アクシズに立ち寄ったら、逆襲の〇ャアのようなテロ事件に巻き込まれました~逆襲のテテテ 作:ひいちゃ
そして、翌日。アクシズに作られた特設会場に、シャアとフロンタルが立っていた。
「準備は全て整っています、首相」
「そうか。……そういえば、演説に臨む前に一つ聞いておきたい」
「なにか?」
そこでシャアは、戦いに挑む時のような鋭い視線を放っていった。
「お前の狙いはなんだ?」
「……!」
「我が情報部をなめてもらっては困るな。お前が、旧政権派によって生み出され、彼らの意によって私の元に派遣されたことは調べがついている」
「……」
そう言われ、フロンタルは観念したかのような表情を浮かべて口を開いた。
「はい。その通りです。私に与えられた使命はあなたの監視と、もしあなたが旧政権派にとって看過できない存在となった時に始末すること」
「やはりな」
だがそこで、フロンタルは真摯さを表情に浮かべて言った。
「ですが、私にとってそれはどうでもいいこと。私自身の目的、いや願いはあなたの行く末を見届けることです」
「なに?」
「信じてもらえないかもしれませんが、私にはあなたのものと思われる人格の残滓と、その記憶が宿っています。もちろん、この記憶は私の目の前にいるあなたのものではないのでしょう」
「別世界の私の記憶、ということか。この宇宙世紀の先の先まで見通せるカレル君という存在がいる以上、戯言と片付けるのも難しいな」
「はい。その記憶の中のシャア・アズナブルは、連邦政府と敵対し、アクシズを落とすという暴挙に出ました。そういうあなたの別可能性を見てきたからこそ、見届けたいのです。この世界のあなた、シャア・アズナブルがどのような道を進むのかを」
そう言われ、シャアはその厳しい表情を緩めた。
「そうか。教えてくれて感謝する。お前の希望に添えるよう努力しよう」
「よろしいのですか? 私を捕まえなくても」
「お前に、私と敵対する意思がない以上、排除する理由はないからな。それにお前を排除してしまうようでは、お前の希望にも、そしてカレル君が教えてくれた、その友達の遺志にも背いてしまうことになる。そうじゃないか?」
「……ありがとうございます」
そして、シャアはフロンタルに手を差し出した。
「これからもよろしく頼む、フロンタル補佐官」
「はい、こちらこそ。シャア首相」
* * * * *
そして、演説がはじまった。
……地球連邦、ジオン共和国、双方の人々の中には、相手のことを良く思わない人や、相手への憎しみを捨てきれない者もいることでしょう。
そのことを否定するつもりはありません。人間であれば、それはしょうがないことです。
ですが、それに固執し、刃を向けあっていては前に進めない、私はそう思います。
かつて私は、復讐心に囚われ、親友を謀略で殺してしまいました。大切な友情を、「父の仇の家族」というだけで断ち切ってしまったのです。
それから私の中の人間関係は止まってしまいました。今の今まで、信頼できる同志、部下はいても、心を通じ合える友人には恵まれませんでした。
今にして思えば、それが親友殺しをした私への罰だったのでしょう。親友が私に、この結果を通して、憎しみに固執する愚かさを教えてくれたのかもしれません。
復讐や憎しみを否定はしません。ですが、それに固執して動いてしまえば、より大切なものを失うかもしれない、ということです。
大切なものは、それを胸に秘めながらも、それでも一歩、いや半歩でも前に踏み出し、相手との信頼を深めることではないでしょうか? たとえ握手ができなくても、指と指を触れ合わせるだけでいいのです。大切なのは、小さなことでもいいから、相手を理解し、歩み寄る努力をすること。
たとえすぐには変わらなくても、全人類がそれを続けていけば、必ず長い年月を経て、憎しみや差別、その他のものを越えて、人類はみな、真に手の取りあえる時が訪れる。私はそう信じたい。
憎しみや敵対心、それらを胸に秘めつつ、一歩を踏み出しましょう。私はそれを助けるために全力を捧げることを、ここに誓います。
* * * * *
サイド1のコロニー、ロンデニオン。そこの軍事施設で、二人の男性がテレビでシャアの演説を聞いている。
「彼は変わったな、アムロ」
アムロと呼ばれた青年が、彼の名を呼んだ口ひげの男にこたえる。
「あぁ。グリプス戦役の時も地球圏のことを想う気持ちは強かったが、さらに一皮むけて、以前よりさらに地球圏のことを真摯に考えるようになってきたように見える。この分なら、俺たちがシャアと戦うことになる心配はないだろうな」
ロンド・ベルのブライト・ノアとアムロ・レイ。二人は安心と信頼をミックスさせた表情を浮かべ、モニターに映し出されたシャアを見守っていた。
* * * * *
そして、演説は終わった。会場からは観客からの万来の拍手が聞こえてくる。
舞台袖から演説を見守っていた俺……カレルも、他のジオン共和国のスタッフと一緒に拍手を送っていた。
――本当に素晴らしい演説でしたね。
――あぁ。これで地球圏の安定と幸せがさらに近づいたんじゃないか? 『カレル』のおかげだな。
――そ、そんなことないですよ。私にあのことを教えてくれた親友のおかげですし、何よりシャア首相やジオン共和国の皆さんが、彼女のメッセージを真摯に受け止めてくれたおかげです。
そこでギュネイが俺に近寄ってきた。何か相談したいことがあるのだろうか。
「カレルさん、少し見てもらいたいものがあるんですが」
「え? 私に?」
「はい。技術部に見てもらってもわからなかったので、前の大戦でのエースだったカレルさんならわかるんじゃないかと思って」
ギュネイの話によれば、アクシズでの戦いで、見たこともないMSと遭遇したそうだ。そのMSは、ギラ・ドーガとほぼ互角の性能を有したそうで、それが気にかかっていたという。
そしてその画像を見せてもらうと……。
……これは、ゼク・アイン!?
「これは……!」
「知っているんですか?」
「うん。連邦軍がある工廠で開発していたMSだと思う。何かの資料で見たことがあるよ。でも、それから正式採用されたという話は聞かなかったけど……」
「そうですか……しかし、連邦軍がテロリストに手を貸すとも考えにくいですし、連邦内部の非主流派か何かから横流しされたんでしょうか?」
「そうかもしれないね……」
そうこたえると、ギュネイはこちらに丁寧に一礼した。
「ありがとうございます。ではこの件は、首相に報告したうえで、情報部に調査をお願いしてみることにします」
「うん、それがいいと思うよ」
……しかし、なんでゼク・アインがこの世界に存在するんだ? ニューディサイズが発生してないこの世界で、ゼク・アインが日の目を見ることはないと思うんだが……。まさか、既に別の形でニューディサイズが……?
この謎に、俺は地球圏に漂う不穏な空気がいまだ晴れていないことを感じるのだった。
* * * * *
そのころ、地球圏某所。
ゼク・アインのパイロットは、彼の主に報告を行っていた。
「なるほどな、了解した。ご苦労だった」
「いえ、でもよろしかったのでしょうか? 結局、アクシズをジオン共和国や連邦から奪取することはできませんでしたが……」
プランの目的の一つには、アクシズを奪い、その後そこをカラードと彼らの共同の拠点にする、というものもあったのだ。
だが、報告を受けた主は余裕の微笑みをパイロットに向けて口を開いた。
「あぁ。そうできればベストだったのだが、それはうまくいけば僥倖だったというレベルの話だ。今回の事件で、連邦もいくらか動揺しただろう。そしてそれは、我々ニューディサイズが決起の準備を整えるのに必要な時間を稼きだすのにつながるはずだ」
「確かに」
「それに何より、カラードの戦力を取り込めたのは大きな収穫だ。本当によくやってくれた。感謝するよ」
「いえ。こちらこそ、大佐の剣や盾となり、なによりあなたの力になれたことを嬉しく思っております」
「そのことを含めて、君には感謝している。これからもよろしく頼むよ……アンジェロ・ザウバー」
「はっ! 我が命は、いつでも大佐のために!」
それを聞き、大佐と呼ばれた、淡い水色の髪を、独特の髪型にしたその男は満足そうにうなずく。
だが暗がりのためだったために、アンジェロは気づけなかった。いや、たとえ暗がりでなかったとしても、大佐に心酔していた彼は気づけなかっただろう。
大佐と呼ばれた男……ノーフェイスの表情に、邪悪な色がかすかに混じっていたことを。
地球圏の暗雲は、まだ晴れていない―――。
To Be Continued to 『ティターンズのモブテストパイロットにTS転生したので、刻の涙を減らすべく頑張ってみますUC』
逆襲のテテテ、これで完結です! 読んでくださり、ありがとうございます!
テテテUCについては、書いてくださるであろう方に託させていただきます。書いてくださる方、ぜひともメッセージなどで連絡くださいませ(平伏
それでは改めて、ありがとうございました!
(追記)
なお、フロンタルの人格は、その生み出された時に宿った(史実の)シャアの人格の残滓をベースに、史実通り封殺されようとしていたフロンタル自身の人格と結びついて再構築されたので、こちらの世界のフロンタルは決して空っぽではなかったりします。
あと、こちらに出てくるブライトは、小説版逆シャア仕様の口ひげVerになっておりますw
北斗転生終了後、どの作品を連載開始してほしいですか?
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