煽り系ダンジョン配信者、視聴者を煽るたびに強くなるので、無理して煽り散らかしてみるも、配信を切り忘れたままひとり反省会をしてしまいバズってしまう   作:アトハ

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バーニングお嬢様、天使と出会う

「……なんて?」

 

 マネージャーの言葉を、思わず聞き返す私。

 

 

「ナイス演出でした! 焔子さん、やっぱり天才──」

「いや、聞き返した訳ではなくてですね?」

 

 私は、ため息をつく。

 

 

 今でも思い出す就活風景。

 ブラック企業勤務で心を病み、一発当てたいと踏み出したダンジョン配信者の道。

 己に生えてきたスキルを見て、頭を抱えた履歴書作成。

 面接で力説したのは、世界一の煽り系配信者になるという謎の宣言。

 面接後には、ひとり反省会。落ちたと確信して、お通夜ムード。久々に飲酒解禁──消えた記憶。

 

 そうして翌日。

 私なんかにダンチューバーはやはり無理だと思って落ち込んでいたところに、まさかの合格通知。

 

 ……いや、やっぱり頭おかしいなルナミアさん。

 私なら、自分が面接にきたら秒で落とす自信がある。

 

 

「霧香さん。ルナミアさんは、なんで私なんかを取ったんでしょうね?」

 

 私は、同期で一番チャンネル登録者数が低い。

 トークは面白くないし、【大炎上】のスキルを除けば一芸に秀でているでもなし。

 おまけに、腫れ物扱いではコラボも難しい。

 

(なんやこの不良債権)

 

 私が真顔になっていると、

 

 

「ありのままの、あなたに魅力を感じたからですよ。あなたなら、この世界に新しい風を──新しい可能性を見せてくれる。そう感じたからこそ、貴方とトップダンチューバーを目指したいって思ったんです」

 

 しみじみと呟くマネージャーに、思わず私は、

 

「なるほど! つまりは私の煽り系としての才能に期待して下さったんですね!」

「違いますが!?」

 

 マネージャーの霧香は、しばしの沈黙。

 それから静かに口を開き、

 

「焔子さん、あなたのやりたいようにやって下さい。あなたという演者に惚れ込んだのは私たちです──ルナミアは、それを全力で支えるためにあるんですから」

 

 そう安心させるように口にした。

 

 

(あなたという演者──それ、すなわち、煽り系)

(これからも煽り系としての活動を全力でサポートしますって決意表明ってことだよね……!)

 

 それを聞き、私は、

 

「分かりました! 私、世界一の煽り系目指します!」

 

 そう改めて気合いを入れるのだった。

 

 

 

※※※

 

 そんな訳で、目指せ汚名挽回!

 

「お~っほっほっほ、下僕の皆さま御機嫌よう! 地獄星より舞い降りた、炎上を何より好む焔子ですわ!」

 

"今日のエセ嬢も、笑顔が上手い!"

"ですわ〜!"

"可愛い(可愛い)"

"炎上を何より好む(ひとり反省会)"

 

「お~っほっほっほ! どうやら、まだ前回の演出に騙されてる下僕さんがいらっしゃるみたいですわね!」

 

"諦めろん"

"可愛い(可愛い)"

"ポンコツ感すごい"

"頑張れ! 頑張れ!"

"まだ間に合う!"

 

 一変してしまった私のコメント欄。

 顔を真っ赤にしていた私のアンチたちは、いったいどこに行ってしまったの……?

 

 

「こほん。今日は皆さまに改めてわたくしの本性を知らしめるべく、急遽、配信の枠を取ったのですわ!」

 

 私は、高らかにそう宣言。

 これから私が如何に性悪で、日常的に他人を煽っているか、見せつけてやるのだ。

 

 

「この間、ダンジョン専門ショップにお買い物に来ていたお雑魚さんがですね」

 

 私は、話す。

 我ながら性格悪いなあ、とドン引きする取っておきのエピソードである。

 

 ──ちなみにダンジョン専門ショップは、武器や防具を購入できるお店である。

 ダンジョン内で換金したお金を元に、強い装備品を手に入れて、ダンジョンの奥深くに潜っていくというのがダンジョン探索の基本である。

 

 

「お金が足りないのか、レジを通さずに店の外にガンダッシュで逃げ出そうとするお雑魚さんが居ましたの! きっと、ものすごく貧乏なのに背伸びしたくなったお雑魚さんなのですわ!」

 

"うわ、万引き?"

"バーニング嬢、万引きの現場に居合わせたのか。運ないな"

"配信ネタになるんやぞ。むしろヨシ"

"ポジティブすぎるw"

"目の前で逮捕劇起きたら、確かに煽り散らかしたくなるなw"

 

「そのお雑魚さん、なぜかわたくしの方に『そこをどけ!』とか言いながら突撃してきましたので──思わず足払いして拘束してしまいましたわ!」

 

"いや草"

"そうはならんやろ!"

"さらっと事件解決してるww"

"煽り系 #とは"

 

 

 あっと、いけないいけない。

 たしかにここまでの話だと、私が万引き事件を解決しただけの良い人のようではないか。

 

 こほん。

 ここらは、ちょっとだけ誇張して……、

 

「身の丈に合わないお雑魚さんがあまりに滑稽で──わたくし、拘束された万引き犯を全力で煽ってさしあげましたの! 身の丈に合わないことして、おダサいですわ〜って!」

 

"※申し訳程度の煽り要素"

"なおその間も、ガッツリと犯人を拘束していた模様"

"万引き犯のターゲットがよそに行かないようにする名采配"

 

 呆れ気味のコメント欄をよそに、私は気持ちよく喋る!

 喋る、喋る! 煽り法典にも書いてあるの。

 自分で捕らえた犯罪者は、どれだけ煽り倒しても良いって。

 

「あまりに煽られて、最後には万引き犯さんも涙を流して悔しがってましたわ〜!

 お~っほっほっほ、最高でしたわ〜!」

 

"あ……、俺 その現場に居たかも?"

"ふぁっ!?"

"生バーニング嬢、羨ましい!!"

 

 衝撃の事実。

 なんとリスナーが、現場に居たらしい。

 

"バーニング嬢、万引き犯の心に寄り添う諭し方で。最後には家族のためにもそんなことやったら駄目だって━━万引き犯、大号泣で反省して……。ああ、バーニング嬢じゃなければ、こんな結末にはならなかったんだろうなって"

"まず、サラッと万引き事件解決したことを、もっと誇って欲しい"

"煽り系 #とは"

"凄すぎぃ!"

 

 

「ふ、風評被害ですわ〜〜!?」

 

 くっ、結構良い流れだったのに!

 余計なことを言うリスナーが居たせいで、すっかりコメント欄が、ほんわかした空気になってしまった。

 

「え・ん・し・ゅ・つ、ですわ〜! 作り話に騙されたお雑魚さんたち、ぷぎゃーなのですわ〜!」

 

"目撃者いるのにww"

"煽り文句が貧弱なのでしてよ!"

"ぷぎゃー、ですわ〜!"

"可愛い(可愛い)"

 

 

 私が、リスナーさんと、そんなやり取りをしていると、

 

"《大天使ちづる》ぷぎゃー、ですわ〜〜!"

"ふぁっ!? ちづるたんや!"

"ルナミア三期生の絆!"

"凸待ちゼロ人の話題は、もうやめて差し上げろ"

 

「あいぇぇええ──ちづるちゃん!? あの大天使ちゃんが、こんなスラム街みたいな配信になんでぇ!?」

 

"落ち着いて!"

"スラム街みたいな配信www"

"言われてんぞおまえら"

"これは良い煽りw"

 

 ちづるちゃんは、私と同期デビューしたダンチューバーだ。

 ルナミアの三期生──清楚な笑みとほんわかした空気で、癒やし系として名高い。

 その癖、ダンジョン配信では、ことごとく不幸な罠を踏む生粋の芸人属性。

 同期なのが申し訳なくなるぐらいにイケイケの天才ダンチューバーなのである。

 

 

"《大天使ちづる》コラボを! 私と、コラボして下さい!"

 

「ふぁっ!? しょ、正気か?」

 

"お嬢様の仮面かぶって!"

"テンパリ過ぎて地声や、草"

"お雑魚ですわ〜!"

 

 

 失敗に終わりつつあった汚名挽回配信。

 その終盤、私は、三期生のエース、ちづるちゃんから突如としてコラボ配信を申し込まれたのであった──同期とのコラボとしては、まあ遅すぎるぐらいなのだけど。

 

「その、ちづるちゃんにもイメージってものがね?」

 

"《ちづる》お雑魚ウォッチング、ですわ〜!"

 

「何処で覚えてきたの、その汚い言葉!? 今すぐ忘れてきなさい!」

 

"草"

"鏡見て"

"コラボ楽しそう"

"芸人×芸人"

 

 

「え〜〜、こほん。今日のことはまた後日報告するので……、ちづるちゃんに迷惑だけはかけないで欲しいのですわ! それでは、下僕の皆さま、ごきげんよう~!」

 

 テンパリまくった私は、とりあえずいつもの口上とともに配信を切り。

 

(た、たぶんリップサービスというか冗談?)

(私とコラボするメリットか、向こうにはないもんね)

 

 そう結論付けるのであった。

 

 

 ──数時間後に、マネージャー経由でコラボの許可が降りた。

 なんでやねん。

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