煽り系ダンジョン配信者、視聴者を煽るたびに強くなるので、無理して煽り散らかしてみるも、配信を切り忘れたままひとり反省会をしてしまいバズってしまう   作:アトハ

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もうちょっとだけ続くんじゃ


バーニングお嬢様、勧誘される

 ちづるちゃんとのコラボ配信から数日後。

 

 

 バーニングお嬢様、実は超良い子説

 バーニングお嬢様、実はめちゃくちゃ強かった説。

 バーニングお嬢様、実は混沌とした現場で辻ヒールで人命救助に勤しんでいた説。

 ……などなどの噂に、頭を痛めていた私。

 

(辻ヒールが趣味の、煽り系配信者って何!?)

(私、辻ヒールなんて、1回しかやったことありませんが!?)

 

 

 そんな日常を送る、ある日のこと。

 かかってきた電話を取った私──焔子は、信じられない打診を耳にした。

 

 

 

「……なんて?」

「いえ、信じられないのも分かりますが……。ダンジョン庁からの依頼で、今度はじめるダンジョンマナーの動画のMCを勤めて欲しいと……」

「あの……、宛先間違えてませんか?」

 

 ダンジョンが各地に現れた際、それぞれの国は対応に追われていた。

 ダンジョン庁は、日本でダンジョンに関する政策を任された専門家の集まりである。

 

 とはいってもダンジョンに一番詳しいのは、ダンジョンに潜っている探索者だ。

 ダンジョン庁の政策は、机上の空論、お役所仕事だ──などと揶揄されることも多いのが現実で……、

 

(ダンジョン庁って、要は国の偉い人だよね?)

(まず、ダンチューバーに頼ろうなんて考えるとは思えないんだけど……)

 

 頭にでっかいハテナを浮かべる私。

 結局、マネージャーの勢いに押されて、まず打ち合わせの席につくことに頷く私であった。

 

 

 

※※※

 

 翌々日。

 私は、指定されたレストラン(ダンジョン料理の専門店、超高級!)の前でがくぶると震えていた。

 

「お〜っほっほっほ! ほ、本日はおひがらもよく?」

「お、お嬢様なのに高級レストランに慣れてない、なんて──ぷぎゃー、ですわ〜!」

「そ、そういうちづるちゃんも、体がガクガク震えてましてよ〜?」

「そっくりその言葉、お返しましてよ〜!」

 

 ガクガク震える小心者二人(私とちづるちゃん)

 

「な〜にやってんだ? 旨いもん食いながら、商談するだけだろ、商談。気楽に行こうぜ〜!」

 

 そんな私たちを呆れた目で見て、ニカッと微笑む少女がいた。

 彼女は、ルナミア三期生──すなわち私の同期だ──の少女であり、ダンチューバーとしての芸名は、ミミズクと名乗っている。

 

 彼女の特徴をひと言で表すなら、生粋の戦闘狂、といったところであろうか。

 サーチ&デストロイ。格上相手にも嬉々として挑みデスループを繰り返す。バーサーカー、ルナミアの最終兵器、ワームに喰われながら哄笑するヤベェやつ──などと散々な言われようをしているパワフルな少女であった。

 

(クズ系お嬢様こと煽り魔の私、堕天使ちづるたん、生粋のバーサーカー……)

(あれ? もしかして、私の同期ヤバすぎ!?)

 

 ちなみに今日の打ち合わせは、私、ちづるちゃん、ミミズクの三人が参加することになっていた。

 向こうが指定したダンチューバー三人である。

 

 この場所を指定したのは向こうなので、別に私たちが恐縮する必要は確かにないのだが、それはそうとして生粋の庶民である私が見慣れぬ高級店を前にして、緊張するのは当たり前なのである(お嬢様ダンチューバー感)

 

 

 

 私が、混乱しながら、そんなことを考えていると、

 

「会議が長引いてしまって……、すみませんお待たせしましたの!」

 

 私たちのもとに、ひょこっと小さな少女が現れた。

 彼女が、今回の依頼主だろうか。

 

 

「はじめまして、焔子さん。ちづるさん、ミミズクさん。ワタクシ、これこれこういうものでして──」

 

 ハキハキと喋りながら、名刺を差し出してくる少女。

 名前は、神楽坂優奈。驚くべきことに(依頼主なのだから当然か)、颯爽と輝くダンジョン庁──の文字が。

 名刺を交換しながら、私は改めて、まじまじと少女の顔を見る。

 

 

(う〜ん、どこかで見たことあるような……?)

 

 私が、首を傾げていると、

 

 

「バーニングお嬢様! 辻ヒールお嬢様! あの時は、死を待つだけだった私を救って下さりありがとうございました!」

「辻ヒールお嬢様なんて風評被害はヤメルのですわ!?」

 

 反射的にツッコミ、そして気づく。

 

「あ、もしかしてイレギュラーモンスターと戦ってたときに行き倒れてた子!」

「はい! 覚えていて下さったのですね!? 感激ですわ!」

「お雑魚ですわ〜! お雑魚ですわ〜! 今後は、身の程をわきまえて、自分にあった場所に潜ると良いのですわ〜!」

「バーニングお嬢様の生煽り! もっと、もっと下さいませ!!!!」

「!?!?!?」

 

 え、なにこの子。

 なんで煽られて喜んでるの?

 

 ──求、煽られて喜ぶ変人への対処法。

 私は煽り法典を覗き込むが、残念ながらそこにはなんのデータもなく。

 

「……コホン、すみません。ついつい興奮してしまいましたわ──まずは中に入りましょう。ここのお料理、美味しいんですよ」

 

 優奈ちゃんは、そう微笑み店内に入るのであった。

 

 

 

※※※

 

「それでは早速、今回の案件の説明をさせて頂きたいのですが!」

 

 パクパク。

 パクパク。

 見たこともないダンジョン料理に舌鼓をうつ私。

 

 

「簡単な企画としては、ダンジョンマナーについての配信です。法整備も追いついておらず、ダンジョンが日に日に無法地帯化している現実を踏まえて──クソ長官。こほん失礼、くそダヌキが言い出したんですよ。今、はやりの配信でマナーを呼びかけてみればどうかって!」

 

 思うところがありそうな優奈さん。

 パクパク、と料理を口に運ぶ私。

 

(こ、これが、ダンジョン料理!)

(これは美味しいですわ! なるほど、グルメハンターと化す探索者が一定数いると聞いて、何を考えたらあんなゲテモノ食べるんだろうと不思議でしたが──これは、美味、ですわ〜〜!)

 

 なお、ダンジョン料理は高級品だ。

 普通に暮らしていたら、私のような庶民には一生縁のない代物である。

 

 

「配信で……、マナー?」

 

 きょとんと首を傾げるちづるちゃん。

 

「いや、お役所のお固い動画に、その──この人選はないだろ……」

 

 バーサーカー系ダンチューバー、こと、ミミズクも怪訝な顔をする。

 

「私もそう思います。というより、よりにもよって、私がマナー呼びかけるって、なんのギャグですか?」

 

 煽り系やぞ、私?

 揃って首を傾げる私たちに、

 

 

「マナーを呼びかけるにしても、誰がダンジョン庁で出した動画なんて見に来ますか? 本気で広めたいなら、今をときめく、一流のダンジョン配信者に力を借りるべきだと思うんです!」

 

 よくぞ聞いてくれたと言わんばかりの勢いで、立ち上がる優奈ちゃん。

 その目は、ランランと輝いている。

 

(まあ、お役所の動画見るかて聞かれたら)

(それこそ義務化でもされない限りは見ないかな)

 

 少しの納得感と、噴出するより大きな疑問。

 すなわち──

 

 

「「「なんで私たち?」」」

 

 それである。

 

 

「企画名は──バーニング嬢にあおられる! そう、この企画はバーニングお嬢様にMCを勤めて頂きたいのです!」

「公式、病気か!?」

 

 正気に戻れ!?

 困惑する私をよそに、優奈ちゃんは説明を続けていく。

 

 ──いわく、マナーをクイズ形式で出題するらしい。

 そこで正しい知識を提供しつつ、クイズであることや、演者同士のやり取りを通じて、エンタメ性も確保するという方針の企画らしい。

 

「間違えたらですね、お雑魚ですわ〜〜!! って、バーニングお嬢様に煽って欲しいんですわ!」

 

 目をキラキラさせる優奈ちゃん。

 

(アカン、この子、ダンジョンでの体験がトラウマになって、私のことを超すごい人間だと勘違いしてる!?)

 

 

 ダンジョン庁の公式動画。

 どう足掻いても、私には肩の荷が重いと思う。

 そんな私の気持ちをよそに、

 

 

「私は、面白そうだと思う!」

「ほーん、なるほど。そういうことなら、たしかにバーニングお嬢様が適任だなあ」

 

 隣には、目を銭マークにしたちづるちゃん。

 更には、バーサク少女までもが獰猛な笑みを浮かべており──

 

 

(ヤバい、ヤバいヤバいヤバいヤバい)

(飲み会の席で決まった糞企画と、同じ臭いがする!?)

 

 

「ゆ、優奈さん? やっぱりダンジョン庁の公式から出す以上、それはあまりにふざけた企画で──」

「お願いします、バーニングお嬢様!」

「その……、ほら、私にはやっぱり荷が重いといいますか──」

「お願いします、バーニングお嬢様!!」

「えっと、えっと──」

 

「お願いします、バーニングお嬢様!!」

「やろうよ、焔子ちゃん!」

「受けよう、焔子ちゃん。これはルナミアにとっても、またとないチャンスだぞ!」

 

 ──ああ、押しに弱い日本人の性質よ。

 

 

「う、受けます!」

 

 私は、こくりと頷き、

 

 

「おっしゃ! 言質、取りましたわ〜〜!」

 

 優奈ちゃんが、歓喜の声をあげたのだった。

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