪れるマヌケな結末を予知していた。
「次は君、おいで」
「は、はい」
室内にしては明るい天井を見上げていた私は、聞き覚えのある声に反応した。
シロだ。
頬に羽根の生えたスズメのような少女が、あみ籠を持たされてゆっくりと泥を掬った。
普段よりずっと簡素な服……汚れてもいいものなのだろう……と頬の綺麗な羽根を泥でそっと汚しながら男が横で指示するとおりに足と手を動かしていく。
少し不安そうにしながら、つつつと手先を広げて宙を掻くように動かした。
事前に説明で聞いている通りなら、この舞は沼の神の逸話に沿って司祭が
泥に足をとられてすみかに迷い込んだ少年に沼に沈まない方法を授けた。これによってこの土地に人が住めるようになったのである。
本来はその物語を諳んじながら行うものだそうだ。これは年に数回しか行わない行事で行われることで、しかし一番簡単な動きをするものだから私たちに体験してもらいやすいとか何とか……簡単??
「ぁ」
シーアがそっと呟いたのを聞いた。
彼女はシロの一挙手一投足を見逃すまいと凝視していて、だからこそまっさきにそれに気づいた。
「ね、ツキちゃん」
小声で耳元に囁いてくる。
「シロちゃんのかお」
「顔?」
「うん……顔」
見ると先程までの不安そうな表情は消え去っている。緊張が解けたのだろうか。
まさかもうあの舞を覚えて……?
「すごいね、すごく余裕そう……」
「ちがうよ」
「違う……何が?」
「ほら、つぎの動きにいくときのかお」
シーアは少し急かすように私にいう。
次の動きに移行するときの顔……今ちょうど彼女は、虚空へ向かって手を差し伸べている。少年を連れるシーンだろうか。
舞の終わりも近い。その動きは今日私が見た中でもっとも美しかった。彼女はそっと足を動かそうとする…………。
「……焦ってる?」
「そうなのかな、わたしにはわからないよ」
シロは酷く怯えるような焦るような顔をして、舞の動きの繋ぎを過ごしている。
ほんの一瞬だ。ほんの一瞬だけだが、なにか鬼気迫るような顔だ。
「…………」
何かまずいような気もするが決定的ななにかがないため割り込んで止めに入れない。きっとシーアも同じようなことを思っているからどうしようもなくて、私に伝えたのだろう。
とはいえ私にも何も出来ない。
ただ不思議なまでに合間合間に焦燥に駆られるシロの顔を追うことしかできない。
舞が終わったらすぐに聞くべきだ。
本人に直接ハッキリと。遠回りなのはナシだ。これでなんでもないことなら良し、何かあるならそのときはそのときだ。
もうまもなく舞が終わる。
沼の神が彼を送るシーン、これでラストだ。
沼の神はそっと開ききった手を広げ、泥まみれのまま少年を送り届ける。
そして、そっと腕を下ろすのだ……。
どん。
人がひとり倒れる音がなった。
いいや崩れたのだ。
糸が切れた操り人形のように、シロは突如くずおれた。
そして泥だらけの板に転がる。
私も、司祭も、みんなも何が起こったのかわからずしんと静まり返った。
「シロちゃんっ!」
隣でシーアが悲鳴をあげた。
【魔法】
魔法を使うとき、この世界では大きくわけてふたつの手段が取られる。それは奉納と
奉納は読んで字のごとく、物を捧げたり舞って喜んでもらったりするものだ。